縫製業でSDGsに取り組む「サンワード株式会社」は大阪から人と笑顔を繋いでいく
大阪で縫製業を営んでいるサンワード株式会社は、自社製品を始めとしたさまざまな取り組みでSDGsに貢献しています。
今回はサンワード株式会社の概要や事業内容、SDGsへの取り組みや想いまで、代表の池田さんにお聞きしました。
目次
サンワード株式会社は大阪から笑顔を届けている
SDGsに積極的に取り組んでいるサンワード株式会社ですが、具体的にはどのような企業なのでしょうか。ここでは、池田さんが代表に就任された経緯や企業の概要、ものづくりへの想いまで詳しくお聞きしました。
大阪でOEMと自社の企画商品の販売をしている
───本日はよろしくお願いします。まずは、池田様のご経歴をお願いします。
池田さん 私は京都の大学を卒業した後3社の会社に勤めたのですが、2社目に勤めたのが鞄や袋の材料を作る会社で、この時の経験が現在の仕事に繋がっています。平成11年には独立をするための準備をしていたのですが、サンワード株式会社はその時点ですでに存在している会社でした。創業者の方から、独立するのなら会社を買ってもらえないかというお話をいただき、平成11年の7月にサンワード株式会社の株式購入という形で代表になり、現在に至っています。
───サンワード株式会社の具体的な事業内容を教えてください。
池田さん 私たちは鞄・袋物の縫製メーカーで、本社は大阪の天王寺区、工場は滋賀県の野洲市に構えさせていただいています。従業員は総勢25名ほどで、基本的にはOEM、いわゆるお客様からご注文いただいたものを作り納めさせていただくという事業を行っています。OEMの比率が90%ほどで、残り10%は自社で企画した商品を一般の方に販売する形をとっています。
実際に商品を見たい方は、大阪市天王寺区の本社に併設している実店舗でご購入いただけます。また、当社が運営している「ジョイブステーション」というECサイトでも購入が可能です。(リンクは当記事下部に記載)
想いを形にした商品で誰かを笑顔に
───事業を行う上で掲げているコンセプトを教えてください。
池田さん 私たちはOEMが主体ではあるのですが、自分たちでものづくりができるなら、やはり自分たちの想いをそのまま形にしていきたいという考えがありました。「流行だから」「かっこいいから」という理由でものづくりを行うのではなく、誰かに喜んでもらい笑っていただける、また、少しでも地球の環境が良くなるような商品を作るというコンセプトを掲げています。
アップサイクルや障がい者支援でSDGsに取り組んでいる
大阪で想いを形にするものづくりをしているサンワード株式会社は、SDGsへの貢献でも高い評価を得ています。ここでは、具体的なSDGsへの取り組みを詳しくお伺いしていきます。
消防用ホースを再利用した鞄・小物で驚きや笑顔を作っている
───ここからはSDGsへの具体的な取り組みについてお聞きします。まずはSDGsに取り組むことになったきっかけを教えてください。
池田さん 私たちのSDGsの取り組みには大きな2つの柱があります。
1つ目は消防用ホースなどを再利用した「アップサイクル」で、ゴミとして処分される物を商品化していく取り組みです。
2つ目は「障がい者の方々との共同企画」になります。
▼アップサイクルについて、詳しくはこちら
アップサイクルとは?リサイクルやリメイクとの違いやアイデアを紹介
きっかけとしては十数年前、ある繊維関係の商社さんより「規格外になっている消防用ホースが大量に捨てられているので、サンワードで何か良いアイデアはないか」とご相談を受けたことです。少しでもゴミを減らせるならと思い、消防用ホースのメーカーさんをご紹介いただきました。その時点で、工場の外のコンテナには消防用ホースが山積みになっていました。
積まれた消防用ホースは産業廃棄物処理場に持っていくというお話でしたので、1、2本分けていただき、一年ほど試行錯誤を繰り返し、何とか消防用ホースを鞄に仕上げることに成功しました。消防用ホースから鞄へのアップサイクルが、私たちの環境を考えたものづくりのスタートです。
───捨てられるはずのものから鞄が作られるのはすごいですね。お客様からの反響などはありましたか?
池田さん 消防用ホースの色は白というイメージを持たれている方も多いと思いますが、実際は何十色も色があります。12、3色の規格外の消防用ホースを回収し、商品を作ってお披露目をさせていただいたところ、百貨店さんに興味を持っていただき、催事で販売させていただきました。
催事に訪れたお客様は、皆さん素材に興味を持たれ、消防用ホースから作られていることをお伝えしました。お客様は驚かれ、皆さん笑顔で「面白いよね」「消防用ホースでこんなことできるんだ」と大変好評をいただきました。
お客様の驚きや笑顔を拝見させていただいたときに、やはり世の中に少しでもお役に立てる取り組み、手に取っていただいた方が笑顔になってくれる取り組みをしたいと感じました。
ご家族や友人との会話にもつながりますので、ただ単に物を入れるだけだった鞄が、コミュニケーションツールにもなるのです。それに気づいたとき、非常に役に立てるという実感が湧きました。そして、みんなが笑顔になり、人と人が繋がっていくような商品を作っていきたいと強く思いました。
障がい者と手を取り合いさまざまな商品を生み出している
───消防用ホースから鞄が作られているなんて確かに驚きますし、人に話したくなりますよね。障がい者支援での取り組みにはどのようなものがありますか?
池田さん 百貨店で消防用ホースの鞄を販売した約半年後、東日本大震災が起こりました。ニュースなどで被害が甚大だということを知り、私たちも小さな会社なりにお役に立てることはないかと考えました。大企業が何億と義援金を送った話はよく聞きましたが、私たちのような規模の会社にできることではありません。
しかし、微々たる力でも何か支援したいと思い、被災地である福島県須賀川市にある障がい者施設に足を運びました。行政の方、市役所の方などをご紹介いただきお話をさせていただいた際、「誰もがみんな大変だけど、障害を持った方はより苦労されている」とお聞きしました。
───健常者の方でも生きるのがやっとの状況でしたから、障がいを持った方々の苦労は推して量れますね。
池田さん そのとき伺っていた福島県須賀川市の障がい者施設は、多くの障がい者の方々が施設の土地を使って野菜を作る取り組みをされていました。育てた野菜をホームセンターの前で販売したり、自分たちでバザーを開いたりしてお金に変えていたんです。
しかし原発事故もあり、土地が使えなくなったため野菜も作れなくなり、お金が稼げなくなりました。かといって、一般企業も当然大変な状況にありましたので、雇用してもらうことも難しい状況でした。
そこで、困っている障がい者の方々と一緒に何かできないかと考え、須賀川市内の作業所さんをいくつか訪問させていただきました。その中で、木を削る機械をお持ちのところがありました。
木を削る機械を使って何かできないかを相談し、福島県須賀川市の市の花である牡丹にかけて木のボタンを作る提案をしました。
作っていただいたボタンを私たちが鞄に装飾してブランドとして展開し、ボタンを定期的に購入することで、障がい者の方々へ多額の支援とはいかないですが、細く長く続けていく支援として取り組みをさせていただきました。
障がい者の方々との取り組みは、現在も継続しています。私たちの工場がある滋賀県野洲市の近くには作業所が多くあります。そこで働くダウン症候群の女性・西村有加さんが描いたイラストを使った商品の販売を新たに行っています。
絵を拝見させていただいたとき、非常にカラフルで心安らぐ素晴らしい絵だと感じ、とても感動し、ぜひ一緒に何かしたいと考えました。
すぐに西村さんとご契約させていただき、彼女が描いた絵をそのまま生地にプリントして商品化しました。
そして商品の売上の一部を、西村さんに報酬としてお支払いするというお取り組みをさせていただいています。
西村さんの商品は野洲市のふるさと納税の返礼品に採用していただくなど、評価の高まりを実感しています。
また、少しずつではありますが、西村さん以外にも障がいを持った方々とデザイナー契約して商品販売する取り組みも増えてきています。
バングラデシュや東アフリカでの取り組みで現地の人を支援している
───海外での取り組みについて教えてください。
池田さん 私たちはもともとOEMが本業ですので、中国にも縫製の発注をしていました。しかし、中国も徐々にコストが高くなり、コストが低い国への発注移行を検討していた際、バングラデシュとの接点ができました。
バングラデシュに足を運ばせていただいたとき、大きな衝撃を受けたのです。縫製工場を回らせていただくと、小学生くらいの子どもがミシンを踏んでいる、あるいは靴すら履いていない作業員の方が多く働かれていたのです。
縫製の委託はもちろん、バングラデシュの方と何かできないかと考え、福島県の障がい者施設の皆さんが製作した木のボタンを使用した商品を一緒に製作することにしました。バングラデシュで商品を作っていただき、私たちが購入し日本のお客様に届けるという形で、少しずつではありますが、お付き合いをさせていただいています。
購入いただいた方からも、「温かみがあって良い商品だ」「私たちも貢献できてうれしい」など、大変励みになるお言葉をいただいています。
その後、東アフリカのプリント生地と出会ったのですが、東アフリカもバングラデシュ同様貧しい国ですので、プリント生地を製品に活用していくことで力になれると考えています。
東アフリカでの活動はまだ大きな取り組みとまではなっていませんが、少しずつ進めているところです。
廃棄車両の部品を再利用した商品を作っている
───その他にもSDGsに取り組まれていることはありますか?
池田さん 最近力を入れているのは、電車の廃棄車両を活用した取り組みです。
電車の車両はおよそ35年から40年ほどで安全性の観点から廃車になります。廃車になった車両はほぼ全てが産業廃棄物処理場で処理されてしまいます。
少しでも廃棄を削減したいと考え、初めにOsaka Metroさんと取り組みをさせていただきました。具体的には、廃車になった車両から、つり革や連結部に使われている幌、椅子の生地や日よけのロールカーテンなどを回収させていただき、回収した物を活用して製品を作るという取り組みになります。
2022年から取り組みを始めまして、現在では関西圏、関東圏の鉄道会社さんと契約し、Osaka Metroさんと同様の取り組みを実施しています。
社員や家族への想いも胸にSDGsを身近にしていく
さまざまな活動でSDGsに取り組んでいるサンワード株式会社。SDGsに取り組むことで起こった変化やSDGsへの想い、今後の取り組みについて聞いていきます。
読者の皆さんへのメッセージもいただきました。
SDGsへの取り組みが社員や家族への良い影響に繋がっている
───SDGsに取り組むようになり、影響や反響はいかがでしょうか。
池田さん OEMでは、お客様のご発注通りに商品を完成させることが求められます。例えばネームの位置が数ミリずれただけでも全てやり直しになってしまうこともあります。
ですから、OEMのみを中心に仕事を行っていたときは、間違いや失敗を怒るばかりになってしまい、工場自体の士気も下がってしまっていました。従業員のみんなとしても「自分たちはただ単に言われたものを作るだけだ」「間違ったら怒られる」という気持ちになってしまっていました。
一方、SDGsに関する自社発の企画では、自分たちがデザインからすべて携わっていますので、OEMとは別種のやりがいが生まれます。取り組みを始めたことで、現場の士気も上がったように感じています。
さらに、SDGsに取り組むことで、今回のように取材していただいたり、テレビや新聞などのメディアに出させていただいたりしています。その様子を従業員が見ることで、家族との会話が増えるきっかけにもなっています。
単に縫製の会社であるというだけでは「きちんとした会社なのか」「どのような仕事なのか」など、親御さんも様々な心配をされるのが当然だと思います。私たちがSDGsに取り組み、メディアに取り上げられる様子を見ていただくことで、安心につながるのではないでしょうか。
自分たちは世の中にとって良いことをしているから取材していただけるのだと自負することで、もっと頑張ろうというやる気にも繋がっています。
SDGsに取り組んだことで、社員の気持ちがプラスに働いていると実感しています。
積極的な発信で大阪流のSDGsを築いていく
───今後の展望や取り組んでいきたい活動を教えてください。
池田さん 私たちは大阪という零細企業の多い場所で仕事をしています。SDGsへの取り組みに多くの企業さんが興味をもたれており、取り組みたいという思いのある社長さんも大勢いらっしゃいます。
しかし実際のところ「具体的なやり方がわからない」「大変なだけで利益が出ないのではないか」「今の仕事で精一杯なのにできるわけない」などのお声が多いのも事実です。
私たちはボランティアではなくあくまで企業ですので、当然利益を求めなければなりません。SDGsへ取り組むことでどれだけの利益が出たのか、あるいは多くのメディアから取材していただけたなどということを、積極的に発信していきたいです。
SDGsに取り組むことを迷っている企業さんが積極的に参加をし、少しずつ裾野が広がっていくきっかけ作りを、私たちが先陣を切って行っていけたらと思っています。
そして、大阪という小さな会社が多い土地からSDGsへの取り組みが盛り上がる、いわば大阪流のSDGsというスタイルが構築されることを目指していきたいです。
SDGsをもっと身近に感じられる世の中を目指していく
───最後に、読者の皆さんへのメッセージをお願いします。
池田さん 現在、新聞や雑誌、テレビを始めとした様々なメディアでSDGsの話題を目にします。2030年までに達成しなくてはならない、そのためにはこんな取り組みをしなければいけないということが言われており、本やネットなどで一生懸命勉強されている方も多いと思います。
しかし私たちは、SDGsというのはもっと身近なことだと思っているのです。例えば障がいを持った方が困っていたら手を差し伸べること、障がいを持った方と手を取り合って一緒に何かに取り組むことも身近でできることです。
ゴミを再利用して何かに活かすこと、それが難しくてもゴミ箱に捨てるだけでも立派に身近な取り組みと言えます。
もっとSDGsを身近なものとして感じていただき、ごく普通に行動に移せる世の中、SDGsという言葉がなくても、自分が気になったことに積極的に取り組んでいけるような世の中になることを願っています。
ですので、一生懸命SDGsを勉強するというよりは、SDGsを身近に感じていただけるような取り組みをもっと行っていきたいと考えています。
皆さんにも同じ気持ちでSDGsに取り組んでいただけたら嬉しいです。
───本日は貴重なお話をありがとうございました。
サンワード株式会社はこれからも大阪からSDGsを盛り上げていく
アップサイクルや障がい者支援を始め、さまざまな取り組みでSDGsに貢献しているサンワード株式会社の活動は、誰1人取り残さないというSDGsの理念にも通じた素晴らしいものだと感じました。
今後も大阪からSDGsへの取り組みをけん引していくサンワード株式会社の取り組みや商品が気になった方は、1度ホームページを覗いてみてはいかがでしょうか。
▼サンワード株式会社のホームページはこちら
サンワード株式会社|公式ホームページ
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身近なアイデアを循環させて、地球の未来をつなげていきましょう。皆さんと一緒に取り組んでいけたら幸いです。