SDGs目標8「働きがいも経済成長も」の基礎知識と企業の事例紹介
SDGsは持続可能な開発目標といい、2030年までに達成することを目標にした、人類が生き続けるために解決すべき課題をまとめたものです。
この記事は、持続可能な開発目標(SDGs)の中でも、働きがいと経済成長の両立を目指す目標8について解説します。
SDGsに詳しくはないけれど、社会や環境問題に取り組んでみたいと考えている方々に向けて、基礎知識と取り組み事例を紹介します。
今後の地球環境や社会のために、働きがいと経済成長の調和がいかに重要かを知り、そのためにできることは何かを考えるきっかけになれば幸いです。
目次
SDGs目標8(働きがいも経済成長も)の概要
SDGsはすべての貧困や飢餓、不平等や格差、環境破壊とエネルギー問題をなくし、人間と地球が長く繁栄し続けるために考えられた目標で、それらを達成するためには「経済」「社会」「環境」の3つをバランスよく推進する必要があります。
これらの目標を達成するために切り離せない課題が「経済」です。この課題について考えるためにSDGs目標8の基本的な知識をおさえておく必要があります。
SDGs目標8の意義
公益財団法人日本ユニセフ協会によるとSDGs目標8は以下の通りです。
「すべての人のための持続的、包摂的かつ持続可能な経済成長、生産的な完全雇用およびディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を推進する」
引用:公益財団法人 日本ユニセフ協会
言い換えると、環境にも配慮した持続的な経済成長を促し、労働者に仕事へのやりがいと生活に十分な収入を与えることが目標です。
これらの課題を解決するためには、経済成長によって適切な雇用を生み出し、低賃金労働者や失業者に十分な仕事を与えつつ、やりがいを持って働ける環境を作る必要があります。
SDGs目標8のポイントは以下の2点です。
- 環境を守り、無理のない持続可能な経済成長を進める
- すべての人が働きがいと十分な収入のある仕事につく
働きたくても働くことのできない失業者や長時間労働を強いられるワーキングプアの人たちは、十分な収入を得られないため貧困から抜け出せません。
この問題を解決するためにはディーセント・ワークの促進が必要となります。
ディーセント・ワークとは、労働者の生活を守れる安定した収入とやりがいのある仕事のことです。
「Decent」は「まともな」という意味で、平等に働けて安定した職場環境で適切な賃金をもらえる仕事を指します。
経済成長のみに注目すると、長時間労働が生まれてしまい、働きがいがなくなってしまいます。しかし、ディーセント・ワークの促進と並行することで貧困問題を解決することができます。
目標達成のための10の目標と2つの手段
SDGs目標8を具体的に達成するための必要なステップと手段は提示されており、10のターゲットと2つの実現方法があります。
- 8-1.国の状況に応じて、経済的に豊になるように努める。発展途上国などにおいては毎年最低でもGDPを7%上昇させる
- 8-2.商品や価値を高める産業や人の手によるビジネスを中心に多様化と技術の向上、イノベーションを行い、生産性を向上させる
- 8-3.ディーセント・ワークや企業など新しいことに挑戦することを支援する政策を進める。中小規模の会社の設立、成長を応援する。
- 8-4.2030年までに世界が効率よく資源を使えるようにする。また、先進国が主導しつつ経済成長による環境汚染を防ぐ
- 8-5.2030年までに若者や障害者、男女が働きがいのある人間らしい仕事に就けるようにする。同じ仕事で同じ給料が支払われるようにする。
- 8-6.2020年までに仕事、通学、職業訓練を受けていない若者を大きく減らす
- 8-7.強制労働、奴隷、人身売買などを終わらせるために、効果的な取り組みを緊急に行い、子どもを兵士にすることを含めた最悪の形の児童労働を確実に禁止する。2025年までにあらゆる児童労働をなくす。
- 8-8.他国に移住している人、女性で仕事を続けることが不安定な人たちを含めた、すべての人の働く権利を守り、安全に安心して働ける環境を進める
- 8-9.2030年までに持続可能な観光業と政策を作り実施する。
- 8-10.すべての人たちが銀行、保険などの金融サービスを使えるようにする
- 8-a.開発が遅れている国に対して、貿易のための援助を増やす
- 8-b.2020年までに若者の仕事について世界的な戦略を作り実行する
参照元:公益財団法人 日本ユニセフ協会
SDGs目標8では、これら8-1~10の目標(ターゲット)と8-a、8-bの手段で経済成長と安定した収入と生活の提供を目指しています。開発が遅れている国の経済を発展させることで、世界的に問題視されている児童労働や人身売買などを改善しながら、若者たちが十分な収入を得られる仕事(ディーセント・ワーク)に就けることを目指しています。
経済成長と働きがいの関係
すべての貧困をなくすためには、経済成長が必要です。しかし、経済成長だけではすべての貧困をなくすことは難しいのが現状です。
2013年にバングラディシュでラナプラザ事件というビルの崩壊事故がありました。
ラナプラザというビルが突然崩壊し、そこで衣料品を作っていた労働者から多数の死傷者が出たという衝撃的な事故でしたが、問題に上がったのは事故だけでなく、労働者の大部分が1日約1ドルの低賃金で働かされていたことでした。
ラナプラザで作られた衣料品はブランド企業や小売業者に売られ、2013年~2014年のバングラディシュの既製服部門の輸出総額は245億ドルとなり、約400万人の(主に女性の)雇用を生みました。
しかし、その陰で不当な条件で働かされている労働者の問題も浮き彫りになったのです。これにより、経済成長だけを推進しても、SDGsの目標であるすべての人の貧困をなくすことはできないといえます。
よって、SDGsの目標達成には経済成長と働きがいのある仕事(ディーセント・ワーク)の2つをバランスよく推進する必要があるのです。
世界のSDGs目標8への現状と課題
世界中でSDGs目標8の取り組みがありますが、一部の国や地域で改善が見られるものの、世界全体で見るとまだまだ課題が多いのが現状です。世界のSDGs目標8の現状から、問題視されている課題は「失業率」「若者の雇用環境」「ジェンダー格差」「児童労働」があげられます。
失業率が増加傾向
世界では働きたくても働けない人が多くいます。先進国の失業率はアメリカ3.64%、中国4.2%、日本2.56%、ドイツ3.07%、イギリス3.7%と5%以下となっていますが、最も失業率が高い南アフリカでは33.5%と先進国と比べて大きな差があります。
さらに、2018年から2022年の推移を見ても、先進国よりも失業率が上昇傾向にあります。
参照元:GLOBAL NOTE
失業率が高い国上位5か国をあげると、1位が南アフリカ、2位はスーダンでどちらも失業率30%以上と高い失業率となっています。パレスチナ、ヨルダンが20~25%を推移しており、2018年から2022年までの間に南アフリカは+6.3%、スーダンは+12.64%と、どの国も上昇傾向です。パレスチナのみ-1.72%と減少していますが、それでも失業率20%を下回らず先進国と比較するといまだ高い数値です。
ウクライナに関しても同様の結果ですが、2022年の上昇は世界情勢からくるものと思われるので例外とします。
参照元:GLOBAL NOTE
若者の雇用環境
若者の労働市場には明るいニュースもありますが、依然として課題も多いです。
国際労働機関(ILO)の最新報告書『若者の世界雇用動向』によると、15~24歳の若者の世界的な労働市場はここ数年で改善し、上昇傾向にあります。しかし、若者の失業率は依然として13%で、約6,500万人が職を持っていないという現実もあります。このデータは、雇用情勢に依然として大きな格差があることを示しています。
また、すべての若者が新型コロナウイルスのパンデミック後に回復の恩恵を受けているわけではなく、特定の地域や若い女性がその波に乗れていないことが報告されています。これらの地域差や性別不平等も、引き続き重要な課題です。
参照元:5つのチャートから見る、世界の若者の雇用状況2024
根深いジェンダー格差
男女平等な社会を実現しようと世界で様々な取り組みがされていますが、男女の賃金格差はなくなっていません。2019年の経済協力開発機構(OECD)の調査結果では、世界での男女の賃金格差は13.6%と報告されています。
しかし、2022年のデータではベルギーやブルガリア、コロンビアなどで賃金格差が10%を下回っている国もあり、改善の兆しもみられます。それでも、世界全体で達成するには長い道のりが予想されます。
参照元:ジェンダー平等の加速
参照元:男女間賃金格差 (Gender wage gap)
▼男女の賃金格差について、詳しくはこちら
男女の賃金格差の現状と解決策とは?改善のための日本の取り組みを紹介
児童労働の慢性化
国によっては、たとえ法律で禁止されていても児童労働が行われているケースがまだ多くあり、児童労働は、2021年で1億6,000万人いると報告されています。これは世界の子どもの10人に1人の割合といわれています。児童労働はおもに農業に従事していることが多く、経済的に貧しい国では不足する人手を児童労働で補うことが慢性的に起こっているのです。
児童労働に従事させられることで、子どもたちが本来受けられるはずの教育の機会を失ってしまい、基礎的な読み書きや計算ができないことで、成人しても満足な収入を得られる職業に就けずにいます。
日本の現状と課題
SDGsという用語は徐々に浸透して、日本でも取り組む企業も見られますが、まだまだ課題が多く、企業が掲げている目標に対して現実が追い付いていないのが現状です。
日本で主に問題として取り上げられている課題は4つあります。
ジェンダー格差が埋まらない
女性の労働者は増えましたが、管理職での割合はまだまだ少ないのです。
2024年のグローバル・ジェンダー・ギャップ指数において、日本は146か国中118位にランクインしています。東アジア・太平洋地域では、韓国やカンボジアを含む18か国中で17位となっています。
参照元:Global Gender Gap 2024
主な指標
1. 経済参加と機会
日本は146か国中120位。
上級管理職に占める女性の割合は、フィリピンが48.6%であるのに対し、日本は14.6%と低い水準です。
2. ジェンダー平等スコア
日本の男女平等スコアは17.1%で、上級職における男女格差が依然として大きいです。
推定勤労所得は2024年のスコア58.3%で格差がありますが、2016年からの改善が見られます。
3. 政治的エンパワーメント
日本は113位で、ジェンダー平等率は11.8%。
閣僚職の4分の1を女性が占め、33.3%のパリティスコアとなり、前年から大幅に改善しましたが、議会でのジェンダー平等は11.5%で進展は限られています。
4. 教育と健康
識字率や中等教育の就学率などで、教育の男女平等がほぼ達成されています(スコア99.3%)。
健康と生存のスコアは58位で、ほぼ前年と同じです。
全体的に日本は男女平等に向けた改善が見られるものの、特に経済参加や政治の分野で依然として大きな課題が残っていることがわかります。
雇用形態の賃金格差
正規雇用と非正規雇用の間で賃金格差があり、同じ業務内容でも得られる収入に差が開いています。
2020年4月から同一労働同一賃金が義務化されましたが、まだ課題は多いといえるのが現状です。
厚生労働省の令和5年「雇用形態、性、年齢階級別賃金および雇用形態問賃金格差」によると、男女計では、正社員・正職員の給料は 約34万円に対し、正社員・正職員以外 は約23万円となっています。
参照元:厚生労働省 令和5年雇用形態、性、年齢階級別賃金および雇用形態問賃金格差
よって、賃金格差はまだ埋まらず、長時間労働で低所得のままであるワーキングプアの人たちが多くいます。
長時間労働が多い
「日本人は働きすぎ」とよくいわれます。
経済協力開発機構(OECD)の統計データによると、2021年の労働時間ランキングでは世界で27位でした。
参照元:グローバルノート – 国際統計・国別統計専門サイト 世界の労働時間 国別ランキング・推移(OECD)
しかし、この労働時間はサービス残業が含まれていません。現実的な数値化と考えると疑問が残る結果でもあります。
厚生労働省の「令和4年度 我が国における過労死等の概要及び政府が過労死等の防止のために講じた施策の状況」によると、週の労働時間が49時間を超える割合は
日本:15.3%
アメリカ:14.5%
イギリス:11.4%
フランス:8.8%
ドイツ:5.3%
韓国:17.2%
です。韓国に次いで2位ですが、世界と比較しても日本は働きすぎといえます。
参照元:厚生労働省 令和4年度 我が国における過労死等の概要及び政府が過労死等の防止のために講じた施策の状況(本文)第 1-1-1-24 図 諸外国における「週労働時間が 49 時間以上の者」の割合(令和4年)
世界と比べて日本が達成できていること
課題は残っていますが、世界と比較して達成できている項目もあります。
- 現代の奴隷制の犠牲者
- 銀行などの金融機関に口座を持っている
- 労働者の基本的な権利は保証されている
- 雇用人口比率
- 雇用、教育、訓練を受けていない若者の割合
とくに、労働者の基本的な権利と雇用人口比率、雇用や教育、訓練を受けていない若者の割合は、先進国を含めても達成率が高く、世界的に見て目標を達成、維持できています。
日本で生活していると実感がわきませんが、世界から見てみると教育や権利など私たちが当たり前だと思っていることが保証されていない国の方が多いのです。
参照元:持続可能な開発レポート2022
SDGs目標8を実現するための世界の取り組み
SDGsの課題はたくさんありますが、成功事例もあります。世界でのSDGs目標8の取り組みをいくつか取り上げます。経済や労働環境への取り組みを考えているなら、世界の成功事例は参考になるでしょう。
国際労働機関(ILO)のディーセント・ワーク推進
ディーセント・ワークという用語を最初に提唱したのはILOの責任者です。すべての人にやりがいのある人間らしい仕事を与えるために、ILOは日々活動しています。
たとえば、アフリカの道路建設と維持管理、排水設備、水保全などのインフラ開発を支援し、生活基盤を整えながら雇用を生み出す雇用集約型投資プログラム(EIIP)を実施し、若者や女性を積極的に活用しています。
ベトナムにおいては、工場労働者の労働条件を改善するベターワークというプログラムを通して、参加したベトナムの工場の約65%が売り上げが増加し、生産能力は62%も拡大しました。その結果、雇用者数も60%増加しています。
参照元:国際労働期間 ディーセント・ワーク ILOの活動ハイライト
参照元:国際労働期間 アフリカにおける雇用集約型投資プログラム(EIIP)
アフリカの低所得者の口座開設
世界銀行によると、貧困層の4人に3人は銀行口座を持っていないとされています。口座開設のための費用や手続き、銀行に行くための物理的な距離が理由です。しかし、発展途上国の人たちは海外へ出稼ぎに行くことが多く、故郷の家族へ仕送りをするためにも銀行口座は需要があります。
そこで、途上国では普及率の高い携帯電話を活用したモバイル送金サービスを導入し、インフラを整えています。2013年時点でモバイル送金サービスは、世界84か国のうち51.7%をサブサハラとアフリカ地域が占めています。
参照元:総務省 第1部 特集 ICTがもたらす世界規模でのパラダイムシフト
アイスランドのジェンダー平等教育
男女平等などジェンダーへの取り組みで進んでいるのはアイスランドをはじめとした北欧諸国です。その北欧諸国の中でもアイスランドは12年連続で上位に位置しています(2021年時点)。
アイスランドでは女性の活躍が目覚ましく、政治では議席の48%を女性が占めており、2013年には女性初の首相が誕生しています。就業率は80%以上と高く、企業代表者の44%は女性です。
法律では、父親と母親に強制的な育児休暇を与え、男女どちらでも家族と仕事のバランスがとれるように体制を整えています。
参照元:Guide to Iceland 男女平等とアイスランド
参照元:Global Gender Gap Report 2021
参照元:男女共同参画局 共同参画2022年8月号
ドイツの移住労働者への言語教育
海外では、労働力不足を解決するために移民を積極的に受け入れている国があります。ドイツはそういった国の1つです。
ドイツでは国や自治体で、移民してきた人たちが働けるように、移民向けの自国語教育プログラム(社会統合プログラム)を実施しています。このプログラムは1時間1ユーロ(約148円)で受講でき、すべてのプログラムを通過すると仲介役の助けなしで社会生活が送れるレベルの言語力をつけられます。
また、言語だけでなく文化や社会も理解できる場として社会オリエンテーションなど帰属するための支援が設けられています。
参照元:文化庁 特集 「地域における日本語教育の展望-日本語教育の総合的推進を目指して」
参照元:円通貨換算機
イギリスの働き方改革
仕事と生活を両立させるワークライフバランスという言葉があります。内閣府では「誰もがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たす一方で、子育て・介護の時間や、家庭、地域、自己啓発等にかかる個人の時間を持てる健康で豊かな生活ができる」こと定めており、若者が年齢や性別に関係なく好きな仕事ができるようにして、持続可能な社会に貢献することを目指しています。
イギリスではワークライフバランスを「年齢、人種、性別に関わらず、誰もが仕事とそれ以外の責任や欲求を調和させられるような生活リズムを見つけられるように働き方を調整すること」と定義し、さまざまな施策を実施しています。
労働時間規制や休暇制度はもちろん、柔軟に働けるための施策も行っていて、勤務時間を労働者が決められるフレックス・タイムやパートタイム契約を結んだ労働者2人が1つの仕事を分担するジョブ・シェアリングといった多様な勤務形態を取り入れています。
参照元:厚生労働省 平成19年版 労働経済の分析 ワークライフバランスの各国の動向
参照元:内閣府「仕事と生活の調和」推進サイト
ワークライフバランスについて、詳しくはこちら
ワークライフバランスの考え方とは?日本の課題と企業の取り組みを紹介
日本のSDGs目標8の取り組み事例
これからSDGs目標8への取り組みをしたいと考えている場合、すでに実施されている具体的な取り組みはどのようなものか知っておくと参考になります。日本の企業が実践している事例を紹介しますので、企業で取り組みを検討したい人は参考になるでしょう。
株式会社ヤクルト本社の雇用環境改善
株式会社ヤクルト本社では、労働環境の改善を意識した5つの取り組みが行われています。
- 人権、労働、環境、腐敗防止などに配慮したCSR(自社らしい社会的責任の観点で行う活動)調達
- 安心・安全で高品質な商品の生産
- 適正な雇用の確保
- 女性(ヤクルトレディ)の就労環境を整備
- 女性の能力向上の支援
事業の宅配ビジネスにおいて、女性の貢献が大きいと考えており、女性のためにキャリアアップ研修や女性の働きやすい環境整備に取り組んでいます。その結果、女性の管理職数は2017年の45人から2021年で60人まで改善しています。
参照元:株式会社ヤクルト本社 サステナビリティレポート
日本郵政株式会社の職場づくり
日本郵政株式会社は働きやすい環境づくりに力を入れており、時間外労働の削減やテレワークの導入などに取り組み、ダイバーシティやワークライフバランスを推進しています。
さらに性的少数者の社員が働きやすいようにLGBTQ+への理解や権利擁護の取り組みの指標となるPRIDE指標を導入し、人権とハラスメントに関する研修や同性パートナーへの特別休暇の適応などの活動をしています。
参照元:日本郵政株式会社 サステナビリティ 人と共に 働き方改革
アサヒホールディングス株式会社のダイバーシティへの取り組み
アサヒホールディングス株式会社は、従業員の多様性を認め、個性を認めつつ仕事で能力を発揮できるように様々な取り組みをしています。
前日の終業時刻から一定時間の休息を与えるインターバル勤務や一定期間の勤続年数を超えた従業員に連続3日以上の休暇を与えるリフレッシュホリデーの取得率上昇、障害者雇用率の上昇、女性管理職の男女比率の向上などに取り組んでいます。
参照元:アサヒホールディングス株式会社 サステナビリティアクション サステナビリティ/SDGsの取り組み
株式会社日立製作所のジョブ型雇用の強化
株式会社日立製作所では、2020年4月から希望した事業分野に配属させるジョブ型雇用に力を入れていて、学歴別一律の初任給から個別の技能や経験、職務内容に合わせて処遇を設定しています。
今後、キャリアを自ら築いていけるように語学学習コンテンツやスキルアップや学び直しを促す学習体験プラットフォームの導入といった取り組みを推進しています。
参照元:株式会社日立製作所 トレンド解説 日立が進める「ジョブ型」とは? わかりやすく解説
株式会社セブン&アイホールディングスの労働への適正な評価
株式会社セブン&アイホールディングスは、正社員からパートタイムまで多様な働き方をしている人が多く、人材も多彩です。
採用の際には、社会的身分や人種、宗教、性別などの差別を一切認めない姿勢を示しています。
さらに、法令に従った最低賃金を遵守して同一労働同一賃金への対応を進めています。人事評価の公平性を保つため自己評価と上司からのフィードバックの双方での評価制度を採用し、企業からの一方的な評価とならないように配慮しています。
引用:株式会社セブン&アイホールディングス サステナビリティ
個人ができるSDGs目標8への取り組み
SDGsとは、世界中にある環境問題や人種差別、貧困、人権問題などの課題を世界で生きている全員で解決しようという人類全体の目標です。よって、その中の1つであるSDGs目標8の取り組みは、国や企業だけでなく個人レベルからでも実践できます。
1つ1つの行動は小さい変化ですが、SDGsを自分事として捉えて実践することで、取り組んでいる国や企業の活動を応援できます。
フェアトレード商品を買う
フェアトレードとは公平な取引という意味で、安い商品の陰で不当な報酬で働かされている労働者や環境破壊につながる生産体制が強いられている問題に対して、正当な報酬を与えることで労働者の生活を守る貿易のことです。このような非常識な取引をなくし、生産者や労働者に正当な報酬が支払われることで貧困をなくす活動につながります。
フェアトレードはコーヒーやチョコレートなど身近な商品で売られているので、スーパーなどで見かけたら購入するだけでSDGs目標8の活動に貢献できます。
▼フェアトレードについて、詳しくはこちら
フェアトレードとは?世界の貧困をなくす取り組みとSDGsの関係を解説
地産地消を心がける
海外だけでなく、日本の労働者への貢献も大事です。海外製品が沢山売られていますが、日本製品も買わないと自国の生産者の生活が危うくなります。
「地産地消」は地元で作られたものを地元で消化するという意味で、地元の経済の活性化につながります。地元の雇用や経済へ貢献することもSDGs目標8の活動につながるのです。
地産地消運動は、地元で生産された農作物や工芸品、飲食店で提供される食品などを地元で消費することで、地元の生産者や小売業者に利益が還元され、地域経済の活性化につながります。
また、地元の製品は鮮度がよく、地域の特色を生かした商品が多くあり、地元の食材を使った料理を食べることでその土地の歴史や文化を味わえるので、郷土愛にもつながる活動といえるでしょう。
ジェンダーへの理解を深める
男女間の格差をなくすために、知識をつけることも立派な活動といえます。賃金格差や管理職の男女比などの知識を持つことで、ジェンダーに関する問題について理解を深め、平等に働けるための解決策を考えられます。
ジェンダー平等に向けた取り組みは、男女間の賃金格差をなくすだけでなく、性別に基づく役割やステレオタイプをなくすことも必要です。例えば、男性はリーダーシップのある役割を担当し、女性は世話をする役割を担当するというステレオタイプなイメージが残っており、このような男女間の役割分担にも目を向ける必要があります。
ジェンダーへの理解を深めることは、格差のない平等な社会を実現するためにも非常に重要です。ジェンダーに関する知識を持つことで、性別や性的指向に関係なく、すべての人々が好きな場所で自由に働ける社会を目指せます。
例えば、職場や家庭内でジェンダーの取り組みを周囲の理解によって推進することがあげられます。
職場では、女性の昇進やキャリアアップの支援、男性も育児休暇を取得できるような制度の整備なども必要ですが、それを実施するためには一人ひとりのジェンダーに対する理解も求められます。家庭内では、家事や育児の役割分担を平等にすることが大切です。
ワークライフバランスを意識した業務をする
ワークライフバランスは国や企業など制度による取り組みだけではなく、一人ひとりの努力も重要です。
制度が整っていても、従業員に罪悪感があったり、残業代のためにわざと残業したりしていては意味がありません。従業員同士で協力し合い定時に帰宅できるように業務を効率化するなどの努力が必要になります。
「内閣府の仕事と生活の調和推進室」によると、個人の取り組みで3つの心構えと10の実践というものがあります。
3つの心構え
- 本気:仕事の効率化と労働時間削減に対して真剣に取り組む姿勢をもつ
- 前向き:一人ひとりが話し合いながら「やらされ感」ではなく、積極的に取り組む
- 全員参加:忙しいことを言い訳にせずに、全員で取り組む
10の実践
- 会議のムダ取り:ゴールを明確にして無駄な議論を省く、時間を決めて効率よく実施する
- 社内資料の削減:必要最低限の情報をフォーマットで作り、資料作成の目的と関係ない「念のための」情報は載せないようにする
- 書類を整理整頓する:書類の場所が誰でもわかるように管理することで、業務効率化をはかる
- 標準化・マニュアル化:業務をマニュアル化することで、担当者不在でもカバーできるようにする
- 労働時間を適切に管理:長時間労働が恒常化しないために上司は部下の労働時間を把握し、部下は業務報告をしっかり行う
- 業務分担の適正化:業務の流れを把握し、無駄を省く
- 担当以外の業務を知る:周囲の業務内容を把握し、助け合える環境を作る
- スケジュールの共有化:スケジュールを共有することで協力し合いながらめりはりのある働き方を目指す
- がんばるタイムの実践:一人が1つの業務に集中できる時間を定期的に設ける
- 仕事の効率化対策の共有:効率的に働いている人の働き方を共有する検収などの機会をもつ
引用:内閣府ホームページ
引用:内閣府-ワーク・ライフ・バランスの実現に向けた『3つの心構え』と『10の実践」
これらの取り組みを一人ひとりが意識することで、ワークライフバランスの推進につながります。
SDGs目標8の取り組みは正しい知識からはじまる
本記事ではSDGs目標8について把握するための基礎知識と取り組む際の課題、そして企業、実施している事例を紹介しました。
SDGsの取り組みは日本を含めて世界中で実施されていますが、全体の目標達成のためにはまだまだ努力が必要です。SDGs目標8を達成するためには、賃金格差や長時間労働といった労働環境から児童労働やジェンダー格差といった道徳的な問題まで様々な課題があります。
いきなり全ての問題に着手することは難しいですが、現状と課題を把握して一人ひとりができることから始めることで、一歩ずつではありますが目標達成に近づくでしょう。企業の事例や個人でできる活動を参考にしながら、取り組みについて考えてみてください。
身近なアイデアを循環させて、地球の未来をつなげていきましょう。皆さんと一緒に取り組んでいけたら幸いです。