「まちづくりエージェントSIDE BEACH CITY.」はSDGsで横浜から未来を創る
横浜に拠点を置いて活動している「特定非営利活動法人 まちづくりエージェントSIDE BEACH CITY.」はまちづくりを通してSDGsにも積極的に取り組んでいます。
今回は「まちづくりエージェントSIDE BEACH CITY.」理事長の山口さんにインタビューを行いました。概要や活動、SDGsやまちづくりにかける想いまで詳しくお聞きしました。
目次
「まちづくりエージェントSIDE BEACH CITY.」は情報技術の支援を通じてSDGsに取り組む
「まちづくりエージェントSIDE BEACH CITY.」は横浜を中心に活動を展開しているNPO法人ですが、どのような団体でどんな事業を展開しているのでしょうか。また、SDGsへ取り組むようになったきっかけについても聞いていきます。
横浜から情報技術を中心とした支援を行っている
───本日はよろしくお願いします。まず、「まちづくりエージェントSIDE BEACH CITY.」がどのような団体なのかお聞かせいただけますか?
山口さん まず、「まちづくりエージェントSIDE BEACH CITY.」という名前について説明します。少し長い名前ですが、「SIDE」は「横」、「BEACH」は「浜」、「CITY」は「市」を意味しています。
SIDE BEACH CITYと聞くと、海岸やサーフィンなどに関連する団体などを連想する人もいるかもしれませんが、実は「横浜市」を直訳したものがそのままNPO法人の名前になっているんです。ちなみに最後に「.(ドット)」が付いていますが、ドットまで含めたものが正式名称になります。
───言われてみれば確かに横浜市の直訳で、覚えやすそうで良いですね。活動としては主にどのようなものがありますか?
山口さん 私たちの主な活動は、ICT(情報技術)を活用したまちづくりの活性化です。私たちは代理人という意味もある「エージェント」と名乗っていますが、その名が示すとおり、直接事業を行うだけでなく、他の非営利団体や社会課題を解決する組織やプロジェクトを支援する中間支援も重要な活動となっています。
───ICTを活用した活動をされているとのことですが、どのような形で活用されていますか?
山口さん 私たちの主な活動は、情報技術支援、中間支援、地域活性化支援の3つで、共通点はICTの利活用支援にあります。地域や、まだ十分にICTを活用できていない団体や法人をサポートすることが、私たちの中間支援の役割です。
地域活性化のためにICTを活用することは、特にコロナ禍の時期に重要性が増しましたが、私たちがコロナ前から推進してきたものでもあります。
多くのパートナーと手を取り合い、さまざまな取り組みをしている
───ICTを活用した活動では、他にどのようなものがありますか?
山口さん 最近では「WEB 3.0(Web3)」にも力を注いでいて、さまざまなプロジェクトを主に自主事業の形で運営しています。一方、中間支援については、事業者や行政からの依頼を受けて活動しているケースも多いです。
私たちは大きく分けて自主事業と依頼を受けての活動、2つの形で取り組んでいるんです。
また、ホームページに掲載されているパートナーと共同でのプロジェクトも推進しています。具体的な活動情報はブログなどに掲載もしているので、そちらをご覧いただければ取り組みを確認いただけます。
情報配信も積極的に行っており、YouTubeチャンネルや、ポッドキャストを通じた音声メディアの配信もかなり前からしています。配信では様々な団体へのインタビューを行っています。ICTを中心に、地域に関わるコミュニティ活動や社会課題を解決しようとしている団体などを多数紹介していますので、そちらもぜひご覧いただければと思います。
WEB3.0になると、データが巨大プラットフォームに集積されることによるセキュリティ上のリスクの回避、言論の自由がより保障されやすくなるなどのメリットがあります。一方で、利用するための敷居が高い、詐欺が横行しやすい、法整備が整っていないなどの課題も挙げられていますが、WEB3.0から派生した技術やサービスは非営利活動や社会課題の解決に応用できるとも言われ、今後が注目されています。
早くからSDGsに取り組み、きっかけを提供している
───早くからSDGsに取り組んできたと伺っていますが、取り組むようになったきっかけを教えてください。
山口さん きっかけとなったのは、私たちの団体の副理事長が早くからSDGsに注目し、2017年にワークショップに参加したことでした。これが機に、積極的にSDGsを事業に取り入れていこうという流れが生まれました。
そして、比較的早い段階の2019年に神奈川県のSDGsパートナーに認定されたのですが、実際に具体的な活動を行っていたのはその前からで、活動が認められてSDGsパートナーに認定していただけたんです。
───どんな活動だったのでしょうか。
山口さん 最初に取り組んだのはビーチクリーンでした。目的としては浜辺をきれいにし、ゴミを分別することなのですが、マイクロプラスチックの問題など、海洋の環境改善に直結しているアクションだったのです。
ビーチクリーンをきっかけに、より本格的にSDGsを推進することになりました。
とはいえ、私たちは大規模なSDGs事業を展開しているわけではありません。
むしろ、私たちの役割はSDGsを知ってもらうための啓発活動が中心で、SDGsがどういうもので何をすればいいのかを知ってもらい、それをきっかけに具体的な行動につなげてもらうことを目指しています。
高齢者や若い世代も誰1人取り残さない取り組みをしている
横浜からICTを活用したまちづくりを支援している「まちづくりエージェントSIDE BEACH CITY.」は、どのような活動をしているのでしょうか?具体的な活動内容と、SDGsへの取り組みについて聞いていきます。
情報格差の解消に向け、ICT支援に注力している
───ここからはSDGsに関連した活動についてお聞きします。具体的にどのような活動をしているのか、お聞かせいただけますか?
山口さん 私たちの事業は結果的に全てがSDGsに繋がっていると考えていて、近年は特に地域のICT支援に注力しました。
コロナ禍でデジタル化が進み、リアルでのコミュニケーションが困難になった2020年ごろから、地域の方々、特に高齢者などが取り残される状況が生まれました。それまで関心がなかった方々が、コミュニケーションを取るため、あるいは行政の手続きを行うためにスマートフォンやインターネットを利用する必要性が生まれましたよね。
取り残されている方たちがいる状況を受け、私たちは情報格差を解消することを目指しました。
高齢者やITに不慣れな方々向けに、スマートフォンの基本的な使い方や、コミュニケーション手段としてLINEやZOOMの使い方などを多くの地域や団体に向けてサポートしました。
───それまで関心が無かった方たちに指導するのはなかなか大変だったと思いますが、どのような形で指導されてきたのですか?
山口さん 高齢者が地域で重要な役割を果たしている人であることが多く、ITに弱いことはよくあることです。私たちはボトムアップのアプローチを重視しています。ITはみんなが使えるようになって初めてその真価を発揮すると考えているため、私たちは積極的に講座を引き受け、サポートしました。
2022年だけでも40回以上ICTの講座を実施しましたが、それ以前にもコロナで大変な状況だったため、多くの講座を開いていました。
最近はコロナも落ち着きを見せ、少しずつ講座の回数が減ってきましたが、まだスマートフォンを使いこなせない方もいらっしゃるため、引き続きサポートしています。私たちの取り組みは、「誰1人取り残さない」というSDGsの理念とも繋がっていると考えています。
若い世代に向けた教育活動にも取り組んでいる
───若い世代へも働きかけているとお聞きしていますが、どのような取り組みなのでしょうか?
山口さん 中学生の課外授業を定期的に受け入れています。中学生が私たちの事業所を訪れてSDGsを実践する企業としての話を聞いたり、一緒にディスカッションを行ったりもしています。
具体的には、「SDGsとは何か」「SDGsの役割とは」「何故必要なのか」「SDGsはどうやって実践するのか」といったことを話し合っています。
横浜市に限らず、東京都の学生さんたちも受け入れています。
また、中学生にSDGsについて教える取り組みとしては、実際に屋上緑化の現場に連れて行き、「これが環境再生につながるんだよ」ということを直接見せながら教えたりもしています。
───若いうちからSDGsに触れられる貴重な機会ですね。他にも若い世代への取り組みはありますか?
山口さん 小学生や、親子、未就学児を対象としたプログラミング教室も実施しています。学校で開催する場合もあれば、地域の公共施設で開催し、地域の子どもたちにプログラミングの基本を教えることもあります。
複雑なコードを書くというよりは、「プログラミングってこういうものなんだよ」という基本的な概念を、ツールを使って教えることが多いです。
直接的にSDGsとは関連していないかもしれませんが、私たちが積極的に取り組んでいることの一つです。
需要が増えたきっかけは、小学生の授業にプログラミングが組み入れられるようになったことでした。流れに合わせ、教師や子供、親などが「これからはプログラミングを学ばなければならない」という認識を持つようになったのです。
「SBC.’s SDGs」でより具体的な活動へ
───団体名の元にもなっている横浜市に関連して取り組んでいる活動は何かありますか?
山口さん 例えば、横浜市とSDGsを身近に感じてもらうためのパズルを作り、それを基にワークショップを開催したりしています。
また、「SBC.’s SDGs」というネーミングで活動も行っています。SBCは私たちの団体名であるSIDE BEACH CITY.の頭文字を取ったもので、この名前で私たちが進めているSDGsの活動をわかりやすくアピールしているんです。
───横浜市を前面に押し出した活動ですね。「SBC.’s SDGs」での具体的な活動を教えてください。
山口さん まず、私たちが行っている活動をアピールするためのパンフレットを作成したのですが、このパンフレットには「バナナペーパー」という用紙を使用しました。
SDGsに詳しい方ならご存じかもしれませんが、バナナペーパーはバナナの原産国で、バナナの茎が残ってしまう問題を解決するためのフェアトレード製品です。
バナナの茎を紙製品として利用することによって、これまで無駄になっていたものがリサイクルされます。私たちは、バナナの生産者にもリターンがあり、使用する企業もSDGsに貢献できるというバナナペーパーのプロジェクトに着目しました。
SDGsへの活動を知ってもらうために、紙にもSDGsに貢献する素材を使用しようと考え、このバナナペーパーを使用しています。もちろん、再生紙を使用することも一つの選択肢ですが、バナナペーパーはSDGsの17の目標のうち、複数の目標を達成するという点で貢献度が非常に高いんです。
もう一つこのパンフレットで使用しているのが、LIMEX(ライメックス)という、環境問題を解決に導く可能性を持つ新素材を使った紙です。LIMEXを使ったパンフレットを配布することで、「こんな素材があるんだ」ということを知ってもらうという意味も含んでいます。パンフレットには、私たちがこれまでに取り組んできたSDGsの流れが簡単に説明されています。
「Yocco18」とのコラボなど親しみのある活動も
───使用する紙からもSDGsに取り組んでいるんですね。その他にも「SBC.’s SDGs」で取り組んでいる活動があれば教えてください。
山口さん 私たちがワークショップで使用するものに「Yocco18と学ぶSDGs」があります。Yocco18とは、横浜18区の魅力を伝える18人のキャラクタープロジェクトで、SDGsという真面目でちょっとかたい印象がある内容を親しみやすく伝えるためにコラボしたものです。
横浜市にある18の区それぞれの特徴と、SDGsの17の目標との関連性を考えることで、自分たちが住んでいる地域とSDGsがどう関連しているのかをパズルのように学べるツールです。
たとえ横浜に住んでいる人でも、自分が住んでいない区に何があるのか、特に自分の住んでいる場所から離れた区に何があるのかは分からないことが多いですよね。「Yocco18と学ぶSDGs」は、SDGsと自分たちが住んでいる地域に興味を持つきっかけになると思って作りました。
「Yocco18と学ぶSDGs」は大人から子供まで楽しむことができ、大人は真剣に、子どもは直感的に遊ぶことができます。また、10分から長くても30分程度でできるので、イベントなどで気軽に取り組むのにも適しているんです。このツールは、横浜だけでなく、他の地域にも応用できるので広げていきたいと考えています。
また、2023年の8月16日と17日に横浜市教育委員会が主催する「子どもアドベンチャーカレッジ」という小学生が職業体験をするプログラムにも参加します。先ほどのパズルを使用したワークショップや、NPOが社会でどのような役割をしているのかなどを、小学生に興味を持ってもらうための取り組みをする予定です。
「facelook」というSDGsを身近にするシリーズイベントを行なっている
───様々な視点からSDGsを考えるイベントも行っているそうですね。
山口さん まず前提として、SDGsについてみんなで考えようというイベントを開催しても、興味がない人にとっては、SDGsが本当に必要なのか、あるいはSDGsはそんなに大切なのか、という疑問を持つ人もいるかもしれません。世の中にはSDGsに関する様々な情報が溢れていますし、様々な意見もあります。
「facelook」というSDGsにアクティブな方をお招きして、みんなで色々考えようというイベントを定期的に行っています。例えば、着物や浴衣は実はサスティナブルだということを知ってもらうため、実際に浴衣を着て地域を練り歩くという企画を実施したこともあります。
「実際に着て歩いてみてもらう」ことで、参加者はファストファッションや衣料廃棄物などの問題を考えるきっかけになることが狙いです。
「facelook」ではSDGsを毎回違う切り口で考えていますが、先ほどの浴衣の例の他にも、ふろしき(風呂敷)を取り上げたこともありました。ふろしきが実はSDGsであることを知ってもらうため、イベントでは手に持って畳んだり包んだりしながら、日本にはすばらしいエコバッグが昔から存在するんだと伝えることができました。
データの可視化やサルベージパーティーでさらなる理解を促している
───SDGsに関連してその他にも取り組まれている活動は何かありますか?
山口さん 「facelook」の他の回も紹介します。データビジュアライズという少しIT寄りのテーマで、データからSDGsを可視化して学ぶ、といった回では、参加した人たちからは「非常に興味深い内容だった」との感想を頂きました。データを視覚化することで、地球温暖化問題など、本当に問題が進行しているのかどうかを客観的に理解することができました。
また、「サルベージパーティー」を実施した回もありました。サルベージパーティーとは家にある不要なもの、あるいは賞味期限が近づいていたり切れている食材を持ち寄り、その場で調理して食べるというもので、この回も大変好評をいただきました。料理の腕が問われるのですが、参加者にはとても楽しんでもらえました。
郷土愛やリアルな交流を促しSDGsが創る未来を形作っていく
さまざまな活動を通してSDGsに取り組んでいる「まちづくりエージェントSIDE BEACH CITY.」は誰1人取り残さない取り組みで、多くの人や地域を支援しています。
ここからはまちづくりにかける想いや今後の展望をお聞きします。
読者の皆さんへのメッセージもいただきました。
「地域を好きになる」ことで地域づくりを促進している
───「まちづくりエージェントSIDE BEACH CITY.」のホームページを開くと、「地域を好きになる」という言葉がまず目に飛び込んできます。「地域を好きになる」に込められた想いなどお聞かせいただけますか?
山口さん 私たちが地域づくりのエージェントとして行っている活動は、基本的に地域に対する興味を喚起することから始まっていて、この行動は地域づくり、まちづくりの第一歩と考えています。
地域への興味が芽生えると、自分が住んでいる地域がどのような所で、どんな問題が存在するのかが見えてきます。良い面と悪い面が明らかになるんです。
良いところは誇りに思い、自然とその話をしたくなる一方で、悪いところは改善したくなるものです。特に地域に愛着を感じるほど、その感情は強まります。
地域に興味を持つことで、その地域の良い面と悪い面が明確になり、改善したいという動機づけが生まれます。そして、自分自身や周りの人々が問題を解決するための行動を起こし、地域への愛着がより深まるのだと思います。
自分が住む地域を良くしようと思う人が増えると、自然とその地域は住みやすく、サスティナブルな街になっていきます。
「地域を好きになる」というキーワードには、「興味や愛着から意欲に繋がる好循環」という想いを込めています。
リアルイベントでの交流を積極的に行なっていく
───今後の展望として、どのような活動を展開して行こうとお考えですか?
山口さん 今後の取り組みとしては、SDGsに関しては、まず「Yocco18と学ぶSDGs」の認知度アップを充実させたいと考えています。具体的には、ワークショップを積極的に行い、この取り組みを、他の地域にも応用できるようなきっかけを提供することも目指しています。
さらに、新型コロナウイルスの影響でリアルイベントの開催が難しくなっていましたが、今後はリアルイベントも積極的に復活させていきたいと考えています。
先ほど触れたシリーズイベントの「facelook」についてですが、フェイストゥフェイスでしか話せないようなことを共有しようというのが名前の由来です。オンラインでもそれなりにコミュニケーションは可能ですが、このイベントではやはりフェイストゥフェイスでの交流を重視したいと考えています。
「まちづくりエージェントSIDE BEACH CITY.」は小さな1歩からSDGsを実現していく
───最後に、SDGsへの想いや読者の皆さんへのメッセージをお願いします。
山口さん まず、私たちがSDGsに取り組む理由についてですが、2030年にSDGsの目標を達成したとして、その後どうなるのか、達成しなければ、また新しい目標が出てくるのではないか?と、様々な思い抱く人もいるでしょう。しかし、最終的に私たちが考えるべきことは、未来の地球やそこに住む人々のことです。
自分たちが今行っていることが未来を形作っていくということに気づいてもらいたい、それがSDGsに取り組む1番の理由になります。
私たちができるのは、大きな影響を与えるというよりも、むしろ小さな1歩から始めることです。例えば「資源を何十%節約しよう」などという大きな目標は国や大企業がやることです。小さな行動が積み重なって最終的には大きな変化をもたらすという考え方を大事にしていきたいです。そこに気づくことのきっかけ作りは、私たちが最も重視しているポイントです。
そして私たちの役割は、SDGsに関する知識を共有し皆さんにアクションを促すことです。
とても簡単なことであったとしても、それがSDGsにつながるんだというメッセージを伝え、啓発していくことが重要だと考えています。
私たちはこれからも、人びとが自分の行動がどのように社会や環境に影響を与えるかを理解し、それに基づいたアクションを促せるような活動をしていきたいです。
「まちづくりエージェントSIDE BEACH CITY.」はSDGsとともに地域を支援していく
横浜からSDGsに積極的に取り組んでいる「まちづくりエージェントSIDE BEACH CITY.」。地域や人を大切にし、さまざまな方法で支援を続ける姿勢に、共感を覚えた人も多いのではないでしょうか。
今後も展開される活動が気になった方は、ぜひ1度ホームページを覗いてみてはいかがでしょうか。オリジナルグッズも多数展開されていますので、そちらもぜひご覧になってみてください。
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