株式会社SonoligoのSDGsは文化体験の提供で人生や社会を豊かにすること
これまでにない新しい仕組みで文化体験を提供している「株式会社Sonoligo」。大人から子どもまで、文化体験を通じて良い影響を与えようとしている株式会社Sonoligoですが、いったいどのような企業なのでしょうか。
今回は代表取締役の遠山さんに、株式会社Sonoligoの概要や創業経緯、具体的な事業内容、今後の展望までお聞きします。
目次
株式会社Sonoligoは月額制サービスで文化体験を提供している
株式会社Sonoligoは、名古屋で新しい形のプラットフォームを運営している企業ですが、どのような経緯、想いで創業に至ったのでしょうか。ここでは、株式会社Sonoligoの概要や創業経緯、具体的な事業内容について聞いていきます。
文化の民主化を目指し創業
───本日はよろしくお願いします。まずは、株式会社Sonoligoの企業概要と、創業の経緯についてお聞かせ下さい。
遠山さん 株式会社Sonoligoは、2018年に創業した名古屋大学発のベンチャー企業です。ビジョンとして「文化の民主化」を掲げており、クラシック音楽やスポーツ、美術、伝統芸能などの文化体験を、人びとにとってもっと身近なものにしたいという想いで事業に取り組んでいます。
経緯としてはまず、私自身が長年サックスを演奏していたこともあり、大学院で研究していた機械学習や自動運転などのテクノロジーを、アーティストのために活かせないかと考えるようになりました。会社を立ち上げる1年前に留学していたドイツのミュンヘンで、満員のコンサートホールやサッカースタジアム、また、たくさんの人で溢れている美術館などの施設を見たときに、キーワードになるのは文化だと感じました。その後、文化を全ての人にとって当たり前のものにしたいという想いで会社を立ち上げたというのが創業の経緯です。
さまざまなイベントに何回でも行ける月額制サービスを提供
───Sonoligoは、他とは違う独自のサービスを展開していると伺っていますが、どのようなサービスなのですか?
遠山さん 創業時から行っている取り組みとして、月額3000円ほどお支払いいただくことで各種興行などのチケットが予約でき、さまざまな文化体験に参加できるサービス「Sonoligo」を行っています。名古屋のクラシックコンサートから始め、その後スポーツ、美術館、映画館、動物園、天然温泉の日帰り入浴など、いろいろな分野にサービスを拡大しています。
───今まで聞いたことがない面白いサービスですね。この月額サービスにはどのような特徴がありますか?
遠山さん Sonoligoの月額制サービスの特徴は、何回行っても月額料金だけで済むところです。何回行っても料金は変わらないので、それまで行かなかったようなジャンルのイベントに行かれる方が多く見受けられるようになりました。スポーツ好きな方がコンサートに行くなど、ジャンルをまたいで行かれる方が非常に多くいらっしゃいます。
イベントの集客や文化の持続可能性にも貢献
───月額料金だけで何回でも行けるのは、利用者にとってはとても大きなメリットですね。イベントの主催者側にメリットはありますか?
遠山さん 主催者さんにとって、新規の方に来ていただくのは非常に難しいことなのですが、Sonoligoを通じて新しく来てくださる方がとても多くなっています。Sonoligoの予約のうち9割ほどの方が、「Sonoligoがあったから行ってみた」という方であり、新しくイベントに参加するきっかけとして非常に大きな役割を担えているという実感があります。
また、イベントに参加する人が増えるということはそれだけ移動が生じますので、鉄道会社とは非常に相性が良い取り組みです。現在は、大阪、名古屋、東京で複数の鉄道会社と連携しながら事業を広げています。具体的には、各鉄道会社と一緒に開拓した沿線のイベントに、サブスクで行けるというサービスを拡大しているところです。
───集客が大きく増えるのは、主催者として大きなメリットになりますね。
遠山さん さらには、文化市場の持続可能性にもつながると思います。例えば人気のある楽団やスポーツチームは集客にもそれほど苦労しませんが、プロのオーケストラやスポーツチーム、美術館などでも、集客に苦労するところはとても多いです。集客ができなければ当然チケット収入は減りますし、スポンサーもつかなくなりますので、興行を続けることが難しくなります。
集客の部分に弊社がうまく入ることによって、継続できる主催者も増えてくると思うので、文化の持続可能性に貢献できると考えています。
Sonoligo Kidsで子どもへ文化体験の機会を提供
月額制でイベントに参加できるという新たなサービスを提供している株式会社Sonoligoですが、新たに子どもへ向けたサービスも展開しています。ここでは、子ども向けのサービスである「Sonoligo Kids」の仕組み、子どもや社会に与える影響を聞いていきます。
子どもの文化体験を後押しするサービスも提供
───子ども向けのサービスも始められたと伺っていますが、こちらのサービスについて詳しく教えてください。
遠山さん 「Sonoligo Kids」というサービスで、2023年から開始しました。今までは大人を対象にサービスを展開していましたが、子どもの頃からもっと文化体験に触れてほしいと思い、子どもを対象として始めたサービスになります。子どもの文化体験の格差という問題を、全く新しい形でダイナミックに解決できる仕組みができないかと考え、このサービスに行き着きました。
Sonoligo Kidsは「子どもの”好き”をみんなで見つけよう」というコンセプトで行っています。現在は愛知県名古屋市の小学生が対象ですが、2023年9月からは東京都豊島区の小学生も対象となります。
具体的には、Sonoligo Kids会員に毎月100ポイントを付与し、持っているポイント内であれば無料でチケットが取得できるという仕組みです。
例えば、大人なら2000円かかるミュージカルに0ポイントで行けたり、オーケストラに子ども1人大人1人合わせて100ポイントで行けたり、もう1人追加で行きたい場合には追加料金を払うなど、さまざまな方法を組み合わせることにより、イベントへ参加するハードルを低くしています。
Sonoligo Kidsは多くの企業の協賛により成り立っている
───毎月ポイントを付与しているとのことですが、コストの面で大変そうな気がします。
遠山さん Sonoligo Kidsの取り組みは、応援してくださっている企業からの協賛金で成り立っています。協賛金が子どもたちや親御さんのチケット代となることで、多くの文化体験に参加していただくことができるのです。いろいろな企業と連携して取り組みを広げていまして、例えば名古屋鉄道では電車や駅でSonoligo Kidsのポスターを掲示していただいていますし、名古屋市の映画館であるミッドランドスクエアシネマでは上映前のCMでSonoligo Kidsを応援する動画を流してくださっています。
文化体験の機会を提供することで貧困問題にも良い影響を与える
───Sonoligo Kidsの取り組みについて、社会への影響という観点ではどのようにお考えですか?
遠山さん Sonoligo Kidsの取り組みの社会的な意義として、「全ての子どもたちに文化体験の機会を」というものを掲げています。日本は先進国の中でも国家予算における文化予算の割合がかなり少なく、国民1人当たりですとフランスや韓国の7分の1程度でしかありません。
また、貧困化も進んできており、現在では全体の半分ほどの家庭が貧困層・準貧困層です。
親の所得に応じて子どもの文化体験にも格差が生まれており、やはり親に経済的な余裕がある子どもは多くの体験ができ、逆に経済的に余裕のない親の子どもは体験機会がどうしても少なくなってしまう傾向にあります。
───経済的な環境は仕方のないこととはいえ、やはり子どもには多くの体験をして欲しいですよね。
遠山さん 文部科学省が行った研究でも、小学2年生のころに多くの文化体験をしていた子どもの方が、そうではない子どもと比べて、高校生になっても学問に対する意識や自己肯定感、外向性、精神的回復力などが高い傾向にあるという結果が出ました。それらはやはり親の所得から来ているところも大きく、文化体験の機会をもっと平等にしていくことが、子どもに対する良い影響に寄与することにつながるのです。
そして、子どもに与えた良い影響が、将来の職業選択の幅を広げるなど、貧困の連鎖を断ち切る一助となることで、SDGsの目標にも貢献できるのではと感じています。
また、SDGsに関連して、Sonoligoのサービスを使って参加できるイベントには、SDGsを題材にしたセミナーやトークイベントなども多数あります。そうしたイベントの集客を後押しすることで間接的な貢献もできていると考えています。
子どもの外出機会の増加が街の活気にもつながる
───ほかにも、Sonoligo Kidsの取り組みを通じて目指していることはありますか?
遠山さん 子どもの外出機会を習慣化することも目指しています。今の小学2年生は年に平均2回ほどの文化体験をしているのですが、Sonoligo Kidsを利用していただくことで月に1回、年間で12回は体験していただけないかと考えています。なぜかというと、子どものうちから体験機会を増やすことが、大人になってからの文化体験の習慣化につながるからです。
今の子どもたちはゲームやスマホなどの影響もあり、外出する機会が少なくなっています。ここ数年はコロナの影響も大きなものになっていますので、今何とかしなければと思っています。
───確かに、昔と比べて子どもたちを外で見かける機会は少なくなった気がしますね。
遠山さん 家族で外出する機会が増えると、当然自宅からイベント会場までは電車やバスなどの交通インフラの利用も増えてきます。さらに、イベントに参加した後に外食をする方が非常に多く、弊社が収集したデータでは、Sonoligo Kidsを通じてイベントに参加した後に外食した方は7割にも上ります。
これはSonoligo Kidsがなければ存在しなかった消費だと思いますので、街にとっても新たな活気が出るきっかけになっていると思います。
───コロナ禍もやっと落ち着きを見せ始めていますし、これから家族での外出も増えていけば良いですね。
遠山さん 近年コロナ禍で外出することが社会的に難しい状態にありましたが、30年生きてきた大人の3年間と、10年しか生きていない子供の3年間では、同じ3年間でも重みが全く違います。小学3年生の子どもに聞いた話ですが、小学1年生のころにコロナ禍になり、3年間なかなか外に出られなかった状況からやっと開放されたのに、あまり外に出たくないと言っていました。
このような気持ちの子どもも少なくないと聞きますし、コロナ禍の外出抑制の影響は、特に子どもに色濃く出ているのではないかと思います。ですので、Sonoligo Kidsのサービスを提供することで、いろいろなジャンルのイベントに少しでも関心を持ってもらい、子どもたちが外に出るきっかけになればと考えています。
イベントへの積極的な参加が良い経験へとつながる
───実際にSonoligo Kidsのサービスを利用された方からは、どのような反響がありましたか?
遠山さん 弊社が行ったアンケートでは、「Sonoligo Kidsのおかげで初めてコンサートに行くことができ、すごく楽しかった」という声など、とても嬉しい感想を書いてくださる方が多いです。一方で「クラシックコンサートで子どもがぐずってしまった。うちの子には早かったようだ」というようなお声もあります。しかし、小さな頃からクラシックコンサートなどに行くこと自体が良い経験になりますので、いろいろな体験にまずは気軽に参加してみていただきたいです。
文化体験を通じて精神的幸福度や新たな循環を生み出す
大人から子どもまで、幅広い人たちに良い影響を与え続けている株式会社Sonoligoですが、今後についてはどのように考えているのでしょうか。ここでは、株式会社Sonoligoの展望や事業を続ける上で大切にしていきたい想いを伺います。
コロナ禍を乗り越え旅行の分野にまで事業を広げている
───前例の無い事業ということで、苦労されたことも多々あったのではと思います。
遠山さん やはり事業的にはコロナの影響が1番大きかったです。実は2020年2月に神奈川県と協定を結ぶことになっていて、黒岩知事と記者会見を行い、神奈川県で弊社の事業を始めるにあたっての覚書まで締結していました。しかしその前日にダイヤモンドプリンセス号が来航し、連携したイベントが全て白紙になってしまいました。
厳しいコロナ禍を乗り越えた現在でも、文化の民主化を創業当時と変わらず目指し、実現するための方法として事業を継続しています。現在は名古屋市と豊島区が中心ですが、今後は他の市や地域にも広げていく予定です。
最近の取り組みとしては「Sonoligo Travel」という、日帰りバスツアーや国内外ツアーなどができる、旅行のサブスクのようなものも始めました。文化体験を旅行や観光の領域にまで広げていこうと思っています。
文化体験の提供で精神的幸福度向上を目指す
───今後、事業を継続するにあたって、どのようなことを大切にしていきたいとお考えですか?
遠山さん 社会的インパクトを長期的・短期的両面から図っていきたいと考えています。短期的インパクトでは、子供の文化体験の平均回数がSonoligo Kids利用の有無でどの程度変わったのかを測ったり、新しく来てくれる方が増えることによる、主催者への影響などを調べたりしています。
10年20年という長期的なスパンに関しては、ユニセフが数年に1度行っている、生活満足度が高い15歳の割合と、15歳から19歳の自殺率から測られている子どもの精神的幸福度の調査で、日本は38カ国中37位ととても低くなっているのが現状です。
Sonoligo Kidsで文化体験を提供していくことで、生活満足度を上げていったり、子供の好きなこと、興味のあることを文化体験を通じて発見してもらったり、社会と接点をつくることによって、自殺率の低下にも結びつけられるのではと感じています。精神的幸福度上位10カ国に入ることを目標に、長期的に取り組んでいきたいです。
文化体験は人びとの心の深い部分まで影響する
───子どもの精神的幸福度が高くなることは、全体としての幸福度の高さにもつながりますね。他にも、Sonoligoの事業を通じてどのような社会的影響を与えていきたいとお考えですか?
遠山さん さまざまな文化体験が、それぞれの国民のアイデンティティになるということをヨーロッパ留学で強く感じました。例えばドイツですと、すぐ南にオーストリアやイタリアがあり、東にはチェコやポーランドがあります。言語や文化も違いますし、それぞれの国に車で数時間で行けてしまう距離にあります。
それでも人びとがアイデンティティを強く保てているのは、文化を大切にしているからだと感じました。
そして、文化というものは、深いところで人びとに影響しているものだとも感じました。今後も文化体験の提供に貢献することで、アイデンティティをはじめとした心の深いところで、人びとに良い影響を与えられたらと思います。
協賛企業と手を取り合い、新しい循環を創出
───今後の展望をお聞かせください。
遠山さん Sonoligo Kidsは全く新しいコンセプトの仕組みです。子どもたちが体験できるというプラットフォームに対しての協賛は今まであまり例がなく、スポーツチームなどの主催者に対して、ダイレクトに協賛をするケースが基本形だったと思います。プラットフォームで応援するという新しい形ではあるのですが、プラットフォームだからこそ、1つのジャンルだけではなくいろいろなジャンルを応援することにつながりますし、子どもたちがいろいろなジャンルのイベントに行くきっかけにもなるのです。
そして経済的にも、多様な会社が応援してくださることで、さまざまな波及があると思っています。例えば名古屋鉄道は協賛していただくだけではなく、活動を広げるための取り組みとして社内でポスターを貼っていただいていますし、他の会社でも広報などで協力していただいています。応援してくださる方たちと手を取り合い、これまでとは全く違う循環が生まれていく仕組みを創りあげていきたいです。
新たな文化体験は街の活気にもつながっていく
───最後に、読者の皆さんへのメッセージをお願いします。
遠山さん 文化体験と聞くと、少し敷居が高く感じる方もいらっしゃると思いますが、家の近所の美術館に行ってみるとか、コンサートに行ってみるとか、神社仏閣といった文化遺産など、そういったところにふらっと気軽に行ってみてください。新しい体験をし、それが積み重なっていくことで少しずつ視野が広がり、街に活気があふれることにもつながるはずです。
Sonoligoのサービスを通じてはもちろん、それ以外でも、文化体験を気軽に楽しむことができる世の中になればいいなと思います。
───貴重なお話をありがとうございました。
株式会社Sonoligoはこれからも文化を身近にする取り組みを続けていく
文化体験の機会を提供することで、人や社会へ良い影響を与え続けている株式会社Sonoligo。新たな発想から生まれたサービスや理念には感銘を受けました。今後も人と文化、企業をつなぎ、社会に貢献し続けていく取り組みから目が離せませんね。
株式会社Sonoligoのサービスや取り組みに興味がある方は、ぜひ1度ホームページを覗いてみてください。
▼株式会社Sonoligoのホームページはこちら
イベントのサブスク Sonoligo(ソノリゴ)|コンサート・スポーツ観戦・美術館へ出かけよう。
▼Sonoligo Kidsのご案内はこちら
Sonoligo Kids(ソノリゴ キッズ)|無料チケットでお出かけ!子どもの”好き”をみんなで見つけよう
身近なアイデアを循環させて、地球の未来をつなげていきましょう。皆さんと一緒に取り組んでいけたら幸いです。