月経をとりまく人びとの意識を変える 大阪大学 MeW Project(ミュープロジェクト)のSDGs

大阪大学の杉田教授により立ち上げられた「MeW(ミュー) Project」は、日本における月経をとりまく諸課題について取り組んでいます。月経は女性だけの問題と捉える方もいますが、性別に関わらず大きな問題です。また、さまざまな観点からSDGsと関連する重要な課題でもあります。
今回は、MeW Projectを立ち上げた杉田教授、プロジェクトメンバーである大阪大学の小塩さん、ブイさん、小島さんの4名に、MeW Projectの取り組みや月経に関する問題への想い、SDGsとの関連や今後の取り組みについてお聞きしました。
目次
MeW Projectの取り組みと経緯
MeW Projectは日本の月経に関する課題のために立ち上げられましたが、その活動にはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、MeW Project立ち上げの経緯と具体的な活動内容、取り組みの課題について伺います。
月経の対処しやすさは、女子トイレの重要な要素
───本日はよろしくお願いいたします。まずはみなさんの自己紹介をお願いできますか?
小塩さん 大阪大学人間科学研究科、共生学系国際協力学の研究室に所属しております、博士後期課程2年の小塩と申します。
ブイさん ベトナムのハノイ出身のブイと申します。大阪大学人間科学研究科の研究生です。
小島さん 修士2年生の小島と申します。MeW Projectのメンバーを務めさせていただいております。
杉田さん 大阪大学人間科学研究科、共生学系国際協力学の教授をしております杉田と申します。国際協力学という所属が示すように、途上国の問題を研究してきました。途上国の中でも、特にアフリカのウガンダを中心に研究を行っています。
───具体的にはどのような研究ですか?
杉田さん 日本では蛇口をひねれば水が出るのは当然ですし、トイレのない家庭などほぼありません。しかし、途上国で水道やトイレが整備されていない中、人びとがどのように水を利用し、どのように衛生状態を保とうとしているのかを研究してきました。
そして12、3年ほど前から、トイレと月経を研究の中心に移しました。思春期の女子が月経に対処できるようにするには、女子トイレが必要だからです。途上国の一部の学校にはプライバシーが保たれる女子トイレがないため、月経が始まると女子が学校を休んでしまうことが研究からわかりました。現場のNGOからも同様の声が挙がっています。私自身も元々学校に女子トイレが必要と言ってきましたが、なぜ必要なのかというところまで深掘りしてこなかったと反省し、改めて研究してみようと思いました。
実際に聞き取りをしてみると、日本と大きく慣習が異なる点と、世界中のどこでも共通した感覚がある点が非常に興味深かったです。例えば、月経が男性から隠されている点や、月経が恥ずかしいことである、人に言うべきではないとタブー視されている点は共通しているところです。文化の違いや共通性という見地からも学術的にも興味深く、とても重要なトピックだと思い、アフリカでのトイレや月経の研究を行ってきました。
国際的な背景と研究結果によって立ち上がったMeW Project
───女性の月経のためのプロジェクトである「MeW Project」を立ち上げていらっしゃいますが、立ち上げに至った経緯をお聞かせいただけますか?
杉田さん 2016年から2019年にかけて、私が研究していた東アフリカと他地域との比較研究を行うための研究プロジェクトを立ち上げました。このプロジェクトでは8地域の比較研究を行い、その中には日本も含まれています。比較してみることで、共通している点、何に注意すべきかという点が炙り出されました。
そして研究の結果、月経事情については日本も決して進んではおらず、日本には日本独自の課題があることが分かりました。これは何とかしなければならないと思い、日本における研究や実践のために「MeW Project」を立ち上げたという経緯です。この成果は、私の著書である「月経の人類学」にもまとめてあります。
───比較研究を行ったとのことですが、例えば日本と途上国では月経に関してどのような違いが見られましたか?
杉田さん 私が深く関わっているウガンダの一部の農村では、経血が呪術に使われ得ると考えられている点が日本との大きな違いです。具体的には、自分に恨みを持つ人間が、自分の使用済みのナプキンや経血が付着してしまった下着を呪術師に持っていき、呪術をかけてもらいます。呪術がかけられると不妊になってしまうと信じられており、子どもをたくさん持つことで社会的な評価が得られる国であるため、女性から非常に恐れられています。
───呪術という非科学的なものですが、やはりウガンダではみなさん信じていらっしゃるのでしょうか?
杉田さん ウガンダ国内だけでも50近い民族がおり、言語も少しずつ違うため、ウガンダと一括りにすることはできませんが、地域によってはとても恐れられています。そのため、使用済みのナプキンを人の手に届く場所に置いておけないといった話は私自身も聞いています。
───逆に、日本と共通していると感じた点はどのようなところでしょうか?
杉田さん 私の調査地では、住民の方が月経について口にすることは基本的にありません。私は自分が調査していた村に1年以上住んでいたことがあり、人びとがどのような暮らしをして、どのようなトイレの使い方をしているかという調査をしていましたが、月経の話は一度も聞いたことがありませんでした。しかし、いざ月経について調査しようと思って話を聞いてみると、月経に関する話がどんどん出てきたのです。
月経について普段の生活の中で言及すべきではないという感覚、これは日本も同様です。日本でも、よほど仲の良い友達同士などでは話題に挙がるかもしれませんが、一般的には月経の話ははばかられる傾向にあります。また、男性に対しては特に言及すべきではないという風潮も似ていると思います。
───たしかに日本でも月経の話は普段あまり耳にしませんし、男性に月経の話をしているところは見かけませんね。これは世界規模で見たときにも同様であるとお考えですか?
杉田さん 一般的に見られる傾向だと思います。しかし、それを変えていこうというムーブメントが世界的に起こっており、最初のスローガンとして沈黙を破れという意味の「Break the Silence」が掲げられています。「月経について隠されてきたけれど、なぜ喋ってはいけないのか?」「課題があることをなぜ表明してはいけないのか?」というものです。日常生活のレベルでも、国や国連の政策でも話されてこなかったのはおかしなことであると、世界的に急激なムーブメントが起きて変わりつつあります。
最初の取り組みはディスペンサー開発
───MeW Projectではさまざまな取り組みを行っていらっしゃいますが、最初に行ったのはどのようなものだったのですか?
杉田さん 途上国の月経対処の問題を研究したり、書籍を編集したりする中で、日本にも問題があることに私自身が気づき始めました。日本で何かしたいと考え、最初はニーズ調査をしてからディスペンサー開発をしようと思っていました。
しかし、ちょうどコロナの流行時期と重なり、「生理の貧困」という言葉が国内で一挙に広がりました。ニーズがあることは明白であったことからステップを早めて、トイレの中に生理用品が備わっている仕組み作りを始めたのです。最初は小塩さんも初期メンバーとして参加してくれた小さなプロジェクトから始め、ダンボール製で簡単に組み立てられるものを目指しました。そして、やはり日本は災害と切っても切れない関係であるため、避難所や学校にも置けて複数の選択肢から生理用品を選べるディスペンサーを、段ボール会社の方と共同で開発しました。
───生理の貧困とは、具体的にどのような状態を指す言葉なのでしょうか?
杉田さん 生理の貧困という言葉は2016年ごろにイギリスで使われ始めた「period poverty」という英語の訳です。簡単に言うと、経済的な理由で生理用品が入手できない状況のことを指します。しかし今はどんどん解釈が広がり、例えば父子家庭であるため父親に生理用品を買ってほしいと言い出せないこと、生理の知識がないことなども生理の貧困の解釈に加える人もいます。
コロナ禍で多くの方が職を失ったり収入が減ってしまったりしたことで、食費などの最低限必要なものを優先するために、生理用品を我慢する人が増えました。普段よりも生理用品を取り替える頻度を減らす、ティッシュを丸めて代用品にするなどしている方もいらっしゃいました。
ディスペンサーの設置には予算や理解の問題も
───ディスペンサーを実際に設置するにあたって、どのようなことを行ったのですか?
杉田さん 最初に行ったのが、私たちが所属している人間科学部の建物の中で実際に補充をするプロセスや、アンケートで利用者の声を聴くという実証実験です。アンケートの結果、単に助かったというだけではなく、「月経というとても辛い身体現象に寄り添ってもらっている気がする」という、熱い想いを書いてくださる方が大勢いらっしゃいました。本当に苦労している方が多く、言葉にできなかった想いがあることを実感しました。それから約半年後に理事や総長の合意が得られて、大阪大学全体で展開することになったという流れです。
───現在ではさまざまな場所に広がりを見せているディスペンサーの取り組みですが、難しい点もあったと思います。
杉田さん この取り組みはテレビのニュースなどで取り上げていただき、ニュースを見た他の大学や自治体から使わせてもらえないかというお申し出がありました。その後販売という形ではありますが対応させていただき、各所に広がることになったという経緯です。このように、先方からお声掛けしていただいた際は問題なく進んだのですが、こちらからお声がけする際にはいくつかの典型的なハードルがありました。一つはやはり予算、そしてもう一つは理解の問題です。
───予算の問題は言葉通りだと思うのですが、理解の問題の指す理解とは具体的にどのようなものでしょうか?
杉田さん 生理の貧困という言葉が一般化しすぎたがゆえに「生理用品が必要」ということと「経済的に生理用品を買えない人たち」がイコールで結びつけられてしまったのです。トイレの中で、突然月経がきたことに気が付いて困る人も多く、ジェンダー平等の観点からトイレットペーパーと同じように生理用品をサポートすることが重要と考えているのですが、そこが理解してもらえず「生理の貧困で困っている学生はうちにはいません」と言われてしまいます。
また「生理用品を自分で用意するのは身だしなみの範疇だ」と言われることもありました。学校の養護教員の方でも理解を示してくださる方と、子どもたちが自分で用意できるように自己責任を重視する教育をしてきたのに、急にタダで配られては困るという反対派の方がいらっしゃいました。
問題解決のためのさまざまなアプローチ
───そうしたさまざまな問題へは、どのように対処していったのですか?
杉田さん 予算に関しては、ありがたいことに私たちの学部では経常経費に入れていただいています。また、全学的な予算としては、本学のダイバーシティ&インクルージョンセンターの予算で賄っていただけることになりました。
───大学が予算を出してくれるのは素晴らしいですね。大阪大学以外ではどうですか?
杉田さん 大学としては予算を出していただけなかったものの、父母会やOB会でサポートしていただいたこともあります。予算というのは「トイレットペーパーにはお金を出せるけれど、生理用品には出せない」といったプライオリティ(優先順位)の問題だと思います。しかし、月々にかかるコストは学校で普及しているタブレットなどと比べたら安いものです。結局ジェンダーの問題をどれだけ重視しているかというプライオリティの問題であるため、その辺りを説明してご理解いただくようにしています。
───限られた予算を使うには、どうしても優先順位をつける必要性がありますからね。ジェンダーの問題をもっと重視してもらえる世の中になってほしいです。理解の問題についてはどのように対処されていますか?
杉田さん 生理の貧困の話に関しては、貧困層だけをターゲットにしてしまうと、かえってスティグマ(差別)化を生んでしまいます。ただ、日本には生理の貧困という現象は確実にあります。これだけ賃金格差があり、女性の貧困や子どもの貧困が叫ばれている国ですから、残念ながらそういった実態は存在しますし、解決しなければならない課題です。しかし解決するにあたって、「生理の貧困への対応は福祉である」というアプローチだけでは、学校や会社などにご理解いただくのは難しいと考えています。
また、生理用品を自分で用意するのは身だしなみだと言われるところに関しては、そういった発言も子どもたちのことを考えてのことであるとお話を重ねる中で分かりました。取り組みを行っている学校や自治体が増え、社会の一般的な仕組みに変化していくことで、柔軟になってくださるのではないかと感じています。子どもたちのためであると粘り強く話していくことで、きっと乗り越えられると思います。
月経問題への想いとSDGsとの関わり
ディスペンサーの設置に始まり、さまざまな取り組みで月経に寄り添っているMeW Project。そして月経問題はSDGsとも深くつながっています。ここでは、プロジェクトの学生メンバーである3名も交え、月経問題やSDGsへの想い、今後の取り組みについてお聞きします。
想像以上の熱い反響があった
───ここからはMeW Projectに参加されている学生の方たちにもお話を伺います。ディスペンサーを設置したことによる反響はどうでしたか?
小塩さん 大阪大学での反響としては、アンケートに長文で熱いメッセージが届いています。中には精神的な支えになった、日々研究が忙しくて月経不順なってしまったときや、お腹が痛いのにがんばらなければならないときに、ディスペンサーがあって心が救われたという感想もありました。これらの反響は私の想像以上のものでした。
また高校などで設置した際には、生徒さんが本当にありがたがっている、困りごとが減っているというお話も先生から伺っています。大学院の入試当日に生理が来てしまい、試験中に離席してトイレに行ったらディスペンサーがあってとても救われたという女性の話もお聞きしました。
───素晴らしい反響ですね。MeW Projectではその他にどのような活動をされているのですか?
小塩さん MeW Projectでは月経にまつわる勉強会や研究会を開催しており、大阪大学の中では今まで5、6回ほど開催しています。参加者全体の3割が男性で、みなさん毎回新しい示唆を得ていただいています。女性が自らの体について理解を深めていくだけではなく、男性の啓発にもなっている取り組みです。
国によって違う課題がある
───ブイさんはベトナム出身と伺っていますが、ベトナムの月経事情として特徴的なことは何かありますか?
ブイさん ベトナムの若者も、月経がタブーであるという考えを持っています。例えば、ベトナム人は多くが仏教を信じていますが、月経の時にはお寺に入れません。自宅の中にも祈りを捧げる場所がありますが、月経中は自宅でも祈ることができないという考えを持っている人もいます。また、月経中は自分の体が汚れていると考える人もいて、農業を行っている人の中には月経中は農作物を収穫するのを避ける人もいます。
ベトナムの若者はマスコミの影響もあり、月経について自由に話せるようになってきました。しかし、ネットではディスカッションできるものの、面と向かっては話しづらい傾向もあると感じています。
───やはり国民性や宗教観によって、月経に対する考え方にもさまざまな違いが見られるのですね。日本人の月経に対する向き合い方についてはどのように感じていますか?
小塩さん 日本は性教育がとても遅れている国だと感じており、その影響もあってか男性が月経に関する知識を持っていないとも感じます。また、私たちの調査によると、日本の若い男性は月経に関する知識を恋人から実体験的に得ているという結果も出ています。
恋人からしか月経に関する知識を得る機会がないというのは、やはり問題ではないでしょうか。母親やおばあちゃんも経験していますし、職場にいる女性にだって月経があります。さまざまな場面でさまざまな配慮が必要になると思うので、やはりタブー視せずにきちんと学べる機会が必要だと思います。
また、MeW Projectを通して「良い活動ですね」「こういうディスペンサーがあると良いですね」などと言ってくださる男性の方もとても多いですが、その際に「月経」や「生理」、「生理用品」という言葉をなかなか口にしてくれないこともあります。取り組み自体は賛同してくださるけれど、男性が生理に関する言葉を口にすることは難しいのだろうと感じています。
ただ一方で、ディスペンサーやMeW Projectを通じて、取り組みが広がっていることも事実です。私の友人の男性は、最初は月経という言葉を全然言ってくれませんでしたが、現在では普通に月経の話をしてくれるようになり、とても変化を感じています。
SDGsの6つの目標と深く関連している
───MeW Projectでの取り組みはSDGsとのつながりも深いと思います。具体的には、SDGsのどの目標と関連しているとお考えですか?
杉田さん 月経への対処自体、SDGsの全ての目標に関係していると思っています。その中でもMeW Projectと特に関係性が深いのが、目標3「すべての人に健康と福祉を」目標4「質の高い教育をみんなに」目標5️「ジェンダー平等を実現しよう」目標6「安全な水とトイレを世界中に」目標10「人や国の不平等をなくそう」目標12「つくる責任つかう責任」です。
目標3「すべての人に健康と福祉を」に関しては、月経はまさに身体現象であるため健康に関わっています。月経への対処が不十分な場合に起こり得ることには、かぶれなどの軽微なものももちろんあります。しかし、自分の経血量を把握することは子宮内膜症などの判断基準にもなり、より健康に直結するものです。MeW ProjectはWellbeing(より良い状態)を目指しており、心身の健康という観点から考えると目標3に直結しています。
───女性の健康を語る上で、月経は避けては通れない問題ですよね。目標4についてはどうですか?
ブイさん SDGsの目標4「質の高い教育をみんなに」も、MeW Projectと直接つながっています。学校で急に生理が来て、自分も周りの友人も生理用品を持っていないと、とても困って不安になります。これは女性ならみなさん共感できるのではないでしょうか。しかし、トイレに入ってディスペンサーがあるのを見るととても安心できます。
また、生理中には経血が漏れるリスクもあります。ですので、自分がスペアの生理用品を持っていないと、授業中も不安で集中できません。ディスペンサーはこういうときにも助けてもらえる実感があって、安心して学校に行けるようになります。そして、月経をタブー視する風潮は若者の中にもありますが、ディスペンサーは生理について話すきっかけにもなり、タブーを破る一助になり得ると思っています。
───安心して授業に集中できるようになるのは大きいですね。
小塩さん 目標5️「ジェンダー平等を実現しよう」については、機会の平等につながると感じています。生理用品は女性が仕事や学校に行くのに不可欠であるため、困難を取り除くという意味で機会の平等、ジェンダーの平等になるのではないでしょうか。また、月経の尊厳を守るという点が女性の尊厳や人間の尊厳、ひいてはジェンダー平等につながっていくと考えています。
───月経に関する困難が取り除かれるだけでも、より機会は平等になりそうですね。ジェンダー平等にもたしかにつながりそうです。目標6に関してはどう関わっていますか?
ブイさん MeW Projectのディスペンサーは、生理用品の衛生状態を守って保管することが可能です。生理用品が不衛生だと感染症のリスクもありますが、体にも問題ないと感じられ安心して使うことができます。また、ディスペンサーがあることで、みんながトイレをきれいに使い、汚れないように協力しているとも感じています。
───いくら衛生状態を守っているといっても、不衛生なトイレの中に設置してあるとためらいますよね。トイレの衛生状態にまで影響しているとは驚きました。続いて目標10との関わりを教えてください。
小島さん 目標10「人や国の不平等をなくそう」に関して私たちが取り組んでいるのは、生理の貧困について経済的な視点だけではなく、月経がある全ての人に対してアプローチすることです。女性はもちろん、ノンバイナリーで生理がある人もいますし、どんな状況でも生理がある人に対して取り組んでいるという点で深く関係しています。
───月経がある全ての人に対して取り組むことは、不平等をなくすことにつながりますね。最後の目標12に関してはどうですか?
小塩さん 目標12「つくる責任つかう責任」のところでは、環境問題に配慮したダンボール性のディスペンサーを使っています。組み立ても容易で廃棄もしやすいところがエコな点です。また、大阪大学ではノンポリマーナプキンを選択肢に入れており、普通用のナプキン、タンポンと合わせて3種類をディスペンサーに入れています。プラスチックを使っていないナプキンという選択肢を作ることで、生理用品を通じて環境問題について考える機会を持ってほしいという想いから採用しています。
今後取り組みたいのは環境づくりや平等の問題
───MeW Projectとしては、今後どのような方向を目指して活動していこうとお考えですか?
杉田さん 目指す方向としては、トイレットペーパーと同じようにトイレの中で生理用品が入手できる環境作りです。MeW Projectではディスペンサーの普及も行ってはいますが、そこだけが主眼ではありません。月経についての理解を深めてタブー感を減らし、月経が大きなハードルにならない社会を作っていきたいと思っています。ディスペンサーはあくまで手段の一つであって、月経教育や啓発活動も合わせて行っていきます。
小島さん 私は生理の平等について、MeW Projectの活動を通して取り組んでいきたいです。やはり現在は生理イコール女性のものと考えられています。しかし、トイレにも女性男性、共同のトイレを設置するといった課題もあるように、生理も女性だけの問題ではありません。ディスペンサーなどを通して、どのように考えていけるのかということに今後取り組んでいきます。
月経は誰にとっても身近な問題
───最後に、読者のみなさんへのメッセージをお願いします。
小塩さん MeW Projectのコンセプトは「Menstrual Wellbeing by/in Social Design」となっています。月経をめぐるWellbeing、社会をよりよくデザインすることで、月経のある人のウェルビーイングが前進していくかもしれない。そして、よりよい社会のためには、月経をめぐるウェルビーイングが必要です。人も社会もより良くなっていくことを大事にして活動していきたいと思います。
ブイさん 月経中の女性が恥ずかしがることなく、普通に学校や職場に行けるようになればと思います。MeW Projectも他のプロジェクトも協力し合い、女性に限らずみんなの生活が向上するようになったら嬉しいです。
小島さん MeW Project、特にディスペンサーの普及を通して、生理用品を自分で持ち歩くのではなく、どの公共施設に行ってもトイレに常備してあるといった状況を、世界中に作っていけたらと思います。
杉田さん 月経は全ての女性にあるわけではありませんし、月経のある人が全て女性というわけでもありませんが、とても当事者が多い課題です。そのため、とても身近なところから取り組みやすい課題でもあります。自分の職場や身近な人にとって、月経という課題があることを理解すること。それが積み重なっていくとSDGsにつながる一つのきっかけになると思うので、ご理解いただきつつ応援していただけると嬉しいです。
───本日は貴重なお話をありがとうございました。
全ての月経を抱える人に優しい世界へ
月経の問題に寄り添ったMeW Projectの取り組みは、とても繊細な配慮がなされた優しいものでした。男性にも決して関係のない問題ではなく、全ての人に自分事として考えるべき問題だと強く思いました。
今後もより多くの人の月経に寄り添い、優しい世界を創っていくMeW Projectの取り組みに期待しています。
MeW Projectの取り組みに興味がある、または共感した人は、ぜひホームページを覗いてみてください。
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