虹色ダイバーシティのSDGsはLGBTQを可視化し平和で公正な社会を創ること

虹色ダイバーシティのSDGsはLGBTQを可視化し平和で公正な社会を創ること

2023.09.15(最終更新日:2023.11.13)
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大阪を拠点に、LGBTQなどの性的マイノリティの方を支援する活動を行っている認定NPO法人 虹色ダイバーシティは、SDGsの目標にも深く関わる団体です。
今回はPR・コミュニケーションマネージャーの井上さんに、虹色ダイバーシティの概要や創設に至る経緯、主な活動、運営されているプライドセンター大阪、SDGsへの想いや今後の展望について詳しく聞いていきます。

性的マイノリティのためにSDGsの目標3つに関わる取り組みを行っている

SDGsにも密接に関わっている虹色ダイバーシティですが、いったいどのような団体なのでしょうか。ここでは、虹色ダイバーシティの概要や主な活動、活動への理念、SDGsへの想いをお聞きします。

大阪を主な拠点に企業研修や調査研究を行っている

───本日はよろしくお願いします。まず、虹色ダイバーシティの団体概要と、団体の特徴を教えてください。

井上さん 虹色ダイバーシティ 大阪スタッフの井上と申します。

虹色ダイバーシティは2013年にNPO法人の法人格を取得した団体で、2020年に認定NPO法人となり、2023年の7月にはNPO設立10周年を迎えることができました。大阪市が主な活動拠点ですが、東京にも事務所があり、2拠点合計で常勤のスタッフ6名で運営している団体です。

虹色ダイバーシティは、もともと代表の村木が1人で立ち上げた団体で、企業様のLGBTQ支援に関するサポートやコンサルティングを行うところからスタートしました。ですので、研修実績をかなり多く積み上げているところが、私たちの特徴だと思っています。

また、独自のアンケート調査を2014年から継続して行っているなど、調査研究も私たちの団体の特徴です。年に1度、かなり大規模なウェブアンケート調査を学術研究者の方と共同で実施しており、私たち独自のデータを社会教育やアドボカシー(政策改善に向けた提言)といった活動に落とし込んでいます。

ミッションを掲げ性的マイノリティのために活動している

───活動を行う上で、団体として大切にしている理念のようなものはありますか?

井上さん 私たちは現在、「Bridging the gaps for diversity and inclusion|SOGI(ソジ:性的指向・性自認)による格差のない社会をつくり、次世代に繋ぎます。」というミッションを掲げています。

このミッションは2020年にリニューアルしたものです。発足時から2020年まで掲げていたミッションは「職場」というワードが含まれており、私たちは当時、職場に関することに取り組んでいました。企業やさまざまなステークホルダー(利害関係者)との関わりを持つことで、子育てやスポーツなど活動範囲が多岐にわたってきたため、現在のミッションへと変更することになりました。

そして、ミッションを達成するため、「LGBTQ等の性的マイノリティとその家族、アライ(LGBTQを理解・支援する人)の尊厳と権利を守り、誰ひとり取り残さない社会の実現に貢献します。そのために、①データ・事実・地域での実践を蓄積し、②広く情報発信して、③ビジネス活動・公共政策・法律を変えていきます。」というビジョンを軸として活動しています。

SOGIやアライは全ての人が性を考えられる言葉

───SOGIやアライといった言葉はあまり聞き馴染みがないのですが、どのような意味合いの言葉でしょうか。

井上さん SOGIのSOはセクシュアルオリエンテーションの略で、性的指向、どういった人を好きになるかということです。そしてGIというのがジェンダーアイデンティティの略で、性自認、自分で認識している性別のことです。
LGBTQという言葉は性的マイノリティだけを示す言葉ですが、SOGIという言葉であれば異性愛者かつトランスジェンダーではない方、いわゆる性的マジョリティの方も含まれます。SOGIという言葉は、みんなが自分ごととして性を考えるための言葉になっています。
また、アライというのは同盟者・支援者などといった意味合いの英語で、LGBTQの課題の解決に共に取り組む人たちのことです。

SDGsの3つの目標に関わる取り組みをしている

───SDGsに関しては、どの目標に向けて取り組まれていますか?

井上さん 私たちの取り組みが大きく関わっているのは、目標5の「ジェンダー平等を実現しよう」目標10の「人や国の不平等をなくそう」目標16の「平和と公正をすべての人に」の3つの目標です。私たちはビジョンの中で「誰ひとり取り残さない」と掲げていますし、この3つが特に重視する目標だと思っています。
性のあり方による不平等が解消され、SOGIに関わらず全ての人にとって平和で公正な社会を実現したいという想いで、社会教育やアドボカシーなどの活動をしています。

さまざまな取り組みや施設でLGBTQに関わる人を支援している

性のあり方に関わらず、すべての人の平和と公正な社会を願っている虹色ダイバーシティですが、具体的にはどのような取り組みを行っているのでしょうか。ここでは、虹色ダイバーシティの具体的な取り組み、運営しているプライドセンター大阪の概要や創設の経緯、利用者からの反響についてまでを詳しく伺います。

それぞれの企業に合わせた企業研修を行っている

───団体の活動として企業研修を行っているとのことですが、具体的にお聞かせいただけますか?

井上さん 企業研修に関しては対面やオンラインなど、ご希望に沿って対応しています。研修内容や資料も、各企業等に応じてカスタマイズしています。また、Eラーニングや冊子などのコンテンツ作成、コンサルティング契約も承っています。

───カスタマイズ可能ならどんな企業でも取り入れやすそうですね。どのような方向けの研修なのでしょうか。
井上さん 全従業員に対しての研修から、人事担当の方や役員の方向けの研修にも対応可能です。どの程度のレベルのお話をするかなど、丁寧なヒアリングをすることでそれぞれの企業の状況に合わせて決めさせていただいています。
また、それぞれの企業の状況も考慮して、トップから落とし込んだ方が良いのか、従業員の方の意識から底上げした方が良いのかも、ヒアリングを行い伴走していく形です。

「企業の方へ」というページに、問い合わせが多かった項目や資料をまとめていますので、企業のLGBTQ施策担当者の方などに参考にしていただければと思います。

▼「企業の方へ」LGBTQ施策担当者の方向けの情報はこちら
企業の方へ | 認定NPO法人 虹色ダイバーシティ

プライドセンター大阪は誰もがさまざまな用途で利用できる施設

───ここからは、運営されている「プライドセンター大阪」という施設について伺います。まずはプライドセンター大阪の概要を教えてください。

井上さん プライドセンター大阪は、大阪の天満橋にある常設のLGBTQセンターです。調査研究を基にした社会教育の一環として、2022年4月にプライドセンター大阪を立ち上げたことで、新しい事業の軸ができました。東京には皇居や新宿御苑など緑の多い場所も多いと思いますが、大阪には空が抜けるように広く見える、緑の多い場所がなかなかありません。しかしプライドセンター大阪は、豊かな自然に癒されるような場所にありますし、窓からの眺望もとても素晴らしいです。

───施設の中はどのようになっていますか?

井上さん 誰でも使うことができるオープンスペースがあり、LGBTQに関するミニ図書館や近隣の支援に関する資料なども取り揃えています。
フリーWi-Fi完備で電源も自由に使っていただけますので、コワーキングスペース的に使われる方もいらっしゃいますし、調べ物に来られる方、スタッフや利用者さんとの会話を楽しんでいらっしゃる方など本当にさまざまです。

また、相談事業も併設しているので、専門相談員に悩みなどを相談していただけます。基本的には予約制になっているのですが、「この方は相談や支援が必要そうだな」と判断できる方がオープンスペースにいらっしゃっていて、ちょうど相談枠が空いていた場合には、その場で即時相談いただけるようにもなっています。

LGBTQ当事者をつなぐ施設にもなっている

───プライドセンター大阪は、どのような経緯で立ち上げることになったのですか?

井上さん プライドセンター大阪を立ち上げるきっかけは、2019年に代表の村木がオーストリアのウィーンへ海外視察に行ったことです。さまざまな施設を見学した中にLGBTQに関する施設が4つあったのですが、ウィーンという大阪市と同程度の規模の街に4つもあるのに大阪市に1つもないのはおかしいと思い、帰国後すぐに大阪に施設を作るため動き始めたのです。

しかし、翌年にコロナ禍になってしまったことで、施設を作るどころか団体存続の危機に瀕してしまいました。それまでメインとして活動していた企業研修が半分以下になってしまったため、オンラインでの対応を行うなど、団体立て直しを優先させていました。

───確かに、コロナの影響を考えると企業研修は難しそうですね。その後はどうなりましたか?

井上さん 2021年に団体としてなんとか立ち直ってきたところで、そろそろ施設の話を進めたいという声が上がり始めました。2021年の後半から物件を探し、2022年の4月にやっとオープンにこぎつけることができました。

───プライドセンター大阪は、どのような想いで運営されている施設なのですか?

井上さん プライドセンター大阪はミッションとして「Remedy for all」を掲げています。Remedyというのは癒しや救済といった意味の言葉です。
プライドセンター大阪がこのミッションを掲げたのは、LGBTQの方たちが出入りしているコミュニティの多くが夜の街だったことに起因します。

大阪だと堂山町、東京だと新宿2丁目などにあるお店がコロナで軒並み営業できなくなったのですが、LGBTQは匿名性が高く、連絡先を交換していないことも多いので、お店でしか会えない人がたくさんいます。コロナ禍で一気に人とのつながりがなくなってしまったのです。

LGBTQに関するコミュニティがコロナによって傷ついてしまったことで、癒すための場所、安心して集うことができるリアルな場所が大事だと思い、より一層LGBTQに関するセンターの必要性を感じました。
本当に一気につながりがなくなってしまったのですが、プライドセンター大阪をオープンしたときに、久しぶりに会う方がたくさんいらっしゃって、このような場所の大切さを実感しました。

LGBTQの存在を可視化する取り組みを行っている

───施設外で取り組んでいることは何かありますか?

井上さん プライドセンター大阪から街に向けて、LGBTQの存在を可視化することをビジョンに掲げています。コミュニティとしての役割を果たしていた場所は大阪にもいくつかあるのですが、マンションの1室や小さなお店など、街に向けて可視化されているイメージはあまりないです。
私たちはあえて街に向けて、私たちがここにいることを可視化していこうと思っています。センターに来ることができない人には私たちから出向こうということで、近隣の大学を回ったり、さまざまなイベントに出展したりといった活動も始めました。

プライドクルーズというイベントも行っています。昨年はオランダ大使館の後援をいただいたのですが、オランダ、アムステルダムのプライドパレード(LGBTQの権利擁護について社会に訴えるためのパレード)は運河が多いこともあり、船でのパレードなんです。一方で大阪も、水都大阪と呼ばれるほど大小さまざまな川が街中に数多くあります。今後はクルーズイベントをもっと発展させ、もっと多くの船によるパレードを行うイベントにしたいと考えています。
このようにどんどん街に向けて可視化していき、LGBTQがいつも日の当たる場所で過ごせる街にしたいと思っています。

アンケートでは利用者からさまざまな良い反響がある

───プライドセンター大阪の利用者からは、どのような反響がありますか?

井上さん 利用者様にアンケートを取っているのですが、「読みたかった本を安心して読むことができて嬉しい」「LGBTQに関するインターネットの情報はどれが正確なものなのか分かりにくく不安だったけど、スタッフの方と話をすることで自分を肯定することができた」「参加者同士で安心しておしゃべりができて楽しかった」「行政などのさまざまな支援につながる資料を紹介してもらえた」など、嬉しい声をたくさんいただいています。

すべての人が自由に結婚できるような平和で公正な社会を願っている

さまざまな取り組みでLGBTQ当事者の方を支援している虹色ダイバーシティですが、今後についてはどのように考えているのでしょうか。ここでは、独自に収集したデータから見える傾向や未来、今後の展望についてお聞きします。

データをわかりやすくまとめたサイトも運営している

───各種データなどをまとめているサイトもあると伺っていますが、どのようなサイトですか?

井上さん 調査研究に関して、「NIJI BRIDGE」という、LGBTQなどの性的マイノリティに関するデータとアクションを紹介するサイトを運営しています。

私たちはアンケート調査を毎年実施し、レポートにまとめているのですが、結構な枚数があるのでパッと見ただけで理解することはなかなか難しいです。
そこでデータの主だったものをピックアップして、インフォグラフィック化する(情報・データ・知識を視覚的に表現する)ことでわかりやすくまとめています。

私たちが公表しているデータやレポートは、元になる詳細な分析データなどもすべて公開しているため、学生やメディアをはじめ、多くの媒体で引用されています。

パートナーシップ制度利用者は地方に行くほど少ない

───データから読み取れるLGBTQに関する傾向には、どのようなものがありますか?

井上さん 私たちは渋谷区とパートナーシップ制度の共同調査をしているのですが、2023年6月28日時点で328の自治体がパートナーシップ制度を導入しているという結果が出ました。現在は調査が追いつかないほどのスピードで増えており、実際に全国で交付された件数は5,000組を超えています。

ですが、やはり地域差があり、自治体によって内容がまちまちなので受けられるサービスが全く違います。また、自治体から転居すると無効になってしまうということも問題です。

───地域差の傾向などはデータに表れていますか?

井上さん 制度が全くない地域がどんどん可視化されていて、一部では保守的な地域がまだまだ見られます。大阪市で行っている無作為調査では、LGBTQの当事者はおよそ3%から8%いるという結果が出ていますので、約5,000組というのはとても少ない数字だと思います。

各地域の登録件数も公開しているのですが、人口と比べて制度を利用している方が少ない地方もあり、地方の方がカミングアウトが難しい状況はあるのかなと思います

すべての人が自由に結婚できるための訴訟も起きている

───調査結果を聞くと、5,000組は確かに少ない数字ですね。

井上さん 今、「結婚の自由をすべての人に」訴訟が全国5カ所で起こされています。次は高裁判決で、その後、2025年くらいには最高裁判決が出るという予想です。

地裁での判決はすでに全部出ていて、5つのうち4つで違憲判決が出ています。弁護士の方に聞いたところ、国を相手にした裁判において地裁の段階で1つ違憲判決が出るだけでも珍しく、4つもの違憲判決が出るなどということはまず無いそうです。
最終的に最高裁まで行くかどうかにもよりますが、高裁でも一刻も早い立法を後押しするような判決が出て欲しいと願っています。

目的地となるために活動を拡大していく

───今後の活動について教えてください。

井上さん プライドセンター大阪を立ち上げ、ようやく1年少々となります。大阪では2025年に万博が行われますし、コロナが明けたことで外国人観光客も戻ってきました。また、最近では修学旅行など、学習旅行の訪問先に選んでいただくことも増えてきました。これから大阪に来られる方たちの、LGBTQに関する目的地として選んでいただける場所になりたいですし、それに向けてさらに活動を拡大していきたいと思っています。

LGBTQ当事者は誰の周りにも必ずいる

───最後に、読者の皆さんへメッセージをお願いします。

井上さん 近年、メディアでもLGBTQやLGBTという言葉を目にすることが増えたと思いますが、ポジティブなニュースとともにネガティブなコンテンツも増えてきました。例えば首相秘書官の方のネガティブな発言を受け、G7に向けて急遽「LGBT理解増進法」を準備したという報道をご覧になった方も多いのではないでしょうか。この議論の過程で様々な差別発言が出てきました。政治的なイシューになるにつれて、SNS上でもネガティブな発言が増えており、これが本当に多くの当事者を傷つけています。インターネット上の書き込みに傷ついた方もよくセンターに来られますが、人と人のつながりが癒しになっています。センターの存在の大切さをとても感じています。

3%〜8%の方がLGBTQの当事者、もしくは当事者かもしれないと思っているということは、10数人に1人いるかいないかというといことになり、これはかなり多い数字です。よく左利きの方と同じくらいと例えられますが、左利きの方は当たり前に周りにいらっしゃると思います。LGBTQ当事者の方だって、言えないだけで実は周りにたくさんいるということを、少しだけでも意識していただきたいです。

私は、自分の日頃の言動や行動を振り返って少し考えるだけでも、アライになれると考えています。LGBTQ当事者は自分の周りにはいないと思うのではなく、誰かしら絶対にいるはずだと意識していただけると嬉しいです。

日常でLGBTQであることをオープンにできる当事者はまだまだ少ないので、その状況も見えにくくなっています。私たちができることはまだまだ沢山あると思っています。
プライドセンター大阪は運営を始めて1年少々ですが、急激に業務が増えており、人手が本当に足りない状況です。そこで現在、私たちと一緒にプライドセンター大阪を作り上げてくれる方を募集しています。
私たちの取り組みに興味をお持ちの方がいらっしゃいましたら、お問い合わせください。

▼プライドセンター大阪の求人情報はこちら
プライドセンター大阪のこれからを一緒につくりましょう!

虹色ダイバーシティはこれからもすべての人をつなぐ橋を掛けていく

LGBTQなどの性的マイノリティの課題を社会に向けて発信することで、SDGsにも貢献している虹色ダイバーシティ。性のあり方に関わらず、すべての人にとって平和で公正な社会を実現するための取り組みは、とても素晴らしいものだと感じました。

今後も人と人をつなぐ取り組みを続けていく虹色ダイバーシティの活動に興味がある方は、1度ホームページを覗いてみてください。

▼虹色ダイバーシティのホームページはこちら
認定NPO法人 虹色ダイバーシティ|LGBTがいきいきと働ける職場づくりをサポートします

▼プライドセンター大阪のホームページはこちら
プライドセンター大阪|大阪の天満橋にあるLGBTQセンター

この記事の執筆者
EARTH NOTE編集部
SDGs情報メディア
「SDGsの取り組みを共有し、循環させる」がコンセプトのWEBメディア。SDGsの基礎知識や最新情報、達成に取り組む企業・自治体・学校へのインタビューをお伝えし、私たちにできることを紹介します。
身近なアイデアを循環させて、地球の未来をつなげていきましょう。皆さんと一緒に取り組んでいけたら幸いです。
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