佐渡市のSDGsは誰もがいきいきと輝き、豊かに安心して暮らし続けられる島づくり

佐渡市のSDGsは誰もがいきいきと輝き、豊かに安心して暮らし続けられる島づくり

2024.04.19
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新潟県佐渡市は日本海に浮かぶ本州最大の離島です。「さどがしま(佐渡島、佐渡ヶ島)」と呼ばれる島の名称で聞き馴染んでいる方も多いのではないでしょうか。また、佐渡市は古くから佐渡金銀山があることで栄え、独自の文化と美しい自然が共存した素晴らしいまちで有名です。近年ではSDGsの取り組みにも力を入れており、令和4年度にはSDGs未来都市にも選定されています。

今回は、佐渡市のSDGsの取り組みや佐渡市の魅力、今後の展望について、佐渡市企画部総合政策課の丸山さんに詳しくお聞きしました。

独自の文化と自然が調和したまち、佐渡市


佐渡市の取り組みについて伺う前に、佐渡市の特徴や魅力について教えていただこうと思います。ここでは、概要や歴史、産業や見どころなどについてお聞きします。

佐渡は独自の歴史・文化が育まれてきたまち


───本日はよろしくお願いします。

丸山さん よろしくお願いします。

───まずは、佐渡市のご紹介をお願いします。

丸山さん 佐渡市は新潟県のほぼ中央、日本海上に位置しています。面積は約855km2で一周は約280km、人口約50,000人の離島です。佐渡は昔、貴族の流刑地であったことから貴族文化が根付いてきた土地です。また、金山があったことから、江戸時代には奉行所や役人が江戸から武家文化を持ち込みました。さらに商人や船乗りが町民文化を持ち込み、貴族文化、武家文化、町民文化、3つの文化が混ざり合って、独自の文化が育まれました。

また、佐渡は、国の天然記念物に指定されている鳥、トキが野生下で最後まで生息した地でもあります。その後繁殖に成功し放鳥するなど、トキとの共生でも知られるまちです。

産業関連では、世界文化遺産に推薦されている佐渡島の金山をはじめ、佐渡の自然、歴史、文化が世界農業遺産や日本ジオパークに認定されています。そういったさまざまな地域資源を活用した、滞在型の観光などを推進しています。

農業の特色は自然との共生を図ったお米作り


───農業が盛んで、世界農業遺産にも認定されているとのお話ですが、佐渡市の農業にはどのような特色があるのでしょうか?

丸山さん 農業は佐渡市における主要産業の一つで、農業の中でもお米作りが盛んです。そして、このお米作りには佐渡市ならではのストーリーがあります。天然記念物のトキを放鳥するためには、トキの餌場となる水田がなければなりません。そこで、農薬や化学肥料を使用しない自然にもトキにも優しい「生きものを育む農法」を行うことで、少しずつトキを増やしてきました。こうした、自然との共生を図ったお米づくりが佐渡市のお米づくりの特色です。

世界文化遺産の推薦を受けた佐渡金山が見どころ


───観光面では、どのような見どころがありますか?

丸山さん 観光面では、やはり佐渡を語るうえで欠かすことができない佐渡島の金山があります。日本はマルコポーロの著書である『東方見聞録』の中で、金装飾の美しさから黄金の国ジパングと紹介されました。そして日本は古くから金の生産で世界的に有名となり、佐渡が長年その中心地でした。

この佐渡金山の最大の特徴は、伝統的な手工業による採掘です。江戸時代、鎖国によって海外との技術交流が限られていたため、海外の鉱山技術や機械化装置などが日本に入ってきませんでした。そのため、佐渡金山では19世紀くらいまで完全な手工業での金の採掘が行われてきました。手工業であったがゆえに自然が破壊されておらず、当時の鉱山や鉱山町がよく残っていることが歴史的に価値が高いということで、2022年にユネスコの世界文化遺産に推薦されました。2024年7月の世界遺産登録を目指しており、世界遺産の登録を後押しとして、国内外から多くのお客様にご来訪いただけることを期待しています。

SDGs未来都市に選定された佐渡市の取り組み


海に囲まれた離島に位置する佐渡市ですが、SDGsへの取り組みも離島であるがゆえの独自性のあるものになっています。ここでは、佐渡市が行っているSDGsの取り組みについて具体的に伺います。

「佐渡だからこそできる」日本のSDGsモデルを世界に発信

───ここからはSDGsに関する取り組みを伺います。佐渡市は国からSDGs未来都市に選定されていますが、どのような経緯で選定されたのでしょうか?

丸山さん トキと暮らすこの島で、先人たちが育んだ里山・里海文化を未来へ継承するため、脱炭素、資源循環、自然共生の3つの理念の実現を目指し、ローカルSDGsとも言われる、環境・経済・社会をバランスよく発展させながら、いつまでも住み続けられる地域づくりを実現する地域循環共生圏の考え方を取り入れ、子どもからお年寄りまで、誰もがいきいきと輝き、豊かに安心して暮らし続けられる社会を目指し、2021年には「地域循環共生圏」の実現に向けて島内でシンポジウムを開催し、島内の企業や金融機関、農業関係者、学生、行政関係者など約230人の方にご参加いただきました。

このシンポジウムの中で、「佐渡だからこそできる」日本のSDGsモデルを世界に発信することを決意し、「ローカルSDGs佐渡島宣言」が市長から行われました。この日を出発点として、SDGs未来都市に向けたチャレンジや課題解決を目指す取り組みが始まりました。

未来につなごう エコアイランド佐渡


───脱炭素に向けた取り組みも行っているとお聞きしていますが、こちらはどのようなものですか?

丸山さん 佐渡市では2022年2月に、2050年に二酸化酸素の排出量を実質ゼロにすることを目指すゼロカーボンアイランドを宣言し、2022年4月には環境省の第1回脱炭素先行地域に選定されました。脱炭素社会をめざして、「トキと共生する環境に優しい島」「再生可能エネルギーを活用した持続可能な島」「防災力の向上と市民の安心・安全を守る島」の実現に取組んでいます。

地域課題解決のために産官学の連携を深めている

───SDGsの普及啓発に向けては、どのような取り組みを行っていますか?

丸山さん SDGsの理念にもありますように「誰一人取り残さない社会」に向けて、多くの方々にSDGsに関心を持っていただくことが大切だと思っています。そして、そこに向けた取り組みを市でもいろいろと行っています。例えば、SDGs未来都市に選定されたことを受けて、未来の佐渡市を想起させるオリジナルロゴマークを市民投票により制定しました。

他にも、島全体でSDGsの取り組みを推進する上での共通指針として制定したのが「佐渡市地域循環共生圏の創造による持続可能な島づくり推進条例」です。SDGsの達成に向けては、行政だけでなく市民の皆さんと一緒に連携・協力し合い、社会変化に伴う様々な課題に対して、新たな視点や知恵、経験、資源を結集し、枠組みにとらわれず解決に取り組むことが重要と考えます。この条例を共通指針として、市民の皆さんが自らのやりがいや楽しさを感じながら、新たな魅力や地域価値の創出を図る「豊かで持続可能な島づくりの実現」につなげていければと思います。

昨今、地域が抱える課題は複雑化しており、行政だけで地域課題を解決していくことは非常に難しくなっていると感じています。そのため、民間の力や大学などの研究機関の力を借りて、産官学の連携を進めています。その連携のプラットフォームとして「佐渡島自然共生ラボ」という、リビングラボの手法を用いたプロジェクトの推進も始めているところです。

───こちらのプロジェクトは、具体的にはどういった方々と進めているのですか?

丸山さん 佐渡市と地元の大学である新潟大学、首都圏のIT企業の3者で取組んでいます。佐渡は自然豊かな土地であるため、自然を上手く活用しながら、第一次産業も含めた佐渡の産業を豊かにしていくプロジェクトや、佐渡の地域課題を解決していくプロジェクトを構想して、少しずつ活動を始めているところです。

佐渡SDGsパートナーで地域の事業者との関係が密に


───企業とのつながりという観点で、他にも取り組んでいることはありますか?

丸山さん 佐渡市とともにSDGsに取り組んでいただける企業や団体などとつながりを持ちたいということで「佐渡SDGsパートナー」を立ち上げました。佐渡SDGsパートナーは、SDGsに取り組んでいる事業者の取組を市のホームページで紹介したり、パートナー同士の情報交換・連携をサポートしたり、佐渡市SDGsパートナー認定証の交付などを通じ、SDGsへの取り組みを促進し、SDGsの普及、地域課題の解決、持続可能なまちづくりを推進していくことを目指しています。2024年3月末で取組開始から1年半が経ち、パートナー数が100社に到達しました。今後もさらにパートナー数を増やし、地域の事業者との関係を深めていきたいと考えています。

───佐渡SDGsパートナーは、佐渡市の事業者限定ですか?

丸山さん もともとは、佐渡市に事業所がある事業者・団体などを対象に考えていました。ですが実際に募集をかけてみると、佐渡で事業を行っている島外の事業者や佐渡と何らかの関わりを持っている事業者、またはこれから関わりを持とうとしている事業者など、さまざまな事業者から申請いただいており、島内に拠点があるなしに関係なく、佐渡と縁がある事業者に登録していただいています。

───市役所職員の丸山さんの視点で、佐渡SDGsパートナーのどのような点が良かったと感じていますか?

丸山さん SDGsの17個の目標にかかる市の様々な事業やセミナー、補助金情報、パートナーの取組紹介、中高生の取組紹介など、パートナーへ情報発信するのですが、そういった際にはパートナーの皆さんから反応を多くいただけます。役所の中で仕事をしているだけでは、なかなか事業者の顔が見えづらかったのですが、佐渡SDGsパートナーによってコミュニケーションが取りやすくなったと感じています。

佐渡SDGsフェアは次の世代を担う子どもたちへ普及啓発するイベント


───「佐渡SDGsフェア」というイベントを開催されたそうですが、こちらのイベントはどのような経緯で開催されたのですか?

丸山さん 佐渡市は、2023年度に国から「自治体SDGsモデル事業」に採択されました。こちらはSDGs未来都市に選定された都市の中から、特に先導的な取り組みをしている自治体が選ばれ、国の支援を受けて事業を進めるというものです。

できるだけ幅広く島内で普及啓発を行うにはどうしたら良いかを考える中、いろいろな方のご意見をいただきました。その中で「これからの佐渡市を担う子どもたちに普及させていかなければ、本当の意味での普及にはならないのではないか」というお声をいただき、より多くの子どもたちに来ていただけるようなテーマ、コンテンツを考えました。

佐渡市は離島であり、四方を海に囲まれているため、SDGsのゴールの一つである「海の豊かさを守ろう」に関係が深い地域です。そのため、「佐渡らしいテーマとして海が相応しい」という話になり、魚に関する豊富な知識を持ち、海の環境問題にも取り組んでいらっしゃるタレントの「さかなクン」にお声掛けさせていただきました。

───とても有名な方ですし、子どもたちの人気もありそうですね。

丸山さん さかなクンをお招きしたこともあり、佐渡SDGsフェアには多くの子どもたちに来てもらい、SDGsについて学んだり体験してもらうことができました。また、さかなクンのトークショーと並行して、佐渡島自然共生ラボで取り組んでいるプロジェクトのブース出展も行いました。ブースで様々な体験を親子で楽しんでもらいながら、SDGsの17個の目標にかかる様々なプロジェクトを身近に感じてもらえたのではないかなと思います。400人以上の方にご来場いただいて、盛況なイベントにすることができました。

───具体的にはどのようなブースを出展したのですか?

丸山さん 例えば海に関するものでは、海藻の利用を探求するプロジェクトのブースを出展しました。このブースでは、海藻を育てることによってCO2を吸収でき、育った海藻は食用としても利用されているということを紹介しました。また、海藻を食べてもらって美味しさを感じてもらう体験も提供するなど、海藻を身近に感じてもらえるブースになっています。

他にも、生きものを育む農法で育てたお米を試食してもらうブース、生ごみを堆肥にするコンポストという装置を紹介するブースなど、さまざまなブースを出展させていただきました。

イベントで楽しみながらSDGsへの理解を

───実際にイベントを開催してみて、子どもたちの反応はどうでしたか?

丸山さん ブースでいろいろな取り組みの話を聞いたり、実際に体験したりしている子どもたちの前向きさや笑顔がとても印象的でした。やはり楽しみながら学んだことは記憶に残りやすいと思いますし、これからも肩肘張らない形で「SDGsは難しくないんだよ」ということを子どもたちに伝え、SDGsについて考えてもらったり触れてもらったりする機会を提供できればと思います。

佐渡市の課題と今後の展望


佐渡市のSDGsの取り組みは、SDGs未来都市にも選定されていますが、今後についてはどのようなビジョンを描いているのでしょうか。ここでは、佐渡市が抱える課題と今後の展望について伺います。

他の都市と同様人口減少が課題

───佐渡市に関して、どのような点に課題を感じていますか?

丸山さん 日本に起きている課題が佐渡という離島の中で凝縮された形で存在しているため、佐渡は「日本の縮図」や「課題先進地」とも言われており、日本で今後起こり得るだろう課題の多くは佐渡市がそれに先んじて表面化します。そして、日本全国の都市が直面していることと同様に、佐渡市もまた人口減少という課題に直面しています。人口減少に伴って起きている課題は、農業の担い手の減少や産業の縮小、経済の低迷などさまざまです。

また、人口減少に伴い島内の地域やコミュニティの維持が難しくなってきており、持続可能なまちづくりにいっそう取り組んでいかなければならないと考えています。

循環型社会への転換を目指している

───今後の展望や、行っていきたい取り組みについてお聞かせください。

丸山さん 今後の展望については、市民の皆さまにわかりやすい形でSDGsの方向性を打ち出せたらと議論をしています。先ほども申し上げたとおり、佐渡は豊かな自然に恵まれた島である一方、人口減少が進むなかで持続可能なまちにしていくことが大きな課題です。その取組の一つが循環型社会への転換です。

これまでの社会は、物を大量に作って、大量に消費する大量消費型社会でしたが、地球の資源には限りがあります。SDGsの考え方の出発点にもなっているところだと思うのですが、こういった大量消費型社会から、限りある資源を大切に使う循環型社会への転換が、現代の社会に求められています。そこで、佐渡市が目指しているエコアイランドのビジョンを実現するための身近な行動として、「ゴミは資源である」と考える意識の変化や、ライフスタイルの転換などといったことを市民の皆さまに打ち出していきたいです。

これは世界的に問題になっている天然資源の枯渇や地球温暖化、廃棄物の処理問題にも関わっています。佐渡は離島であるため、廃棄物の処理問題というのは島にとっては大きな問題です。そして、ごみは捨ててしまえば、ただのごみになってしまいますが、ルールを守って分別したり、リサイクルに出したりすれば資源になります。ゴミを資源として循環させていき、まち、ひと、しごと、そして資源が循環する島を目指していきたいと思います。

豊かな自然が魅力の佐渡をゆっくり楽しんでほしい


───最後に、読者の皆さんへのメッセージをお願いします。

丸山さん ぜひ、佐渡に来ていただきたいということです。佐渡は豊かな自然が本当に魅力ですし、海と山と里がとても近くにあるため、都会の人はのんびりと楽しむことができるのではないでしょうか。佐渡市には「佐渡に暮らすように旅する」というキャッチフレーズ的な言葉もあり、ゆっくりとした旅を楽しんでもらえると思います。

現在は佐渡に来るには船便しかないのですが、今後トキエアという航空会社が就航の準備を進めています。少し本土とも時間的に近くなるかもしれませんが、船旅も魅力があります。船旅をゆったりと楽しんでいただきながらぜひ一度佐渡にお越しいただいて、その魅力をゆっくり感じていただけたらと思っています。2024年7月には佐渡島の金山の世界文化遺産登録が目の前まで来ていますので、佐渡島の金山を見ていただきながら、佐渡の風景だけでなく歴史も感じ取っていただけると嬉しいです。

───本日は貴重なお話をありがとうございました。

人と自然、トキが共生するまち佐渡市

今回は、佐渡市のSDGsの取り組みや、豊かな自然に代表される魅力について詳しくお聞きしました。離島であるからこその課題も抱えている佐渡市ですが、離島ならではのメリットを活かしたさまざまな取り組みは、SDGs未来都市に選定されたのも納得の素晴らしいものでした。

2024年には佐渡島の金山が世界遺産に認定されることで、新たな歴史の一歩を踏み出そうとしている佐渡市。素晴らしい世界遺産や美しい自然を眺めながら、ゆっくりと旅を楽しんでみてはいかがでしょうか。

佐渡市の取り組みやまちに興味のある方は、ぜひホームページを覗いてみてください。

▼佐渡市のホームページはこちら
新潟県佐渡市公式ホームページ トップページ

▼SDGsの取り組みについて、詳しくはこちら
SDGs未来都市 佐渡市 – 新潟県佐渡市公式ホームページ

この記事の執筆者
EARTH NOTE編集部
SDGs情報メディア
「SDGsの取り組みを共有し、循環させる」がコンセプトのWEBメディア。SDGsの基礎知識や最新情報、達成に取り組む企業・自治体・学校へのインタビューをお伝えし、私たちにできることを紹介します。
身近なアイデアを循環させて、地球の未来をつなげていきましょう。皆さんと一緒に取り組んでいけたら幸いです。
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