株式会社フルッタフルッタのSDGs|自然を再生し共に生きるための取り組み
株式会社フルッタフルッタ(以下、フルッタフルッタ)は、「自然と共に生きる」という経営理念を掲げている通り、事業を通してアマゾンの再生に貢献するなど、SDGsにも大きく寄与している企業です。また、自然の物をできるだけそのまま届けることで私たちの健康や暮らしも支えてくれています。
今回はフルッタフルッタの代表取締役社長である長澤さんに、フルッタフルッタの創業経緯や事業内容、環境や健康への想いについて伺いました。
目次
創業経緯とアグロフォレストリーとの出会い
フルッタフルッタの事業は自然と密接に関係し、アグロフォレストリーという特殊な農法と切っても切れない関係にあります。ここでは、フルッタフルッタの創業経緯とアグロフォレストリーとの出会いについてお聞きします。
仲間の話がきっかけで事業を始める
───本日はよろしくお願いいたします。まずは、フルッタフルッタの創業経緯について教えて下さい。
長澤さん 株式会社フルッタフルッタを2002年に創業した、代表取締役社長の長澤です。私は以前コンピューター業界で働いていた時期があり、アメリカでも仕事をしていました。その当時の仕事仲間がその後ブラジルのアマゾンでビジネスを始め、チョコレートの原料であるカカオの親戚にあたるクプアスという珍しい果物がアマゾンにあると教えてくれたのです。
そのとき私は食品会社でチョコレートを扱っていたため、その果物にとても興味を持ちました。クプアスがどういった果物なのかはもちろん、ビジネスに使うためには品質や安定供給が大事になるため、早々にアマゾンへサプライヤーを中心に調査しに行きました。
そして幸運なことに、クプアスの生産者が属しているCAMTA(トメアス総合農業協同組合)という、日本からの移民が作ったアマゾンで最大級の農協に偶然出会うことができたのです。このことがきっかけとなり、アマゾンのフルーツをCAMTAと取引する形が出来上がりました。
CAMTAを通じてアグロフォレストリーと出会う
───昔の仲間の話をきっかけに事業が始まったのですね。CAMTAとは、どのような特徴のある農協ですか?
長澤さん CAMTAの人たちはアグロフォレストリーという非常に珍しい農法を取り入れています。素人目にはジャングルに見える畑を自分たちで開発して栽培するというものです。アグロフォレストリーでは、高いものだと40メートル級の樹木が植えられています。
日本で一般的なのは、同じ作物を育てる単一栽培です。高木樹種が植わっている鬱蒼とした畑は温帯性気候の日本ではほとんど見られないと思います。例えるなら明治神宮や靖国神社周辺の森のようなものをイメージしてもらえればいいと思います。
───アグロフォレストリーとはどのような農法なのか、具体的に教えていただけますか?
長澤さん アマゾンでは、単一栽培のプランテーションなどの農業開発が非常に難しいと言われています。一方でブラジルの農業は大規模で生産量が膨大であることから森林破壊の大きな原因になっています。アグロフォレストリーはそれとは逆に、森を作っていく農法です。農地を開拓するために森林伐採され荒廃地化してしまった土地を、人の手で再生させながら生産しています。
私がこの事実を知った2000年当時は、今ほど環境問題が真剣に問われていた時代ではありませんでした。リサイクルが盛んになりだした頃で、サステナブルという言葉はまだなかった時代です。私自身も含め環境問題に対する人びとの関心も高くはありませんでしたが、現地の伐採現場や跡地を目にし「きっとこれは大事なことだ」と感じ、事業を興したという経緯です。現代風にいうと完全にサステナブルですし、グリーンテックと呼んで差し支えない農法だと思います。
主な事業内容とそのこだわり
偶然の出会いからアグロフォレストリーと出会い、自然と共に事業を展開しているフルッタフルッタ。では、具体的な事業内容や商品にはどのようなものがあるのでしょうか?
ここでは、フルッタフルッタの主な事業内容と事業を行う上でのこだわりについて伺います。
コロナを契機にアサイー人気が再燃
───フルッタフルッタではさまざまな商品を販売していらっしゃいます。現在一番力を入れている商品をご紹介いただけますか?
長澤さん 最も取扱いが多いのは創業当初から変わらずアサイーです。アサイーは十数年前の大きなブームが一旦沈静化し、その後コロナ禍の期間中に徐々に盛り上がってきました。現在は前回のピーク時にはまだ達していませんが大きなトレンドになっています。
弊社で開発した「お家でアサイーボウル」は、カフェやレストランでしか食べられなかったアサイーをご家庭で気軽に楽しめるという新基軸を作りました。この商品は大変好評で、多くのお客様にお買い求めいただいております。
───アサイーが再びブームになったことは、どのような背景によるものだとお考えですか?
長澤さん SNSの普及による「映え」への関心の高まりと、コロナの影響で外食ができなくなったこと、そして健康意識の高まりが大きいと考えています。デリバリーするにしても家庭で作るにしても、当時私たちは基本的に家で食事をせざるを得なくなりました。そのため、ただ食べるだけではなく「お店クオリティのものを家で食べる」中食需要が拡大しました。そして、どうせデザートを食べるなら体に良いものを食べたいという健康意識も相まって、アサイーは、消費者ニーズを満たすちょうど良いポジションに当てはまりお客様に受け入れられたのだと考えています。
───コロナ禍を経た新しい価値観によって多くのお客様の支持を得ることができたのですね。
長澤さん 弊社はそれまでアサイーボウルの材料となる冷凍ピューレを販売してきました。しかしそれを一歩進化させ、プロではなくとも家庭で手軽に作れる商品として「お家でアサイーボウル」を開発しました。トッピングを用意するだけで作れるため、スーパーマーケットや量販店に置いていただくことで、ご家庭で楽しむことが可能になりました。
こだわりは新しい製法で栄養素を守ること
───商品開発において、特にこだわっているポイントなどお聞かせ下さい。
長澤さん 自然が作り出す栄養素には独自の大きな意味があるため、弊社ではできるだけそのままの形で届けることに徹してきています。技術としてこだわってきたのは栄養を守ることです。私は違う業界から食品会社に来た頃、「食品は栄養を運ぶものだ」と思っていました。しかし蓋を開けてみるとそうではなく、「売りやすいものを売っているだけだ」と気が付いたのです。
例えば売りやすくするための手段として、賞味期限を長くしたり保存性を良くしたりするといった方法があります。その犠牲になっているのが実は栄養だったのです。商品の生産における加工というプロセスの中で、売りやすさを追求していけばいくほど栄養素が失われていきます。
弊社では、加工しても栄養が守られる新しい技術を追求しました。そしてさまざまな工夫をこらすことで、天然の栄養素をお客様が口元に運ぶまでできる限り失われないようにお届けすることができるようになったのです。これが私たちが冷凍や冷蔵にこだわっている大きな理由です。
───栄養を犠牲にせずに保存状態を保てるのは凄いですね。具体的にはどのような技術が使われているのですか?
長澤さん 弊社ではアグロフォレストリーのフルーツを全てピューレ状にして冷凍で運んでいます。配送効率だけを考えると、本当は常温のパウダー状の方が余程効率的です。そのような中で私たちがコストをかけてでもピューレというストレートの状態を冷凍して運んでくるのは「栄養を損ないたくない」というだけの理由です。意味あいとしては、冷凍の果実をそのまま日本に持ってきているのに近いです。
───栄養を損なわないようにする裏側には、そうした企業努力があったのですね。
長澤さん 味や値段だけではなく、栽培方法や加工の工程までを総合的に評価して選ぶ時代になってほしいですし、そこを理解できる人たちにユーザーになっていただきたいと思っています。
自然のメカニズムを再現するアグロフォレストリー
───アグロフォレストリーで栽培された作物から商品を作られていますが、このアグロフォレストリーについて詳しく教えていただけますか?
長澤さん アグロフォレストリーは一種のグリーンテック技術であり、非常に手間のかかる栽培方法です。数十種類の作物が、果樹や材木を含めて混植されています。その中でできるだけ森林の植生にあった形にするために高さが要求されるのです。先ほど40メートルを超える高さとお伝えしましたが、植えられている樹木のさまざまな高さには全て意味があります。
肥料も与えますが、日本の畑のようにたっぷりと栄養を与える訳ではありません。樹木が落葉するとそれを他の木々たちが栄養源として吸収するなど、あくまで自然の生態系を再現しているのです。動物や昆虫も受粉などの形でメカニズムに組み込まれているため、全て自然がもともと持っているシステムで行われています。
───自然の力を借りて農業を行っているのですね。自然を再生させながら農地も増やせるのは素晴らしいと思います。
長澤さん 人間は自然の価値に気づかず、自分の考える生産方法の方が良いと思い込んで農業技術を発達させてきました。しかしそれは、アマゾンのような大自然の中では通用しません。
自然というものは規模が大きく、パターンが決まっているようで決まっていないため、各生産者が自分の畑の中でバランスを決めて行うという点が難しくなっています。
一番の価値は体に良いこと
───非常に手間がかかり、難しいアグロフォレストリーの作物を確保できていることには、やはりCAMTAの存在が大きいのでしょうか?
長澤さん CAMTAでは、アグロフォレストリーの生産者が苦労して作った作物を買い取り、CAMTA自体が運営する工場でピューレに加工しています。日本では農協自らが工場を持っているのはあまり見かけませんが、CAMTAは日本の技術支援によって果物を加工して保存できる形にすることができたのです。
もう一つ重要なのがマーケットです。こういった少量多品種の畑からできた商品はコストが高いため、大量生産と比べて競争力で劣ります。そのため、オーガニックのような付加価値をつけなければ商品が売れず、農業自体が衰退してしまいます。
ここがサステナブル農法の存続に関わる非常に大事なポイントです。綺麗事だけではサステナブルは語れませんし、農業である限りは物が売れ続ける必要があります。エコだからというだけで買ってくれるほど消費者は甘くないため、価値を生み出さねばなりません。そこで私たちが考えた消費者が一番喜ぶ価値は、やはり栄養が豊富で体に良いということです。私たちはこれを天然のサプリメントと呼んでいます。
SDGsにも貢献する新たな取り組み
自然を再生し、私たちの健康を支えてくれているフルッタフルッタの事業。SDGsにも大きく寄与している事業では、さらに新たな展開が始まっているそうです。ここでは、SDGsに寄与する新たな取り組みと自然や健康への想いについてお聞きします。
SDGsに寄与するためには事業の持続性が大切
───フルッタフルッタの事業はアグロフォレストリーの発展に寄与しているという点で、SDGsにも大きく貢献していますよね。
長澤さん SDGsの目標13「気候変動への対策」や目標15「陸の豊かさを守る」が、弊社の事業と特に関連している項目ですが、これはあくまでSDGsの中での話です。ビジネスの観点からSDGsを語るには、ビジネスとして続けていけるかどうかという意味の持続性が大切だと思っています。
弊社のビジネスにおいては、アグロフォレストリーをやればやるほど荒廃地が復旧していきます。これは綺麗事ではなく、自分たちが潰したものを修復していくということです。アマゾンでは人間が開拓して荒廃した土地を放置していくため、毎年5,000~10,000㎢ものジャングルが荒廃地化していると言われています。SDGsと言うのは簡単ですが、これまでやってきたことは人間が責任を取らなければ元には戻せません。
アグロフォレストリーは荒廃地を使って40メートル級の木が生えている森を再現させる、完全にリジェネラティブな農法です。そして畑である以上、物が売れる仕組みさえ作ることができれば荒廃地を再生させていくことができます。私たちにとって一番大事なのは、サステナブルプロダクツが売れるマーケットを作ること。そして、そのための需要を作り出すことが本当の仕事なのです。
CO2削減マークで削減量を可視化
───たしかに、あくまで事業を通してSDGsに貢献しているのですから、事業自体を持続可能なものにしなければなりませんよね。他にも何かSDGsに関する取り組みはありますか?
長澤さん 2023年9月から、CO2削減マークの取り組みを始めました。アグロフォレストリーは森を作り、その森は確実にCO2を吸収します。CO2削減マークは、そのCO2の吸収量を数値として表示するという取り組みです。
具体的には、アグロフォレストリーによるCO2の年間吸収量から生産・輸送時のCO2排出量を差し引いて、原料の年間生産量で割ります。すると、原料1グラムあたりでどれだけのCO2を削減しているかが数値として算出されます。商品によって原料や配合が違うため、全部計算して数値化しています。
───何となく漠然と環境に良いと思っているのと、具体的な数値でどれだけ貢献できているかが可視化されているのとでは、受け取り方が全く違ってきそうですね。実際の反響はどうでしたか?
長澤さん 数値を商品の前面に押し出したことで、若い世代を中心に共感が広まりました。マークのある商品とない商品が混在していた場合は、やはりマークのあるものからなくなっていきます。
私のような中高年世代はそこまで意識が高くない人が多いため、よほどのことがなければ財布の紐を緩めてくれませんが、若い世代は地球に優しいものを取り入れる教育をされています。ですので、環境に配慮することがスタンダードである人たちが認めてくれる印があれば、マーケットが動くのです。
───やはり若い世代の方が、環境保護に対する意識が高い傾向にあるのですね。このマークはどのような商品に付けられているのでしょうか?
長澤さん この取り組みは弊社の商品から率先して行っていますが、弊社が扱っている原料を使って作られた他社製品にもこのマークは使えます。最近ではインスタントカレーなどにも使われはじめるなど、徐々にムーブメントが大きくなってきました。それはやはり地球環境を気にかける人たちやSDGsに取り組む企業が増えてきたからです。
───この取り組みは非常に面白く有意義なものだと感じましたが、同時にまだまだ発展させていけそうにも感じます。
長澤さん 最終的には、CO2削減量の数値をクレジット化したいと考えています。2025年の11月に、アマゾン地域であるブラジル北部パラ州の州都ベレンでCOP30が開催されます。ここはアグロフォレストリーが盛んに行われている地域であるため、当然アグロフォレストリーが議題に挙がるはずです。そこで私たちは、アグロフォレストリーがCO2を削減することや、削減量をクレジット化して消費者がインセンティブとして使えるようにすることを提唱しようと考えています。
今はただ単に表示を見て選んでくれているだけですが、クレジットが付くとなるとさまざまなベネフィットが生まれ、買う人にも生産する人にもインセンティブが発生します。すると企業は「アグロフォレストリーで作った方が儲けられる」と考えますし、消費者にも例えば税金が安くなるなどの恩恵があればより選ばれやすくなるのです。
こうした観点からCO2削減マークを使うことで需要を増やし、マーケットを大きくしたいと考えています。みんなが当たり前にアグロフォレストリーで作られた商品を買うことで、オーガニックのように暮らしに浸透します。そうなれば間違いなくアグロフォレストリーの畑が増えて、ジャングルが再生していくはずです。
自然と共に健康で豊かな暮らしを
───最後に、読者の皆さんへのメッセージをお願いします。
長澤さん 人間は自然の中で生きているのですから、自然に優しいものは結局人間にも良いものであるということに気づいてほしいです。弊社は理念として「自然と共に生きる」と掲げています。自然がなければ経済すら成り立たないことは誰もがわかっていますが、自然の仕組みに従った方が健康で幸せになれるという単純なことを、もっと考えてみてほしいのです。
例えば子どもを連れてイチゴ狩りに行った先で、畑のイチゴの横に野イチゴがなっていたとします。どちらのイチゴの方が栄養があると思いますか?だいたいの人は野イチゴと答えます。これは誰かがそう教えているわけではありません。人間も自然の生き物だから感覚としてわかるのです。
文明は確かに便利で私たちの暮らしを豊かにもしますが、こうした本来わかっていたことがだんだんとわからなくなり、自分の感覚を鈍らせている側面もあるのではないでしょうか。そこを一回リセットすることで感覚を取り戻し、自然の仕組みに従った健康で豊かな暮らしを手に入れてほしいです。
───本日は貴重なお話をありがとうございました。
自然と人をアグロフォレストリーでつなぐ未来へ
自然を再生する事業を行うことで、私たちの健康をも支えてくれているフルッタフルッタの取り組みは、まさにSDGsの理念に則った新しく素晴らしいものでした。CO2削減マークなどの取り組みが世の中のスタンダードになっていけば、さらにSDGsの機運が高まっていくのではないかと期待せずにはいられません。今後も日本で、そしてアマゾンで活躍を続けるフルッタフルッタの活躍に注目していきたいと思います。
フルッタフルッタの事業や商品に興味がある方は、ぜひホームページを覗いてみてはいかがでしょうか。
身近なアイデアを循環させて、地球の未来をつなげていきましょう。皆さんと一緒に取り組んでいけたら幸いです。