SDGs | 目標11「住み続けられるまちづくりを」取り組みを紹介
現代社会においては、人々が住む場所に求める要件は多岐にわたっています。その中でも重要視されるのは、長期的に居住できる環境です。長期的に移住できる環境が整備されていれば、子どもや高齢者、障がい者など、すべての人が安心して暮らしていくことができるでしょう。そのためには、未来にわたって住み続けることのできるまちづくりが大切です。
例えば公共交通機関の拡張や安全な住宅サービスの確保、災害による被災者の削減などが挙げられます。
この記事は、SDGsの目標11「住み続けられるまちづくりを」で掲げられている内容の説明です。現在の人口の統計や過疎化が進行する原因を確認し、まちづくりを行うための課題について解説していきます。
目次
世界と日本の人口の統計
「住み続けられるまち」とは、どのような環境でしょうか。インフラや教育、医療、住居などが充実しており、誰もが安心して住み続けられる状態のことです。しかしこれらの環境は、人口が集中するとサービスが低下します。そのため現状の人口統計を把握しておくことが大切と言えるでしょう。ここでは、世界の人口統計と日本の人口統計についてみていきましょう。
世界の人口統計
近年の世界の人口統計には、いくつか傾向があります。まず、世界人口は急速に増加しており、現在の推定人口は約80億人です。
また高齢化が進んでおり、平均寿命が延びたことで高齢者の割合が増加しています。一方、出生率は減少傾向にあり、多くの国で出生率が低下していることも事実です。
■出典:国連世界人口推計
World Population Prospects
2024年版について
■出典:厚生労働省:諸外国の合計特殊出生率の推移
■出典:平均寿命 世界ランキング・国別順位 2022年 WHO版
日本の人口統計
近年の日本の人口統計は、高齢化が進んでいることが特徴です。厚生労働省の統計によると、2020年時点で65歳以上の高齢者は総人口の28.7%を占め、2050年には38.4%に達すると予測されています。
一方で出生率は低下傾向にあり、2019年の合計特殊出生率は1.36で、少子化が進んでいる状況です。これらの人口統計の変化に伴い、社会保障制度や経済政策など様々な政策課題が生じています。
■出典:厚生労働省:今後の高齢者人口の見通しについて
■出典:厚生労働省:令和元年(2019) 人口動態統計月報年計(概数)の概況
過疎化原因と世界や日本における地方の過疎化割合
地方の過疎化割合を知ることは、住み続けられるまちづくりのために非常に重要です。過疎化が進むと出生率の低下や若年層の減少、就職や生活環境の悪化を招き、高齢化が進行します。
それにより行政サービスの提供が難しくなり、医療や教育などの基本的な社会インフラの維持が困難になることが避けられないでしょう。地方の過疎化に対する割合を把握し、その対策を講じることが地域の将来を担う若い人材の確保や産業の振興、地域の活性化につながります。
ここでは地方が過疎化する原因や世界と日本における地方の過疎化に対する割合についてみていきましょう。
過疎化になる原因
過疎化する原因は複数ありますが、地方で過疎化するのは都市部へ人口が集中していることが大きな要因と考えられます。都市部に人口が集中し、それに伴って都市部へのサービスやインフラの整備が進み、都市部に人が集まりやすくなっているためです。
都市部に人が集中することにより、地方部の人口が減少し、過疎化が進むという悪循環が生まれています。また若者の都市進出が進んでいることも、地方の高齢化や人口減少を招いているのです。都市部人口が集中する理由は、次の章で詳しく解説します。
またこの他にも、地方の産業が停滞していることや、地方の税収が減り社会福祉やインフラ整備などが滞ってしまうことも過疎化の原因です。
世界における地方の過疎化原因
世界における地方部の過疎化は、多くの国で深刻な問題として受け止められていると言えるでしょう。過疎化は、都市部への人口移動や高齢化などが原因となって発生しています。
例えばアメリカでは、過去数十年間にわたり地方の過疎化が進行している状況です。特に中西部の地域においては、顕著に表れて進んでいます。
米国農務省の統計によると1940年代以降の農村地域の人口は、総人口に占める割合が減少し続けているのです。一方フランスでは、産業革命に伴う工業化が要因で農村から都市への人口移動が進んでいます。都市部に企業が集積しており、就職のために多くの若者が流入している状況です。
また韓国においても都市部の人口が増加傾向となっています。製造業の集積や都市部への重点投資、中央集権の伝統などが要因です。
■出典:海外の人口減少地域に対する施策に関する調査研究 報告書
日本における地方の過疎化原因
日本においても地方の過疎化が進行しています。過疎地域に指定される自治体は全国で約半数にも上り、日々深刻さを増している状況です。
過疎化によって人口減少や高齢化が進むと、農業や漁業、林業などの産業が衰退し、地域経済や社会の基盤が崩れることもあります。また、医療や教育などの公共サービスの提供も困難になるでしょう。
これらを防ぐためにも、地方創生や移住政策などを進める必要があります。また、地域住民自らが主体となって地域の魅力を発信し、地域の活性化に取り組むことが求められています。
■出典:総務省 令和3年度版 過疎対策の現況 – Page1
都市部に人口が集中する理由
過疎化の大きな原因は、都市部への人口集中です。都市部に人口が集中する背景として仕事やビジネスチャンスが豊富で、教育や医療などの社会インフラも整備されていることが挙げられるでしょう。ここでは都市部に人口が集中する理由について、具体的に解説します。
都市部に企業が集積している
都市部に人口が集中する理由の一つは、多くの企業が集積していることです。都市部では、仕事やビジネスチャンスが豊富にあります。
一方農村部では、農作物の価格低下などで収入が減少傾向です。そのため仕事を探す目的で、企業が集積している都市部に人が移動しています。
企業が集積することでビジネスパートナーも構築しやすく、ビジネスの創出や情報交換が行われ企業の業績向上や経済発展が促進されているでしょう。
また都市部には、さまざまな業界の企業が存在しています。例えば世界的に見るとシリコンバレーのような「PayPal」や「Google」など、金融業界やIT業界などが集積している都市部もあります。このような産業は新しいビジネスモデルや製品の開発において、独自の技術やノウハウを持っていることが多いため、競争優位性の獲得が可能です。
さらに都市部には大学や研究機関も多くあり、産学連携や研究開発などの取り組みも盛んです。これらの研究機関があることで新しい技術や知識を生み出し、ビジネスに結びつけることができます。
学校の選択肢が多く学ぶ環境もたくさんある
都市部に人口が集中する理由には、学校数の多さも挙げられるでしょう。都市部には、インターナショナルスクールや中高一貫校など、さまざまな選択肢が存在しています。また住んでいる地域によっては、小学校や中学校の自由選択も可能です。希望の学校や環境の良い学校を選ぶことができます。
一方地方の場合、選択肢は多くありません。小学校や中学校は、住んでいる場所によって指定されているのが現状です。
また都市部の場合は、予備校や大手学習塾など、学習環境が整っています。さらには美術館や図書館などの施設も身近です。地方と比べて学べる環境が豊富にあると言えるでしょう。そのため、都市部に移動する人が多い状況です。
医療機関が充実している
医療に関しても都市部の方が充実していると言えます。都市部ではさまざまな医療機関があり、専門医や最新の設備が整っている状況です。医療機関を選択することも可能となります。一方地方では、医療機関の数が少ない状況です。住んでいる場所によっては、近くに医療機関がない場合も考えられます。
医療機関が充実しているため、都市部に移動する人が多い状況です。
目標11「住み続けられるまちづくり」のターゲット
SDGsの目標11「住み続けられるまちづくりを」のポイントは、次の3つです。
- 2030年までに、だれも取り残さない持続可能なまちづくりをすすめる。
- すべての国で、だれもが参加できる形で持続可能なまちづくりを計画し実行できるような能力を高める。
- 世界の文化遺産や自然遺産を保護し、保っていくための努力を強化する。
目標11の達成目標11.1~11.7
SDGsには、17の目標と169のターゲットがあります。
目標11には10のターゲットがあり、11.1などの数字は各項目の「達成目標」、11.aなどのアルファベットは実現のための方法を示しています。
【目標11「住み続けられるまちづくりを」の達成目標】
11.1 | 2030年までに、全ての人々の、適切、安全かつ安価な住宅及び基本的サービスへのアクセスを確保し、スラムを改善する。 |
11.2 | 2030年までに、脆弱な立場にある人々、女性、子供、障害者及び高齢者のニーズに特に配慮し、公共交通機関の拡大などを通じた交通の安全性改善により、全ての人々に、安全かつ安価で容易に利用できる、持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する。 |
11.3 | 2030年までに、包摂的かつ持続可能な都市化を促進し、全ての国々の参加型、包摂的かつ持続可能な人間居住計画・管理の能力を強化する。 |
11.4 | 世界の文化遺産及び自然遺産の保護・保全の努力を強化する。 |
11.5 | 2030年までに、貧困層及び脆弱な立場にある人々の保護に焦点をあてながら、水関連災害などの災害による死者や被災者数を大幅に削減し、世界の国内総生産比で直接的経済損失を大幅に減らす。 |
11.6 | 2030年までに、大気の質及び一般並びにその他の廃棄物の管理に特別な注意を払うことによるものを含め、都市の一人当たりの環境上の悪影響を軽減する。 |
11.7 | 2030年までに、女性、子供、高齢者及び障害者を含め、人々に安全で包摂的かつ利用が容易な緑地や公共スペースへの普遍的アクセスを提供する。 |
目標11の実現のための方法11.a~11.c
【目標11「住み続けられるまちづくりを」の実現のための方法】
11.a | 各国・地域規模の開発計画の強化を通じて、経済、社会、環境面における都市部、都市周辺部及び農村部間の良好なつながりを支援する。 |
11.b | 2020年までに、包含、資源効率、気候変動の緩和と適応、災害に対する強靱さ(レジリエンス)を目指す総合的政策及び計画を導入・実施した都市及び人間居住地の件数を大幅に増加させ、仙台防災枠組2015-2030に沿って、あらゆるレベルでの総合的な災害リスク管理の策定と実施を行う。 |
11.c | 財政的及び技術的な支援などを通じて、後発開発途上国における現地の資材を用いた、持続可能かつ強靱(レジリエント)な建造物の整備を支援する。 |
■出典:我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030 アジェンダ p.22|外務省
住み続けられるまちづくりを行うための課題と解決方法
住み続けられるまちづくりのためには、エネルギー問題や人口問題などさまざまな課題を解決する必要があります。老若男女を問わず、すべての人々が快適な生活を送れるようにすることが大切です。
具体的には、どのような課題を解決するべきなのでしょうか。ここでは、住み続けられるまちづくりを行うための課題と解決方法を紹介します。
エネルギー問題と解決方法
近年の都市化や産業化の進展によって、エネルギー需要が急増し、化石燃料の使用が増加傾向です。そのため地球温暖化や大気汚染など、環境に関する問題が深刻となっています。また住民の生活にも直結してくるため、早急な解決が求められるでしょう。
そのため冷暖房や照明などは、高いエネルギー効率の製品開発が必要です。
また住み続けられるまちづくりを維持するためにも、バイオマスや地熱、風力、太陽光発電などの持続可能なエネルギー源の利用が重要になってきます。
■出典:経済産業省:エネルギー需給の概要
地方や都市部の人口問題と解決方法
地方の人口減少が進むとまちの経済や社会基盤が崩壊し、住民の生活に大きな影響を及ぼす可能性があります。特に高齢化が進むと医療・介護・福祉などの需要が増加し、まちの機能やサービスが低下してしまうでしょう。
人口減少に対応するためには、地方の生活環境やインフラを整備することが必要です。そのためには、国や自治体が積極的に対策を行っていくことが重要です。
一方都市部では、人口集中に伴うスラム化が深刻な問題となっています。都市部の人口が1%増えると、スラム街の発生率がアジアとアフリカでそれぞれ「5.3%」「2.3%」増加している事実があります。また2020年にはスラム街や非公式移住地に暮らしている人が世界で10億人以上となっておりスラム化が深刻な問題です。スラム化の問題を解決するためには、すべての人が安全で手ごろな価格の住宅と基本的なサービスを受けられるようにすることが必要となります。
■出典:厚生労働省:人口減少克服に向けた取組み
■出典:国連:持続可能な開発行動
▼スラムについて、詳しくはこちら
スラムとは?世界の現状と解決策、SDGs目標11との関係も解説
人口集中による環境問題と解決方法
都市部への人口集中が原因で、環境問題が深刻化しています。廃棄物の燃焼や家庭用燃料の燃焼、発電、産業、交通などによる大気汚染が要因です。2019年には大気汚染によって、420万人が死亡したとの報告が上げられています。具体的には都市廃棄物や大気の質を管理し、一人あたりの環境への悪影響を軽減する取り組みになります。
私たちができる身近なこととして、住環境や地域環境を守ることが挙げられるでしょう。ごみの分別や、廃棄物の適切な処理、地域の清掃活動に参加するなどが挙げられます。
■出典:国連:持続可能な開発行動
インフラ問題と解決方法
住み続けられるまちづくりを行うためには、適切なインフラが必要不可欠となっています。インフラとは、生活を支える基盤のことで、交通・電気・水道・通信・ガスの公共施設などです。
人口減少や少子高齢化が進む地方や田舎においては、インフラの維持が課題として挙げられています。例えば鹿児島県のローカル線では、人口減少によって鉄道路線の需要が低下し、一部の区間を廃線にするといった事案が検討段階です。
近年では災害時の避難所や医療施設のニーズが高まる一方で、これらの施設の維持・充実が困難になっています。
さらに通信やネットワークの整備、医療・福祉サービスの充実、生活環境の改善なども必要です。インフラ環境を整えるためには、地域の特性やニーズに合わせた施策が重要となります。
■出典:鹿児島NEWS WEB:岐路に立つ地方鉄道 路線存続のカギは
住み続けられるまちづくりを行うための世界の取り組み事例
住み続けられるまちづくりを行うため、世界ではさまざまな施策が打ち出されています。では、具体的にどのような取り組みが行われているのでしょうか。ここでは、3ヶ国を例に紹介していきます。
アメリカのポートランドでは「コンパクトシティ」を実現
ポートランドは、アメリカで最も住みたいまちとして高い評価を受けています。便利さと自然の調和が注目されており、移住する人が後を絶ちません。どのような取り組みが行われているのでしょうか。
1.都市部と自然環境の共存
ポートランドは、以前は車社会が当然の都市でしたが1979年に「都市成長境界線」を導入したことが転機になっています。開発を進めるエリアと森林や農地を保全するエリアに分けて、都市部と自然環境の共存に取り組みました。その結果都市部はコンパクトで効率的な生活が送れるようになり、農地では盛んに農業が行われるようになっています。農家で採れた新鮮な農作物は都市部の住民や企業に届けられ、共存が実現した状態です。
2.歩いて移動できるまちづくり
車移動ではなく歩いて移動ができるように、まちが設計されています。ポートランドは「世界一住みたいコンパクトシティ」として有名です。区画を細かく分けるため、1辺を通常の半分となる60mにしました。その結果歩いて散策がしやすくなり、まちがたくさんの人で活気づいています。
3.地元の食材を活かす
大手チェーンの食品店やレストランはほとんどありません。小規模な商店や地元のレストランが多い状況です。レストランでは、農家で採れた食材が扱われており人気があります。また農地では毎週マーケットが開催されており、収穫された旬の野菜や果物を目当てにたくさんの人が訪れている状況です。
■出典:ELEMINIST – SDGs 目標11「住み続けられるまちづくりを」
■出典:大和ハウス工業 – 全米一住みたい都市 ~歩きやすいコンパクトな街づくり ポートランド~
アラブ首長国連邦のマスダールシティはカーボンゼロの未来型都市
アラブ首長国連邦では、持続可能なまちづくりを目指し多数の取り組みが行われています。
潤沢なオイルマネーを活かして、クリーンエネルギー開発への投資などです。クリーンエネルギーで国内のエネルギー消費を賄おうとしています。その象徴的とも言える都市が、マスダールシティです。
1.都市のすべてを再生可能エネルギーで賄う
マスダールシティからおよそ120km離れた砂漠地帯に、太陽光発電所が建設されました。この発電所からの電力で、町全体を賄っています。またマスダール科学研究所の屋根にも太陽温水器や太陽光パネルが設置され、温水や電力を創り出している状況です。
2.ガソリン車の使用を禁止
マスダールシティではガソリン車の使用は禁止されています。移動は電気自動車もしくは、無人のモノレール「PRT」で移動する方法です。PRTは2名用のシートが2つ対面する形で、行き先をタッチパネルで入力すると時速40kmで目的地まで自動運転してくれます。
3.風が通りやすい建築設計
熱がこもらないように建築物の設計も工夫されています。風が通りやすいデザインや光が取り込まれるような仕組みなど、自然を活かした建築です。
■出典:ELEMINIST – SDGs 目標11「住み続けられるまちづくりを」
■出典:ビジネスインスピレーションメディア – オイルマネーをクリーンエネルギーに循環
インドの貧困撲滅と廃棄物リサイクル
インドには12億人の人口を抱えている現状があり、経済発展を進めていく上ではSDGsへの取り組みが重要視されています。インドでは「すべての人々が一緒に、あらゆる人のための開発、すべての人々の信頼を」を掲げ、国家プロジェクトとして推進している状況です。
1.貧困の削減
インド政府は、住居、飲料水、衛生、保健、栄養、教育など、福祉に関する多くの分野を改善する戦略を打ち出しています。例えば、すべての家庭に上下水道を敷設したり、手ごろな価格で飲み水を提供したりすることです。 この取り組みにより、成長不良の子どもと妊産婦の死亡率を大きく削減できています。
2.廃棄物のリサイクル
インドのダラビでは、製造業に伴う大量のごみを廃棄するのではなくリサイクルしています。リサイクルによって材料調達コストやエネルギーコストを低減することが可能となり、高い収益性を実現している状況です。
■出典:JICA:インドにおける持続可能な開発目標に向けた日印協力行動に関するプログラム 実施促進業務 [有償勘定技術支援] ファイナル・レポート
住み続けられるまちづくりを行うための日本の取り組み事例
住み続けられるまちづくりを行うため、日本国内ではどのような取り組みが行われているのでしょうか。ここでは、3つの都市を例に紹介していきます。
京都市の地域力活性化と自主防災組織の組成
京都市では住民が安心して暮らし続けられるまちづくりを進めるために、以下のような取り組みが行われています。
1.伝統産業の後継者不足の解消
技術継承する後継者不足に悩む伝統産業分野において、新たな担い手として障害のある方に注目が集まっています。障害のある方の中には、デザインや絵の能力が優れている人や集中力が長く続く人がいる傾向です。手作業の多い伝統産業との特性が合えば、伝統産業の技術継承につながります。
2.地域力や市民力の強化
少子高齢化やライフスタイルの変化などに伴い、自治会加入者の減少、地域コミュニティの活力低下などが危惧されている状況です。そのため、地域力や市民力を高めるための取り組みを強化しています。例えば「地域と自然を重視した企業活動」「地域行事やボランティアへの参加推進」「地域ぐるみで健康づくりのため公園体操」などです。
3.自主防災組織の組成
地域を守るための自主防災組織の組成や消防団、ジュニア消防団、文化財市民レスキューなど、まちを守るための取り組みが行われています。
■出典:京都市レジリエンス戦略冊子
宇都宮市が目指すネットワーク型コンパクトシティ
宇都宮市では少子高齢化、道路や下水道・学校施設などの老朽化、まちの活力低下など、さまざまな問題が起きています。これらを解決し、生活の質を向上させることを目的に「ネットワーク型コンパクトシティ」を掲げて取り組みを実施している状況です。ネットワーク型コンパクトシティとは、生活に関する機能が充実したコンパクトなまちを指しています。
1.人が移動しやすい交通環境の整備
次世代型路面電車システム「LRT」を整備し、時間に正確に移動できる仕組みを整備しています。交通渋滞の緩和だけでなく、車が運転できない人でも市内を移動できるようにすることも目的の一つです。
2.みやクレジット制度で環境行動を推進
各家庭の太陽光発電システムによって生み出されたCO2排出削減量を、売買可能な「みやクレジット」として創出可能にしています。みやクレジットの売却によって、事業者の環境活動推進や宇都宮市の環境資金として繰り入れられる仕組みです。
■出典:宇都宮市 – ネットワーク型コンパクトシティ(NCC)
■出典:宇都宮市 – 何のためにLRT?
■出典:宇都宮市 – みやCO2バイバイプロジェクト
宮城県の災害に強いインフラ設備の構築
宮城県では東日本大震災の大津波で壊滅的な被害を受けた地域の復旧や復興を進めています。多重防御、職住分離、高台移転などの対策であったり、災害に備えた社会基盤の構築であったりさまざまな取り組みの実施です。
1.防災・減災の取り組み
東日本大震災の教訓を踏まえ、地震や津波、台風などの災害に備えた防災・減災の取り組みを進めています。具体的には、避難所の整備や避難計画の策定、河川の改修や緑地の整備などです。
2.道路網の構築
震災時には緊急物資輸送や救急救命活動において、沿岸部の高規格幹線道路が重要な役割を果たしました。しかし三陸沿岸の離半島部では道路が分断されてしまい、集落への物資輸送や救急救命活動ができない事態に陥っています。集落の孤立を解消するために、ラダー型防災道路ネットワークの整備に取り組んでいる状況です。
3.港湾施設の機能強化
震災時は港湾施設の被害に加えて、コンテナが散乱し啓開活動が完了するまで物資輸送が大きく滞りました。災害に強い臨港地区の形成や仙台塩釜湾の設備促進に取り組んでいる状況です。
■出典:宮城県:SDGsの推進について
■出典:災害に強いまちづくり宮城モデルについて
▼災害について、詳しくはこちら
災害とは?災害に強いまちづくりと私たちにもできること
住み続けられるまちづくりをするためにできること
住み続けられるまちづくりを推進するために、私たちにはどのようなことができるのでしょうか。ここでは、住み続けられるまちづくりをするためにできることについて紹介します。
個人や自治体の災害対策
住み続けられるまちづくりにおいて、災害対策は非常に重要な要素です。以下に挙げる5つの対策が注目されています。
【個人の防災意識の向上】
災害対策の一つとして、防災意識の向上が挙げられます。住民に対して、地震や洪水などの災害に備えるための正しい知識を習得し、防災意識を高めることが必要です。またハザードマップを確認したり、避難訓練に参加したりするなどの備えも大切となります。
【土地や建物の計画】
国や自治体の場合、河川敷など災害のリスクが高い場所には適切な防災措置が必要です。例えば河川敷には公園などの開発を行い、氾濫時には水を受け止めることができる仕組みの構築が挙げられます。また、耐震性や防火性を考慮した建築物の設計も重要です。
【避難場所の整備】
災害時における避難所を整備しておくことも国や自治体の役割です。市街地に避難所を設置し、住民が迅速かつ安全に避難できるようにすることが重要となります。
地域を活性化するために個人や自治体が取り組むこと
住み続けられるまちづくりのためには、地域活性化が重要な要素となります。地域活性化は、個人で取り組む内容と国や自治体が取り組む内容の両方があるでしょう。他人任せにせず、主体性を持って行動することが大切です。
【地域のイベントや行事に参加】
地域のイベントや行事に参加することで、地域のつながりを深めることができます。また地元の小規模な店舗を積極的に利用して生産者を支援することで、地域経済への貢献が可能です。地域とのつながりを深めたり、地域経済への貢献を行ったりすることは地域の活性化につながります。
【公共施設などの整備】
国や自治体ができることは住環境や公共施設、道路などを整備することです。これらの整備により地域住民の暮らしやすさが向上し、定住率を高めることができます。
▼地域活性化について、詳しくはこちら
地域活性化の目的と魅力ある町づくりの方法。教訓と成功した取り組みを紹介
国や地域・個人ができることを一つ一つ行っていこう!
都市部の人口増加に伴い、住居費の高騰や貧困層の形成、交通網の滞り、環境の汚染、災害時の被害拡大、地域の過疎化など、さまざまな問題が考えられます。これらの問題を解決し、住み続けられるまちづくりに取り組むのがSDGsの目標11「住み続けられるまちづくりを」です。
国や自治体が取り組む内容もありますが、個人としても取り組める内容もあります。社会の一員として、住みやすいまちづくりに積極的に参加することが大切です。例えば地域の食品や商品を購入する、近隣の人とコミュニケーションをとる、公共交通機関を優先的に使うなど、すぐに始められることもあります。住み続けられるまちづくりに取り組んでみてはいかがでしょうか。
身近なアイデアを循環させて、地球の未来をつなげていきましょう。皆さんと一緒に取り組んでいけたら幸いです。