金沢工業大学のSDGsはポジティブ思考で学生と未来を考えること

金沢工業大学のSDGsはポジティブ思考で学生と未来を考えること

2023.11.01(最終更新日:2023.11.13)
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金沢工業大学は、ロボット工学や環境工学などさまざまな分野での学びを得られるだけではなく、SDGsへの取り組みでも高い評価を受けている大学です。
今回は「SDGs推進センター」所長の平本さんに、SDGsに取り組むこととなった経緯や具体的な取り組み内容、SDGs後の世界への想いや今後の展望をお聞きしました。

主体性を大切にした教育がSDGsにもつながっている

SDGsへの取り組みで有名な金沢工業大学ですが、どのような経緯でSDGsに取り組むことになったのでしょうか。ここでは、SDGs推進センターの役割や創設の経緯、金沢工業大学の教育方針についてお聞きします。

SDGs推進センターはハブの役割を果たしている部署

───本日はよろしくお願いします。まずは平本さんのご紹介と、SDGs推進センターがどのような役割を担っているのかを教えてください。

平本さん 金沢工業大学でSDGs推進センターの所長と経営情報学科の教授をしています、平本と申します。
金沢工業大学では全学部全学科でSDGsに取り組んでおり、SDGs推進センターは学内におけるハブの役割を果たしています。さまざまな学部や学科を横断し、連携を促すような取り組みを行うことが1つのミッションです。

また、いろいろな活動をしている地域の自治体や企業、市民の方たちのハブ組織という形でも活動しています。

平本さんの提案がきっかけでSDGsに取り組み始めた

───SDGs推進センターは、どのような経緯で創設されたのですか?

平本さん 金沢工業大学はSDGsが世界で合意された2015年以前から関連する取り組みに取り組んでいました。そして、SDGsという名称を用いた取り組みを始めたのは、私が当大学に着任した2016年からです。私は着任以前から日本政府や国連と一緒に、SDGsの前身であるMDGsに関した途上国の課題解決に取り組んでいました。

MDGsに取り組んでいた延長でSDGsにも取り組んだのですが、私個人の活動だけで終わってしまわないように、大学全体でSDGsに取り組むことを学長に提案したところ、その場で快諾していただきました。
そして学内ですでに取り組んでいたSDGsの状況をまとめた約2週間後に、全学の教員が集まる会議において、大学全体としてどのような取り組みを行うのか、これまで行われてきたそれぞれの取り組みがどうつながっているのかなどをお話させていただいたのです。

その後、これまで以上にSDGsに取り組むために、学部学科を超えての取り組みを生み出す役割を持ち、政府や国連、企業などの学外パートナーとの窓口となる組織の必要性を感じて、SDGs推進センターを作りました。

主体性を重んじる教育方針が高い評価に

───金沢工業大学の教育方針や、学内の雰囲気について教えてください。

平本さん 当大学は「自ら考え、自ら行動する技術者を育てる」という方針で教育を行っているため、主体的に問題を捉えて行動していく学生が多いです。また社会実装を重視し、大学の教室の中だけで学んだり、研究室の中で研究だけしたりして終わることのない、キャンパス内に閉じない取り組みを数多く行っています。

企業と一緒に製品を開発して世の中に出したり、自治体と一緒に市民の課題を解決したりといったことを実際に行うことで、得た経験が自分の糧となります。うまくいかなかった時でもそれを乗り越える努力は自分の力になりますし、うまくいく方法を見つけるための検討が新たな研究につながることもあるのです。

試行錯誤しながら取り組むことを継続して行っていますので、社会に出た時に企業から高い評価をされます。具体的には、さまざまな苦難を乗り越えることができる、折れない心を持っている若者が多く在籍しているというところで高く評価されています。

3つの領域での取り組みで国内外から高評価を獲得

主体性を重視した教育方針を掲げ、大学を挙げてSDGsに取り組んでいる金沢工業大学ですが、具体的にはどのような取り組みをしているのでしょうか。ここでは、金沢工業大学のSDGsへの取り組み内容や大切にしていること、SDGsに取り組むことによる変化についてお聞きします。

教育面が評価されジャパンSDGsアワード官房長官賞を受賞

───SDGsに関した、具体的な取り組みをお聞かせください。

平本さん SDGs推進センターでは「教育」「地域デザイン」「ビジネス」という3つの重点領域を設けています。まず教育に関しては、当大学は全学的に「教育付加価値日本一」を目指して取り組み、とても教育に力を入れている大学です。非常に面倒見が良い大学ということで、外部からも日本で1番だという評価を長年いただいています。
中でもSDGs関連の教育に力を入れているのですが、SDGsに関するグローバルな人材の育成をしている点が高く評価され、政府から第1回ジャパンSDGsアワード官房長官賞をいただきました。

また、大学に限らず、小中高を含め、日本全体の教育をSDGsの観点から良いものにしていくために、ゲームを使ったSDGs教材を開発して展開しています。国連や文部科学省などと連携していて、全国の都道府県からはもちろん世界でも非常に高く評価され、世界67カ国で展開し、12万人以上の方に体験していただいています。

ゲームを使った教材でSDGs教育に貢献している

───ゲームを使ったSDGs教材というのは面白いですね。詳しく教えていただけますか?

平本さん ゲームを取り入れた教材を作った背景としては、2020年から小中学校や高校で学習指導要領が新しくなり、SDGsに関する教育の導入が決まっていたことがあります。しかし先生たちにとっては、SDGsについてどのように教えていけば良いのかが分からないという問題がありました。ですので、専門的な内容を出来る限り簡単に学べる教材を提供する必要があると考えたのです。

教材には、意識を変えるだけではなく、行動変容を促すような仕掛けを取り入れなければいけないと考えました。その時にポイントになってくるのが、「本当にやりたいと思えるかどうか」です。

SDGsは一見すると難しく感じますので、興味関心を持ってもらうためには勉強だと思って取り組ませてはいけません。勉強だと思うと、とても嫌なものに感じてしまいます。そうではなく、自発的にやりたいと思ってもらえることが大切です。そこで当大学の学生たちに、「何に対してなら多くの時間を使いたいと思うか」という質問をしました。

さまざまな意見が出た中で、ゲームにならいくらでも時間を使えるという意見が複数挙がったため、ゲームでSDGsの学習に取り組める仕掛けを開発することになりました。教材は、誰でも本学のSDGs推進センターのホームページから無償でダウンロードして自由に使える形で提供しています。

▼金沢工業大学SDGs推進センターウェブサイト「SDGs ゲーミフィケーション教材」
https://www.kanazawa-it.ac.jp/sdgs/education/application/

───たしかに、やらされている印象を持つと続かないことが多いと思います。それにしても無償提供はすごいですね。

平本さん 無償で提供してはいますが、使うためには多少の手間が必要です。ホームページからダウンロードして、プリントアウトした紙を切ってカードを作らなければいけないので、1つ作るのに2時間程度かかってしまいます。無料であれば時間がかかっても問題ないという方も多くいらっしゃいますが、お金を払うから完成版が欲しいという方も大勢いらっしゃいました。

そこでクラウドファンディングを実施して、その費用を元に製品化しました。販売して得た利益については、学生たちが全国の小中学校に伺ってゲームを使った授業するときなどに、移動費などの費用に使わせてもらっていました。

その後、いろいろなところからお声がかかるようになりました。例えば、企業から研修に使いたいという依頼や、自治体からも自分たちの地域が舞台のゲームを作ってほしいという依頼が増えました。
そこで当時ゲームを作っていた学生の中心メンバーが起業して、今でもこのゲームを扱った事業を継続しています。

自分たちがやりたいことというのを中心に、いかに社会を変えながら自分たちも利益が出せる仕事に結びつけていくのかを実践をしてくれているので、そのような学生が今後も輩出されることを期待しています。

地域課題の解決がSDGsにも寄与

───地域デザインについては、どのような取り組みをされていますか?

平本さん 地域デザインに関しては、地域に根ざした大学ということで、自治体と一緒に活動させていただいています。
当大学ではプロジェクトデザインという教育の核となる科目があります。問題解決型の取り組みやプロジェクト型の授業として25年以上前から提供されてきました。当大学の学生全員が必修の授業なのですが、例えば2年生になると年度の始めに、近隣の自治体からその年の地域課題をテーマとしていただき、どのように解決すれば良いのかを考えます。
そして半年間かけて本当に有効な手法なのかを検証し、有効なものに関してはテーマをいただいた自治体側で評価していただきます。高い評価を受けた提案は、さらに自治体側でブラッシュアップしてもらい、議会で予算化され次の年の地域事業として取り組むという流れです。
この取り組みは企業や市民団体にもご協力いただき、毎年継続して行っています。

───地域の役に立つ素晴らしい取り組みですね。学生にとっても良い経験になりそうです。

平本さん 当初は地域の課題解決という観点だけでしたが、現在はSDGsの観点からも取り組んでいるところです。
地域が2030年にどういう未来を目指すのかという検討からご一緒させていただき、それに基づいて地域の課題を設定し、比較や検証を行うことで発展していっています。若者たち自らが活動している地域を変えていくような取り組みになっています。

地域住民と心を通わせ新たな取り組みに

───地域課題をテーマとしていただくとのことですが、どのような形でいただくのですか?

平本さん 自治体からは毎年様々な部署に協力してもらいテーマを提示してもらっています。他方で、どのように本質的なテーマを見つけるのかといったことは、本当はとても難しいことなのです。そのため、私たちが一緒に取り組むべきテーマを見つけること自体も、自治体と一緒に長年検討し続けています。なぜならば、具体的に顕在化している問題というものはあまり多くないからです。

例えば、私たちは山間部で少子高齢化をテーマに地域と一緒に活動していますが、そこでは世代の階段が崩壊しています。私たちが取り組んでいた地域には、60歳以上の高齢の人たちは多くいらっしゃいますし、小学生までの子どもたちや小学生の子どもを持っている30歳前後の親の世代もいます。しかし、中学校以上になると、そもそも近隣地域に学校が少ない場合もあるため、子どもの中学校や高校の進学をきっかけに地域からいなくなってしまうことも多いです。

そうすると、中高生以上の若者とその親の世代がいなくなり、世代の階段の一部が歯抜け状態になってしまいます。

───特定の世代がいなくなってしまうと、問題も多く発生しそうですね。

平本さん これで何が起こるかというと、「未来のことについて考えなくても良い」という雰囲気がまん延してしまいます。高齢の人たちの中には、「10年や20年は地域がもつだろうから、自分たちが死ぬまでは十分暮らしていける」と考えてしまう人が現れ始めます。

さらに、「逆に何かを変えようとすると現状が崩壊してしまうので、余計なことはしてほしくない」という雰囲気が広がっていきます。日本にはこういった地域はとても多くなってきています。ですので、最初に未来について一緒に考えていくことの必要性に合意することが、とても大事なプロセスになります。

学生が授業の中でこうした地域に通い、授業外でも一緒にお祭りに参加したり、地域の人たちと一緒に町を歩いて巡ったりする中で対話を重ねていきます。そうすると、地域の人たちからなかなか話せない想いを聞けることがあります。

地域の良いところを学生たちが伝えたり、改善した方が良い点を議論したりすることでとても仲良くなり、「この子たちがこう言ってくれるなら、自分たちの地域ももっと変わっていった方が良いのではないか。そのために何か自分にもできることはあるのではないか」と思っていただけるのです。
いきなり課題を見つけに行くのではなく、まず人と人との信頼関係を構築する。
その上で、何を目指すか、自分たちが一緒に考えるべきことは何なのかという話を始めます。目指すことを本音で話し合えることで、ようやく取り組むべきテーマや地域課題が明らかになるのです。

───地域の未来に対する意識を持ってもらうことが大切なのですね。具体的な地域課題にはどのようなものがありますか?

平本さん 例えば、地域の高齢者宅を訪問しての安否確認は大切なことですが、ただ訪問するのではなく、みんなが楽しめる憩いの場としてのカフェを地域に作ろうという案が出ました。

カフェで出すメニューには、その地域が獣害被害の多い場所だったので、その原因になっている作物を使うことにしました。そこの地域では柿が名物なのですが、少子高齢化の影響で収穫できなくなってしまい、柿を目当てにクマなどが山から下りてきていたのです。
そこで、柿を収穫する仕組みを構築し、柿を原材料とした新しいスイーツを作ってカフェのメニューに加えることになりました。他にも、ドローンを使った取り組みや、ウェブサイトやアプリを使ったIT関連の取り組みも行っています。

民間企業出身者が多い強みをビジネス面の取り組みに活かしている

───ビジネスに関する取り組みには、どのようなものがありますか?

平本さん 当大学は教員の半数以上が民間企業出身なので、ビジネスに関しては企業との連携が非常に取りやすいですし、企業がどのような思いで共同研究をしたいのかもわかります。そういった利点を活かして、新しい課題解決方法や、技術をどう活用すると課題が解決されるのかという観点から、さまざまな新規事業やビジネスモデル作りを行っています。

また、教育、地域デザイン、ビジネスそれぞれの領域に別々に取り組んでいても、あるフェーズになると取り組みは一体化していきます。そういった領域の横断にも力を入れています。

企業連携で重視しているのは学生を尊重してくれること

───実際、どのような企業と連携して取り組みを行っているのですか?

平本さん 金沢工業大学は、未来を作っていく若者の存在や活躍を、本気で尊重してくれる企業とのみ提携したいと考えています。
全国の企業からたくさんのご依頼をいただいているのですが、学生のことをとても大事に思い、パートナーとして一緒に未来を作っていこうと思ってくださる企業もある一方で、上から目線で接してこられる企業も残念ながらあります。ですので、私たちは学生を尊重してくれる企業以外とはお付き合いしないという方針を貫いています。

学生と一緒にどのような社会や世界にしていくかを考えていくことは、企業側にもとてもメリットがある話です。自分たちにはない考え方や価値観を理解することができますし、その中で自分たちの技術は今後どのように使われていくべきなのか、知るきっかけにもなります。
使われていくべき方向が分かった時には、さらにどのような技術を開発すれば良いのか、もしくはどのようなビジネスモデルを作っていけば良いのかを知ったり、実際に学生と一緒に結果を検証したりもできます。

───学生を尊重してもらえない企業と連携しても、良い結果は得られなさそうですね。企業と連携して取り組んだ例を教えてください。

平本さん 自動車の処分の際、座席はそのまま廃棄されてしまうことが多いです。しかし、実は座席は長時間座っても疲れないよう人間工学的に研究されており、室内用の高級な椅子よりも開発費がかかっています。座席を取り外して足をつけると、とても高級で快適な椅子を作ることができます。

実際に自動車リサイクルの会社が小規模に行っていたのですが、作れる人が限られていたので、マニュアル化して量産できるようにしました。販売に関しても、スマホでも購入できる販売サイト作りなどのIT関連の協力をして、若者にも購入してもらいやすい仕組みを構築し、実際に売上向上に貢献しました。

SDGsの取り組みが卒業後の進路に大きな影響を与えている

───SDGsに取り組むことで、学生たちのどのような成長を感じていらっしゃいますか?

平本さん 例えば就職活動で自分と合った会社と出会えるようになったということを感じています。SDGsの活動の根幹には、自分が自分らしく生きるためにはどのように社会を変えていけば良いのかということがありますので、そういった観点から物事をいろいろと考えるようになります。そして、自分がやりたいことのビジョンが明確になればなるほど、自分と相性が良い企業が選びやすくなるのです。

また、企業の面接においても自分の考えが明確に提示できるようになりますし、多種多様な人たちと活動していますので、他人とうまく連携ができるところを強みとして強調できるようになります。
結果として自分が納得する会社に行きやすくなりますし、社会的に高く評価されている企業に進む学生が多いです。

また、自分の中での問題意識や探求したいテーマが見つかり、大学院に進学する学生も増えました。OBやOGとも継続的につながりがありますので、卒業した後でも学生と連携してSDGsに関した取り組みを行うことも増えました。

最近では国際会議への出席や海外の国連事務所との連携など、取り組みがさらに発展していっています。海外志向が強い学生の実力を培う機会や、実際に将来海外で仕事をしたいと思っている学生のきっかけにもなっています。

SDGs後の世界のためにはポジティブ思考でどんどん関わることが必要

教育・地域デザイン・ビジネスの3つの観点からSDGsに取り組んでいる金沢工業大学ですが、今後についてはどのように考えているのでしょうか。ここでは、今後の展望やSDGs後の世界についてお聞きしました。

SDGsに取り組むためにはポジティブな思考が大切になっていく

───SDGsに関するさまざまな取り組みをされていますが、今後のSDGsや環境への取り組みにはどのようなことが大切になってくると考えていらっしゃいますか?

平本さん 私たちが提供しているゲーム教材は世界から評価されていますが、それはSDGsの折り返し地点である2023年現在、このままでは目標の達成が不可能であるという見通しがされていることにもよるものです。
このような見通しがされている1つの要因として、ヨーロッパでは特に深刻になっている「Climate Anxiety(気候不安)」という現象があります。

SDGsや気候危機などの課題を解決するためにいろいろな警告がされてきました。このようなネガティブな情報というのは、ポジティブな情報の5倍のインパクトがあるという研究結果があります。
ネガティブな情報を出しすぎることで不安や絶望に陥ってしまうという悪影響が現在とても広がっていて、若者の中で絶望に陥っている人数が増えてしまっているのです。

1番多い国では8割もの若者が不安に陥っている状態で、不安により何もすることができないという状況を生み出してしまっています。例えば極端な例ですが、自分が呼吸をすることすらも地球にとって良くないので何も活動できないと思ってしまい、SDGsに関するアクションに取り組めないという人さえいるのです。このような原因でSDGsの活動が広がらず、現在の危機的な状況につながってしまっています。

───SDGsというのはネガティブな現状をポジティブなものに変えていく取り組みとも言えますから、どうしてもネガティブな情報は耳にしてしまいますよね。

平本さん こうした状況を解決するために「Hedonistic Sustainability」という概念が生まれました。Hedonisticというのは「快楽的な」という意味です。つまり快楽的で楽しいと言われることと、真面目に取り込まないと課題解決できないということをいかに結びつけるのかということです。これができると、ポジティブな気分でSDGsに取り組むことができるようになります。

人は心理学的に、ポジティブな思考になると高い目標を掲げられるようになります。またパートナーシップという観点でも、誰かを助けたり助けを受け入れたりということができるようにもなるのです。
ネガティブな時に高い目標を設定しようと言われてもする気になりませんし、誰かを助けようと思うことも難しいと思います。また、ネガティブな時に誰かが親切にしてくれたとしても、おせっかいとしか感じないこともあるでしょう。
ネガティブな思考を持っていると連携すらもうまくいきませんが、ポジティブな気持ちで捉えることでうまくいくようになってくるのです。

SDGsの後半戦は、いかにいろいろな取り組みを連携させ、その効果を広げていくのかが大事になってきます。ポジティブなメッセージをいかに強めていくかといった中で、私たちのゲーム教材が非常に取り組みとして優秀だと海外で評価されており、途上国にまで広げてほしいというリクエストも来ています。
ですから現在、その取り組みを進めようとしているところです。まずはアジアから進めますが、うまく広げることができたら次はアフリカにも広げていきたいと考えています。

SDGs終了後は多くの日本人の関わりが不可欠

───SDGsに関しての今後の展望や、行っていきたい取り組みをお聞かせください。

平本さん SDGsは2030年で終わりますので、例えば私たちが授業を行った小学生の子たちが大学生になる前にSDGsが終わってしまいます。SDGsだけを勉強することにはあまり意味がなく、自分たちが社会に出たときのことを考えながら勉強していくことが大事になります。
SDGsの先のことを指して「Beyond SDGs」と言いますが、SDGsを超えたところでの活動をどのように生み出していくのか、そのための力をどう身につけていくのかをイメージしながら取り組むことが大切です。

そこでポイントになってくるのが、2031年以降どうするのか、「ポストSDGs」と呼ばれるSDGs後の新しい目標をどう作っていくのかということです。SDGs自体は世界の1000万人以上の人が関わって作られたゴールですので、インターネット上で誰でも意見が言える状況にありましたが、残念ながら日本人はほとんど関わっていません。現状、日本人で関わっているのは専門家や一部の外交関連の政治家を中心とした人たちくらいです。
門戸は開かれていたのに誰も参加しなかったので、SDGsが海外から来た概念のように聞こえ、日本人の考えと合わないと思う人も出てきてしまった。これは目標を作る段階から参加してこなかったことが大きな原因です。

大阪・関西万博が開かれる2025年以降、世界でSDGsの次のゴールについての検討が本格的に始まりますので、そこに日本人がいかに参加できるかというところが大事になってきます。私たちが今までの活動の中でネットワークを築いてきた教育関連、地域関連、ビジネス関連の人たちがいかに参加をして、今までの経験を踏まえた自分たちのメッセージを目標に入れていけるかどうかが大切になるのです。
金沢工業大学としては機会の創出やさまざまなステップを、ゲームやテクノロジーを駆使して推し進めていければと思っています。

SDGsをポジティブに捉えて活動に参加して欲しい

───最後に、読者の皆さんへのメッセージをお願いします。

平本さん SDGsという課題は、難しく捉えずポジティブに捉えて、自分たち1人ひとりがいかに楽しく行動していけるかがとても大切です。楽しい取り組みだと認識してもらうことが非常に重要だと思っています。

今後はポストSDGsに切り替わっていきますので、課題に対する取り組みは今後もどんどん増えていくと思います。それは2031年以降の私たちの活動にも大きく関与する問題なので、まだ先の話だと思わずにどんどん参加していっていただきたいです。
そうすることによって後々、10年後の自分が納得のいく活動を、世界に後押しされながら進めていくことできるようになります。ぜひそういった活動に参加していっていただければと思います。

───本日は貴重なお話をありがとうございました。

金沢工業大学は学生や地域と共にポジティブな未来を創っていく

SDGsに関するさまざまな取り組みが高い評価を受けている金沢工業大学ですが、実際にお話を聞くと、地域や企業にも貢献する取り組みは独創的で驚きがありました。主体性やポジティブな思考を大切に学生を育て、2030年以降の世界も視野に入れておられる取り組みにこれからも注目していきたいです。

金沢工業大学の取り組みや教育方針に興味がある方は、ぜひ1度ホームページを覗いてみてください。

▼SDGs推進センターのホームページはこちら
SDGs推進センター – 金沢工業大学は持続可能な開発目標を支援しています

▼金沢工業大学のホームページはこちら
KIT 金沢工業大学

この記事の執筆者
EARTH NOTE編集部
SDGs情報メディア
「SDGsの取り組みを共有し、循環させる」がコンセプトのWEBメディア。SDGsの基礎知識や最新情報、達成に取り組む企業・自治体・学校へのインタビューをお伝えし、私たちにできることを紹介します。
身近なアイデアを循環させて、地球の未来をつなげていきましょう。皆さんと一緒に取り組んでいけたら幸いです。
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