SDGs目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」現状と私たちにできること

SDGs目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」現状と私たちにできること

2023.05.12(最終更新日:2024.10.25)
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照明や冷暖房、電子機器などを動かすための電力や、調理等のためのガス、自動車や暖房機器に使う燃料といったエネルギーは、現代の生活になくてはならないものです。
SDGs(持続的な開発目標)でも、エネルギーは、世界が直面している多くの課題と機会に関わっているとして、目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」を定めています。

この記事では、目標7の内容や設定された理由、取り組み事例をわかりやすく解説し、私たちが今から身近にできるアクションをご紹介します。

目次

そもそもSDGs目標7とは

目標7は、「すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」と訳されています。
それでは、持続可能な近代的エネルギーとは、どういうものでしょうか?
エネルギーの「安全性」「持続可能性」の2つのポイントから考えてみましょう。

目標7が目指すこと1 安全なエネルギーをすべての人が利用できる

日本をはじめとする先進国では、ほぼすべての人が電気を利用し、屋内で使用しても安全な暖房器具や調理器を使っています。
しかし、世界に目を向けると、これが当たり前ではない人々がいます。

2014年の時点で、世界人口の40%を超える約30億人が、適切に管理された電気やガスなどの安全なエネルギーを利用できず、薪・石炭・木炭や動物の排せつ物などを調理や暖房のための燃料に用いていました。屋内での燃料使用による空気汚染により、2012年には430万人が亡くなっています。
目標7が目指すことのひとつは、適切に管理された電力やガスなど、近代的で安全なエネルギーをすべての人が利用できることです。

また、目標7は、目標13「気候変動に具体的な対策を」と深い関係があります。
気候変動の原因となる温室効果ガスは、約6割がエネルギー利用によって生み出されていると言われています。
将来にわたって地球環境を守るために、温室効果ガスの排出が最小限であることも、クリーンなエネルギーの条件であると言えるでしょう。
出典:国際連合広報センターー17の目標ごとの説明、事実と数字―目標7

▼温室効果ガスについて、詳しくはこちら
温室効果ガスによる問題と解決へ向けた世界での取り組み

目標7が目指すこと2 将来にわたって持続的にエネルギーが利用できる

現在、世界の発電量の多くを占めている火力発電や原子力発電は、石油や石炭、天然ガス、ウランを燃料として使っています。
これらは地球上に存在する量に限りがある資源であり、遠い未来まで安定して利用が可能であるとは言い切れません。
一方で、「再生可能エネルギー」は、太陽光、水の流れ、風、地熱、バイオマス(動植物など生物資源)など、地球環境上の運動エネルギーや、再生可能な資源を用いて発電される持続的に利用が可能なエネルギーです。

目標7では、効率的にエネルギーを使用すること、また、エネルギー生産における再生可能エネルギーの割合を増やし、将来に渡って安定的にエネルギーを利用できるようにすることを目指しています。

目標7が掲げられた背景

目標7が掲げられた背景としては、始めに述べたように、世界ではまだ電力や安全なエネルギーを利用できていない人が多くいること、また、持続的にエネルギーを使うために、再生可能エネルギーを増やしていかなければいけないことが挙げられます。

世界のエネルギー利用の現状

世界のエネルギー利用の現状を数字で見ていきましょう。

【電気】
電力を利用できない人の数:6億7,500 万人(2021年)

【空気を汚染しない調理システム】
安全な調理システムを利用できない人の数:24億人(2020年)

これらの指標は、SDGsの取り組みが始まった当初から比較すると徐々に改善されています。
「誰一人取り残さない」というSDGsの理念の達成に向けて、よりクリーンエネルギーの利用が難しい人々への支援がこれからの課題となっています。

【再生可能エネルギー利用比率】
最終エネルギー消費量に占める再生可能エネルギーの割合:19.1%(2021年)

再生可能エネルギーの利用は先進国の電力部門において拡大していますが、開発途上国での利用や、電力以外の暖房や運輸ではまだ利用が進んでいないことが課題となっています。

日本のエネルギー利用の現状

日本のエネルギー利用の現状を、発電方法から見てみましょう。

【表1】日本の発電量(2021年)

電源種別 発電量(億kWh) 割合
原子力 708 6.90%
石炭 3,205 31.00%
天然ガス 3,555 34.40%
石油等 764 7.40%
水力 778 7.50%
太陽光 861 8.30%
風力 94 0.90%
地熱 30 0.30%
バイオマス 332 3.20%
合計 10,327 100.00%
うち再生可能エネルギー計 2,095 20.30%

出典:資源エネルギー庁-「総合エネルギー統計」令和3年度(2021年度)エネルギー需給実績(速報)より作成
※以下、表2、表4も同データより作成

2021年の日本の再生可能エネルギーの利用状況(ここでは、水力発電、太陽光発電、風力発電、地熱発電、バイオマス発電の計とします)は、総発電量2,095億kWh全発電量に占める割合20.3%となっています。
2015年の再生可能エネルギー総発電量1,486億kWh、全発電量に占める割合14.3%と比べ、利用が進んでいるのがわかります。

それでは、どの再生可能エネルギーの利用が増えているのでしょうか?
2015年と2021年の再生可能エネルギーの発電量の内訳を比較してみましょう。

【表2】日本の再生可能エネルギー発電量(2015年/2021年比較)

電源種別 2015年(億kWh) 2021年(億kWh) 増減量(億kWh) 増減比
水力 871 778 ▲93 89.30%
太陽光 348 861 513 247.40%
風力 56 94 38 169.00%
地熱 26 30 4 115.90%
バイオマス 185 332 147 179.40%
合計 1,486 2,095 609 141.00%

水力発電のみ減少していますが、その他の4つの再生可能エネルギーは発電量が増加しています。特に太陽光発電は約2.5倍に増加しており、バイオマス発電も約1.8倍風力発電も約1.7倍となっています。
経済産業省の「2030年度におけるエネルギー需給の見通し」によれば、日本の2030年度の再生可能エネルギーの導入目標は、各省の積極的な施策により、3,130億kWhの実現を目指す(政策対応強化ケース)としています。

さらに、2030年度温室効果ガス46%削減に向けた野心的目標としては、発電量3,360~3,530億kWh(総発電量に占める割合36~38%)としており、再生可能エネルギーのさらなる利用拡大が求められています。

【表3】日本の再生可能エネルギー発電実績と目標(2021年実績/2030年目標比較)
※目標値は2030年度温室効果ガス46%削減に向けた野心的目標

電源種別 2021年実績(億kWh) 2030年目標(億kWh) 増減量(億kWh) 増減比
水力 778 980 202 126%
太陽光 861 1,290~1,460 429~599 150~170%
風力 94 陸上 340
洋上 170
416 543%
地熱 30 110 80 367%
バイオマス 332 479 147 144%
合計 2,095 3,360~3,530 1,265~1,435 160~168%

出典:実績は資源エネルギー庁-「総合エネルギー統計」令和3年度(2021年度)エネルギー需給実績(速報)、目標値は経済産業省―「2030年度におけるエネルギー需給の見通し」より本表を作成

日本の課題はエネルギーミックスの改善と需給バランス

日本が再生可能エネルギー導入拡大に取り組む背景には、温室効果ガスの削減の他、エネルギー自給率の問題があります。
日本は資源に恵まれず、火力発電に使用する石油や天然ガスをほぼ輸入に頼っています。
日本のエネルギー自給率の推移を見てみましょう。

【表4】日本のエネルギー自給率の推移

2010 2015 2021
エネルギー自給率(低位発熱量ベース) 20.20% 7.30% 13.40%
化石燃料寄与 0.90% 0.80% 0.70%
再生可能・未活用エネルギー寄与 4.30% 5.90% 8.10%
原子力寄与 15.00% 0.60% 4.60%

原子力発電に用いるウランは輸入されていますが、使用済燃料を再利用できるため、国産エネルギーに準ずるものとされています。ただし、2011年の東日本大震災の影響で原子力発電は大きく発電量が落ち込み、エネルギー自給率も低下しました。
一方で、国内の自然エネルギーを利用する再生可能エネルギーの拡大は、近年のエネルギー自給率の改善に寄与しています。
化石資源に恵まれない日本では、再生可能エネルギーの利用を進め、様々な発電方法を組み合わせて安定的、持続的なエネルギー供給ができる体制を構築することが必要です。

また、2022夏には東京エリアで「需給ひっ迫注意報」が発令され、冬には7年ぶりに政府による節電要請が実施されました。
発電量を増やすだけでなく、電気を使用する消費者が、効率的な電力利用をすることも大切なのです。

持続的な経済成長と環境保全のためにはクリーンエネルギーが必要

ここまで、世界ではまだ電力や安全なエネルギーを利用できない人が多くいること、また、日本でも、エネルギーの調達には課題があることを、データで確認してきました。
全ての人が安全で安定したエネルギーを利用し経済を発展させられることと、エネルギー利用による温室効果ガスの排出を抑制し気候変動を解決することを両立するためには、エネルギー効率を高め、再生可能エネルギーの利用を拡大していくことが重要です。

主な再生可能エネルギーの仕組み

再生可能エネルギーを種類別に詳しく見ていきましょう。

太陽光発電

太陽光発電は、光を太陽光パネルに当てて発電します。
ソーラーパネルが並んだ発電所や、ソーラーパネルが取り付けられた屋根を目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
ソーラーパネルは、n型シリコン・p型シリコンという2種類の半導体を重ね合わせた装置になっており、ここに光が当たることで、光電効果(物質に光を照射したときに、電子が放出されたり電流が流れたりする現象)により電気が発生します。

日本では、1973年に起きた第一次オイルショックを受け、化石燃料に依存した発電が見直され、翌1974年に新エネルギー技術開発を目的に「サンシャイン計画」が立てられ、太陽光発電を実用化する研究開発が進められました。近年、東日本大震災を契機としたエネルギー政策の転換を受け、特に利用が拡大しています。
また、太陽光発電と同じく太陽エネルギーを利用した、太陽熱発電という発電方法もあります。太陽熱発電では、太陽の光を大きな鏡で集めて熱を作り、水を蒸気に変えてタービンを回し発電します。

▼太陽光発電について、詳しくはこちら
太陽光発電の仕組みや課題、世界の現状について解説

水力発電

水力発電は、水が高いところから低いところに流れるときのエネルギーを利用して発電します。
日本は雨が多く、川の流れが豊かなため、安価で安定した発電方法として利用されてきました。
発電の仕組みにより、大きく次の3つの方法に分けられます。

1 流れこみ式水力発電 川の水をそのまま流し込み発電する方法
2 揚水式水力発電 上流と下流の二つのダムを利用して発電する方法
3 ダム式水力発電 ダムに貯めた水を落下させて発電する方法

大規模なダムによる発電以外に、主に流れ込み式による小水力発電も、エネルギーの地産地消や地域おこしとして取り組みが進んでいます。

▼水力発電について、詳しくはこちら
水力発電の仕組みからメリット・デメリットまで徹底解説

風力発電

風力発電は、風で風車を回して発電します。
オランダの大きな風車小屋のイメージが強いかもしれませんね。
風を受ける羽(プロペラ)の取り付け方の違いによって、大きく「水平軸型」「垂直軸型」に分けられます。多くの風力発電はプロペラの軸が地上と水平な「水平軸型」で、風の向きや速さが安定しているときは高効率で発電できるのが特徴です。
一方で、風が強く向きが安定しないときに強い「垂直軸型」の研究も進められています。

また、最近では山地の多い日本では陸地での設置に限りがあるため、洋上への設置が注目されています。海上は障害物がなく、安定して強い風が吹くため、効率的な発電が可能というメリットがあります。
洋上風力発電は海底に基礎を作って建設する「着床式」の他に、風車を海面に浮かべ、海底に固定したチェーンを使って留める「浮体式」があります。商用化が先行しているのは着床式ですが、浮体式の実証事業も進められています。

風力発電について、詳しくはこちら▼
風力発電の仕組みや現状、メリット・デメリットについて解説します

地熱発電

地熱発電は、地熱によって発生する熱水や水蒸気を利用して、タービンを回して発電します。
日本は111もの活火山が連なり、アメリカやインドネシアに次いで世界第3位の地熱資源量があります。
地熱発電の主な方式としては、「フラッシュ方式(蒸気発電方式)」「バイナリー方式」の2つがあります。
フラッシュ方式は200℃~350℃の蒸気や熱水を利用するのに対し、バイナリー方式は80℃~150℃のより低い温度の蒸気や熱水でも発電が可能で、近年増加しています。

▼地熱発電について、詳しくはこちら
地熱発電の仕組みと課題、日本と世界の現状について

バイオマス発電

バイオマスとは、エネルギー資源の分野では「再生可能な生物由来の有機性資源(化石資源は除く)」ものを指します。具体的には、下記のようなものです。

廃棄物系バイオマス 家畜排せつ物、下水汚泥、黒液、紙、食品廃棄物、製材工場等残材、建設発生木材
未利用系バイオマス 農作物非食用部、林地残材
資源作物 エネルギー源や製品材料とすることを主目的に栽培される植物(トウモロコシ・なたね等の農作物、ヤナギ等の樹木、微細藻草など

バイオマス発電には、木材や燃えるゴミを直接燃焼する方式(火力発電と同じ原理)と、加熱や発酵によるガス化して燃焼する方式(バイオガス発電)があります。
現在利用の多い廃棄物系のバイオマスは、他の再生可能エネルギーとは異なり、発生量が経済活動に左右されるため、どれくらい導入できるか将来の予測が難しいという特徴があります。木質系資源や家畜排せつ物などは、地域に広く薄く分布しており、比較的小規模な設備での地産地消に向いているエネルギーといえます。

一方で、資源作物を利用したバイオエタノールバイオディーゼルといったバイオ燃料は、輸送機器の化石燃料の代替として、CO2排出量削減の観点から注目が集まっています。
植物を原料とするバイオマスは、植物はライフサイクルの中でCO2を吸収するため、最終的に燃焼させることによるCO2発生量と相殺され、カーボンニュートラルであるとする考え方もあります。
※バイオマスをカーボンニュートラルと見なすかどうかは、栽培・加工・輸送などを考えるとそうではないとの意見もあり、議論がなされているところです。

▼バイオマス発電について、詳しくはこちら
バイオマス発電とは何か?仕組みやメリット・デメリットをわかりやすく解説

目標7を構成する5個のターゲット

目標7には、さらに詳しいターゲットが5個定められています。また、それぞれに達成度合いを測る指標が設定されています。
少し細かい内容ではありますが、具体的な項目を知ることで理解を深めることができます。その中身とデータを見ていきましょう。
各ターゲットおよび指標訳出典:外務省 JAPAN SDGs Action Platform-SDGグローバル指標(SDG Indicators) 7: エネルギーをみんなに そしてクリーンに
指標に関するデータの出典:
国際連合-Goals 7および国連広報センター-SDGs報告2022

7.1 安価かつ信頼できるエネルギーの利用

ターゲット1は以下の通りです。
『2030年までに、安価かつ信頼できる現代的エネルギーサービスへの普遍的アクセスを確保する』

このターゲットは、先進国だけでなく、開発途上国にも現代的でクリーンなエネルギーを普及させることを目指しています。
指標として、「7.1.1電気を受電可能な人口比率」と「7.1.2家屋の空気を汚さない燃料や技術に依存している人口比率」の2つが設定されています。

ひとつ目の指標については、先進国および高所得国では、電気を受電可能な人口は100%、クリーンな家庭用エネルギーを利用可能な人口は95%以上と推計されています。全世界を見ても、電力を利用できる人口は、2015年87%から2021年91%に増加しました。
一方で、電力を利用できない9%の多くが後発開発途上国とサハラ以南のアフリカに集中しており、格差が課題となっています。
また、ふたつ目の指標については、全世界でクリーンな調理用燃料と技術を利用できる人口は、2015年64%から2021年71% に増加しました。

7.2 再生可能エネルギーの拡大

ターゲット2は以下の通りです。
『2030年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる』

指標として、「7.2.1最終エネルギー消費量に占める再生可能エネルギー比率」が設定されています。

全世界の、最終エネルギー消費量に占める再生可能エネルギーの割合は、2015年16.7%から2021年19.1%に増加しました。
部門別に見ると、電力部門での最終エネルギー消費量に占める再生可能エネルギーの割合が28.2%と大きくなっている一方、暖房部門、輸送部門での再生可能エネルギーの割合の増加は限定的です。

7.3 エネルギー効率の改善

ターゲット3は以下の通りです。
『2030年までに、世界全体のエネルギー効率の改善率を倍増させる』

指標として、「7.3.1エネルギー強度(GDP当たりの一次エネルギー)」が設定されています。GDPとは、国内総生産、つまり、国内で作られた物やサービスの金額です。
エネルギー強度とは、物やサービスを作るとき、どれくらい効率よくエネルギーを使っているかを測るものです。

全世界のエネルギー強度の改善率は、2020年は0.6%でした。このターゲットの目標達成には、2030年までの年間改善率を平均3.4%にする必要があり、さらなる省エネが求められています。

7.a エネルギー関連インフラとクリーンエネルギー技術への投資

ターゲットaは以下の通りです。
『2030年までに、再生可能エネルギー、エネルギー効率及び先進的かつ環境負荷の低い化石燃料技術などのクリーンエネルギーの研究及び技術へのアクセスを促進するための国際協力を強化し、エネルギー関連インフラとクリーンエネルギー技術への投資を促進する』

指標として、「7.a.1クリーンなエネルギー研究及び開発と、ハイブリッドシステムに含まれる再生可能エネルギー生成への支援に関する発展途上国に対する国際金融フロー」が設定されています。投資の用途別に「発電(再生可能資源)」「エネルギー調査」への支出額が項目となっています。

開発途上国でエネルギーインフラの整備と同時に、再生可能エネルギーの利用を進めていくためには、投資が必要になります。
しかしながら、開発途上国へのクリーンエネルギーに関する資金支援は、2017年の264億ドルをピークに減少しており、2021年は108億ドルとなっています。

7.b 開発途上国におけるエネルギーインフラ拡大と技術向上

ターゲットbは以下の通りです。
『2030年までに、各々の支援プログラムに沿って開発途上国、特に後発開発途上国及び小島嶼開発途上国、内陸開発途上国の全ての人々に現代的で持続可能なエネルギーサービスを供給できるよう、インフラ拡大と技術向上を行う』

指標として、『発展途上国における再生可能エネルギー生産能力(1人当たりのワット数)』が設定されています。
これは、目標12「つくる責任つかう責任」指標a「開発途上国に対し、より持続可能な消費・生産形態の促進のための科学的・技術的能力の強化を支援する」の指標1と同じものです。

再生可能エネルギーの導入は、先進国では進んでいますが、開発途上国では遅れています。また、電力を利用できる人の増加は減速しており、世界でも最も電力が届きにくい人々へ届けるという点に課題を残しています。
2021年の試算では、2030年時点でも6億7900万人が電力を利用できないとされています。

目標7の取り組み 世界の事例

ここからは、目標7の達成に取り組む団体の事例を紹介します。
まずは海外の取り組みです。

すべての人にクリーンなエネルギーを届ける「高効率バイオマス燃料コンロ」(オランダ アフリカン・クリーンエネルギー社)

オランダに本部を置くアフリカン・クリーンエネルギー社は、サハラ以南のアフリカ(サブサハラ)とアジアの農村地域にクリーンなエネルギーを提供する企業です。
同社が製造・販売する高効率燃料コンロ「ACE One」は、木くずや家畜の排せつ物などのバイオマス燃料を利用していますが、従来のコンロより燃料消費が少なく、煙の発生も抑えられています。

また、ACE Oneはソーラー充電式のバッテリーを備えており、LEDランプを接続して照明にしたり、携帯電話を充電することも可能です。
2019年には従量課金制を導入し、所得の少ない人でも、初期に大きなお金をかけることなく利用できるようにしています。
参考:ACE Home – African Clean Energy

ソーラールーフ・タイル(アメリカ テスラ社)

太陽光パネルというと、黒っぽい板状のパネルをイメージする方が多いのではないでしょうか?
電気自動車で有名なアメリカのテスラ社が販売している「ソーラールーフ・タイル」を見るときっと驚かれることと思います。
「ソーラールーフ・タイル」は、屋根に取り付ける太陽光パネルで、全天候型の強化ガラスでできています。太陽に対しては透明ですが、斜めから見ると不透明に見える特徴があり、景観に馴染みやすいデザイン性を持っています。

また、ソーラールーフ・タイルは発熱機能を持っており、屋根の上の雪を溶かすこともできます。降雪は光を遮ってしまうため、太陽光パネルには大敵なのですが、それをカバーする機能となっています。
参考:テスラ社-ソーラールーフ

目標7の取り組み 日本の事例

続いて、日本での取り組みをご紹介します。

未来の発電を研究①「水素発電」(三菱重工株式会社)

水素発電は、水素を燃焼させたエネルギーでタービンを回し発電します。
水素は燃やしてもCO2が出ないため、クリーンエネルギーとして研究が進められています。
ただし、水素を生成する過程で化石燃料を使ってしまっては、製造過程でCO2が排出されてしまいます。

三菱重工では、風力発電などの再生可能エネルギーの余剰分で水を電気分解した「グリーン水素」の調達と、大規模水素発電設備の実用化に取り組んでいます。
2018年には水素ガスタービンの燃料に水素を30%混ぜた状態の稼働を達成しており、2025年までに水素100%専焼を目指しています。
参考:三菱重工業株式会社-パワー事業 | 水素発電で、サステナブルな未来を実現する。

未来の発電を研究②「海流発電」(株式会社IHI・国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)

海流発電は、海の流れのエネルギーを利用して水車を回し発電します。
島国である日本の近くには、黒潮、対馬海流、親潮、リマン海流といった強い海流が流れています。エネルギーが大きく、変動が少ない海流エネルギーは、将来の大規模発電の可能性を秘めています。

株式会社IHIと、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構は、共同で水中浮遊式の海流発電装置の実証実験に取り組んでおり、2030年以降の実用化を目指しています。
参考:海流発電実証試験の概要と信頼性評価・事業性評価
参考:NEDO-海洋エネルギー発電実証等研究開発

一般家庭向けデマンドレスポンスサービス「エネチェンジクラウド」(ENECHANGE株式会社)

デマンドレスポンス(略称:DR)という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
デマンドレスポンスは、需要応答と訳されています。
夏の昼間や、冬の寒さが厳しい時期など、電力使用量が大きくなる時に、電力会社が発電を増やすだけでなく、一般家庭や企業などの電力の消費側(需要側)が節電に協力して、電力のピークを乗り越える取り組みです。

ENECHANGE株式会社は、電力会社と一般家庭をつなぐ「エネチェンジクラウド」サービスを提供しています。電力がひっ迫したとき、メールやLINEなどで一般の人々に連絡し、電気の使い方の工夫を促す仕組みです。需要側は節電量をマイページで確認することができ、発電会社は報酬などのキャンペーンを設定することも可能です。
参考:ENECHANGE株式会社-エネチェンジクラウド DR|家庭向けデマンドレスポンスサービス

目標7の実現のために私たちにできること

エネルギー問題に取り組む目標7の達成のために、私たちにできることを考えてみましょう。

省エネルギーに取り組む

消費者である私たちひとりひとりが、効率よくエネルギーを使うことを意識しましょう。
資源エネルギー庁「無理のない省エネ節約」から、家庭やオフィスでできる省エネを抜粋して紹介します。

【エアコン】
・冷やしすぎに注意し、無理のない範囲で室内温度を上げる。
・冬の暖房時の室温は20℃を目安に。
・フィルターを月に1回か2回清掃。

【照明】
・電球形LEDランプに取り替える。
・点灯時間を短く。

【テレビ】
・消すときは主電源をOFFに。
・明るさ調節する前に、画面の掃除を。

【冷蔵庫】
・熱いものはさましてから保存しましょう。
・庫内の温度設定を適切に。
・ものを詰め込みすぎない。

【洗濯機】
・洗濯物はまとめ洗いを。
・洗剤は適量に。

省エネは節約にもなります。
小さなひとつひとつを習慣化して、暮らし上手を目指しましょう!

再生可能エネルギーを知って選ぶ

この記事では、研究段階のもの含め、多くの発電方法について説明してきました。
電力は、安定供給(Energy Security)環境適合性(Environment)経済効率性(Economic Efficiency)、そして安全性(Safety)の観点から評価されます。この判断ポイントは「S+3E」と呼ばれています。

どの発電方法にも、メリットとデメリットがあり、現状に合わせて発電方法を組み合わせていくことが必要です。特に、環境適合性が高く、将来に渡って利用が可能な再生可能エネルギーの利用を拡大していくことが求められています。
再生可能エネルギーのそれぞれの特徴を知り、積極的に選択していきましょう。

次世代エネルギーパークとは、小学生から高齢者まで全ての人が、再生可能エネルギーを中心に日本のエネルギー問題への理解を深めることを目的として、経済産業省が選定している施設です。
2023年のガイドブックでは、全国で66か所が指定されています。
近くのパークを調べ、見学すると、より理解が深められるでしょう。
参考:経済産業省ー次世代エネルギーパーク 66parks 全国ガイドブック2023
参考:経済産業省-空から次世代エネルギーパークの再エネ施設を見てみよう!(YouTube動画)

クリーンエネルギーで環境保全と持続的な発展を実現しよう

目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」は、健康問題や気候変動、経済の問題に深く関わるエネルギー問題に取り組み、すべての人が安全で持続的なクリーンエネルギーを利用できることを目指しています。
わたしたちが身の回りの省エネに取り組み、再生可能エネルギーの現状を知り、利用していくことが、目標7の達成につながるアクションです。
新しい未来のエネルギーを、一緒に作っていきましょう。

この記事の執筆者
EARTH NOTE編集部
SDGs情報メディア
「SDGsの取り組みを共有し、循環させる」がコンセプトのWEBメディア。SDGsの基礎知識や最新情報、達成に取り組む企業・自治体・学校へのインタビューをお伝えし、私たちにできることを紹介します。
身近なアイデアを循環させて、地球の未来をつなげていきましょう。皆さんと一緒に取り組んでいけたら幸いです。
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