天井クレーンを製造する株式会社愛和産業のSDGsは社員とお客様の安全を運ぶこと

天井クレーンを製造する株式会社愛和産業のSDGsは社員とお客様の安全を運ぶこと

2024.03.19(最終更新日:2024.03.19)
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重量物を運ぶ際に欠かせない天井クレーン。そんな天井クレーンを設計からメンテナンスまで手がけているのが「株式会社愛和産業(以下、愛和産業)」です。愛和産業は早くからSDGsに取り組んできた企業としても知られています。

今回は、愛和産業の事業内容や安全への想い、SDGsの取り組み、今後の課題や展望について、取締役管理部長の小島さんに伺いました。

愛和産業の事業と安全への取り組み


まずは愛和産業の事業について詳しく聞いていきたいと思います。安全が何よりも重視される事業を行っている企業としての、安全への取り組みについても伺います。

愛和産業は天井クレーンの全てを任せられる会社


───本日はよろしくお願いします。まずは愛和産業の主な事業について教えて下さい。

小島さん 愛和産業の小島と申します。私は営業や管理の仕事に携わっており、SDGsやESGの推進にも従事しています。

弊社はもの作りの現場で多く使われている、天井クレーンを扱っている会社です。天井クレーンとは、簡単に言うと重たいものを運ぶことができる非常に簡単な機械です。

───天井クレーンを扱っているとのことですが、具体的な事業の範囲はどこからどこまでになるのでしょうか?

小島さん 弊社では設計や製造といったクレーン自体を作る工程と、使っていただいているお客さまへのメンテナンスまでを行っています。製造だけ、あるいはメンテナンスだけを行っている会社が多い中、天井クレーンに関することを全て行えるところが弊社の強みです。

創業当初はメンテナンスを専門としていましたが、その後、製作もできないかというお話をいただいたことをきっかけに製作を始め、現在に至るという流れです。

意外と身近に関わっている天井クレーン


───天井クレーンは、具体的にどのような業種で使われているのですか?

小島さん 弊社は愛知県に本社を置いています。自動車関係の会社が多い土地柄ですので、自動車に使う金型を運ぶためや、鉄の材料そのものを扱う工場などでご利用いただいています。他にも製紙会社で、紙の原料の非常に重いロールを運ぶ用途としても導入されています。

───たしかに自動車関係は重いものを運ぶことが多そうですね。他にはどのような使われ方をしていますか?

小島さん 少し面白いものでいくと、遊園地などでアトラクションの点検の際に、アトラクション自体をクレーンで釣って点検するという利用法でも使われています。このように天井クレーンは、実は皆さんの周りにある身近なものの生産や点検に関わっています。

───アトラクション自体を吊るとは驚きです。天井クレーンは高所にあると思いますが、どのように操作するのですか?

小島さん 天井クレーン自体に運転席がついているものも一部ありますが、最近の主流は比較的小さなクレーンを、押しボタンや無線機で操作するものです。テレビのリモコンを想像してもらうと分かりやすいのですが、少し離れたところから操作する方式が主流になっています。

早くから安全に取り組むためにISO45001を取得



───離れた所から操作したほうが安全ですよね。安全に関してはISOの規格を取得されていると伺っていますが、こちらについてお聞かせいただけますか?

小島さん 弊社は安全にダイレクトに関わる仕事をしている会社であるため、労働安全衛生マネジメントの観点から2021年に「ISO45001」を取得しました。これは、今後関係会社含めさまざまなところで安全に対する取り組みが重要になってくるため、早くから力を入れるためという理由からです。

───ISO45001を取得して、意識の違いなどは見られるようになりましたか?

小島さん ISOを取得した際には、ISOがどのようなものか分からず社員の中でも困惑がありました。また正直なところ、今でも社内全体には浸透しきっていない部分もあると思っています。しかし、これまで行ってきた安全に関する取り組みの中には、既にISO45001の取得要件に当てはまっていたものも多くありました。それらの取り組みを見直し、取り組めていなかったことに関しては新たな取り組みとしてスタートさせているところです。

───安全に関する取り組みは、他にもありますか?

小島さん 弊社には安全委員という安全を推進する役職があり、災害時の対策や安全パトロールの主催、年1回全社で行う安全大会などに携わっています。しかし、安全委員以外の社員の中には意識が薄い人もいるため、社内全体の意識としてはまだまだ物足りないと感じています。安全への取り組みに社員みんなに関わってもらい、社内全体で意識の向上を図っていきたいです。

ISO45001は労働安全衛生マネジメントシステムの国際規格で、国際標準化機構(ISO)によって2018年3月に発行されました。ISO45001では、計画(Plan)、実施(Do)、評価(Check)、改善(Act)のPDCAサイクルを回すことにより継続的な改善を実施し、労働に関する負傷や疾病の予防、安全で健康的な職場の提供を達成することが求められています。
参照:JISHA(中央労働災害防止協会) ISO45001とは

4つの分野でのSDGsの取り組み

強い想いを胸に安全に取り組んでいる愛和産業。早くから行ってきたというSDGsの取り組みには、どのようなものがあるのでしょうか。ここでは、愛和産業の4つの分野での取り組みについて聞いていきます。

SDGsが生まれすぐに取り組み始めた

───ここからはSDGsに関する取り組みについて伺います。まず、SDGsに取り組むことになったきっかけについて教えて下さい。

小島さん SDGsは今でこそ、世界的にはもちろん国内でもかなり幅広く取り上げられるようになりました。しかし弊社ではSDGsという概念が生まれた直後から、すでに会議で議題として取りあげて取り組んできました。しかし取り上げてはいるものの、社内ではSDGsという言葉すら知られていないという状況でした。

そんな中「どうすれば社内に周知できるのか」「弊社ができるSDGsの取り組みにはどのようなものがあるのか」を、会議で継続的に取りあげ続けることで今の形になりました。現在でも、弊社で行っている「未来創造会議」という会議の議題として、SDGsついて取り上げています。

───現在ほどSDGsが認知されていない中で取り組みを決めるのは、大変だったのではないですか?

小島さん SDGsに関して弊社がどのようなことに取り組んでいくべきなのかというところは、かなり意見が分かれたところです。その中で、実際に社内でできていることや当てはまることは何なのかと考え、4つの分野の取り組みができました。とはいえまだ全然取り組めていないこと、もっと取り組むべきことも多いため、引き続きSDGsやESGに対する取り組みを議論しています。

地域社会への貢献のため安全意識の啓蒙に取り組む


───今お話にあった4つの分野の取り組みについて伺います。まずは、「地域社会への貢献」に関しての取り組みについて教えて下さい。

小島さん 地域社会への貢献に関しては、交通安全の推進として交差点に弊社の社員が立ち、シートベルトの着用を促すなどの活動を定期的に行ったり、地域の取り組みに参加したりしています。また、インターンシップなどを通して弊社の安全に対する意識を感じてもらい、安全への啓蒙を行うところにも力を入れています。

───実際に交差点に社員の方が立っているのですか。なかなか面白い取り組みですね。

小島さん 比較的交通量が多い交差点で社員が蛍光色のベストを着用し、プラカードを持って車を運転される方に安全に対する意識の向上を訴えています。シートベルトの着用だけに限らず、運転手の方に安全運転を促していく取り組みです。

───インターンシップでの取り組みは、具体的にはどのようなものですか?

小島さん インターンシップでは、なかなか日常では行わないようなことを行っています。例えば高所作業の体験です。弊社は比較的高いところで仕事をすることがあるため、実際に仕事を行う高さまで高所作業車を用いて上がってもらいます。そして、高所作業をするにあたって物の落下事故や人の墜落事故を万が一にも起こさないために、安全対策を万全にしていることを体感を交えて伝えています。

また、弊社はクレーンを扱う会社ではありますが、一番重要なのはクレーンの製造やメンテナンスではありません。お客様がクレーンを用いて安全に仕事ができるようにすることが私たちの仕事の本質であるということも伝えています。学生からも共感の声を多くいただいており、大変嬉しく思っています。

社内だけではなくお客様にも環境対策の提案をしている


───やはり実際に高さを体感することで、リアリティが生まれますよね。続いて、「環境対策」に関する取り組みをお聞かせください。

小島さん 環境対策として行っていることは、マニフェストの取得や作成も含め、廃棄物を指定の場所へ廃棄することの徹底や、鉛が使われていない塗料に切り替えていく無鉛化などです。お客様に対しては、電力の消費が少ないクレーンのご利用や、メンテナンスを施すことでクレーン自体を長く使っていただくことを提案させていただいています。

海外では天井クレーンが古くなって故障すると、すぐにクレーン自体を新調することが多いのですが、弊社ではメンテナンスをすることで悪いところを直すことで長く使い続けていただけるようにしています。

人間力を理念にさまざまな視点から安全を考えている


───「雇用と人材育成」については、どのような取り組みがありますか?

小島さん 弊社では経営理念として「人間力」を掲げています。新卒採用を含め、採用の際にはまず初めに経営理念である人間力の話からさせてもらいます。お客様のお役に立つためには、まず自分自身が人間力を磨かなければいけないですし、逆にお客様のお役に立つことによって人間力が磨かれていくという話です。まず理念に共感してもらうところからスタートさせていただいています。

───理念に共感する人材を採用するのは大切ですね。入社した後の育成に関してはどうですか?

小島さん 入社後1年間は社員研修期間という形で、全部署を回って一通り体験してもらっています。これは、クレーンを扱う上での安全とはどういうものなのかを、全部署回って見てもらうことで感じてもらうことを目的としたものです。入社1年未満の経験の浅い社員に、その後の仕事を行う上での安全意識を持ってもらうために、こうした取り組みを行っています。

また、研修期間を1年と定めたのは最近のことで、それまではまずメンテナンスを見てもらって、そこでの安全意識を高めるというやり方でした。1年間の研修という形で各部署を回るようになってからは、メンテナンスという目線だけではなく、設計や製造、営業などそれぞれの目線での安全に触れてもらうことができるようになりました。

───さまざまな目線から安全に触れることによる、その後の仕事への影響は感じられましたか?

小島さん 配属先でも、これまではメンテナンスしか見ていない中での安全に対する切り口でした。しかし「少しでも安全にメンテナンスしやすくするためには、どのような設計にするべきか」など、さまざまな目線から安全意識の向上ができるようになったと、実際に研修を受けた社員から聞いています。また、そういったことをより意識して研修期間を過ごしてほしいということも、こちら側から伝えています。

組織体制の課題は世代交代


───最後の「組織体制」に関する取り組みについて教えて下さい。

小島さん 弊社にはさまざまな部署がありますが、多くの企業と同様に「世代交代」が課題になってきています。もちろんある程度スムーズに引き継ぎが行われている部署もありますが、全ての部署に言えることではないというところが、弊社の抱えている課題です。

───世代交代に関しては、具体的にどのような対策を考えられていますか?

小島さん 属人化している仕事もあれば、シンプルに次の世代がいない部署もあるため、そういったところは他部署も協力しながら役割分担を行っていきます。属人化している仕事に関しても、その社員が行っている仕事を業務としてしっかり洗い出して、引き継ぐことに取り組んでいるところです。

───社員の方の年齢層はかなり幅広いのでしょうか?

小島さん 下は20代の方から、上は70代の方までが活躍されています。経験年数の長い方はやはり培ってきた技術やノウハウを非常に多く持っているため、今後も長く活躍していただきたいです。

しかしそういった技術やノウハウをそこでおしまいにするのではなく、どんどん次の世代に引き継いでいってほしいです。そして、引き継がれた技術やノウハウを用いて、お客様の安全に対して貢献をしていきたいと思っています。

情報発信と今後の展望


4つの分野でさまざまな観点からSDGsに取り組んでいる愛和産業ですが、取り組みの社内外への発信にも力を入れています。ここでは、愛和産業の情報発信と今後の展望について伺っていきます。

ブログと社内報で情報を発信

───ホームページに掲載されているブログで、SDGsに関する記事を拝見しました。どのような経緯で始められたのですか?

小島さん ブログで発信することになった経緯も、どうやって社外への発信をしていくかということが会議の議題に挙がり、社内で実際に行っていたブログと絡めて発信できないかという案が出たためです。

また、社内に対しては社内報というものがあります。季節ごとに出されるもので、必ず1項目はSDGsの取り組みを取り上げてもらっています。これも会議の議題から来ているものです。このように、ブログと社内報を使って社内外両方への発信を行っています。

今後は女性の活躍や二酸化炭素削減に注力


───今後、どのような点に力を入れていきたいとお考えですか?

小島さん 弊社は16対3という男女比になっています。中でも事務員は全て女性になっており、管理職もいるものの、やはりまだまだ女性の活躍というところでは取り組みが弱いと感じています。ですので今後は、女性技術者の採用にも力を入れていきたいです。

しかし、やはり事例がない中で最初に技術職として入社される方は、非常に不安を持たれると思いますので、不安の解消やバックアップ環境の整備なども並行して行います。女性の活躍は社内の課題ですし、今後さらに取り組んでいかなければと考えています。

───男性ばかりの職場に女性一人で入るのは不安ですよね。女性が安心して力を発揮できる環境づくりは素晴らしいと思います。他にも今後の課題などはありますか?

小島さん 弊社の取り組みとしてまだ弱いと思っているのが、環境に関わることです。業界の特色と言えなくもありませんが、まだまだ取り組みが弱いと思っています。

───具体的にはどのような点ですか?

小島さん ESGのレポートでも目標に掲げているのが、二酸化炭素の排出量です。クレーンは基本的にオーダーメイドの商品であるため、一製品あたりの排出量は算出しづらいです。しかし、まずは社内の排出量の調査を行うことで、排出量をどうすれば減らしていけるのかを今後の取り組みとして行っていこうと思っています。

SDGsを意識して話題に挙げ続けることが大切

───最後に、読者の皆さんへのメッセージをお願いします。

小島さん 弊社のSDGsの取り組みに関しては、正直結果に結びついていないところも多々あると捉えています。しかし、SDGsを意識しながら日々業務にあたる、SDGsを常に議題として挙げ続けて社内で話題にしていくことが大切です。取り組みとしてはまだまだ足りない部分もありますが、今後も引き続き行っていきます。

そして、クレーン業界にもSDGsに目を向けて取り組んでいる会社があるということに興味があれば、ぜひお声がけいただきたいです。また、取り組みのアドバイスなどがあれば、ご指導いただきながら一緒に取り組んでいきたいと思っています。

───本日は貴重なお話をありがとうございました。

愛和産業は今後も社員とお客様の安全を守っていく

社員とお客様の安全を守りたい、SDGsに貢献していきたいという愛和産業の想い、そしてそれを実現するための取り組みには感銘を受けました。今後も安全やSDGsに取り組み続けていく愛和産業に注目していきたいです。

愛和産業の事業や取り組みに興味がある方は、愛和産業のホームページをぜひ1度訪れてみてください。

▼株式会社愛和産業のホームページはこちら
天井クレーンの設計・製造・メンテナンスなら | 株式会社愛和産業

この記事の執筆者
EARTH NOTE編集部
SDGs情報メディア
「SDGsの取り組みを共有し、循環させる」がコンセプトのWEBメディア。SDGsの基礎知識や最新情報、達成に取り組む企業・自治体・学校へのインタビューをお伝えし、私たちにできることを紹介します。
身近なアイデアを循環させて、地球の未来をつなげていきましょう。皆さんと一緒に取り組んでいけたら幸いです。
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