愛知車輌興業株式会社のSDGs|社員に寄り添い車と笑顔を運ぶ取り組み

愛知車輌興業株式会社のSDGs|社員に寄り添い車と笑顔を運ぶ取り組み

2025.01.31
この記事のタイトルとURLをコピー

愛知県名古屋市に本社を構える愛知車輌興業株式会社(以下、愛知車輌興業)は、各自動車メーカーの新車輸送を担いながら、さまざまな事業を展開している企業です。SDGsにも積極的に取り組み、地域や環境に貢献する数々の取り組みでも知られています。

今回は代表取締役社長の小林さんに、愛知車輌興業の事業や歴史、SDGsの取り組み、今後の展望や課題について伺いました。

愛知車輌興業の事業と歴史

愛知車輌興業とはどのような企業なのでしょうか。まずは愛知車輌興業の事業と歴史について詳しくお聞きしたいと思います。

新車を運ぶことに特化した運送業

───本日はよろしくお願いします。まずは愛知車輌興業のご紹介をお願いします。

小林さん 愛知車輌興業株式会社の小林と申します。弊社は車を運ぶことに特化した運送業で、中でも新車を主に扱っております。車を運ぶ業界自体がそれほど大きくはない上、新車を運ぶ会社に限定するとおそらく5、60社ほどのかなりニッチな業界です。

車を運ぶだけではなく、周辺の部品関係やドライバー派遣といったモータービジネスを中心とした、さまざまな事業展開を行っています。さらに事業多角化の一環として、介護事業やロードアシスタンスのコールセンターもグループ会社として持っています。

業界トップクラスの規模を誇る

───自動車の輸送だけではなく、幅広い事業を展開されているのですね。

小林さん 弊社は2024年で創業71年の歴史を誇り、国内の車を運ぶことを生業としている運送会社ではトップクラスの規模になっています。例えばトヨタさんの車の10台に1台は弊社が運んでおりますし、スズキさんの車は4台に1台運んでいる計算です。加えてダイハツさん、いすゞさん、スバルさんと、業界では珍しくほぼ全ての自動車メーカーとお取引があるところも特徴になっています。

また、現在97歳になる創業者には先見の明があり、とても堅実な運営を続けてきました。そこが企業に評価され、現在に至ったと考えています。中でも脈々と受け継がれているのは安全に対する取り組みで、業界の中でも頭一つ抜きん出ていると自負しております。

───ほぼ全ての自動車メーカーとお取引されているのはすごいですね。愛知県以外でも事業を展開されているのでしょうか?

小林さん 営業所は全国16か所、小規模なものも合わせると24か所ほどになります。全国ネットの同業他社は数社しかないため、ネットワークの広さは弊社の大きな特徴です。

SDGsへの取り組み

業界を牽引する活躍をしている愛知車輌興業ですが、SDGsについてはどのような取り組みを行っているのでしょうか。

ここでは、愛知車輌興業のSDGsに関する取り組みについてお聞きします。

身の丈にあった取り組みがこだわり

───ここからはSDGsに関する取り組みについて伺います。まずはSDGsの取り組みに対する理念のようなものをお聞かせいただけますか?

小林さん SDGsにつきましては、環境だけに限らず趣旨をしっかりと考えて取り組んでおり、自分たちの身の丈にあった取り組みを行うところにこだわっています。例えば、世界を自分たちの従業員に置き換えて考えるのもその一つです。無理をせずに真っ当な道をしっかり歩んでいくという、シンプルなことを徹底的に行っています。

運送業は世間一般的に、長時間労働や3K(きつい・汚い・危険)のイメージもある職場です。その中で私たちはどうやって生き残るか、どうやって輝くかということを考えてきました。その結果、特殊なことをするよりも当たり前のことをやり抜いた方が効果が大きいのではないかという結論に至り、原理原則に則ってコツコツと事業を行っています。

業態に合わせた環境面の取り組み

───無理をせずに取り組むというのは、SDGsに取り組むにあたって大切なことですね。それでは、環境に対する具体的な取り組みを教えてください。

小林さん 軽油を燃料としてトラックを走らせるという環境に直接影響がある業態であるため、環境に優しい装置が付いた新しい車にどんどん入れ替えています。また、個人の属性によらず燃費を安定させるために、オートマチック車の採用を推奨するなど設備面で積極的に対応しています。

ドライバーについても、最高速度を速くすると当然燃費も悪くなり事故のリスクも高まるため、高速道路では80キロ、一般道では60キロ以上を出すことはほぼありません。ここは長い歴史の中でかなり徹底されているところです。最高速度の運用は賞与に影響する仕組みになっており、実施制度的にも遵守できる仕組みになっています。

それ以外にも、本来あってはいけないことですが、やはり機械ですのでエンジンオイルなどの油漏れを完全に防ぐことは簡単ではありません。そのため、油漏れが起こらないように予防整備をしっかり行い、万が一漏れてしまったときのための対策訓練を徹底することで環境に配慮しています。

───車を使っているという事業形態を鑑みても、かなり有効な取り組みに感じます。他にも車に関して取り組んでいることはありますか?

小林さん 2024年7月に本社を移転したことを契機に、本社内に2つのEVスタンドを設置しています。厳密にいうと乗用車用の充電スタンドは設置済みで、もう一台は工事中なのですが、愛知県内に2つしかないEVトラック用の特殊なスタンドを設置し、商用車のEV化のサポートをしていこうと考えています。

また、営業所や現場では、グリーン経営という認証制度の認証基準に従って、問題があれば修正するという形で対応しています。本社では各課それぞれが持っているミッションの中に環境に影響するものがあるため、そこを意識した取り組みを行っています。

───かなり多岐にわたって取り組んでおられますが、従業員の方からはどのような反響がありますか?

小林さん 現在働いている従業員は環境への取り組みが当たり前になっているため、特別な反響はありません。しかし新たに社員を迎える際には、環境への取り組みが熱心なところに惹かれて働きたいと思ったという声をたくさんいただくようになってきました。

社員教育には長い時間とコストをかけている

───事業形態から考えて、安全面への取り組みは必須になると思います。こちらはどのような取り組みを行っていらっしゃいますか?

小林さん 安全につきましては、ベースとなる運輸安全マネジメントを最低限のこととして、さまざまなことを考えて取り組んでおります。まずドライバーの教育に関してですが、入社してから独り立ちするまでの期間は、一般の運送会社からすると驚くほどの長さです。平均3か月、長い方なら約半年の時間を使い、間違いなく大丈夫だと判断した上で独り立ちしていただいており、当然ながらコストも相応にかけて対応しています。

全体の教育という観点からは、10人に約1人の割合で班長を設定しています。この班長は人間的にも技術的にも一歩抜きん出た方で、日々メンターのような形でドライバーの技術指導などを行うものです。

他にも、本社ならびに神奈川や大阪では安全指導員という安全に特化した役割の人間が、安全活動の企画や推進を行っています。中でも特徴的なのが、営業所ごとに行っているドライバーズコンテストです。こちらのコンテストでは、学科や運転技術、商品の積み下ろしなどの技能を競いながら研修を行っています。さらに2年に1回、各営業所の代表メンバーが集まって弊社ナンバーワンドライバーを決める全国大会も行っています。

さまざまな寄付やボランティアでも社会に貢献

───熱心に教育に取り組んでおられるのですね。ドライバーズコンテストもモチベーションにつながりそうです。他にもSDGsに関して取り組みをされていますか?

小林さん 弊社は車を使って仕事をするため、交通事故のリスクはどうしても切り離せません。そういった観点から、交通遺児の団体に毎年寄付を行っています。一方、環境問題とも隣接しているため、20年ほど前に北海道東部の弟子屈に原生林を取得し、そちらの維持管理を行ってきました。

最近では社員の有志が地元に根付いた社会貢献をしたいということで、地元の高齢者を集めて一緒に体操を行っています。また2024年12月からは、買い物に行けない高齢者をスーパーまで連れていくというボランティアも自主的に始めています。こちらは日常業務の間を縫って行われており、地元に溶け込みたい、地元の役に立ちたいという想いから行っているものです。

他にも、ペットボトルのキャップを集めてポリオワクチンを寄付する活動を15年ほど続けています。かなりの人数分を寄付できており、今後も引き続き続けていきたいと考えています。

───北海道というかなり離れた場所の原生林に携わったのは、どういった経緯からなのでしょうか?

小林さん 20年ほど前、弟子屈のかなり大きな原野が開発事業者によって乱開発され、原生林が伐採されて焼け野原のような形になっていました。その際「原生林をなんとか守りたいので買ってもらえないか」とお話があり、創業者である今の名誉会長が賛同して購入したという経緯です。20年経った現在では、周囲と区別がつかないくらいにまで原生林が回復しています。

ジェンダーや採用に関して先進的な企業を目指す

───ジェンダーや採用に関する取り組みも積極的に行っていると伺っています。

小林さん 弊社では、性別における差は全くありません。女性ドライバーも活躍していますし、当然給与も全く一緒です。運送業はIT企業などと比べて、旧態依然とした業種というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、会社によってはかなり先進的になっています。弊社も先進的な企業を目指してきましたし、今後も目指し続けていきたいと考えています。

また、採用については手応えを得てきていますが、採用基準や教育の仕方など「本当にこれで良いのか?」と自問自答しながら改善に努めています。実際事故はゼロではありませんし、万全を期していれば起こり得ないような事故も起きているのが現実です。こういった人間の緩さやエゴに関するところには、日々頭を悩ませています。

───たしかに、採用する前に能力や人格を見極めるのはかなり難しい問題ですよね。

小林さん ドライバーはやはり人間であるため、得手不得手、向き不向きがあります。今まではそれを直感的に判断して採用していたのですが、実際には正しい判断ではないことも少なからずあり、時間のロスにつながっていました。そこで5年ほど前から、慶応大学の大学院と共同研究を行っています。

まず、弊社の誰もが認める優良ドライバーを16人ピックアップし、準教授に1時間ずつ面談をしていただいた結果、全部で3600のワードが抽出されました。その3600のワードを、口にした人間の数で再現回数のマトリックスを行うと、一番プラスのところに27のワードが入ってきたのです。そして、その27のワードに共感する人を優先的に採用していこうという取り組みになっています。

また、共感度が高くなかった人を技術的にどのようにそこに近づけるかという教育方法も考えています。現在はアンケートの答えを入れるとシステムにグラフが出るようになっており、全ドライバーを対象に検証を行う段階まできています。

社員それぞれの事情を把握することが大切

───このシステムが確立されたら、採用の段階でかなり的確な判断を下せるようになりそうですね。採用された後の、働き方などに関してはどのような取り組みをされていますか?

小林さん 何のために働くのかは、社員それぞれで違います。お金のため、家族のため、名誉のためなどさまざまです。やはり現場でマネジメントする人が、部下の特性をしっかり把握し理解した上で仕事の配分をすることが大切だと思います。

これだけ働けばこれだけの給与がもらえるといってストレートに働く社員もいれば、家族の時間を大切にしたい社員もいるなど社員それぞれに事情があります。そこをわかっているのとわかっていないのとでは大きな差が生まれるため、管理者がしっかりと把握できるようにしていかなければなりません。

たとえば、子どもが産まれた社員が育児休暇を取っても会社が効率的に回るためには、相手の生き方を把握できるかどうかが大切です。弊社では、男性ドライバーも1か月や3か月の育児休暇を当たり前に取っています。他にも、子どもを保育園に送り届けてから時差出勤するドライバーや、PTAの役員をやっている関係で残業ゼロのドライバーもいるなど、それぞれの生き方に寄り添った働き方が可能になっています。

今後の展望と課題

環境や社員のことを考えてSDGsに取り組んでいる愛知車輌興業。その取り組みはどれも素晴らしいものだと感じましたが、課題も抱えているそうです。ここでは、愛知車輌興業の今後の展望と課題について伺います。

DX化で空いた時間を有効活用していく

───今後の展望についてお聞かせください。

小林さん 社会貢献を行うにあたっては、労働時間の制限がある中で本業とのバランスをいかに取るかという問題は今も悩んでいますし、これからも難しい課題です。ここに関しては、本業をDX化することによって少しでも作業効率を良くできれば、クリエイティブな仕事や取り組みに避ける時間が増えると考えています。2025年度からは、こうしたことを意識して取り組みを強化していく予定です。

また弊社では2019年に、2025年をゴールとしたビジョンを課長級のメンバー中心に作りました。定量的・定性的な目標を決め、その中にさまざまな業務改革を盛り込みました。結果、定量的な面では目標をかなり上回っての達成が濃厚である一方、定性的な面ではDXなどを推進したにも関わらず、一部を除いてはかなり難しい状況です。

しかしそれは、推進したDXが既存業務の延長線上にある自動化レベルであるからだと思っています。ちょうど現在のビジョンが来年ゴールを迎えることもあり、次のビジョンを作り始めていますが、今度は管理職だけではなく入社2年目くらいの若手社員にも入ってもらい、さまざまな人の目で今後5年をどうしていきたいかを考えていきます。そしてその中で私が提言しているのが、ゴールを意識した大きな変化です。

弊社には情報システム課という組織があり、そこにはSEのメンバーがいます。AIを活用し、今までの延長線上の仕事を自動化するのではなく、ゴールを意識しながらやり方は大きく変えてしまっても良いのではないかという考え方でDXを推進しています。AIができることはAIに任せて、我々人間はそこに温かな感情を持って変化を加えることに特化した方が良いのではないかとも考えています。

───DXを推進したり、AIを上手く活用したりすることで時間的な余裕が生まれますよね。大きな変化を生むためには、さらにどのようなことが大切だとお考えですか?

小林さん 例えばDXを推進することによって作った時間をどのように有効に使うのかが大切です。環境や社会貢献、オンライン業務でできていないところを補うなどさまざまですが、人間は皆同じだけ時間を割り振られているわけですので、その時間をいかに有効に使うかを考えねばなりません。そうして時間を有効に使うことで、SDGsの17の目標に関する取り組みも少なからず良い方向に行くのだと考えています。

目標は働きやすい職場認証制度三つ星

───SDGsに関連して、何か目標にしていることなどはありますか?

小林さん 新社屋には消費電力削減の一環として、屋上にソーラーパネルを設置しています。SDGsは何も特別なものではありません。処遇改善や労働時間の短縮など、良い会社を作ろうとする取り組みがSDGsにつながっています。自動車運送業界には「働きやすい職場認証制度」があり、弊社は2023年度に二つ星を取得しました。2025年度には、かなりハードルは高くなりますが、三つ星の取得を目指していきたいと考えています。こうした取り組みに注力することで、SDGsにもさらに寄与していきたいです。

地域や業界になくてはならない会社へ

───最後に、読者の皆さんへのメッセージをお願いします。

小林さん 弊社は運送会社の中でも、車を運ぶという特殊な分野を担っている会社です。我が国の人口は減少傾向にあり、それに伴って車の保有台数も減少することが予想されます。しかし、私たちはこれからも成長し続けたいと思っていますし、さまざまな創意工夫をこらして地域になくてはならない会社、業界になくてはならない会社になろうと取り組んでいます。

取り組みには時間がかかるかもしれません。しかし、楽な道に逃げるのではなく大変な道を選んでコツコツと地道にやっていきたいと思っています。もし弊社に関心を持たれた方がいらっしゃるなら、手を取り合ってさまざまな意味で連携ができれば嬉しいです。

───本日は貴重なお話をありがとうございました。

業界を、未来をリードする愛知車輌興業の取り組み

愛知車輌興業のSDGsに関する取り組みは、どれも環境や社員、地域への責任を感じる素晴らしいものでした。多くの自動車メーカーと取引があり、業界を牽引しているのも納得です。特に社員教育や福利厚生の手厚さを感じましたし、これからも社員のみなさんが一丸となって盛り上げてくれることでしょう。今後も業界をリードし、未来をもリードしていく愛知車輌興業の取り組みに注目していきたいと思います。

愛知車輌興業の事業や取り組みに興味をお持ちの方は、ぜひホームページを覗いてみてください。

 愛知車輌興業株式会社|新車輸送を中心として、マイカー輸送、ドライバー派遣、トランクルームサービスなどを業務とする物流事業を行っております。 

この記事の執筆者
EARTH NOTE編集部
SDGs情報メディア
「SDGsの取り組みを共有し、循環させる」がコンセプトのWEBメディア。SDGsの基礎知識や最新情報、達成に取り組む企業・自治体・学校へのインタビューをお伝えし、私たちにできることを紹介します。
身近なアイデアを循環させて、地球の未来をつなげていきましょう。皆さんと一緒に取り組んでいけたら幸いです。
この記事のタイトルとURLをコピー
関連するSDGs
pagetop