魚町銀天街のSDGs | 人と環境に優しいまちづくりに取り組む魚町商店街振興組合
「魚町商店街振興組合」は早くからSDGsに取り組んでおり、その活動は多岐に渡っています。
今回は「魚町商店街(通称 魚町銀天街)」を中心に、具体的なSDGsへの取り組みや想いなどについて、魚町商店街振興組合 理事長の梯(かけはし)さんにお聞きしました。
目次
魚町商店街振興組合は北九州からSDGsを発信している
魚町商店街振興組合は北九州市で魚町商店街の運営に携わるだけでなく、SDGsへの積極的な取り組みでも知られています。ここでは、組合の概要とSDGsに取り組むことになったきっかけ、活動に対する受賞歴をお聞きします。
愛称は「魚町銀天街」。小倉北区の広域型商店街
───本日はよろしくお願いします。まず初めに、梯様のご経歴をお願いします。
梯さん 北九州市小倉北区の魚町商店街振興組合の理事長をやらせていただいています、梯と申します。
福岡県商店街振興組合連合会の理事長も兼任し、不動産業である中屋興産代表や司法書士が本業です。
───魚町銀天街の概要を教えてください。
梯さん 商店街の正式名称は「魚町商店街」で、アーケードとしての愛称が「魚町銀天街」となっています。
JR鹿児島本線の小倉駅から徒歩5分ぐらいのところにありまして、商店街の総延長は400メートル、店舗数は150、近所に商業ビルなどがある広域型の商店街です。
SDGsモデル都市に選ばれた北九州市で全国に先駆けて取り組みを開始
───魚町銀天街はSDGsへの取り組みでも知られていますが、取り組むようになったきっかけは何だったのですか?
梯さん 北九州市は昔公害の多い町だったのですが、1970年代に克服して環境未来都市に選定されました。2018年の3月には、アジアで初めてOECDのSDGsモデル都市にも選ばれています。北九州市がSDGsモデル都市に選ばれたことをきっかけに、魚町銀天街も持続可能な社会の実現を目指してSDGsに取り組み始めるようになりました。
魚町銀天街は、2018年の8月から「SDGs商店街」という試みを全国に先駆けて始めたのですが、それまでに行ってきたいろいろな取り組み全てをSDGsに結びつけることで取り組みを始めました。特に「目標4.質の高い教育をみんなに」と「目標11.住み続けられるまちづくりを」の2つを主なテーマとしています。
6月と11月に20回に渡って行った「得するまちのゼミナール(通称 まちゼミ)」という取り組みや、ホームレス、重度障がい者の自立支援、昆虫食の自動販売機の設置などを主に行っています。
数々の受賞歴があり内閣総理大臣賞も受賞している
───SDGsに取り組む中で、多くの賞を受賞されていると伺っています。いくつか紹介していただけますか?
梯さん 私たちは自前のYouTubeスタジオを持っていまして、まちゼミの動画を始めとしたSDGsに関するさまざまな発信をしています。
まちゼミ関連の動画をコンテストに応募したところ、第1回のSDGsクリエイティブアワード最優秀賞をいただきました。また、魚町銀天街の取り組みが評価され、2019年の12月には第3回ジャパンSDGsアワードのSDGs推進本部長(内閣総理大臣)賞もいただいています。
さらに、北九州市のSDGsの取り組みで日本ESD賞をいただくなど、多くの賞をいただくことができました。
商店街でも店舗でも誰1人取り残さない取り組みをしている
SDGsへの積極的な取り組みが評価され、数々の賞を受賞している「魚町商店街振興組合」ここでは実際に行ってきた具体的な取り組みを、1つひとつ詳しく聞いていきます。
障がい者と同じ目線に立った支援をしている
───今まで行ってきたSDGsへの取り組みを具体的に教えてください。
梯さん まず、障がい者支援の取り組みについてお話します。重度の障がい者の方が24時間自立生活を送るためには介助が必要なのですが、肝心の介助がなかなか集まらないのです。
ですので、介助者を集めるためにチラシを配ったり、商店街の中でチャリティー餅つき会を行ったりなど、さまざまなイベントで障がい者の自立支援のお手伝いをさせていただいています。
さらに、障がい者の方が乗っている車椅子に、商店主に実際に乗って自分のお店に入ってもらい、自分の店がどれだけ障がい者にとって買い物しにくいか体験してもらう活動もしています。
その他、ユニバーサルマナー検定をみんなで受講するなどの活動も行っています。
寄り添った支援でホームレスが減少している
───当事者の目線に立ってみないと分からないことは多いですよね。次に、ホームレス支援について教えてください。
梯さん ホームレスの方の自立支援は、2005年から始めていました。当時ホームレスの方は400人ほどいらっしゃって、冬場はアーケードの中で寝泊りされている状況でした。
そこで、ホームレスの方を自立支援センターの方と一緒に訪ねていき、困っていることや現在の状況などを聞いて自立支援に繋げていくという事業を行いました。
結果、400人ほどいらっしゃったホームレスの方が今では50人ほどになり、商店街で寝泊まりされている方はほぼいらっしゃらないという状況になっています。
学生ベンチャー企業と連携して環境に優しい昆虫食を販売している
───商店街で昆虫食を販売しているとのことですが、どのような経緯だったのですか?
梯さん コロナウイルス流行前、中国でサバクトビバッタというバッタが大量発生し、それが中国の穀物を食い荒らしている、しかも中国から日本に飛んでくるかもしれないという噂がありました。九州は大陸に近いこともあり危険だと思っていた際、いっそのこと虫を食べてみたらどうかという発想に至りました。
そして虫を食べてみる体験動画をYouTubeにアップしたところ、東京農業大学の方に見ていただけたのです。
動画をきっかけに、東京農業大学さんがコオロギの飼育をして、飼育したコオロギをパウダーにするという授業を行い、受講した学生さんたちが学生ベンチャー企業を立ち上げるまでに至りました。
その後私たちは学生ベンチャー企業と連携して、昆虫食という非常に高タンパクでCO2を出さない、環境に優しい食材の開発を社会実験的に始めました。
3年ほどまえから、開発した昆虫食の商品を魚町銀天街の自動販売機で販売するようになったという経緯です。
エコルーフの導入で人にも節電にも配慮している
───情報発信からそんな素晴らしいご縁に繋がったんですね。他に、「エコルーフ」というものを活用した省エネにも取り組まれているとお伺いしました。
梯さん エコルーフは2010年に建築しました。魚町1丁目のアーケードと魚町2丁目、3丁目のアーケードの間に国道199号線があるのですが、そこにはもともと天井がありませんでした。特に障がい者の方などは、渡るときに傘を差すのが大変だということで、アーケードを建設したらどうかという話が出たのです。
そこで、当時あった中心市街地活性化計画の事業認定を取り、エコルーフの建築を行いました。透過性の太陽光パネルを導入することで5kw/hの発電を行い、アーケードの電力に活用しています。
各店舗もそれぞれSDGsに取り組んでいる
───人にも環境にも優しいアーケードなんですね。商店街のお店のSDGsについて教えてください。
梯さん 魚町銀天街としていろいろな取り組みを行っていますが、お店それぞれでもSDGsの取り組みを行っています。
例えばお茶屋さんが、それまで捨てられていた茶殻から、おいしく食べられる「お茶ぽん」というポン酢を開発して販売しました。
飲食店では、プラスチックのストローを廃止し、ガラスストローやステンレスストローを導入しているお店もあります。
呉服屋さんでは風呂敷をエコバッグの代わりに勧めていますし、フェアトレードの商品を扱うお店やヴィーガン、マクロビ、グルテンフリーの商品を扱っているお店もできました。
また、北九州はタケノコの産地なのですが、広大な面積の竹林が放置されていて非常に荒れているのです。そこで、早い時期から竹を伐採して、小倉城で竹灯籠にして飾るというイベントを行いました。
余った竹は竹チップや竹炭にして余さず活用しています。
竹のパウダーを使った線香を仏壇屋さんが販売する取り組みも行っています。
「魚町商店街振興組合」はこれからも人に優しい町づくりでSDGsに貢献していく
さまざまな取り組みでSDGsに貢献している魚町商店街振興組合ですが、今後はどのような活動を考えているのでしょうか。ここでは、今後の展望や目指すまちの形について聞いていきます。読者の皆さんへのメッセージもいただきました。
まちゼミや清掃活動を「北九州まなびとESDステーション」で行っている
───今後、新たに取り組んでいきたい活動があればお聞かせください。
梯さん 現在、魚町銀天街では「北九州まなびとESDステーション」という、生涯教育や課題解決型事業、地域貢献事業などを学ぶ施設で、大学生とグリーンバード(「街のそうじ」を主な活動とするNPO団体)での清掃活動など、さまざまな地域貢献活動を行っています。
6月と11月にはまちゼミを行い、商店主の持っているノウハウや知識を無料でお客様に提供するという取り組みもしています。
今後としては、8月に特別企画で、朝ゼミという朝7時半から行うサラリーマン向けのゼミナールの開催も考えています。11月にSDGs関連の料理教室を開催するための準備も進めているところです。
地域の活性化とともに人に優しいまちを目指している
───どのような商店街にしていきたいかなど、魚町銀天街のこれからについてお聞かせいただけますか?
梯さん 新しいことや社会に貢献する活動を行っているということで、魚町銀店街が前向きで意欲のある商店街であるということが理解されてきています。お客様のSDGsへの認知も進んできていて、お客様とともにSDGsのいろいろな活動が行えるようにもなってきました。
さらには、歩行者通行量や地価も上昇しており、今までリノベーション中心だったものが、再開発ビルができたりマンションができたりと、発展の段階に入ってきています。さまざまな再開発の計画が商店街の中にありますし、日本IBMさんと連携して「IBM地域DXセンター」ができるなど、新たにインテリジェントビル(高度情報化ビル)などもできました。
今後は、歩いて楽しい公園のような通りを整備するなど、これまでもこれからも人に優しいまちを目指していきたいと思っています。
魚町商店街振興組合は手を取り合って持続可能な世界を作っていく
───最後に、読者の皆さんへメッセージをお願いします。
梯さん いろいろな事件や戦争などが起きていますが、1人ひとりがSDGsの精神、誰1人取り残さない精神を持ち、少しずつSDGsに取り組むことによって、持続可能な社会、持続可能な世界ができていくのだと思います。
1人ひとりが自分にできることから始めることが大切です。皆さん一緒にがんばりましょう。
───本日は貴重なお話をありがとうございました。
魚町商店街振興組合は北九州から誰1人取り残さない世界を実現していく
北九州市から魚町銀天街を通してSDGsに取り組んでいる魚町商店街振興組合の活動は、障がい者支援から省エネ、竹の活用まで非常にさまざまなものがありました。
また、SDGsの周知や理解を促す取り組みにも力を入れていて、誰1人取り残さないその精神は素晴らしいものがあると感じました。
これからも人に優しいまちを作り、SDGsへの取り組みで持続可能な世界へ貢献していく魚町銀天街に興味を持たれた方は、1度ホームページをご覧になってはいかがでしょうか。
▼魚町銀天街のホームページはこちら
北九州市魚町銀天街公式サイト
▼SDgsの取り組みについて、詳しくはこちら
日本初SDGs商店街!|魚町銀天街SDGs.com
▼魚町銀天街のYouTubeチャンネルはこちら
YouTube-魚町商店街振興組合
身近なアイデアを循環させて、地球の未来をつなげていきましょう。皆さんと一緒に取り組んでいけたら幸いです。