石屋製菓株式会社のSDGsはお菓子で人や地域のしあわせを作ること
「白い恋人」でも有名な「石屋製菓株式会社(以下、石屋製菓)」は、美味しいお菓子を作りながらさまざまなSDGsへの取り組みも行っている企業です。今回は社長室広報CSR推進チームの遠藤さんに、石屋製菓の概要や企業理念、具体的な事業内容、SDGsへの取り組みや展望をお聞きしました。
目次
企業理念やビジョンを掲げ北海道からしあわせを届けている
石屋製菓といえば、美味しいお菓子を作っている企業というイメージをお持ちの方も多いと思いますが、具体的にどのような企業なのでしょうか。ここでは、石屋製菓の企業概要と掲げている企業理念や行動指針についてお聞きします。
洋菓子販売で札幌から世界にまで進出
───本日はよろしくお願いします。まずは遠藤さんのご経歴と、石屋製菓のご紹介をお願いできますか?
遠藤さん 石屋製菓株式会社、社長室広報CSR推進チームの遠藤と申します。私は当社に入社後、しばらくは白い恋人パークというお菓子のテーマパークで働いていました。白い恋人パークは本社の隣、札幌市西区宮の沢という地域にあります。そこでお客様が「白い恋人」のクッキーにお絵かきをしたり、お菓子作りを体験したりするのをお手伝いしていました。
昨年より、現在の広報CSR推進チームに所属しています。
お菓子の製造をする石屋製菓株式会社と、お菓子の販売をする石屋商事株式会社という2つの会社を合わせて「ISHIYA」と呼んでいます。
代表取締役社長は「石水 創(はじめ)」で、1947年に立ち上げ今年で創業76年を迎えることができました。従業員は2023年9月現在776名で、 主な事業として看板商品である「白い恋人」を始めとした洋菓子の製造販売を行っています。また、白い恋人パークやカフェ、ベーカリーなどの運営も行っています。
───「白い恋人」は、「北海道のお土産と言えば」というほど有名ですよね。店舗はやはり北海道に多いのですか?
遠藤さん 「白い恋人」は北海道のイメージが強いため意外に思われるかもしれませんが、道外にも多数の店舗があります。東京や大阪にはカフェや直営店などがありますし、1番遠いところではアラブ首長国連邦のドバイモールにも出店中です。
また、北海道内のお土産店など特約店様は約430店舗あり、ISHIYAのいろいろなお菓子を販売していただいています。
さまざまな人や地域の幸せを願う企業理念を掲げている
───企業理念など、事業を行う上で企業として大切にしている考え方を教えてください。
遠藤さん ISHIYAの企業理念は「しあわせをつくるお菓子」で、この理念の指す「しあわせ」とは「お客様のしあわせ」であり、「地域のしあわせ」であり、また、「社員のしあわせ」のことです。
お菓子というものは食べる時にワクワクしますし、美味しいという感情が湧いたり、このお菓子を誰かに食べさせたいと思ったりします。また、作るとき、選ぶときのドキドキ感などもありますし、お菓子に関わる仕事というのは、こうしたいろいろな幸せを運ぶお手伝いができる仕事だと思っています。
───たしかに、お菓子を選んだり食べたりしているときは、みんな自然と笑顔になりますよね。
遠藤さん そう考えると、お菓子作りというのは単なるもの作りではなく、幸せを作るお手伝いができる仕事なのではないかとも思います。私たちはお菓子やISHIYAの企業活動を通して、いろいろな人の幸せを生み出していくという誓いを立てていますし、企業理念には幸せを生み出していく会社でありたいという想いを、すべての従業員と共有したいという願いも込められています。お客様、地域、社員に向けた「しあわせ」を、お菓子が引っ張っていくという企業理念です。
4つの行動指針や長期ビジョンで企業理念の達成を目指す
───企業理念を達成するための取り組みにはどのようなものがありますか?
遠藤さん ISHIYAでは、企業理念を達成するために4つの行動指針を設けています。
まず1つ目は「Fun! おかしな仕事をしよう。だって、お菓子の会社ですから。」 、2つ目は「Professional! プロ意識で仕事をしよう。だって、成長の源ですから。」、3つ目が「Safety! 安心・安全な仕事をしよう。だって、それが基本ですから。」、最後の4つ目が「Team! チームで仕事をしよう。だって、仲間がいるのですから。」です。以上の4つが、私たち従業員の行動指針です。
企業理念を達成するために「100年先も、北海道に愛される会社へ」という長期ビジョンも掲げています。石屋製菓は北海道で76年もの長い間続いてきましたが、それもひとえに北海道が観光地としてとても魅力的な場所であり続けてくれたおかげです。北海道が多くの方に愛される魅力的な場所であり続けてくれたおかげで、私たちのお菓子も長い間愛し続けていただけたのではないかと思っています。
これからもずっと北海道が魅力的な場所であるように、北海道の皆さんと一緒に歩んでいけるようにという思いを込めて、このような長期ビジョンを掲げています。
具体的な目標を掲げることでSDGsにも寄与する事業を展開
さまざまなしあわせを作るための企業理念を掲げて事業を行っている石屋製菓ですが、具体的にはどのような取り組みを行っているのでしょうか。ここでは、石屋製菓が定める6つの約束と、約束を達成するためのそれぞれの具体的な取り組みを聞いていきます。
2030年にあるべき姿に向けて「6つの約束」で具体的な目標を定めている
───ここからは、より具体的な取り組みについて聞いていきます。SDGsにも大きく関わっている「6つの約束」というものを拝見したのですが、こちらについて詳しく教えてください。
遠藤さん 企業にとって1番大切な企業理念や長期ビジョンというのは、会社の目指す「目的」です。そして、その目的を実現する方法として「6つの約束」と「実行計画・あるべき姿」というものを定めています。
SDGsの目標年度である2030年にあるべき姿・ゴールに向けて、6つの約束それぞれに具体的な目標を定めて取り組みを進めています。
まず1つ目は「安心・安全」に関して「商品製造すべての工程で安心・安全を推進する」という約束で、お菓子を作る全ての過程において世界基準で通用するお菓子作りをしようというものです。
2番目は「コンプライアンス」に関して「法律や倫理を遵守するコンプライアンス体制を確立」するという、お菓子作りや販売における全ての場面において法律を遵守し、倫理的な事業活動を実行するという約束です。
3番目の「環境」に関しては「環境負荷を軽減する取り組みで持続可能な製品づくり」という約束になっており、 CO2の排出抑制や廃棄物のリサイクルなど、環境への配慮を徹底します。
4番目の「スポーツ振興」に関する「スポーツを通じて子どもたちに夢や希望を与える」と、 5番目の「地域社会」に関する「北海道・地域社会に様々な形で貢献する」という約束における2030年のあるべき姿は、北海道を軸とした持続可能な経済活動や事業活動を実現しているということです。
そして最後の6番目は「雇用・労働環境」に関して「誰もが安心して働ける職場にする」という、精神的・物理的に安全を保障することで、誰もが安心して働ける職場にするという約束になっています。
「安心・安全」のために製造年月日と賞味期限を個包装に印字
───6つの約束を守るために行っている、具体的な取り組みをいくつか教えていただけますか?
遠藤さん ISHIYAといえばやはり「白い恋人」が1番人気なのですが、会社を代表する製品、また北海道から連想される方も多い製品として、サステナブルな取り組みを進めていくことに大きな意味がある製品だと考えています。
まず、「安心・安全」のために、個包装には製造年月日と賞味期限を1つひとつ印字しています。
お土産として配られることが多いお菓子ですので、1つひとつの個包装にもいつ作られていつまで美味しく召し上がっていただけるのかを記すことで、安心して召し上がっていただけるようにする工夫です。
使っている材料や紙、トレーで「環境」に配慮
───たしかに職場のお土産などでは、個包装の状態で配ることも多いですよね。個別に印字してあれば安心です。
遠藤さん 「環境」についての取り組みとしては、「白い恋人」に使われている砂糖や小麦、生クリームは、100%北海道産のものを使用しています。
北海道産のものを使っているのは、北海道の1次産業を振興させ、北海道全体の活性化につながればとの思いからです。海外からの輸入に頼らず、北海道のものを使うという地産地消を心がけることは、輸送時のCO2排出量や使われるエネルギー量を削減することにもつながっています。
───CO2排出量やエネルギー量の削減は、SDGsにも大きく寄与するものですね。
遠藤さん 環境に関してさらに言うと、「白い恋人」の化粧箱や紙袋にはFSC®認証紙を採用しています。FSC®認証というのは、適切に管理された森林資源から作られた紙製品であるということを証明するマークで、「白い恋人」の化粧箱の裏側と、お持ち帰り用の紙袋の裏側に認証ラベルが表示されています。
また、「白い恋人」の化粧箱を開けると個包装が入っているトレーがあるのですが、トレーは原料の6割がトウモロコシでできた植物由来の素材を使用した、プラスチックとしてではなく燃えるゴミとして捨てていただくことができるものです。
バイオマスのトレーを使うことで、使う前と比較してCO2の排出量を年間平均で半分にすることができました。
───紙やトレーなどの細かい部分まで環境に配慮しているのですね。
遠藤さん 化粧箱を留めているシールも、プラスチック製から紙製に変えることで、プラスチック使用量を年間で約1.5トン削減することに成功しました。紙製に変えると同時につまみの位置を変更し、開けやすくする工夫もしています。
パッケージなども含めて環境に配慮した安心・安全な商品をお届けすること、そして商品の質を下げることなく、ここまで徹底しているんだと思っていただけるような取り組みを今後も進めていきたいと考えています。
地元クラブを応援することで「スポーツ振興」を目指している
───スポーツ振興に関してはどのような取り組みをされていますか?
遠藤さん スポーツ振興としては、北海道コンサドーレ札幌というサッカーチームのオフィシャルトップパートナーになっています。 地元クラブの応援を通じて 北海道のスポーツの活性化に貢献したいという思いからこのような取り組みを始めました。
白い恋人パークの隣には、北海道コンサドーレ札幌の選手が練習を行っている「宮の沢白い恋人サッカー場」という専用の練習場があります。こちらは、お客様が無料で選手の練習風景を見ていただける施設なのですが、練習がある日はサポーターの皆さんの本当に楽しそうな姿が見られる場所です。
グラウンド整備を行っているのもISHIYAの従業員で、企業やチーム、地域の壁を超えていろいろな方がスポーツの支援をできるように、また、共に北海道を盛り上げていけるように、地域に貢献できる存在であり続けたいと思います。
ゴミ拾いや見学コースの体験で「地域社会」に貢献
───「地域社会」に関しては、どのような取り組みを行っていますか?
遠藤さん 「地域社会」に関する取り組みとしては、札幌市に隣接する北広島市の工場の従業員が、定期的に工場周辺のゴミ拾いを行っています。この取り組みは、地域への恩返しをしたいというメンバーの提案がきっかけとなって始まりました。毎回、工場長などの役職者も含めて複数人が参加していまして、ゴミ拾いと同時に行っている挨拶運動で地域の皆さんと会話をすることで、明るいまちづくりのお手伝いができればという想いで続けています。ゴミ拾いは、北広島工場のほぼ全ての従業員が参加してきた取り組みです。
───従業員ほぼ総出で行っているのはすごいですね。「地域社会」に関して、他にも行っている取り組みはありますか?
遠藤さん 白い恋人パークに、ISHIYAの行っているSDGsの取り組みを紹介する見学コースがあります。例えばお菓子作りができる体験コーナーは、「白い恋人」にお絵かきをする体験をした後にISHIYAのSDGsを学ぶという、子どもを主なターゲットにしたコースです。
こうしたコースを体験していただくことで得たSDGsの学びを、それぞれの学校や企業に持ち帰っていただき、今後の活動に活かしていただくための何かしらの参考にしていただければと思っています。
北海道だけではなく、さまざまな地域から来ていただいた方とISHIYAが共に学び合い、一緒に盛り上げていきたいという想いが込められた取り組みです。
運動機会の提供や社員の健康管理を促すことでより良い「雇用労働環境」を作る
───6番目の「雇用労働環境」に関しては、具体的にどのような取り組みを行っていますか?
遠藤さん 「雇用労働環境」に関しては、ISHIYAは2023年3月に健康経営優良法人の中小規模法人部門に認定されています。「働く人が1番の宝」という考え方から活動がスタートし、さまざまな取り組みを行ってきました。
例えば運動機会の提供として、一般社団法人コンサドーレ北海道スポーツクラブの、北海道コンサドーレ札幌カーリングチームと、北海道コンサドーレ札幌バドミントンチームから講師を招いてのスポーツ体験会を行いました。また、社内報での健康情報の定期的な発信や、食堂のメニュー改善の検討もしています。従業員が心身ともに健康で、個性や能力を最大限に発揮することが企業の発展につながると考えています。
環境にも配慮した取り組みを続け北海道とともに歩んでいく
6つの約束それぞれで、SDGsにも貢献するさまざまな取り組みを行っている石屋製菓ですが、今後についてはどのような考えを持っているのでしょうか。ここでは、石屋製菓の展望についてお聞きします。
再生可能エネルギーの地産地消でCO2排出実質ゼロを実現
───SDGsに関して、今後力を入れていきたい取り組みはありますか?
遠藤さん 2023年7月から、「白い恋人」を作る2つの工場や白い恋人パークを含むISHIYAの全施設で、電力使用によるCO2排出が実質ゼロになりました。CO2排出実質ゼロは、北海道の水力発電を由来とする非FITの非化石証書によるカーボン・オフセットによって可能になっています。電気でも北海道産エネルギーの地産地消をさらに進めていきたいと思っています。
非化石証書:非化石電源で発電された電気の環境価値を証書化し、電気と環境価値を切り離して売買取引できるようにしたものです。非化石電源とは、化石燃料を使わないことでCO2を排出しない発電方法のことで、具体的には太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなどを利用した発電を指します。環境貢献やCO2削減につながるメリットがあります。
カーボン・オフセット:日常生活や経済活動において避けることができない、CO2などの温室効果ガスの排出についての考え方の1つで、削減努力を行っても削減しきれなかった温室効果ガスを、排出量に見合った温室効果ガス削減活動に投資することなどで埋め合わせるという考え方です。
北海道と共に歩んでいくための取り組みを行っていく
───最後に、読者の皆さんへのメッセージをお願いします。
遠藤さん ISHIYAでは2026年をゴールとする社内の中期的なスローガンとして、「Stand By Hokkaido」を掲げています。
これまでISHIYAのお菓子は、海を越えて日本中、さらには世界でたくさんの人びとの幸せを作るお手伝いをしてきたのですが、北海道の方に召し上がっていただく機会は実はあまり多くありませんでした。
この「Stand By Hokkaido」というスローガンには、ISHIYAのお菓子が、これからはお土産という特別なお菓子としてだけではなく、北海道に住まわれる方に日常的に選んでいただけるようなお菓子になりたいという思いが込められています。
今まで、北海道では札幌近郊にしか直営店が無かったのですが、2023年5月には新たに旭川に店舗をオープンしました。
北海道とともに歩んでいくために、北海道に根差した新しい取り組みを、これからも続けてまいります。
これからも北海道からしあわせを作るお菓子を届けていく
石屋製菓と聞けば「白い恋人」が浮かぶほど、美味しいお菓子を作っている企業というイメージでしたが、人や社会のしあわせを願う北海道の地に根ざした取り組みは、SDGsにも多大な貢献をしている素晴らしいものだと感じました。
今後もどのようなしあわせを届けてくれるのか注目していきたいです。石屋製菓の商品や取り組みに興味がある方は、ぜひ1度ホームページを覗いてみてください。
▼石屋製菓株式会社のホームページはこちら
石屋製菓(ISHIYA)-しあわせをつくるお菓子
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