SDGsの目標3とは?人々の健康と福祉を実現するために

SDGsの目標3とは?人々の健康と福祉を実現するために

2023.05.12(最終更新日:2024.10.25)
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国連が掲げる持続可能な開発目標、SDGsの17つの中で、SDGs目標3は「誰もが健康で福祉にあふれた生活を送ることができるようにする」というものです。人々の健康と福祉を実現するために、個人や社会、企業がどのような役割を果たせるのか問われています。

しかし、SDGs目標3のターゲットや具体的な目標などは多岐にわたるため、なかなか理解しきれない部分もあると思います。

そこで本記事では、SDGs目標3とはどういったものかや、ターゲット、そして私たちはどういったことができるのかについて詳しく解説します。

目次

SDGs目標3は「すべての年齢層の健康と福祉の確保」を目指している

SDGsの目標3は、すべての年齢層の健康と福祉の確保を目指しています。具体的には、感染症対策、非感染症対策、母子保健、健康増進などが含まれます。これらの取り組みには、世界保健機関(WHO)などの国際機関が取り組んでおり、社会保障制度の整備や環境汚染の影響による健康被害の低下なども必要です。

21世紀に入ってからは、非感染症対策や健康増進に関する取り組みが進められるようになっています。開発途上国では、感染症や栄養不良などが問題となっており、医療インフラの整備や、栄養バランスの良い食事の普及などが求められています。また、先進国でも生活習慣病の増加が問題となっており、健康増進に向けた取り組みが必要です。廃棄物の適切な処理や環境保護の強化、再生可能エネルギーの利用推進なども、SDGsの目標3を達成するために必要な取り組みです。

目標3の概要とターゲット

SDGs目標3には、ターゲットがあり、国際的な連携のもと、健康に関する問題について取り組んでいくことが求められています。

ターゲットの概要については以下の表で表しています。

ターゲット番号 ターゲット ターゲットの概要
3.1 感染症による死亡率の低下 感染症による死亡率を2030年までに3分の1に削減する
3.2 母子保健の改善 母子死亡率を2030年までに世界平均で1000出生当たり70以下に削減する
3.3 HIV/AIDS、結核、マラリアなどの
感染症の終息
HIV/AIDS、結核、マラリア、ネグレクトトロピカル病などの感染症を
2030年までに終息する
3.4 非感染症による死亡率の低下 非感染性疾患による死亡率を2030年までに世界平均で1000人当たり
半分以下に削減する
3.5 薬物乱用やアルコール依存症などの
健康問題の改善
薬物乱用やアルコール依存症などの健康問題を予防および治療するための
支援を拡大する
3.6 道路交通事故による死亡率の低下 道路交通事故による死亡率を2030年までに半減する
3.7 安全な水と衛生の確保 安全な飲料水と衛生的なトイレを全ての人々に提供する
3.8 社会保障制度の整備 すべての人々に社会保障の保護を提供する
3.9 環境汚染による死亡率の低下 環境汚染による死亡率を2030年までに大幅に削減する
3.a 全世界の保健施設での医療サービス
の改善
すべての国々において、保健施設の設置・運営を強化する
3.b 薬剤とワクチンの供給量の増加 薬剤やワクチンなどの医薬品の供給量を増やす
3.c 保健人材の育成 保健人材の育成を強化する

出典:グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン

3.1: 感染症による死亡率を削減するためには、ワクチン接種や衛生状態の改善、抗生物質の適切な使用、国際的な感染症の監視システムの整備などが必要です。

3.2: 母子死亡率を削減するためには、妊娠期間中の健康管理や出産時の医療、子どもの栄養管理などが必要です。

3.3: HIV/AIDS、結核、マラリア、ネグレクトトロピカル病などの感染症を終息するには、治療法の開発や予防策の拡大、医療従事者の教育などが必要です。

3.4: 非感染性疾患による死亡率を削減するためには、健康的な生活習慣の習慣化や予防策の普及、適切な医療サービスの提供などが必要です。

3.5: 薬物乱用やアルコール依存症などの健康問題を改善するためには、予防教育や治療の充実、社会的な支援の拡大などが必要です。

3.6: 道路交通事故による死亡率を削減するためには、交通ルールの徹底や安全運転の推進、交通インフラの整備などが必要です。

3.7: 安全な水と衛生を全ての人々に提供するためには、水質の改善や衛生環境の整備、教育の普及などが必要です。

3.8: 社会保障制度の整備を行うためには、貧困層や高齢者などの社会的弱者の保護や、医療費の負担軽減などが必要です。

3.9: 環境汚染による死亡率を削減するためには、環境保護の強化や再生可能エネルギーの利用推進、廃棄物の適切な処理などが必要です。

3.a: 保健施設の設置・運営を強化するためには、医療機関の設置や保健師・看護師の確保、医療技術の向上などが必要です。

3.b: 医薬品の供給量を増やすためには、医薬品の生産体制の改善や、輸送ルートの整備、医療機関への供給体制の整備などが必要です。

3.c: 保健人材の育成を強化するためには、教育制度の改善や、保健師や看護師の資格取得の支援、海外からの保健人材の受け入れなどが必要です。

SDGs目標3の歴史的背景はWHOの感染症対策や母子保健に関する取り組み

目標3の歴史的背景には、第二次世界大戦後に感染症の蔓延が深刻な問題となり、それに対処するためにWHOが設立されたことが挙げられます。WHOは、感染症対策に取り組むために、世界中で疫学調査を行い、病原菌の特定やワクチンの開発などを行ってきました。また、WHOは、母子保健に関しても、妊娠中の栄養管理や出産時の医療サポートなどを行っており、母子死亡率の低下に貢献しています。

2000年には、WHOは、ミレニアム開発目標(MDGs)を掲げ、感染症対策や母子保健に加え、貧困削減や教育の普及など、総合的な開発目標を設定しました。これらの取り組みにより、感染症による死亡率は大幅に低下し、母子死亡率も大幅に改善されました。

そして、2015年には、MDGsの後継として、より包括的な開発目標である持続可能な開発目標(SDGs)が採択されました。SDGsの目標3は、これまでの取り組みを継承しながら、すべての年齢層の健康と福祉の確保を目指しています。21世紀に入ってからは、高齢化社会における健康問題の増加や、ライフスタイルの変化に伴う健康リスクの増大に対応するため、非感染症対策や健康増進に関する取り組みが進められるようになりました。先進国においても、生活習慣病の増加が問題となっており、健康増進に向けた取り組みが必要とされています。

参考サイト:SDGsジャーナル

「すべての人々が健康で幸せな生活を送ることができる社会」の実現がSDGs目標3の目的

目標3の意義は、すべての人々が健康で幸せな生活を送ることができる社会を実現することにあります。目標3の達成によって、感染症や非感染症による死亡率の低下、健康増進による生産性の向上などが期待されます。

一方で、現在、開発途上国では、感染症や栄養不良などが問題となっており、目標3の達成に向けた取り組みが必要となっています。とくにエイズ、結核、マラリアは世界三大感染症と呼ばれており、感染能力の高さから見ても1国だけではなく、世界全体での協力が不可欠です。

また、先進国でも、高血圧や糖尿病など、生活習慣病の増加が問題となっており、健康増進に向けた取り組みが必要となっています。これらの取り組みを通じて、すべての人々が健康で幸せな生活を送ることができる社会の実現に向けた一歩を踏み出せます。

出典:国連開発センター「目標3 すべての人に健康な福祉を」,2018

SDGs目標3が世界へ与える影響

SDGs目標3は、すべての年齢層の健康と福祉の確保を目指すものですが、この目標を達成することでどのような影響を世界に与えるのでしょうか。

実際に世界に与える影響について見ていきましょう。

現在の世界の健康状況は健康格差が顕著

現在の世界の健康状況は、健康格差が顕著な状態にあります。医療におけるあらゆる格差が存在し、それは国や地域によって異なります。たとえば、経済的な理由から医療サービスを受けられない人が途上国では多く、先進国でも収入格差によって医療格差が生じています。

2017年に世界銀行とWHOが発表した報告書によると、世界人口の半分(35億人)の人たちが基礎的な保健サービスを受けられない状態にあると発表しています。

日本においても、地方と都市部や県庁所在地とそれ以外の地域の間で医療格差が存在しています。医療格差は健康に関わる問題であり、不公平を是正するための取り組みが必要です。

以下は、健康格差に関する問題点です。

  1. 経済的な理由から医療サービスを受けられない人が多い
  2. 先進国でも収入格差によって医療格差が生じている
  3. 世界人口の半分(35億人)の人たちが基礎的な保健サービスを受けられない状態にある
  4. 日本でも、地方と都市部や県庁所在地とそれ以外の地域の間で医療格差が存在している

参考:世界銀行プレスリリース

健康増進によって経済成長が期待できる

SDGs目標3の達成によって、感染症や非感染症による死亡率の低下、健康増進による生産性の向上などが期待されます。これにより、個人レベルだけでなく、地域レベルでも大きな影響を与えることができます。以下は、健康増進によって経済成長が期待できる理由です。

  1. 健康的な食生活を推進することで、地域の農業や食品産業を支援できる。
  2. 健康的な生活習慣を維持することで、ストレスレベルの低下や免疫力の向上が期待できる。これらが、社会全体の健康向上につながり、経済成長にも寄与する。
  3. 健康な労働力が増加することで、企業の生産性が向上し、経済成長につながる。
  4. 健康な人々は医療費が低く、社会全体の医療費の負担が軽減されるため、社会全体の福祉向上にもつながる。

以上のように、SDGs目標3の達成によって、健康の向上は個人や地域だけでなく、経済成長や社会全体の福祉向上にもつながることが期待されます。

WHOによるSDGs目標3に関する具体的な取り組み

SDGs目標3に関する具体的な取り組みとしては、WHOによる感染症対策や母子保健に関する取り組み、各国における健康保険制度の整備などが挙げられます。

以下が、WHOによる母子保健などに関する取り組みです。

超音波エコー装置で、開発途上国の妊産婦と新生児を救う取り組み

レキオ・パワー・テクノロジーは、開発途上国において、妊産婦や新生児の死亡率を低下させるための取り組みを推進しています。具体的には、誰でもエコー検診を受けられる装置をスーダンに提供し、2015年11月から2018年5月にかけて、JICAの企業連携プログラムによって、45人の助産師によって5,572人の妊産婦が診断を受けました。その結果、1,408件の異常が発見され、上級病院への転送が促されました。このような取り組みによって、必要な診断や処置を行うことが、妊産婦や新生児の命を守ることに繋がっています。

さらに、経験の浅い医師が撮影した動画を用いて、遠隔地の経験豊富な医師による指導や、多数の疾患例をデータベースに活用することによって、僻地の医師のスキルアップを支援することも可能です。先進国の医療技術やIT、インターネットなどを組み合わせることで、物理的な距離や費用を気にせずに医療を提供することができる可能性があります。このような取り組みが、開発途上国の医療体制を改善し、目標3で掲げられている「すべての人に健康と福祉を」を実現するために必要不可欠です。

▼妊産婦の問題について、詳しくはこちら
妊産婦の死亡率や医療格差などの現状について

手洗いの啓発活動や衛生教育を通じた健康促進で、医療機関への負担削減

「医療機関への負担削減」という観点から考えるだけでなく、世界的に見た場合には病気予防の取り組みを日常生活に取り入れることも必要になってきます。病気になる人数を減らせば、死亡リスクを下げるだけでなく、医療機関の負担を減らすことができます。

ユニリーバは、「ユニリーバ・サステナブル・リビング・プラン」(USLP)の目標の一つとして、「2020年までに10億人以上のすこやかな暮らしを支援する」という目標を掲げています。この活動の中で、ライフボーイ(石鹸)やシグナル/ペプソデント(歯磨き)などの製品を通じて、正しい手洗いや歯磨きの習慣を広めることで、病気予防を促進しています。

特に、開発途上国では公衆衛生に関する知識が不足しており、不衛生なトイレが伝染病の原因となっていることが多いため、ドメスト(洗剤クリーナー)は衛生教育やパートナーシッププログラムを通じて、清潔なトイレの普及に取り組んでいます。このような活動を通じて、病気にかかる人数を減らすことができるため、脆弱な医療体制にかかる負担も軽減できます。

これらの取り組みは、SDGs目標3である「すべての年齢層の健康と福祉を確保し、持続可能な生活を促進する」を達成する上で非常に重要です。また、COVID-19の感染拡大においても、基本的な公衆衛生が有効な手段であることが示されており、健康促進の啓発活動や衛生教育は今後ますます重要になっていくことでしょう。

▼伝染病について、詳しくはこちら
伝染病とは?感染症との違いや原因・歴史についても解説

「蚊帳」がマラリアに苦しむ人々の命を救う

住友化学株式会社は、マラリアに苦しむ人々の命を救うために、就寝中に蚊に刺されることを防ぐポリエチレン製の蚊帳「オリセットⓇネット」を製品化しました。この蚊帳には、ピレスロイドと呼ばれる防虫剤が練り込まれており、徐々に表面に染み出すことでマラリアを嫌がる効果があります。2001年には世界保健機関(WHO)から初めて長期残効型蚊帳として認められ、現在では国連児童基金(UNICEF)を含む国際機関を通じて80以上の国々に供給されています。

日本では蚊帳を使用することはあまりなくなりましたが、多くの国ではマラリアによる死亡者が依然として存在します。蚊に刺されることは日本ではかゆいだけですが、一部の国では死を招く恐れがあります。蚊帳は地味な製品のように思えますが、その効果は絶大で、多くの人々の命を救ってきました。

病気になる前に予防することはできます。開発途上国の環境改善に貢献するために、世界中の知恵を集めることが必要です。課題はお金がかかることもありますが、可能な限りの工夫をして、多くの人々の命を救うことが求められるでしょう。

参考:ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)に焦点を当てる:グローバル・モニタリング報告書
参考:2040年までのマラリア撲滅に向けて ~世界農薬大手企業5社で共同声明を発表~
参考:JICA広報誌mundi2019年2月号 超音波エコー装置が保健サービスを変える スーダン

SDGs目標3に取り組む団体や企業

目標3に取り組んでいる団体や企業としては、日本赤十字社や日本ユニセフ協会などが挙げられます。これらの団体や企業は、健康問題に対して取り組むことで、社会全体の健康増進に貢献しています。企業としての健康管理制度の整備や、社員の健康管理に対する支援などは、社会において大きな影響力を持つことができます。また、健康に関する情報の提供や、啓発活動なども重要な役割を果たしています。

日本赤十字社

日本赤十字社では「緊急展開型病院(ERU)の整備」を行っています。このプロジェクトでは、日赤病院の医師や看護師などが特別な訓練を受け、緊急展開できる病院資機材を海外に送り、被災者や難民・避難民等の命と健康を守ることが目的です。また「産休サンキュープロジェクト」も行っており、このプロジェクトは、寄付を通じて開発途上国の子どもたちや母親たちを支援し、彼らを健やかに育てるための取り組みです。また、同時に日本での産休・育休の推進も目指しています。以上のプロジェクト以外にも、日本赤十字社は目標3を達成するべくさまざまなプロジェクトを行っています。

参考:日本赤十字社

日本ユニセフ協会

50年以上前に始まったユニセフの予防接種事業は、世界中で天然痘が撲滅され、ポリオも撲滅に向けた最終段階に入っています。また、はしかで亡くなる人数はこの世紀に入ってから80%以上減少し、乳幼児の最大の死亡原因である肺炎を予防するワクチンも新たに開発されました。現在、予防接種によって200万人から300万人の命が救われていると推定されています。

予防接種は、子どもたちの命を守るための多様な活動を実施する絶好の機会でもあります。接種後には、免疫力を高めるビタミンAの投与や、マラリア予防用の蚊帳の配布、健康診断や栄養状態の検査も行われます。

ワクチンを子どもたちの元へ確実に届けるためには、コールドチェーンと呼ばれる保冷システムが欠かせません。ワクチンは熱に弱く、一定の温度を超えると無効になってしまうため、都市部の病院から保健センターまで冷蔵庫ごとに輸送され、保冷剤を交換しながら運搬用の箱に移されます。このような支援活動を可能にしているのは、ユニセフが半世紀以上にわたって築いてきた保健拠点や保健員のネットワーク、そして地域の人々の強い意志です。

参考:日本ユニセフ協会

株式会社ヤクルト

株式会社ヤクルトは、創業時の精神である「世界の人々の健康を守りたい」という情熱・発想から、SDGs17目標の「3 すべての人に健康と福祉を」に貢献していることを掲げています。ヤクルトは、乳酸菌飲料の製造・販売を通じて、健康に配慮した商品開発や、健康増進に関する情報提供などを行っています。
2030年までに達成すべき目標であるSDGsは、あらゆる貧困をなくすことを最も重要な課題として、地球上の「誰一人取り残さない」ことを誓っています。ヤクルトは、創業時からの考え方やコーポレートスローガン「人も地球も健康に」がSDGsの目指すところと合致しており、今後も「人と地球の共生社会」のもと、人と地球がともに暮らせる社会をつくることを追求していきます。

参考:株式会社ヤクルト

富士通株式会社

富士通は、SDGsの達成に貢献するために、グローバルレスポンシブルビジネス(GRB)の取り組みとともに、新事業ブランド「Fujitsu Uvance」を立ち上げ、ビジネスを通じた社会課題解決を目指しています。その一環として、東京大学医学部附属病院と共同でAI技術を活用した心疾患の早期検出に取り組んでおり、心電図のデータから心臓の動きの異常を推定する独自のAI技術を開発しました。
この技術を用いることで、SDGsの「3 すべての人に健康と福祉を」に貢献し、より多くの心疾患を早期に発見することができると期待されています。
今後も様々な疾患を検出するAIの研究開発を推進し、医療現場の課題解決に貢献し、生活者を取り巻く社会に安心をもたらし、人々のウェルビーイングな暮らしのサポートを目指しています。

参考:富士通株式会社

▼ウェルビーイングについて、詳しくはこちら
ウェルビーイングとは?SDGsとの関係や企業の取り組み事例も解説

株式会社コーセー

株式会社コーセーは化粧品メーカーですが、健康に配慮した商品開発や、健康情報の提供などを通じて、社会に貢献しています。複数の企業や団体が、誰もが健康的で幸せな生活を送れるよう、様々な取り組みを行っています。
具体的には、QOL(生活の質)の向上や労働環境の改善などの社会的課題に取り組むこと、技術開発やスポーツ振興による健康啓発、従業員の健康向上などです。
また、次世代への健康教育や紫外線防御・保湿などの啓発活動も行われています。これらの取り組みは、2030年までに達成すべき目標であるSDGsの「3 すべての人に健康と福祉を」に貢献することを目的としています。

参考:株式会社コーセー

これからの課題と課題解決のための取り組み

開発途上国における感染症や栄養不良、先進国における生活習慣病の増加などの課題を解決するために、医療インフラの整備や栄養バランスの良い食事の普及、非感染症対策や健康増進に関する取り組みの拡充、社会保障制度の整備や環境保護の強化、再生可能エネルギーの利用推進、廃棄物の適切な処理などが必要です。

以下で、各分野における課題を挙げました。

医療技術の向上や医療インフラの整備が課題

医療・保健分野の課題として、先進国においては感染症や非感染症の対策や医療技術の向上が挙げられます。一方、途上国では、医療インフラの整備や医師不足が深刻な問題となっています。とくに、サハラ以南のアフリカ地域では、肺炎、下痢、マラリアなどで治療が受けられない子供が2人に1人います。

これらの問題を解決するためには、医療インフラの整備や医師の教育支援などが必要です。日本では、日本ユニセフ協会などの国際協力を通じて、医療従事者の派遣や医療機器の提供などが行われています。

参考サイト: 日本ユニセフ協会

生活習慣の改善などが必要

栄養・疾病予防分野の課題としては、栄養バランスの改善や、喫煙や飲酒などの生活習慣病の予防が挙げられます。栄養バランスの改善には、食物繊維やビタミン、ミネラルなどの栄養素の摂取を増やすことが有効です。また、食事による糖尿病の予防には、糖質制限が有効です。喫煙や飲酒などの生活習慣病の予防には、禁煙や節酒などが有効です。こうした課題に対しては、たとえば、栄養指導、健康的な食事の推進、喫煙や飲酒の禁止などが必要です。

参考サイト:農林水産省

貧困や格差の是正が急務

世界の環境・社会システムには、貧困や格差の是正、公衆衛生の改善などの課題が存在します。貧困や格差を解消するためには、所得再分配や教育支援、雇用創出などの政策が必要です。また、公衆衛生を向上させるには、衛生環境の改善、感染症対策、健康づくりの支援が不可欠です。

これらの課題に取り組むためには、社会保障制度の改善、都市計画の見直し、環境保護の推進、社会的責任の強化などの施策が必要です。

とくに開発途上国では、電力供給や上下水道、通信などのインフラ整備が遅れている場所が多く存在し、都市部と地方・農村部では格差があります。医療機器についても、病院や診療所での使用に適した環境整備が必要です。例えば、電力が供給されていない場所では、ソーラーで動く医療用冷蔵庫や、不安定な電圧にも耐えられる医療機器が必要です。こうしたインフラ整備は、開発途上国にとって不可欠な課題となっています。

科学技術やデータ利活用による課題解決

疾病予防や医療分野では、最新の技術やデータの活用が進んでいます。新たなデータ活用によって新たな病原体や疾病治療法の開発、遺伝子治療の研究など、科学技術の進歩が大きく貢献しています。また、患者情報を管理する電子カルテの導入や、医療データの共有化により、より正確な診断や治療が可能になり、医療の質を向上させることができます。

さらに、健康に関する情報を集めたデータを活用することで、健康増進の施策にも役立ちます。たとえば、運動量や栄養バランス、睡眠時間などを測定するウェアラブルデバイスの普及により、個人の健康管理を促進することができます。

また、大規模なデータ解析を行うことで、健康リスクの高い人々を特定し、早期に予防措置を講じることが可能になるでしょう。

5.SDGs目標3の達成に向けた個人・社会・企業の役割と貢献方法

SDGs目標3の達成に向けて、私たちは健康に関する問題に取り組むことが求められています。この目標を達成するためには、個人、社会、企業が協力し、さまざまな取り組みを行う必要があります。

個人としてできることは「身近なところから」

個人としてできることは、健康的な生活習慣を維持し、運動やストレス管理を習慣化することです。また、病気やケガに早期に気づき、治療することも重要です。これらの取り組みが、SDGs目標3の達成に貢献すると期待されます。

さらに、自分自身だけでなく、家族や友人の健康にも気を配ることが大切です。健康情報の共有や相談、一緒に運動するなどの取り組みが、健康的なライフスタイルを維持する上で役立つことがあります。個人の取り組みが、社会全体の健康増進に繋がることを期待しましょう。また、企業や社会も健康に関する啓発活動や健康管理制度の整備などを行うことで、SDGs目標3の達成に貢献できます。

社会・地域としてできることは「地域の健康増進イベントの開催」

社会・地域として取り組むこととして、健康に関する啓発活動や、定期的な健康診断の普及、病気予防の情報提供などがあります。さらに、地域の医療機関の整備や、専門医の配置などにより、高度な医療サービスの提供を行うことができます。また、地域住民の健康を支援するための施設やプログラムの整備、社会的な健康格差の解消なども重要です。これらの取り組みが、目標3の達成に貢献し、地域の健康増進や経済成長にも好影響を与えることが期待されます。

企業としてできることは「健康増進につながる活動の支援」

企業としては、健康管理制度を整備することや、社員の健康管理に対する支援、健康増進に貢献する活動の支援などが求められます。また、健康的な食事や運動習慣の習慣化を促進する取り組みや、ストレス軽減プログラムの提供なども有効です。これらの取り組みが、目標3の達成に貢献することが期待されます。

SDGs目標3の達成に向けた今後の取り組み方針

SDGs目標3の達成に向けては、感染症対策、健康増進、社会保障制度の整備、環境保護の強化など、多くの課題が残されています。これらの課題に対して、継続的な取り組みが必要であり、政府や企業、地域社会が協力して取り組むことが求められます。

医療技術の向上が求められる

医療・保健分野では、感染症や非感染症の対策だけでなく、医療技術の向上や、医療従事者の教育・研修の充実など、さまざまな課題があります。そのため、より高度な医療を提供するためには、医療現場でのデジタル技術の活用や、患者さんとのコミュニケーションの改善、関係性の構築など、多岐にわたる取り組みが必要です。

とくに、医療現場でのコミュニケーションの改善や、患者さんとの関係性の構築は、患者さんの満足度や信頼感を高めることができます。これによって、患者さんが積極的に医療に参加し、治療成績を向上させることが期待されます。また、医療従事者側も、患者さんとの信頼関係が築けることで、より良い医療を提供することができるようになります。

生活習慣病の予防と心身の健康維持が必要

栄養・疾病予防分野においては、栄養バランスの改善や、生活習慣病の予防だけでなく、心身の健康維持も重要です。ただし、ストレスや睡眠不足などの課題を解決するためには、啓発活動や情報提供だけでは十分ではありません。ストレスや睡眠不足は、仕事や家庭などさまざまな要因によって引き起こされるため、個々人が自己管理できるような支援や、社会全体の課題として捉え、制度や環境の改善にも取り組む必要があります。

また、子どもたちの健康づくりにも、家庭や学校、地域社会が協力し取り組むことが重要です。これらの取り組みによって、健康的な生活習慣が普及し、疾病の予防につながることが期待されます。

貧困や格差の是正

環境や社会システムにおいて、貧困や格差の是正、公衆衛生環境の整備が求められています。また、地球温暖化や自然災害などの環境問題にも取り組む必要があります。これらの課題を解決するためには、地域社会、行政、専門家などが協力して取り組むことが必要です。具体的には、コミュニティ活動や環境教育の充実などが挙げられます。

ただし、貧困や格差の是正や環境問題の解決は単一の取り組みで完全に解決することはできず、社会的な課題であるため、継続的な取り組みが必要です。例えば、環境問題が貧困や格差につながる理由として、環境汚染や気候変動が農業生産性を低下させ、食料不足や価格上昇を引き起こすことが挙げられます。これにより、低所得層がより貧困に陥る可能性があります。

人々の健康については、環境汚染や公害、飲料水や食品の安全性など、さまざまな要因が影響しています。したがって、健康的な環境を実現するためには、人々の健康に配慮しながら持続可能な社会を目指す取り組みが必要です。

AIやビッグデータなどの活用科学技術を使った取り組み

科学技術やデータの活用による取り組みにおいては、医療技術の向上や健康情報の共有などが必要です。また、AIやビッグデータなどの活用も期待されています。こうした課題を解決するためには、より多くの研究や開発が必要です。たとえば、産学連携や国際的な協力が挙げられます。

国際的な協力の具体例としては、世界保健機関(WHO)が主導する「世界保健データプラットフォーム」があります。このプラットフォームは、世界中の健康データを収集し、分析することで、疾病の早期発見や予防に役立てることができます。

参考サイト: WHO Global Health Observatory (GHO) data

私たちに求められる役割

SDGsの目標3は、「すべての年齢層において健康で生産的な生活を確保する」ことです。この目標を達成するために、私たちに求められる役割は多岐にわたります。

まず、個人として私たちは自分自身の健康に責任を持つことが重要です。健康的な食生活や適度な運動、ストレスの管理など、日々の生活習慣を見直すことが必要です。

また、地域社会や政府に対しても、健康に関する問題に取り組むよう働きかけることが重要です。たとえば、公共交通機関や公共施設の衛生環境の改善、医療サービスの充実などが挙げられます。

一人ひとりが意識して取り組むことで、より健康的な社会を実現することができます。一見、普段の日常の小さな事であっても、SDGs目標3「すべての年齢層の健康と福祉の確保」につながることがあります。

まずは日常生活の小さなところから、SDGsを意識してみてはいかがでしょうか。

この記事の執筆者
EARTH NOTE編集部
SDGs情報メディア
「SDGsの取り組みを共有し、循環させる」がコンセプトのWEBメディア。SDGsの基礎知識や最新情報、達成に取り組む企業・自治体・学校へのインタビューをお伝えし、私たちにできることを紹介します。
身近なアイデアを循環させて、地球の未来をつなげていきましょう。皆さんと一緒に取り組んでいけたら幸いです。
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