明星大学のSDGsの一つは「SDGsポイント」で学生の取り組みを後押しすること
東京都日野市にある明星大学は、教育面で高い評価を受けている一方でSDGsにも取り組んでいる大学です。
今回は経営学部教授の安岡さんに、明星大学の「SDGsポイント」という取り組みの内容や経緯、課題、今後の展望をお聞きしました。
目次
SDGsポイントは多くの学生が取り組んでいる評価の高い取り組み
明星大学では「SDGsポイント」を通じてSDGsに取り組んでいます。この「SDGsポイント」というのは具体的にどのような取り組みなのでしょうか。ここでは、SDGsポイントの具体的な内容や経緯、取り組みでの受賞について聞いていきます。
SDGsポイントは個人の意識にまで関わる取り組み
───本日はよろしくお願いします。まずは安岡さんの自己紹介と、SDGsに関してどのようなことに取り組まれているかを教えてください。
安岡さん 明星大学経営学部教授の安岡と申します。経営学の中でも特に経営戦略論や企業論といった、戦略や組織に関することを教えています。

SDGsに関して行っているのは「SDGsポイント」という取り組みです。例えばせっかくESGやSDGsに取り組んでいても、「何となく」SDGsに取り組んでいるという企業は多いです。それでは上辺だけでしかなく、最終的には個人の意識にまで到達しなければ本当の意味でのSDGsとは言えません。
そこで2年半前から、学生が起こしたSDGsに関する行動に対してSDGsポイントを与えるという取り組みを始めました。

───SDGsに取り組んだらポイントがもらえるというのは、面白い発想ですね。どのくらいの数の学生が参加しているのですか?
安岡さん 現在は経営学部を中心に150名ほどの学生が取り組んでおりますが、理工学部や情報学部など他の学部の学生も参加し、全学部の学生が参加できる仕組みになっています。基本的に運営は私のゼミ生が行い、SDGsの戦略を勉強しながら事務局も担当してもらっている形です。
SDGsポイントはオンラインで行われ賞品ももらえる
───SDGsポイントは、具体的にはどのような内容になっているのですか?
安岡さん LMS(学習管理システム)という、オンラインで授業教材を提供したり動画を見たりするようなシステムがあり、LMS上に並んでいる経営戦略などの授業と一緒にSDGsポイントも並んでいます。通常は授業の内容が表示される欄に、SDGsポイントでは具体的な取り組み方が書かれており、レポートという形で受け付けています。
SDGsの17ある目標のうち、どの目標に関して取り組んだのか、また具体的な取り組み内容を100字程度で書いてもらい、写真を添付してもらうという形です。

提出が終わると月ごとに集計し、まず事務局の学生が評価します。そして最終的に私が評価を出して成績のような形でポイントを提供し、3か月ごとの表彰では、上位者にはAmazonギフト券やSDGsバッジが贈られます。
明星大学の教育新構想の一環として始まった
───大学の授業なのに賞品までもらえるのはすごいですね。SDGsポイントはどのような経緯で始まったのですか?
安岡さん 2020年に始まった明星大学の教育新構想の中で、SDGsに関する取り組みを提案してほしいと学長に言われたことがきっかけです。当時はコロナ禍で学生が大学に来られない状況でしたので、授業にはLMSを使っていました。
そこで、LMS上で他の授業と同様にSDGsポイントのコースを作れば簡単に低予算で始められると提案し、採用されたというのが取り組みの経緯です。当時はコロナ禍で授業はオンライン授業のみだったため寂しい状態でしたし、SDGsに関する問題意識が高い学生が多かったこともあり、たくさんの学生に参加してもらえました。
取り組みが評価され脱炭素チャレンジカップで受賞
───SDGsポイントの取り組みで賞を受賞されたと伺っています。
安岡さん SDGsポイントの取り組み初年度の末に、文部科学省と環境省が開催した脱炭素チャレンジカップに参加し、マクドナルドオーディエンス賞を受賞しました。開催前年の9月から取り組み始め、大会には事務局の学生2人とオンラインで出場し、事前に作成した2分間の動画を流して1分間のプレゼンをしました。
結果、ファイナリスト28団体の中から上位2団体に入賞し、視聴者投票では1番に選ばれました。私たちが取り組んでいるSDGsポイントは、LMSのような仕組みさえあればどの大学でもできるということを、とてもシンプルにわかりやすく紹介してくれたことが受賞の要因だと思っています。

継続が課題だが乗り越えることで未来に良い影響も
授業にSDGsポイントを導入することでSDGsに取り組んでいる明星大学ですが、新たな取り組みを行うにあたっては難しい点もあったと思います。ここでは、SDGsポイントに取り組む上での課題とその解決策、学生に与える影響について聞いていきます。
学生の継続的な取り組みが課題
───SDGsポイントは独自の取り組みだということもあり、難しい点も多いと思います。課題として感じておられることはありますか?
安岡さん ずっと継続してくれる学生が少ないということが1番大きな課題です。授業の課題としてやらせると、単位を取らなければいけないという危機意識から取り組んでくれるのですが、継続的に取り組んでくれる学生は150人いる中でわずか1桁です。やはり景品をもらうというモチベーション、目的意識だけでは、なかなか継続させるのは難しいと感じています。
そして、どのような行動がSDGsに結びつくのか分からないという学生も多いです。例えば、スーパーに行ってマイバッグを使うことも、小さなことではありますが立派なSDGsの行動と言えます。このようなSDGsにつながる行動を、どの学生も何かしら行っているはずだと思うのですが、「何をやればいいですか?」と聞いてくる学生は多いです。
SDGsということで難しく考えてしまいがちですが、簡単なことでも良いので一日一善のような形で取り組むだけでも、多くのポイントが獲得できるのです。そのあたりをきちんと理解している人が一部に限られるということもあり、最初の一歩を踏み出させることと、継続させるということがやはり難しく思っています。
課題の解決に向けてSNSに取り組んでいる
───何事においても、やはり継続することというのは難しいのですね。課題に対しては、どのように解決していこうとお考えですか?
安岡さん こうした課題に対処するためには、学生目線が必要だと思っています。LMSで投稿するとなると、やはりレポートのイメージが強くなってしまうため、SNSでの取り組みも始めました。新しく事務局を運営してくれている学生の提案を受け、Instagramで告知などをしています。
▼明星大学 SDGsポイントのInstagramはこちら
meisei.sdgs
学生も、Instagramをフォローする程度の簡単なことはやってくれるため、まずSNSから入ってもらい、月1回でも良いので投稿してもらうことにより継続につなげていくことを目指しています。そして最初の一歩としては、自分たちの取り組みに少なからず意義があることを認識してもらうことも大切です。
今回のように記事に取り上げていただくことも増えましたし、先日は創価短期大学から同じような取り組みをしたいと言って、実際に学生を連れて訪問していただきました。情報発信は常に行っていかなければいけないと考えています。
受賞がきっかけで他大学からの見学も
───他の大学が見にきてくれたというのは、成果を実感できる出来事ですね。どのような経緯で来られたのですか?
安岡さん 当大学のホームページで、脱炭素チャレンジカップでマクドナルドオーディエンス賞を取った記事を掲載していたことがきっかけです。創価短期大学の先生から、うちの大学でも同じような取り組みを行いたいということで広報を通じてお問い合わせが来ました。
当初はZoomで情報交換していたのですが、やはり学生が直接見た方が良いという話になり来校していただきました。そして事務局の学生も一緒になり、実際にどのように取り組みが行われているのかの説明をさせていただいたという流れです。
SNSに関しては創価短期大学の方が進んでいたのですが、当大学のような仕組みでの継続的な情報発信はされていませんでしたので、そうした取り組みも行っていきたいと仰っていただきました。
予算確保のために大学の取り組みと連携した
───その他にも、何か難しかった点はありますか?
安岡さん SDGsポイントは教育新構想の中の取り組みとして始め、初年度から脱炭素チャレンジカップや情報文化学会大賞で受賞するという結果を出すことができました。
しかし大学というのは1年ごとに予算が組まれるため、2年目以降も継続して予算を取ることは簡単ではありません。そこで、明星大学で行っている、大学の自然豊かな立地を活かした「SATOYAMAプロジェクト」という取り組みに関わることで予算を確保することを考えました。
SATOYAMAプロジェクトは理工学部の柳川先生が立ち上げたプロジェクトで、里山の生物多様性に着目し、地域の文化や歴史、暮らしや仕事を含めたこれからの時代にふさわしい里山を模索するという取り組みです。

現在では、SATOYAMAプロジェクトの仕組みの1つにSDGsポイントを加えてもらうことで、2年目以降の予算をいただいています。SATOYAMAプロジェクト自体がSDGsの取り組みのため、そこに対するポイントの仕組みとして、SDGsポイントが位置づけられたという形です。

SDGsポイントは学生のキャリアにも良い影響を与えている
───SDGsポイントに取り組んできた学生の、具体的なエピソードがあればお聞かせください。
安岡さん ある学生は、最初は参加登録だけでしたが、コロナ禍をきっかけに何かしらの取り組みがしたいと次第に継続して取り組んでくれるようになり、自主的に事務局の運営にまで関わってくれました。最終的にはもっと研究してみたいという希望で、SDGs経営の本質をテーマにした卒業研究を行うまでに至っています。
ですのでその学生が「就活のエントリーシートに何を書いたらいいのか」と相談してきたときにも、「あなたには一生懸命ずっとがんばってきたこと、最後まで諦めないで3年間続けてきたことがある」と諭したのです。
結果としてSDGsに関する取り組みを自己アピールとしてエントリーシートに書くことができましたし、卒業研究にも継続して努力してきたことを活かすことができました。

───取り組みを通じて学生の成長を感じられるのは嬉しいですね。他にもエピソードはありますか?
安岡さん もう1人、芸能人を目指していた学生もいます。その学生はSDGsポイントへの取り組みも真剣で、脱炭素チャレンジカップに参加した際にも中心となりプレゼンに取り組んでいました。芸能人を目指して活動していたことが結果として練習になり、プレゼンがとても上手にできたと話してくれました。そしてSDGsの取り組みをエントリーシートに書いて就活を行った結果、希望していたネット銀行に就職が決まりました。
また、大学のオープンキャンパスで就職活動について発表してくれた際、SDGsポイントの取り組みに芸能活動の経験が活きたこと、そして取り組みをエントリーシートに書いたことで面接につながったなどを盛り込んでくれました。単純にネット銀行に受かったことを話すのではなく、コロナ禍も含めたSDGsの取り組みの経緯を話してくれたことで、オープンキャンパスの参加者にもSDGsの取り組みの啓発を行うことができました。
この2人の学生にとって、SDGsポイントはある意味1つのツールになっていたのだと思います。SDGsの取り組みを裏方でサポートしながら最終的には自分のキャリアに組み込むという形は、この取り組みを通じて目指す1つの形だと考えています。
SDGsポイントの普及が環境や社会への貢献につながる
さまざまな課題を乗り越える解決法を模索しながらSDGsポイントに取り組んでいる明星大学ですが、今後についてはどのように考えているのでしょうか。ここでは、SDGsポイントの展望や可能性について聞いていきます。

他の大学にも広めてさらなる社会貢献につなげたい
───SDGsポイントの今後については、どのように考えていらっしゃいますか?
安岡さん SDGsポイントの取り組みは、明星大学だけで終わるべきではないと考えています。LMSはレポートに関する仕組みのため、同じ仕組みに他の大学を入れることはできませんが、LMSと同様の仕組みを使うことで他の大学でもSDGsポイントのような取り組みを導入することは難しくありません。
仕組みとしては、投稿してもらったレポートに対してポイントを付与して返すだけの簡単なものなので、他の大学にもどんどん広まってもらいたいです。そして取り組みが広まることは、さらなる社会貢献にもつながるのです。
明星学苑全体に取り組みを広げるのが目標
───SDGsポイントの取り組みが他の大学に広がれば、それだけSDGsに取り組む人が増えますね。
安岡さん 明星大学も含まれる明星学苑には、幼稚園や小学校、中学校、高校もあるため、中高連携のような形での取り組みも考えています。高校ではSDGsの授業がしっかりと行われていますので、グループ参加の形で登録することは可能です。現在そこに関しての話し合いも行われている段階です。
しかし、大学と高校では目的が若干違いますし、高校はLMSの仕組みに入ったことがないため、話はあれどなかなか実現にまでは至っていないのが現状です。いずれは、明星学苑全体にSDGsポイントの取り組みを広げていきたいと思っています。
SDGsポイントは企業でも導入できる取り組み
───明星学苑全体で可能になれば、全国の学校に広がる可能性もでてきますよね。企業でのSDGsの取り組みにも活かせそうな気がします。
安岡さん 日本人はポイント好きな人が多いです。私は大学の教員になる前に経営コンサルタントをしていたのですが、私の経験からすると「ポイント」という言葉が響く人は全体の6~8割程度はいます。お店で「ポイントカードありますか?」と必ず聞かれるのは日本だけです。ですので、SDGsポイントのような仕組みを取り入れれば、企業でも簡単にSDGsに取り組めます。
例えば、エレベーターを使わずに階段を使うなどのエコな行動にポイントを与えることで、日本社会にも地球環境にも貢献できます。当学の取り組みを参考にしてどんどん真似して欲しいです。
日本から世界に取り組みの輪を広げていきたい
───最後に、読者の皆さんへのメッセージをお願いします。
安岡さん 私たちの取り組みを、明星大学としてだけではなくて日本全体としてもアピールしてもらいたいと思い、外務省が行っているジャパンSDGsアワードにも応募しています。
オンラインでの学習の仕組みをそのまま利用してポイントをつけるだけですし、数万円単位の予算で十分できますので、日本全国はもちろん、日本のコンテンツの1つとして他の国でもお役に立てれば嬉しいです。

───本日は貴重なお話をありがとうございました。
明星大学はSDGsポイントを広げて未来へ向けて取り組んでいく
明星大学が取り組んでいるSDGsポイントをメインにお話を伺いましたが、システムの簡便性や低コストで行える点を考えると、取り組みやすさという点では他に類を見ないほど素晴らしい取り組みだと思いました。SDGsに取り組むきっかけとしても優秀で、これからどんどん普及して欲しい取り組みだと感じました。
明星大学の取り組みや校風が気になった方は、ぜひ1度ホームページを覗いてみてはいかがでしょうか。
▼明星大学のホームページはこちら
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