「株式会社竹田木材工業所」のSDGsは竹で未来の可能性を伸ばすこと

「株式会社竹田木材工業所」のSDGsは竹で未来の可能性を伸ばすこと

2023.10.12(最終更新日:2023.11.13)
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奈良県で竹を使った資材を作っている「株式会社竹田木材工業所(以下、竹田木材工業所)」は、さまざまな分野で活躍しているだけではなく、SDGsにも貢献している企業です。
今回は取締役会長の竹田さんに、竹田木材工業所の概要や事業内容、事業の軸になっている竹の環境保全効果とSDGsについて詳しくお聞きしました。

奈良からさまざまな企業に竹を使った資材を安定供給している

SDGsにも貢献する事業を展開している竹田木材工業所ですが、実際にはどのような企業なのでしょうか。ここでは、竹田木材工業所の概要と竹を扱うようになった経緯をお聞きします。

杉や檜を使った事業を経て国内唯一の竹突き板製造企業になった

───本日はよろしくお願いします。まずは、竹田木材工業所の概要を教えてください。

竹田さん 竹田木材工業所は奈良県に居を構える竹突き板製造企業です。
私たちは先代の頃から地元の杉や檜を使い、建具関係の仕事をしていました。竹を扱うようになったきっかけは、40年ほど前、建築雑誌の編集長さんとお話したときに、私たちが行っている杉や檜を使った仕事は平安時代からずっと変わっていないという指摘をされたことです。なにか違った新しいものができないかと考えて竹を扱うようになりました。
現在では、国内で唯一の竹突き板製造企業として、多方面からご愛顧いただいています。

さまざまな分野で安定性の高い竹を使った事業を行っている

───実際に、竹はどのような使われ方をされているのですか?

竹田さん 実際に竹を扱った事業を行うようになってまだ7、8年ほどの頃に、私たちの竹を使った仕事を住友林業さんに認めていただき、住友林業さんのスーパーナチュラルというシリーズに竹が採用されることになりました。
そしてそのことをきっかけに、本格的に竹を扱った事業を展開することになりました。
当初は建材だけを扱った事業を行っていたのですが、それ単体では事業として難しい面もあり、さまざまな分野で竹を扱うようになったのです。

また、竹というのは成長が早いです。私たちは筍として地面に出てから3~5年の竹を使います。木材の場合ですと、使えるようになるまで短いものでも10年、杉や檜などは何十年もかかります。
竹だと切った所にまた竹が生えてきますので、短いサイクルで回すことができ、供給の安定性を高くすることができるという大きなメリットがあります。

竹の集成材を使いSDGsや精神的作用にも寄与する事業を展開

さまざまな企業と手を組み、竹を使った事業を展開している竹田木材工業所ですが、具体的な事業内容はどのようなものなのでしょうか。ここでは、竹田木材工業所の竹を使った具体的な事業内、事業の軸となる竹の集成材について、また竹が持つさまざまな環境保全効果について聞いていきます。

集成材を事業の軸としてさまざまな分野の企業と取引している

───ここからは、事業の具体的な内容について聞いていきます。まず、事業の中心になっている竹を使った資材について詳しくお聞かせください。

竹田さん 私たちは竹の集成材というものを作っているのですが、集成材は木材と同じようなものを作ることができる資材で、最近では金属に代わる資材としての見方もされるようになってきました。

集成材というのは丸い形状である竹を板状に加工したもので、板状にすることで建材やその他のいろいろなものに利用できるようになります。
建材が主な利用法だったのですが、最も需要のあった住宅の和室自体が減少傾向にあることもあり、建材以外の用途での利用も行うようになりました。

───建材以外では、具体的にどのような使われ方をされているのですか?

竹田さん 例えば突き板という0.25ミリの薄い板が、TOYOTAのLEXUSという高級車の内装材や、ミズノのスポーツ用品などに使われています。

他にも、自社の事業に竹を使えないかと大手企業から問い合わせをいただくなど、さまざまな分野での利用が期待されています。

───さまざまな分野で利用されているとのことですが、加工などはすべて自社で行っているのですか?

竹田さん 私たちが扱っている製品の特徴はそのまま竹の持つ特徴とも言えます。建材のようなある程度決まった利用法には使いやすいのですが、スポーツ関係、自動車関係、鉄道関係などでさまざまな形で利用するとなると、自社だけで行うのはさすがに不可能です。
多種多様な利用法を可能にするには外注が必要不可欠なので、外注先を増やし良好な関係を築いていくことが、これからの事業にとってとても大切なことだと思っています。

竹には地球温暖化などいろいろな環境問題への効果がある

───竹田木材工業所の事業は、SDGsとどのような関連性がありますか?

竹田さん SDGsという観点からですと、竹は環境面で大きな効果が期待できます。樹木ももちろん二酸化炭素を吸収しますが、竹は1年で10メートルも伸びるため、樹木の10倍以上もの二酸化炭素吸収量があるとの報告もあります。

竹は成長スピードが早く生命力が強いので、山などに竹が入り込むことによって竹林化してしまう恐れがあります。竹は樹木と比べ、根を土中の浅いところに張り巡らせ繋がり合う特性があり、そのことが豪雨の際の土砂崩れの一因にもなるので、竹林化は決して良いこととは言えません。
しかし、竹を切るときには根から切りますので、竹を使った事業には竹林を広げないようにする効果もあるのです。

さらに、竹を木材の代わりとして使っていくことで木材の使用量を減らすことにもつながりますので、森林保護の観点からもSDGsに貢献することができていると思います。

───竹を扱うことで、こんなに多くの効果が期待できるのですね。他にも環境保護へ寄与できることはありますか?

竹田さん 竹は強度が高いので、金属やプラスチック、アルミの代替品としての利用も可能です。例えばアルミを作るためには電気を大量に使いますし、プラスチックは地球温暖化や海洋汚染の原因にもなります。しかし竹を代わりに使えば石油製品に頼らず済みますし、さまざまな環境問題を減らしていくことができるのです。
現在では、竹を利用することの環境効果を目的として、私たちが考えてもいなかったような業種の企業からもお問い合わせをいただくようになりました。今後も竹がさまざまな分野に取り入れられることで、さらにSDGsに貢献していければと思います。

竹には精神的に良い効果もある

───環境面以外で、竹を活用することによる効果はありますか?

竹田さん 東京で、重度障がい者施設の床材や壁材に竹を使用したことがあったのですが、数年経って訪問したときに、それまでイライラしやすく精神的に不安定だった利用者が落ち着いてきたという話を伺いました。
また、産婦人科で取り入れたときにも、利用者に良い効果が見られたというお声をいただいています。

木材を使って壁などを作ると、木の節が誰かに見られているように見えて落ち着かないなど、精神状態によって気にされる方などもいらっしゃいます。しかし、竹には節などの気にされる要素がありませんので、安心してご利用いただける素材です。
こうした精神的な落ち着きが大切になる施設などで取り入れるには、竹という素材はとても適していると感じています。

また、竹に限らず、木材など自然の素材全般の話になりますが、秋田の秋田杉を使った学校では使う前と比べて良い成績が出ているという話もあります。自然素材というのは私たちが思っている以上の力があるとも感じています。

───自治体とも連携した取り組みをされていると伺っています。

竹田さん 地方自治体からは、地元の竹を使って施設を造れないかというお話をいただきます。文化庁が京都に移転した際にも、京都の建物の中に地元の竹を使わせていただきましたし、自治体からはそうした地産地消の案件も多数いただいています。
さらに、地元の竹を使うことで輸送を減らすことができるので、二酸化炭素の排出抑制などにも効果がある取り組みです。

竹の持つ可能性を広げ人や環境に貢献していく

竹田木材工業所は、竹の集成材を使ったさまざまな事業で環境に貢献していますが、今後についてはどのように考えているのでしょうか。ここでは、事業やSDGsに関連した今後の展望、大阪・関西万博との関わりを聞いていきます。

国産の竹を使いやすくすることで環境問題に貢献していく

───SDGsにも貢献できる事業を行われていますが、これからの地球環境という観点からどのような形での事業を行っていきたいとお考えですか?

竹田さん 大手企業などがよく言われていることなのですが、日本は今後経済的に縮小していき、大量消費の時代は終わると言われています。そうすると海外からの輸入が増え、輸入が増えるということは輸送が必要なので石油などの資源が使われることになりますが、やはり石油資源を大量に消費することは環境に良いとは言えません。そこで輸入による環境問題を解決するために、海外からの輸入に頼るのではなく、国産のもので賄うという方法があります。

同じものなら国産のものを使いたいというお客様は多いのですが、海外産のものと比べて価格が高い傾向にあるため、使いたくてもなかなか使うことができないという声は多いです。ですので、コストと環境負荷の両面を考え、上手く折り合いをつけていくことが今後の課題だと思っています。
例えば国産と中国産の竹集成材を比べたとき、今までは2倍の価格だったものが1.5程度になるなど、価格差を縮めていけるようにはなってきているので、もっと突き詰めてさらに国産のものを使いやすくしていきたいです。

他社と協力して不燃材や外部にも竹を使えるようにしたい

───他にも、今後行っていきたいことはありますか?

竹田さん 近年、不燃材の需要が高まってきていますが、残念ながら竹の不燃材というものはまだ存在しません。しかし、突き板を不燃基材に貼ることで不燃材として認められるので、さらに良いものを作っていきたいです。

また、これまでは、竹は外壁などの外部には使いづらかったのですが、竹を外部にも利用できるような方法を考えています。塗装や塗料もその1つなのですが、ガラスを使った塗装などを他社にご協力いただいて進めるなど、内装にしか使われてこなかった竹を、外部で使用できるような新しい取り組みも始めています。

大阪・関西万博を機に竹の持つ効果を数値化していく

───大阪・関西万博にも関わっていると伺っています。

竹田さん 大阪・関西万博のパビリオンで竹を使用するにあたって、さまざまなデータや資料が必要なのですが、これまでは竹が持つ効果などの詳細なデータはあまり分かっていませんでした。そこで、大学などに協力いただくことで、竹の持つさまざまな効果を数値化していこうと思っています。

竹は昔から竹籠や人形などの材料として使われ、竹の皮には防腐効果があると言われてきました。ですので、牛肉を竹の皮で包んだり、「竹籠を編むときに足の指に竹を挟むから、竹籠を編む人に水虫の人はいない」と言われていたりなど、口頭で抗菌作用が伝わってはいました。
これからは学術的なデータが求められる時代になりますので、大学などと協力して、口頭で伝わっていたような効果もきちんと目に見える形にしていきたいです。

データを整えることで、口頭で伝わっている効果がひとり歩きして、過大な認識をされないようにしたいと思っています。例えば、竹にヒールの跡がついてしまい、「傷が付きにくいと言われているのに、竹ってあんまり強くないんですね」などと言われることもあります。そういった誤認識の部分も解消していきたいです。

竹を建材として国に認可してもらえる取り組みをしていく

───数値としてデータをはっきり出すのは、効果をアピールする上でも大切になりますね。

竹田さん しかし、現在大阪・関西万博のパビリオン建設に向けて動いているのですが、竹は構造材として国に認められていないため、万博で使うにはテスト結果を提出して認可をもらわないといけないのです。

───それは難しい問題ですね。住宅に使うときなどにも難しさはあるのですか?

竹田さん 一般的な住宅などの建造物に使うにも、建造材は長持ちしなければいけないので、また違った難しさがあります。例えば内装材では、ホルムアルデヒドのテストで「F☆☆☆☆(エフフォースター)」という基準が設けられているのですが、竹は国から建材として認められていないため審査に通りません。
私たちの建材などでも「F☆☆☆☆同等品」という国が定めた基準を満たしているものはあるのですが、国から正式に認められているというわけではありません。

ですので、今後は竹が国に建材として認められるような方向に持っていけたらと思っています。
環境面を考えると、廃プラスチックにつながるような素材がまだまだ少ないので、環境保護にもつながるようなものを作っていきたいです。

竹には誰もが思いつかなかった未知の可能性がある

───最後に、読者の皆さんへのメッセージをお願いします。

竹田さん 竹の持つ癒やしの効果や環境への良い影響などを、もっと皆さんに知ってもらいたいです。そして、私たちが不可能だと思っていたことでも、「こんなことに竹が使えないだろうか」という皆さんの声から可能性が広がることもありますので、そうしたお声や情報をどんどんいただけると嬉しいです。

竹田木材工業所はこれからも竹で未来の可能性を広げていく

竹という大きな可能性を持った素材を使い、未来への可能性までも広げていく事業を行っている竹田木材工業所。SDGsにも貢献するその取り組みは、大きな期待を抱かせる素晴らしいものだと感じました。

これからも多くの方と手を取り合い、さまざまな分野で活躍を続ける竹田木材工業所の取り組みに注目していきたいと思います。竹田木材工業所の事業や取り組みに興味がある人は、1度ホームページを覗いてみてはいかがでしょうか。

▼竹田木材工業所のホームページはこちら
株式会社竹田木材工業所|奈良県にある国内唯一の竹突き板製造企業

▼X(Twitter)はこちら
竹突き板の竹田木材工業所 @takeda_mokuzai

この記事の執筆者
EARTH NOTE編集部
SDGs情報メディア
「SDGsの取り組みを共有し、循環させる」がコンセプトのWEBメディア。SDGsの基礎知識や最新情報、達成に取り組む企業・自治体・学校へのインタビューをお伝えし、私たちにできることを紹介します。
身近なアイデアを循環させて、地球の未来をつなげていきましょう。皆さんと一緒に取り組んでいけたら幸いです。
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