アップサイクルとは?リサイクルやリメイクとの違いやアイデアを紹介

アップサイクルとは?リサイクルやリメイクとの違いやアイデアを紹介

2023.10.05(最終更新日:2024.06.19)
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アップサイクルと聞いて「リサイクルのこと?」と疑問に感じた方が多いのではないでしょうか。アップサイクルとは、不要なものに付加価値をつけて新たなものへ生まれ変わらせること。リサイクルはペットボトルなどを原材料にもどし、再生利用することで、アップサイクルとは異なるのです。

本記事ではそのようなアップサイクルについて、下記のことを解説します。

  • アップサイクルが注目されている背景
  • アップサイクルとSDGs
  • アップサイクルと似た言葉
  • アップサイクルのメリット・デメリット
  • アップサイクルの実践例紹介

この記事を読めば、企業や個人がアップサイクルについてどのような行動を取るべきか理解でき、環境への意識が向上するでしょう。

本記事を読んで、アップサイクルの簡単に取り組めることからはじめてみませんか。

アップサイクルとは?意味や概要について

アップサイクルとは古くなったもの、いらなくなったものなどに付加価値をつけて新たな製品に変えることです。

付加価値とは、生産などを通して新たに生み出された価値のことを指します。つまり、アップサイクルとは「古いものに新しい価値をつけて生まれ変わらせること」ともいえるでしょう。

そんなアップサイクルの歴史や注目されている背景についてみていきましょう。

アップサイクルの歴史・注目される背景

アップサイクルという言葉が使われたのはいつからなのでしょう。

アップサイクルの歴史は1994年10月11日に遡り、レイナー・ピルツがドイツメディアに向けてアップサイクルとダウンサイクルについて触れました。このことがアップサイクルのはじまりといわれています。

大量生産・大量消費が当たり前となった世の中で、使い勝手が悪くなるとすぐに捨て、新しいものを購入する流れが定着します。

そのような世の中が進む中、資源の有効活用について注目が集まりました。近年アップサイクルが注目されるようになったのは下記のような背景があります。

  • 環境の負荷を抑える
  • 資源の枯渇を防ぐ
  • 大量生産・大量消費によるごみ問題

例えば、服の製造過程を考えてみましょう。まず衣類は、原材料の調達・紡績(繊維を糸の状態にすること)・染色・裁断縫製をそれぞれ分業で行います。そのような工程からできあがった服は各拠点で販売されます。そこから各利用者が服を利用したあと、服は廃棄され、焼却されるます。この過程が「服ができてからなくなる」までの流れです。

このように、服が製造されて廃棄されるまでの間に、多大な環境への負荷を与えているのです。

では、衣類が製造、販売、廃棄される間にいったいどれだけの資源が使われているのでしょうか。具体的には下記資源が使用されます。

  • 綿花栽培時の水消費
  • 化学肥料による土壌汚染
  • 石油の使用
  • 向上での二酸化炭素排出

そして、排出される環境負荷量は年間で下記のとおり。

二酸化炭素排出量 水消費量 端材(材料から必要な部分を取った後の残り部分)等排出量
年間の環境負荷総量 約90,000kt 約83億㎥ 約45,000t
服1着あたりの年間環境負荷総量 約25.5kg、ペットボトル(500ml)約255本分 約2,300リットル、浴槽約11杯分 約45,000t、服約1.8億着分

上記表をみてもわかるとおり、大量の資源が消費され、衣類ができているのです。

さらにここに、大量生産・大量消費のごみ問題が登場します。上記のような人々に生活に欠かせない衣食住の「衣」である服は、どのくらい購入され、破棄されているのでしょうか。環境省の調査によると下記のデータが得られています。

購入枚数 手放す服 着用されない服
1人あたりの衣服消費(年間の平均) 約18枚 約12枚 約25枚

なんと手放す枚数よりも購入枚数の方が多く、さらには着用されずタンスなどにしまい込んである衣類はもっと多いのです。人々はこれだけ数多くの衣類を購入し、消費していることが見受けられます。

では、それらの大量に購入・消費される服はどのようにして破棄されているのでしょう。こちらも環境省のデータで下記の結果がみられます。

衣類を手放す方法 割合
古着として販売 11%
譲渡・寄付 3%
地域・店頭での回収 11%
資源回収 7%
可燃ごみ・不燃ごみとして廃棄 68%

上記表からわかるとおり、圧倒的に「ごみ」として廃棄する割合が多いとわかります。ごみとして出された衣類はその後、焼却施設へ送られ、処分・埋め立てされることとなり、環境への負荷を与えているのです。

衣類は年間で508,000tもごみとして出されており、そのうちの大部分を占める95%(484,000t)が焼却・埋め立てされています。1日当たりに換算するとトラック130台分です。とんでもない量がごみとして処分されていることがわかります。

ここまでみてきたように、環境の負荷、資源の枯渇、ごみ問題という課題を解決するために、アップサイクルが注目され出しました。

アップサイクルとSDGs

アップサイクルはSDGsとの関りが深いです。SDGsとは「環境や社会問題を解決し、持続できる社会を目指そう」という目標のことを指します。その目標は、17個設定されており、その方法として169ものターゲットがあるのです。

そのようなSDGsの17個ある目標の中でアップサイクルと特に関りが深いものが目標12「つくる責任、つかう責任」です。目標12の中身をみてみると、「ごみの発生する量を大きく減らす」とあります。

アップサイクルとは、不要になったものやごみとして処分される予定であったものに新たな付加価値をもたせ、別の製品として生まれ変わらせることでした。つまり、アップサイクルを進めることでごみそのものが減り、「ごみの発生する量を大きく減らす」という目標12の達成につながるのです。

アップサイクルと似た言葉

ここまで、アップサイクルという言葉を聞いて「リサイクルやリメイクと何が違うの?」と感じた方も多いのではないでしょうか。

リメイクやリサイクルなど、アップサイクルと似た言葉との違いを明確にしていきましょう。

アップサイクルとリサイクルの違い

まずはアップサイクルとリサイクルの違いです。両者は下記のように異なります。

  • アップサイクル:もとの形を利用し、新たな製品を作る。付加価値の高い、高単価ものなどに作りかえていく。
  • リサイクル:再生利用。一度原料まで戻して再生利用する。

リサイクルは、紙を再び紙原料にすることやプラスチックを溶かして、再度プラスチック原料にするという形です。

アップサイクルは基本的にもとの形を維持したまま新たな製品をつくるので、リサイクルと異なります。

アップサイクルとリメイクの違い

アップサイクルと紛らわしい言葉にリメイクもよくあげられます。リメイクは古い製品にアレンジを加えること。その古い製品よりも付加価値がつく点や、高単価になる点は問いません。

一方でアップサイクルはいらなくなったものを新たに別の製品をつくりかえることです。つまり、そこに付加価値がつき、つくりかえる前よりも付加価値がつくので、リメイクと異なります。

アップサイクルの類義語一覧

アップサイクルと似た言葉を下記一覧にまとめました。

単語 意味 具体例
アップサイクル もとの形を利用し、新たな製品を作る。付加価値の高いものや高単価ものなどに作りかえていく。 不要になった衣類に付加価値をつけてバッグにする。
リサイクル 再生利用。一度原料まで戻して再生利用する。 古紙や衣類などを分別回収に出す。使用しなくなった家電製品を製造会社に引き取ってもらう。
リメイク 古い製品にアレンジを加えること。その古い製品よりも付加価値がつく点や、高単価になる点は問わない。 大人のワイシャツから子供服を作り、自分の子どもに着てもらう。段ボールで子どもの工作づくりを手伝うなど。
リデュース 無駄なごみの量を減らすこと。 エコバックを持って行って、レジ袋を断る。食べ残しをしない。マイボトル、マイカップを使用するなど。
リユース 1度使ったものをごみにしないで何度も使用すること。 不要になったものを人に譲る。繰り返し使える製品を選ぶ。フリーマーケットやリサイクルショップを利用する。
ダウンサイクル 元々の価値より、価値の低いモノとして生まれ変わらせること。 服を雑巾にする。新聞をゴミ箱にする。

どれも循環型社会形成のため、なくてはならない取り組みです。アップサイクルとの違いを理解し、環境配慮の認識を高めていきましょう。

アップサイクルのメリット・デメリット

ここまで、アップサイクルが注目されている背景や類義語について解説してきました。では、アップサイクルにはどのようなメリットや課題があるのでしょうか。

メリット①:原料生産のためのエネルギーやコストが抑えられる

アップサイクルでは、原料を生産するために必要なエネルギーやコスト面が抑えられるメリットがあります。例えば、リサイクルですと、ペットボトルなどを分別して回収した後にいったん原料に戻すため、そこにエネルギーやコストがかかります。

一方、アップサイクルでは、廃棄物や不要になったものをそのまま利用するので、原料生産のためにエネルギーやコストがかからないのです。

つまり、アップサイクルは原料生産という観点において、エネルギー・コスト面でメリットがあるといえるでしょう。

メリット②:ビジネスチャンスが広がる

アップサイクルをすることで、企業は新たな領域にビジネスチャンスを見出せる可能性があります。アップサイクルは「BtoB」でも「BtoC」でも成立するビジネスです。

例えば、アパレル店を経営していたとしましょう。アパレル店は顧客に直接衣類を販売する「BtoC」がメインです。ですが、その衣類を生産する中で生まれる不要な部分(裁断くず)などに注目し、「不要な部分を何か別のものに活かせないか」と考えます。

不要な部分を再資源化することに成功し、別の資源にアップサイクルできれば、その技術に他の企業が注目します。よってその技術に注目した企業との取引も増え、「BtoB」も可能になるというわけです。

つまり、これまで顧客に直接販売するのみだった企業がアップサイクルをはじめることで取引の幅が広がります。このようなビジネスチャンスがあり、挑戦しがいがある領域だといえるでしょう。

BtoB(Business to Business):企業間取引のことである。企業が企業に対して商売するビジネスモデル
BtoC(Business to Consumer):企業がモノやサービスを直接個人 (一般消費者) に提供するビジネスモデル

メリット③:環境負荷を抑えられる

アップサイクルは廃棄物や不要なものを減らしながら新たな製品ができるので、環境負荷を押さえられます。環境省の一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和3年度)によるとごみ総排出量はなんと4,095万トン(東京ドーム約110杯分)です。1人1日当たりのごみ排出量は890グラムにものぼります。

これだけのごみの中から価値を見出し、新たな製品に生まれ変わる可能性があるのであれば大きく環境負荷は軽減されるでしょう。

企業や消費者が使わなくなったものを捨てるのではなく、「新たな価値を見出せないか」考えることが環境負荷軽減につながります。

デメリット①:材料の安定した確保が難しい

アップサイクルにはメリットがある一方でデメリットもあります。

デメリット1つ目は材料の安定供給が難しいことです。アップサイクルでは廃棄や不要になったものを材料として扱います。つまり、「必要な時に必要なものがある」という状況になりにくいといえます。

例えば、アップサイクルで1つのかばんを作ったとしましょう。しかし、そのかばんをつくるためには廃棄物が必要です。しかもそのかばんを作るための廃棄物は特定の廃棄物でないと作れないとします。すると、安定した廃棄物(材料)の確保は難しいといえるでしょう。

このように、アップサイクルでは大量生産と異なり、材料の安定した確保が難しいのです。安定した材料の確保が困難となると、生産も難しくなり、販売面でも影響がでるといえるでしょう。

デメリット②:廃棄の常態化につながりかねない

アップサイクルが定着するということは、廃棄が常態化することにつながりかねません。アップサイクルとは、廃棄物に新たな価値を見出し、製品に変えていくこと。つまり「どうせ他のものに生まれ変わるなら別にごみを出していい」という誤った捉え方をする人もいるということです。

廃棄物そのものが出ない方が望ましいことはいうまでもないことです。ですが、アップサイクルという言葉の定着とともに「廃棄物が増えてしまうジレンマを抱える恐れがある」ともいえるのです。

アップサイクルの企業の取り組み事例

では、実際に企業ではどのようにアップサイクルを実施し、商品や製品をつくっているのでしょうか。ここでは、企業の取り組み事例を取り上げます。

島村楽器

音楽教室や楽器の販売を行う島村楽器。島村楽器では楽器に関するアップサイクルの取り組みを実施しています。取り組み内容は下記のとおり。

  • 顧客から廃棄予定の楽器を回収
  • 回収した楽器を素材にテーブル、スタンドライト、ウォールシェルフ、ミラーなどのインテリア製品を制作
  • 製作した製品を島村楽器にて販売し、売上を寄付金や楽器購入資金あて、寄贈する

まず、不要になった本来廃棄されるはずだった楽器を回収します。回収された楽器は提携団体とともに検品とクリーニングが行われ、インテリアに生まれ変わるのです。そして、それらの生まれ変わった製品を島村楽器で販売し、売上を寄付しています。

島村楽器がアップサイクルに取り組む目的は「廃棄楽器にもう一度活躍の機会を与える」ことです。島村楽器では、その目的を果たし、楽器を通じて環境貢献と子どもたちの音楽教育環境をつくることに貢献しています。

オイシックス・ラ・大地株式会社

オイシックス・ラ・大地株式会社はウェブサイトやカタログを通して、消費者に、健康的な食品を提供してくれる会社です。生産者と私たち消費者をつなぐ役割を果たしている同社では、「食」に関連するアップサイクルの取り組みを実施しています。

世界中で捨てられている食品は年間約13億トンにものぼります。そのようなフードロスを減らすべく、同社が立ち上がりました。食品の捨てられている部分に着目し、利用できないかを考えました。そこで考え出された商品が下記のものです。

商品 内容
ブロッコリーの茎 ブロッコリーの茎をアップサイクル食品としてチップスに。本来捨てられるはずだったブロッコリーの茎がまるごと食べれる形に生まれ変わっている。1袋でブロッコリー約300g分ものフードロスを削減。
だいこんの皮 ブロッコリーの茎と同様、チップスにすることでだいこんを無駄なく消費することを実現。1袋でだいこん約170g分のフードロスを削減。

ブロッコリーの茎もだいこんの皮も商品にならず、廃棄されてしまう部分でした。その不要な部分に同社は注目し、見事新たな商品へと生まれ変わらせることを実現したのです。

このように、オイシックス・ラ・大地株式会社では、食の無駄な部分をなくすことを通じて、アップサイクルに取り組んでいます。

倉敷紡績株式会社

続いて紹介するのは、国内大手の繊維メーカーで「クラボウ」の名でも親しまれている倉敷紡績株式会社です。同社では裁断くず(衣類をカットする際に生じる無駄な生地)を利用したアップサイクルに取り組んでいます。その方法は下記のとおり。

  • 株式会社エドウインと共同で裁断くずを回収
  • 回収した裁断くずを工場で再び糸に加工
  • その後、協力工場で染色や加工を行い、海外のさまざまなブランドへ販売

裁断くずとよばれる、無駄な生地を利用し、糸へ変換します。その糸を利用し再度製品をつくるアップサイクルに取り組んでいるのです。

また、同社では「L∞PLUS(ループラス)」とよばれる繊維の製造工程で発生する端材を再資源化するシステムを採用しています。裁断くずを利用し、繊維製品・紙製品・プラスチック製品等へのアップサイクルを実現してるのです。

「L∞PLUS」は今治タオル工業組合や奈良県靴下工業協同組合に加入する繊維産地の各企業や先染織物の播州織産地の団体とも連携しています。その連携により、シャツやハンカチ、テーブルクロスなどの製品で同社のシステムが活用されています。さらに、アパレル企業や小売り各社が繊維産地のサステナブル素材を活用できる機会が増え、循環型社会形成に貢献しているのです。

このように倉敷紡績株式会社では、不要になった裁断くずを利用し、アップサイクルに取り組んでいます。

株式会社アダストリア

株式会社アダストリアはショッピングセンター中心に展開するカジュアルファッション専門店チェーンです。グローバルワーク、ニコアンド、ローリーズファームなどのブランドを展開しています。

同社は2019年にアップサイクルブランド「FORMSTOCK(フロムストック)」を展開しました。

FROMSTOCKは「For Fashion Future」とよばれる、企業の垣根を越えて在庫廃棄問題について議論しあうオープンイベントで発案され、事業化しました。店頭からの売れ残りを最小にして、売れ残ったものは生まれ変わらせます。つまり、店舗から生じる廃棄をゼロにするアップサイクルに取り組んでいるのです。具体的な取り組みの概要は下記のとおり。

  • OTB(open to buy)管理とよばれる管理方法により、売上や粗利に応じて仕入や在庫調整
  • 商品ごとの管理を徹底し、追加発注や仕入抑制をすばやく判断。在庫を適切にコントロールする。
  • 売れ残った在庫はアップサイクルや二次流通※等へ再販実施
  • 着られることのない倉庫の服を黒染めし、アップサイクルして再販売

※一度販売された中古品をあらためて消費者向けに販売する

まずは徹底した在庫管理により、廃棄そのものがでないような工夫が徹底されています。どうしても出てしまう売れ残りに関しては、「黒染め」することで新たな製品へと生まれ変わらせているのです。

上記の取り組みにより、株式会社アダストリアは残在庫の焼却処分ゼロを達成しました。また、黒染めの染料にもこだわることで、環境負荷軽減を実現したのです。

株式会社colourloop

株式会社colourloop(カラーループ)は廃棄繊維のアップサイクルを実現している会社です。同社では廃棄繊維をどのような形でアップサイクルしているのでしょうか。

それには「Colour Recycle System」が関係しています。「Colour Recycle System」とは廃棄繊維を色わけし、リサイクルすることでより魅力的な別の素材に生まれ変わらせるシステムです。その循環システムは下記のような形です。

  • 廃棄される予定だったさまざまな色の繊維を回収
  • 同社で色により、仕分けを実施
  • 繊維を解き新しい素材へ変える
  • 新しい素材を利用し、新しい商品を生む

まずは廃棄予定の繊維を回収。そこから同社により、色でわけられたあと、新たな素材へ生まれ変わらせます。この工程を踏むことで、本来焼却処分されるはずであった繊維が新たな素材へと変わるため、環境への負荷が軽減されるのです。

さらに、廃棄される繊維次第でさまざまな色の素材ができるため、同社オリジナルの製品を作ることに成功しています。

日本では年間200万トンもの廃棄繊維が出ている状況です。その中でリサイクルされているのはわずか25%ほどで、残りは焼却処分されています。

廃棄繊維のリサイクルが進まない理由として、繊維素材はさまざまな素材が混じっており、リサイクルに適さない素材だからです。

そこで、株式会社colourloopが考えたのがアップサイクルというシステムです。同社は繊維の「色」に着目し、廃棄繊維を使用して好ましい色合いをうみだす研究を重ねました。その研究の結果、「Colour Recycle System」が誕生したのです。

株式会社colourloopは「Colour Recycle System」をとおして、ブックカバーやペンケース、バッグなどオリジナルの商品をうみだています。まさに「不要なものから付加価値をつけて新たな商品をうみだす」というアップサイクルを実現しているといえるでしょう。

株式会社モンドデザイン

株式会社モンドデザイン廃棄タイヤを再利用したかばんや財布などを展開しています。2020年には「PLASTICITY(プラスティシティ)」というブランドを立ち上げました。ごみの廃棄による環境問題を解決することが目的です。

PLASTICITYは現在問題となっているビニール傘を再利用し、アップサイクルを提供しています。日本ではなんと約8,000万本ものビニール傘が廃棄されているといわれているのです。PLASTICITYはその廃棄予定のビニール傘を再利用し、独自の方法で「GLASS RAIN」とよばれる新しい素材を開発しました。ビニール傘からバッグや小物などのアイテムをつくるアップサイクルに成功したのです。

PLASTICITYが開発した新しい素材「GLASS RAIN」。ビニール傘1枚1枚の表面のデザインが異なり、雨の日の窓ガラスのような表情をみせることから「GLASS RAIN」と名付けられました。そのような「GLASS RAIN」は「回収→解体→洗浄→プレス」という下記工程を経てつくられます。

工程 内容
回収 全国各地の業者との協力や個人の不要になったビニール傘を送ってもらうことにより回収。
解体 埼玉県の工場でビニール部分と骨組みを手作業で解体。ビニール部分のみ活用。骨組みは金属のリサイクルルートにもどされる。
洗浄 ビニール部分を洗浄し、大きさと色別に仕分け。
プレス 栃木県のプレス工場で新たな素材へ加工。

「GLASS RAIN」は上記工程を熟練した職人のもとでつくられるのです。その特徴として、防水性が高く、メンテナンスしやすい特徴があります。つまり、商品化することに最適な特徴なのです。

GLASS RAINを利用したPLASTICITYの商品ラインナップは「トートバッグラージ」と「トートバッグスモール」。この2点には下記のような特徴があります。

  • ビニール傘のビニール部分を余すところなく使用
  • ビニール傘と綿をキルティング加工※したキルティングモデルがある
  • 柄や色のついた傘を使用したカラーモデルも展開
  • 大きいバッグにはビニール傘3、4本、中~小サイズのバッグは1,2本のビニール傘を使用

※キルティング加工:生地と生地の間に中綿を挟み、ミシン縫いで指し縫いにすることで、膨らみを出したり模様を浮き出させること

バリエーションも豊富な商品ラインナップの展開に成功しました。すべて本来廃棄される予定であったビニール傘からつくられていると考えると、同社の環境貢献度の高さがわかることでしょう。

さらに同社では「Umbrella Recycling Program」という不要になったビニール傘素材を1枚から買い取る取り組みを実施しています。ビニール部分のみを同社へ送ると、オンラインストアで使えるポイントや寄付金として還元されるのです。

このように、株式会社モンドデザインではアップサイクルに関わる社会貢献度の高い取り組みを実施しています。

アップサイクルについて私たち個人ができること

ここまで企業のアップサイクルについてみてきました。それでは、私たち個人がアップサイクルに関してできることとはいったい何なのでしょうか。

ここでは、家庭で簡単にできるアップサイクルの手作りアイデアについても紹介するので参考にしてみてください。

アップサイクルについて知り、学ぶこと

まずは何よりもまず、アップサイクルについての情報を仕入れ、学んだり、知ったりすることがあげられるでしょう。
株式会社スナックミーの調査によると、アップサイクルという言葉を聞いたことがある人は12.1%、意味だけわかる人は8.4%。このデータから、いかにアップサイクルという言葉が世間でまだ浸透していないかがわかります。

そのような状況の中で私たち個人ができることはまずはアップサイクルについて知ることです。アップサイクルについて知る方法には本を読んだり、ネットで検索した入りなど多様な方法があります。

このように、まずはアップサイクルについて知ることからはじめ、環境への意識向上につなげていきましょう。

アップサイクルの簡単にできるアイデアを採用してみる

続いて、私たち個人ができることとして、アップサイクルのアイデアを実際に採用してみることがあげられます。簡単にできるアイデアを下記にまとめました。

アイデア 方法
コーヒーかすを消臭剤にする コーヒーかすを湿ったまま使用する場合はカビが生えやすいため、使用期間は長くて2日程度。コーヒーかすをそのまま受け皿において使用可能。乾燥させて使用する場合はしっかりと乾かし、1か月以上使用可能。
アボカドで草木染め 草木染めとは天然染料(植物や昆虫)から色素を抽出して染めること。アボカドの皮と種を15分煮て、煮出たアボカド汁を一晩置く。そこに染めたいものを20分ほどつける。染めたいものは豆乳につけて、染まりやすくしておく。
使い捨てカップをプランター プランターとはベランダなどで植物を育てるための容器。使い捨てのプラスチックカップ、クリアカップ、スポンジ、アルミホイルを利用。クリアカップの底にカッターで、スポンジが落ちないくらいの穴をあけて、スポンジをはめ込む。プラスチックカップには遮光のためのアルミホイルを巻く。プラスチックカップに肥料を入れ、クリアカップを重ねたら完成。
飲み終わったペットボトルを植木鉢に ペットボトルとカッターを用意。ペットボトルを半分に切り、下側を受け皿、飲み口側を本体として利用。本体の飲み口部分に水苔などを引くと土がこぼれずに済む。

興味がある簡単なものからアップサイクルを試してみてはいかがでしょうか。

アップサイクルを生活に取り入れよう

今回はアップサイクルについて解説しました。重要な内容は下記のとおりです。

  • アップサイクルが注目された背景には現在の環境問題がある。
  • アップサイクルと特に関係が深いSDGsの目標は12
  • アップサイクルは不要なものに付加価値をつけて生まれ変わらせること。リサイクルは一度原料に戻して再生利用すること。
  • アップサイクルは原料のコストがかからない、環境負荷が小さい、ビジネスチャンスがあるというメリットがある。

アップサイクルが注目された理由として現在の環境問題が背景にありました。現在の環境問題とは、大量生産・大量消費による環境負荷増加や資源の枯渇、ごみ問題などです。そのような環境問題を解決するべく、アップサイクルが注目されだしました。

そして、アップサイクルと同様に現在注目されているSDGsです。両者は深い関係にあり、アップサイクルと関連するSDGsの目標は12「つくる施責任、つかう責任」でした。

また、アップサイクルと間違えがちな言葉としてリサイクルやリメイクがあげられます。アップサイクルは不要なものに付加価値をつけて新たなものにすることです。リサイクルは一度原料に戻して利用する再生利用のことを指します。リメイクは古い製品にアレンジを加えることです。その古い製品よりも付加価値がつく点や、高単価になる点は問わないことがアップサイクルとの違いでした。

アップサイクルは原料を生産するためのコストがかからないため、コスト面でメリットがあります。また、環境への負荷も軽減され、企業には新しいビジネスモデルを展開するチャンスもあるといえるでしょう。

そのようなアップサイクルですが、一般消費者の認知は低く、言葉自体知らない人も数多くいます。まずは情報収集し、アップサイクルについて学ぶことからはじめてましょう。

<参考文献/参考資料>
遠藤総研:ニュースリリース
環境省:SUSTAINABLE FASHION
一般社団法人産業環境管理協会:ごみをへらし、いかすために3R
ethicame:アップサイクルとは?リメイクやリサイクルとの違い、企業の取り組み・日常アイデア事例も紹介!
リテールガイド:アップサイクルとは?リサイクルやリメイク等との違い、業種別の企業の事例を紹介
Circular Economy Hub:アップサイクルのジレンマとは?「Sustainable Amsterdam」に聞くサーキュラーエコノミーの最前線
株式会社ホリーズ:コーヒー抽出後の「かす」が脱臭剤・消臭剤に!? とってもエコな再利用術
きぬの木堂:【家にある素材で草木染め】アボカドでピンクに染める方法【SDGs】
環境省:適正在庫とアップサイクルによる大量廃棄問題の解決に向けた取組事例
Fashion Tech News:ビニール傘がバッグに生まれ変わる!?「10年後になくなるべきブランド」の「PLASTICITY」
経済産業省:株式会社colourloop
島村楽器:楽器アップサイクル
Oisix ra daichi Farble Online:非可食部を商品へアップグレード?大注目のアップサイクルとは?
環境省:デニム裁断屑を再利用したアップサイクルへの取組事例
倉敷紡績株式会社:アップサイクルシステム「L∞PLUS(ループラス)」に播州織産地が参画~サステナブル素材開発の拡充を目指し、国内の主要な織物産地との新たな取り組みを開始~
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この記事の執筆者
EARTH NOTE編集部
SDGs情報メディア
「SDGsの取り組みを共有し、循環させる」がコンセプトのWEBメディア。SDGsの基礎知識や最新情報、達成に取り組む企業・自治体・学校へのインタビューをお伝えし、私たちにできることを紹介します。
身近なアイデアを循環させて、地球の未来をつなげていきましょう。皆さんと一緒に取り組んでいけたら幸いです。
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