ゆめプロはオーガニック野菜の取り組みで子どもたちの食育と未来を守る

大阪府の柏原・八尾を中心に、子どもたちの安全な給食のために取り組んでいる「ゆめプロ」。その活動はSDGsの理念にも通じる素晴らしいものです。今回は代表の岡本さんに、ゆめプロを立ち上げた経緯や活動内容、課題や今後の展望などをお聞きしました。
ゆめプロ発足のきっかけと子どもたちのための取り組み
ゆめプロは子どもたちの未来のために活動している団体ですが、具体的にはどのような取り組みを行っているのでしょうか。ここでは、ゆめプロを立ち上げたきっかけとここまでの経緯、取扱商品やゆめプロ会員についてお聞きします。
ゆめプロは地域のこども園の給食のために始まったプロジェクト
───本日はよろしくお願いします。まずは、ゆめプロのご紹介をお願いします。
岡本さん 休耕地から巻き起こすゆめ作りプロジェクト、通称「ゆめプロ」の岡本と申します。私たちは地域の耕作放棄地を畑に再生し、そこで作った農薬・化学肥料不使用の作物を地域の給食に循環させていくという活動を展開しています。現在は任意団体として活動しており、2024年夏までにNPO法人化する予定です。所属しているスタッフは10名で、ボランティアメンバーとして140人ほどにご参加いただき運営をしています。
活動のきっかけは子ども園での娘の給食
───活動を始めたきっかけは、どのようなことだったのですか?
岡本さん きっかけは、娘が1歳の時に入園した公立のこども園で、数か月常温で保存しても腐らないパンを給食で食べていると知ったことです。1歳児が化学調味料で味付けされた給食を毎日食べている光景を見て、給食を変えるという決意をしました。
───それは子どもの健康を願う親からすると、心配になりますね。その後はどのように動き始めたのですか?
岡本さん たった1人で活動を始め、園長先生、市役所、市議会議員、教育委員会、市長に、醤油風調味料ではなく醤油を使ってほしい、柏原市の農地で採れる野菜のボリュームを計算し、市の政策として給食の品質を上げてほしいと提案をしました。
ですが仮に柏原市が動いても、変化が起きるのはあくまで柏原市だけです。それではあまり意味がないと思い、自分たちで民間発信の給食革命を起こすことを考えました。そしてその仕組み作りのために、3メートル級の笹や竹が生い茂っているような荒れ果てた場所を耕すことからスタートしたのです。
手作業で少しずつ切り開いて開墾し作物を育てた結果、ゆめプロを立ち上げて1年ほどで、地域の保育園に少量ずつではありますがじゃがいもや玉ねぎを納入できるようになりました。
思いだけで始めたため課題が山積みだった
───1人で畑を開墾するところから行うのは大変だったと思います。始められた当初はどのような課題がありましたか?
岡本さん 課題は山積みでした。たとえば給食で取り引きされるじゃがいもの価格は1キロあたり80円ほどでしかないため、活動を行えば行うほど赤字になります。しかも虫がついているものはもちろん納入できませんし、小さなものでは作業効率が落ちるという理由で、Lサイズのみの納入に限られていました。他にも泥が付いていてはいけないなど、さまざまな厳しい条件が課されていました。
夏場の草の成長スピードがすごく草刈りが間に合わない、畑の常駐者がいないなど、畑を耕すことそのものにも課題は山積みでした。想いだけで始めたためお金も本当にありませんでしたが、絶対にやり抜きたいという強い意志だけはありました。
活動のターニングポイントは「ほっとまるちゃん」の誕生
───強い想いがあったからこそ、ここまで活動を続けてこられたのですね。その後はどうなりましたか?
岡本さん 2年間試行錯誤し続けたことでようやく経済的な観点からも、休耕地の再生という観点からも、「これならいける」という方法を見つけました。それがゆめプロのプライベート食品ブランド「ほっとまるちゃん」で、地産地消のオーガニックの作物を使った、手軽に野菜が食べられる加工品です。
───具体的にはどのような商品があるのですか?
岡本さん 一部ご紹介させていただくと、無農薬・無化学肥料栽培の野菜パウダーである「ベジ粉」や乾燥野菜、お米と野菜と豆で作る「まめぱん」などがあります。これらの商品はゆめプロの畑で採れた作物や、近隣で提携しているオーガニック農家さんから破棄されるB級品などを買い取らせていただいた作物を加工して作られているものです。
例えば、まめぱんには多くのお米や野菜、豆が含まれており1本で多くの栄養を摂ることができます。このまめぱんを地域の保育園のおやつに導入してもらうことにより、地域の子どもたちに食べさせてあげることができるようになりました。私たちも付加価値を持った状態で取引をしていくことができます。大阪府で唯一オーガニック給食に取り組んでいる、泉大津市の市長にもさまざまなアドバイスをいただき、応援していただいています。
まめぱんは素材の味が引き立った自然な味
───まめぱんは安全で栄養価も高く、小さな子どもに食べさせるのにぴったりですね。どのような味がするのでしょうか?
岡本さん とても自然な味がします。2024年1月から少々レシピを変更したのですが、使っている材料は、お米、さつまいもなどの野菜、大豆、ココナッツオイル、塩、甘酒、イースト菌の7つでとてもシンプルです。
大豆はそのままパンに入れられないため、一旦自家製のおからと豆乳に加工してから使用しています。甘酒も自然栽培米で作った麹を使用しています。こうした手間暇をかけているからなのか、素材の味が引き立ったとても美味しいパンです。
提携している農家や障害者福祉施設の方の支援にも
───子どもに安全な食事を提供する素晴らしい取り組みですが、その他にも活動によって得られる良い影響は何かありますか?
岡本さん まず地産地消で食料自給率をアップさせていくことができます。そして、提携する近隣のオーガニック農家さんのB級品や廃棄される作物を買い取らせていただくことで、オーガニック農家さんに副収入を得ていただけます。また、加工品にすることによって消費期限が伸びるため、フードロスの対策としても有用です。
───農家の生活を支えることや、フードロス対策にもつながっているのですね。他にはどのようなつながりがありますか?
岡本さん 食品の加工は地域の障がい者福祉施設と提携し、入所されている方と一緒に作っているため、まめぱんやベジ粉を作ることで障がい者の方の自立支援にもつながっています。この「地域よし、未来よし」の仕組みで地域の休耕地を活用し、地域の子どもたちが食べるご飯やおやつを作っています。
まめぱんを多くの方にお届けできれば休耕地がもっと蘇り、生産量が上がります。生産量が上がれば、じゃがいもの納入価格が1キロあたり80円だったとしても取り組みを継続していくことが可能になるのです。このたび、大阪の八尾市にも2つの畑を増やすことが出来ました。
活動はゆめプロ会員のサポートで成り立っている
───活動のための資金はどのように賄っているのですか?
岡本さん ゆめプロの活動を持続可能にしていくために、ゆめプロ会員を限定で募集しています。現在は10社からサポートをいただいており、2024年2月末までに50社の枠を全て埋めたいと考えています。
───ゆめプロ会員の仕組みを詳しく教えてください。
岡本さん 企業会員には月々5千円と1万円のプランがあります。5千円のプランはリターンとして、まめぱん30本を毎月お届けさせていただきます。お届け先は会社やご指定の住所、さらには私たちが提携している困窮世帯の子どもを支援するNPO法人などを選択していただくことが可能です。現在では企業の応援で、毎月40世帯ほどの困窮世帯に暮らす子どもたちにまめぱんを届けさせていただいています。
月々1万円のプランは「ゆめプロ生産コラボ会員」という名称です。野菜を届ける際に一緒に納品させていただく野菜の生産動画に、生産している畑の様子や生産者の想いと共に、企業の紹介を入れさせていただいています。子どもたちや先生が見るだけではなく、SNSやYou Tubeでも公開させていただくことで、広報につながるような形をとっています。
───月々1万円で子どもの食育を守りながら自社の広報もできるのは、支援する側にも大きなメリットですね。他にも何かリターンは考えていらっしゃるのですか?
岡本さん 私たちが作った作物の全てが給食用として納品できるわけではなく、規格が足りないものや傷が付いているため納品できないものもあります。そういった作物を1袋50円程度の非常に安い価格で生産コラボ会員さんにお届けすることを考えており、それを見越した量を今後どんどん作っていきたいと思っています。
会員企業の社員にもさまざまな特典が
───企業会員になると、社員の方にも特典があると伺っています。
岡本さん 企業会員になっていただいた企業の社員の方には、農業に特化した2000円のプランに無料でご加入いただくことができます。私たちがオンラインで月2回行っている農業講座も無料で受講できますし、ご自身でされている家庭菜園やプランター栽培での疑問や悩みを、私たちが提携している農家の方に専属アドバイザーとしてご相談いただくこともできます。
さらに、年2回開催している会員限定イベントへのご招待や、食育農園という月に数回開催しているイベントに会員価格で参加していただけるなど、かなりお得な特典もあります。企業会員になっていただくだけで、その企業の社員の方なら誰でも特典を受けることができます。
活動の課題と今後の展望
岡本さんの想いから始まり、子どもたちのために素晴らしい活動をしているゆめプロですが、課題や今後についてはどのような考えをお持ちなのでしょうか。
ここでは、岡本さんが体に良い食生活に興味を持ったきっかけや活動における課題、今後の展望について伺います。
自身の体験をきっかけに食生活を考えるようになった
───ゆめプロの活動はSDGsに直結するものだと思いますが、「SDGsに取り組もう」という意識で取り組み始めたわけではないのですか?
岡本さん もともとSDGsの観点から取り組み始めたわけではありませんし、今も特に「SDGsだから」という形で取り組んでいるわけではありません。自分がやりたいことをやった結果がSDGsの活動でもあった、最近世間で騒がれているSDGsを自分の活動に当てはめてみると、実はSDGsの取り組みそのものだったと感じているところです。
───活動そのものがSDGsの取り組みであるというのは理想的な形ですね。オーガニックなど、体に良い食生活に関してはどうですか?
岡本さん 私は今34歳なのですが、30歳までは会社員として東京で働いていました。当時は仕事が終わった後、夜遅くにラーメン屋さんに入ったりスーパーのお総菜をお腹いっぱい食べた後に夜食でインスタントラーメンを食べたりするような食生活でした。食品の裏面表示を見るなどといった概念もなく、好きなものを好きな時に好きなだけ食べる食生活を続けた結果、内臓がいつも疲れている感覚や慢性的な胃もたれがありました。しかしそれらは、仕事が忙しいことや出張などで生活リズムが狂うせいだと認識していたのです。
───仕事が忙しいと、そういった食生活になりがちですよね。オーガニックに興味を持つようになったのは、どのようなきっかけからですか?
岡本さん その後認知症で入院している祖母の入院生活を目の当たりにして、衝撃を受けたことがきっかけです。認知症の症状により暴れてしまうために手足を拘束され、独房のような部屋に閉じ込められて軟禁状態にされている姿を見て、人権について考えるようになりました。そして認知症のことをいろいろ調べた結果、この病気は治らないこと、予防が大切であること、そして食生活と密接に関わっていることを知ったのです。
認知症予防などの本を読んでいくと、それまで私がしてきた食生活とは全く違う食生活が推奨されており、半信半疑ながらも試しに食生活を変えてみました。調味料を変え、野菜もできるだけ有機栽培や無農薬のものを使うようにしたところ、1か月半後にはまるで羽が生えたかのように体が軽くなり、頭も冴えてしっかり動けるようになりました。
───そんな短期間で効果があるものなんですね。
岡本さん 皆さんも「体は食べたものでつくられる」というフレーズを聞いたことがあると思いますが、私は自分の体調の変化を感じて初めて本当の意味で理解できました。自分だけではなく家族も体調が良くなりましたし、生まれたばかりの我が子にはやはり体に良いものを食べて育ってほしいと思い、現在の生活に方向転換しました。
多くの企業の温かい声に支えられている
───その時の体験が今の活動につながったのですね。ゆめプロの取り組みはとても素晴らしいものだと思いますが、応援してくれている企業からはどのような声をいただきますか?
岡本さん 「良い活動だね」「絶対必要な活動だよね」と仰っていただきますし、子どもの食がとても大切だという認識をみなさん持たれています。現在の会員は経営者の方が多いため、地域に貢献し地域と共に自分たちも成長していきたい、自分たちだけではなく周りの人と連携して足りないところを補い合いながら成長していきたいと考えている方が多いです。ゆめプロはその地域だけで終わる活動ではなく、成功事例を作って横展開していくことが目標であるため、一緒にやろうと言ってくださる方が多いのかなと思います。
認知活動や会員獲得に難しさも
───活動のどのような点に難しさを感じていますか?
岡本さん 周知活動に難しさを感じています。やはり1人でも多くの方に知ってもらいたいため、SNSを活用したりいろいろな場でお話しさせていただいたりはするのですが、私たちの活動を知っている人は地域単位で見るととても少ないと実感しています。
また会員になっていただくお願いについても直接お話させていただくと成約率が高いですが、数十人、数百人いる場でお話しさせていただく場合は、応援の声はたくさんいただくものの応援だけで終わってしまい、一歩踏み出して会員になっていただくところまでなかなかつながりません。
会員になってくださるのはもともと知識やSDGsに関心のある人で、会社員時代の私のような食生活を送っている方にはまだまだSDGsへの関心が低いのが現状なのだと思います。食の大切さはみなさん認識されていると思いますが、知識や実感の温度感は個人レベルではさまざまだと感じています。
目標は活動を全国に広げること
───今後の展望や目標についてお聞かせください。
岡本さん 地域と共に給食を変えていくという成功事例を作り、仕組みを全国に広げることが最終目標です。休耕地さえあれば、どこでもできると思っています。
私は子を持つ母親の目線で活動をはじめましたが、行政と母親だけで生まれる変化は小さなものでしかありません。今後はこの考え方の持つ価値が将来において絶対必要になると思ってくださる地域の企業や個人の方にゆめプロ会員になっていただいて、手を取り合っていければと思っています。
持ちつ持たれつの関係を築き、休耕地をどんどん再生していきながら地域の食料自給率を上げ自分たちで野菜を作り食べていく。そうすることで、街全体が自然と元気になると信じています。休耕地から子どもの意欲と元気を生産するゆめプロとして、今後も活動していきます。
───とても素晴らしい活動です。全国に輪が広がれば良いですね。他にも計画していることなどはありますか?
岡本さん 作物の生産だけでは採算が全く合わないため、企業への営業活動や広報活動にも注力しなければならないと思っています。現在は週に1、2回福祉施設で指導をしながら一緒にまめぱんを作っているのですが、2024年4月からは全てを福祉施設で行えるように動いています。
仲間を増やしてさらなる活動へ
───最後に、読者の皆さんへのメッセージをお願いします。
岡本さん 私たちは活動の一環として、企業や保育園向けに食の講習会プランも準備させていただいています。研修などの形で呼んでいただいて、現在の食、日本の食の実情についてお話しさせていただければと思っています。そしてSDGsについて1つでも気づき、自分でも調べてみよう・取り組もうと思ってくれる人を1人でも増やしていくことが使命だと思っています。まずは成功事例を作り全国展開をしたいです。ゆめプロと一緒に取り組む仲間になっていただけると嬉しいです。
───本日は貴重なお話をありがとうございました。
ゆめプロは子どもたちの食の未来を守り続ける
子どもたちの安全な食を守るために取り組んでいるゆめプロの活動は、たった1人から始めて多くの困難を乗り越え、現在に至ります。その素晴らしい理念と多くの方の共感を生む取り組みで、今後も全国に輪を広げてたくさんの子どもたちの食の未来を守ってくれると期待しています。
ゆめプロの理念に共感した方、安全安心な商品に興味がある方は、ぜひホームページを覗いてその素晴らしさにさらに触れてみてください。
▼ゆめプロのホームページはこちら
ゆめプロ – 休耕地から巻き起こす夢づくりプロジェクト

身近なアイデアを循環させて、地球の未来をつなげていきましょう。皆さんと一緒に取り組んでいけたら幸いです。