エシカルとは?SDGsとの関係から今すぐ実践できるヒントまで、分かりやすく徹底解説!

「エシカルってどんな意味?」
「エシカルって良いことなの?」
「エシカルとサステナブルやSDGsはどう違う?」
「エシカル」という言葉を見たり聞いたりして接する機会はあるでしょうか。
「エシカル」の認知度は少しずつ上昇傾向にありますが、具体的な内容まで理解している人はまだ少ない状況です。
環境問題やSDGsと関係がありそうで何となく良いイメージなど、漠然とした認識にとどまる人が多いかもしれません。
ここでは、エシカルの意味・エシカルが求められている背景・エシカルの力・私たちにできるエシカルな行動などについて詳しく説明していきます。
エシカルを理解することで、エシカルをもっと身近なものとして、簡単に日常に取り入れることが可能となりますので是非ご覧ください。
エシカルが注目されているのは、エシカルが必要だから
エシカルが注目されている理由は、今日の社会にエシカルが必要とされているからです。
私たちが何気なく生活し利益や幸福を追求する一方で、簡単には解決できない地球規模の課題が山積しています。
エシカルは、それらの社会的な課題を少しずつでも改善していく大きな可能性をもっているのです。
エシカルとは何なのか、以下に説明していきます。
エシカルは「倫理的な」という意味
エシカルは英語でethicalと表記され、「倫理的な」という意味の形容詞です。
形容詞なので、エシカル消費・エシカルファッション・エシカルコスメなど後ろにくる名詞とセットになって使われることも多々あります。
それでは「倫理的な」とは、具体的にはどのようなことなのでしょうか。
私たちが衣食住を満たして健康に生きていくためには、食糧や消耗品など必要な物を買ったり、調理や冷暖房のためのエネルギーを消費したりすることが不可欠です。
しかし、自分が買う商品や使うエネルギーがどこでどのように生産され手元に届くのかを、私たちが逐一考えることはありません。
近年、社会はどんどん複雑化しているため、商品などが生産されてから消費者の手元に届くまでの流れは分かりにくく、想像することも難しくなっているからです。
しかし、この生産・流通過程で無意識のうちに地球環境への負荷や生産者に対する不平等が生じている可能性があります。
環境に対するデメリットや誰かへの不平等を極力減らしたいと考えることが「倫理的な」の意味するところなのです。
親しみやすいフレーズとして「人や環境に対して思いやりのある」と言い換えることができます。
エシカルではない活動が生み出してきた問題
「同じ品質の物ならば安い方が良い」「欲しい物はすぐに手に入れたい」「使い捨てが便利」といった考え方はエシカルではありません。
商品の価格を安くするためには原料費や輸送費などのコストを下げることが必要で、生産や流通に関わる人に低賃金で労働を強いている可能性があります。
ユニセフの報告によると、児童労働に従事する子どもの数は世界で1億6000万人です。
低賃金の労働者として、より弱い立場にいる人がしわ寄せを被っていることが想像されます。
翌日配達などで配送時間を短縮するために、深夜労働や長時間労働が発生していることも否定できません。
また、製品や原料の輸送には多くの燃料を消費しますが、効率性を考慮しない配送で懸念されるのが、地球温暖化の要因である二酸化炭素の排出増加です。
さらに、生産過程で発生する有害物質の処理に必要なコストも削られている場合は、生産地周辺の土地・水・大気を汚染しているかもしれません。
世界中の人が日本人と同じ生活スタイルをした場合、地球が2.9個必要といわれています。
限りある資源を使って生産した物を、惜しげもなく捨てる生活を続けるならば、地球はいくつあっても足りません。
このように、きわめて個人的な消費行動が労働問題・自然環境の破壊・資源の浪費・地球温暖化といった世界的な課題とつながっているのです。
エシカルとはサステナブルを意識すること
サステナブルは英語でsustainableと表記され「持続可能な」という意味の形容詞で、サステナブル消費など後に続く名詞とセットで使われることも多い言葉です。
サステナブルの方が、エシカルよりも広く一般に知られているかもしれません。
地球規模の環境問題が懸念されている今日では、サステナブルとは特に「人類が地球上で暮らし続けることができる」という主旨で多く使われます。
世界がサステナブルであるために必要なことは、例えば次のようなことです。
- 資源を採りつくさないように大切に計画的に利用する
- 有害物質による水・土壌・大気の汚染を防ぐ
- 人類存続の基盤となる生物多様性を保全する
- 地球温暖化を防ぐために温室効果ガスを削減する
- 他者を認めて平和に共存し戦争を回避する
これらのサステナブルの要件を意識することが、すなわちエシカルであるといえます。
世界をサステナブルな状態にするには、一人ひとりがエシカルな考え方をもち行動することが重要なのです。
エシカルとはSDGsを意識すること
SDGs(SustainableDevelopmentGoals)とは、2015年に国連で採択された「2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標」です。
SDGsは下記の17項目からなります。
- 目標1貧困をなくそう
- 目標2飢餓をゼロに
- 目標3すべての人に健康と福祉を
- 目標4質の高い教育をみんなに
- 目標5ジェンダー平等を実現しよう
- 目標6安全な水とトイレを世界中に
- 目標7エネルギーをみんなにそしてクリーンに
- 目標8働きがいも経済成長も
- 目標9産業と技術革新の基盤を作ろう
- 目標10人や国の不平等をなくそう
- 目標11住み続けられるまちづくりを
- 目標12つくる責任つかう責任
- 目標13気候変動に具体的な対策を
- 目標14海の豊かさを守ろう
- 目標15陸の豊かさも守ろう
- 目標16平和と公正をすべての人に
- 目標17パートナーシップで目標を達成しよう
出典:国際連合広報センター 持続可能な開発目標(SDGs)報告2022
地球に暮らす人類にとって、サステナブルなよりよい世界は必要不可欠です。
17項目の目標を達成するためには、私たち一人一人が自分の考え方や行動をエシカルにしていく必要があります。
逆に、世界中の人がエシカルになれば、世界はよりよくサステナブルにできるのです。
つまり、エシカルは今ある地球規模の社会問題を解決する可能性をもっており、SDGを達成しサステナブルでよりよい未来を手に入れるための鍵といえます。
エシカルはあらゆる行動と結びつく
私たちが生活する上での行動すべては、エシカルな視点から見直すことができます。
あらゆる業界で熱意をもって社会的責任を果たそうしている企業があり、エシカルな視点で情報を探してみると、エシカルなサービスを見つけることが可能です。
無理なくできることから、エシカルを考えてみましょう。
エシカルと結びついたワードから、私たちの暮らしと密接に関わるエシカル行動を1つずつご紹介していきます。
「エシカル消費」とは環境・人への負荷をいかに減らすかを考えて選択する消費行動
私たちは生まれてから死ぬまで、たくさんのモノやコトを消費しなければ生きていけません。
消費するモノやコトは作られてから消費者の手元に届くまで、多かれ少なかれ何らかの環境に対する負荷をかけています。
何かを生産するには資源を使うこと・二酸化炭素を排出すること・廃棄物を発生させることが避けられないからです。
環境への負荷や生産・流通に関わる人へ不利益の存在を知った上で、デメリットを最小限に抑えようと配慮することがエシカル消費といえます。
消費対象が、どこでどのように生産されどのように手元に届くのかを知ろうとし、得られた情報を元にして何を買うのか・何を買わないのかを判断することがエシカル消費なのです。
例えば、次のことに対してどれだけエシカルな配慮があるかということが、どの商品を選ぶかという判断基準になります。
- 企業の理念
- 原料の生産方法・入手方法
- 商品の製造方法
- 商品の製造場所
- 商品の配送方法
- 製造過程で発生する廃棄物の処理方法
- 消費者が商品を使った後の破棄方法
モノやコトが生産・流通・廃棄される過程で、どのくらい環境負荷を及ぼすかを知る材料の一つが、カーボンフットプリント(CarbonFootprintofProduts)です。
カーボンフットプリントは、商品やサービスの原料調達から廃棄・リサイクルされるまでの全体を通して、排出される温室効果ガスの量を数値で表していて参考になります。
原料がリサイクル資材であったり商品そのものがリユース品であれば、よりエシカルといえるでしょう。
また、エシカルな活動に対する寄付がついている、または売り上げの一部が寄付になる商品を選択することも考えられます。
さらに、古い物を大切に使い続ける・壊れた物を直して使う・人から譲ってもらう・買わずにレンタルにするなど買わない選択をして済ませるという方法も一つです。
エシカルな商品を探すには後述する「認証マーク」も手がかりになるので、ぜひ身近なところで気軽にできるエシカル消費を探してみてください。
「エシカルファッション」とは生産者・地球環境に配慮して作られた衣料品
エシカルファッションとは、衣料品の生産に関わる人の権利や環境に対するデメリットを軽減しようとする意識の高いメーカーによって提供される衣服のことです。
国連貿易開発会議(UNCTAD)によるとファッションは世界で第2位の汚染産業とされているほど、環境問題の面から注目を集めています。
衣食住という言葉からも分かるように、衣服は生きていくために欠かせないものですが、汚染産業といわれる理由は何でしょうか。
2000年頃からファストファッションと呼ばれる安くてトレンドを捉えた服が広く流通するようになり、ファッション産業の世界が大きく変わりました。
ファストファッションは、衣料品を大量に生産することでコストを抑え、価格が安い分数多く販売することで成り立つシステムです。
日本は衣服の98%を輸入に依存し年間36億着を海外から輸入していますが、実にその半分が売れ残って新品のまま廃棄処分されています。
石油で作られた化学繊維を多用して安い賃金で安い衣料品を作り、大半が廃棄となり温室効果ガスを大量に排出するのであれば、エシカルとは対局にある筋書きといえるでしょう。
消費者としては、エシカルなメーカーの衣服を選んで購入するほか、良い物を大切に長く着る、リユースや古着を買うこともエシカルな選択といえます。
工夫しながら納得のいく衣服を選んで自分らしく装うことで、心も満たされ内面から魅力的になれるかもしれません。
出典:国際連合広報センター 国連、ファッションの流行を追うことの環境コストを「見える化」する活動を開始
「エシカルフード」とは生産者・環境に配慮して生産された食品
食物を生産するには多かれ少なかれ環境負荷や人への負荷を伴いますが、エシカルフードはそれらの負荷をなるべく少なくするよう配慮されている食品です。
農産物の生産で農薬や除草剤などを使う場合は、農地の土や水だけではなく周辺や下流の生態系にも影響を及ぼしかねません。
地面に残留した農薬は植物の根から吸収され、植物を食べる虫や小動物の体内に入り、それらを餌とする生物へと食物連鎖が進むにつれて濃縮されていきます。
過去には農薬の使用により、ワシやタカなどの生態系の頂点に位置する生きものが減少したという報告もありました。
ポテトチップスやマーガリンなど多くの加工品に使われているパーム油はアブラヤシの実から抽出されますが、アブラヤシ栽培のために東南アジアの熱帯林が失われています。
熱帯林の破壊はそこに依存して生息する生物の生息地を奪い、熱帯林特有の生態系を危機に追いやっています。
熱帯雨林に限らず、世界各地で農業生産のために地域特有の自然が破壊されている可能性もあるのです。
出典:WWFJapan パーム油の問題とは?私たちの暮らしと熱帯林の破壊をつなぐもの
また、チョコレートの原料であるカカオの生産において、労働力を雇えない規模の家族経営の場合に子どもが労働を担っているケースがあります。
教育を受け健全に成長する子どもの権利が蔑ろにされているのであれば問題です。
海洋資源についても、地球温暖化により海流の動きや生物の生息地に変化が起きている中、獲れるだけ獲るという無計画な漁業が続けば将来的に利用できる資源が減ってしまいます。
家畜を育てるためには多くの飼料が必要ですが、日本の畜産業は石油燃料を使って集められた海外の飼料穀物に支えられてなりたっています。
一方で世界の反対側には、十分な小麦やトウモロコシを手に入れることができずに飢餓に苦しむ人も存在するのです。
そこまでして畜産品は食べたくないという理由で、ヴィーガン(完全菜食主義)というライフスタイルを選んでいる人も存在します。
このように食物生産の背景には表面化しにくい環境破壊や不平等が存在しますが、環境や人への負荷に配慮したエシカルフードを一般の消費者が見分けることは簡単ではありません。
エシカルフードを見分けるために、後述する認証マークが分かりやすい手がかりになるほか、エシカルを理念に掲げている企業や生協の商品を買うというのも方法の一つです。
「エシカルコスメ」とは生産者・環境・動物の権利に配慮して作られた化粧品
コスメとは化粧品のことですが、エシカルコスメは製造・輸送過程で環境や人に対する負荷を最小限にしている化粧品です。
エシカルコスメに関する判断基準の一つに、アニマルウェルフェア(動物福祉)の視点から動物実験の問題があります。
動物実験は化粧品の成分の安全性を確認するために行われ、使用されるのはウサギ・モルモット・ラット・マウスなどの実験動物です。
実験では、例えば目に薬品を点眼したり毛を剃って皮膚に薬品を塗ったりした後に、経過を観察して安全性を見極めます。
動物に苦痛を与える実験は残酷だということで、欧州では1980年代に動物実験に対する反対運動が起こりました。
その後、2009年に欧州連合加盟国では化粧品開発のために動物実験が行われることは全面的に禁止されたほか、動物実験がなされた化粧品の販売もできなくなっています。
出典:国立研究開発法人科学技術振興機構「動物実験の基本的考え方と関連法規等について」
一部の洗顔料に含まれるビーズやメイクアップ製品に含まれる装飾用のグリッター(ラメ)はマイクロプラスチックです。
マイクロプラスチックは5㎜以下のプラスチックのことで、海洋の生態系や人体に悪影響を及ぼす可能性が世界的に懸念されています。
問題となっているのは、化粧品中のマイクロプラスチックが洗い流されると家庭の排水から下水処理のフィルターを通り抜け海洋まで流れ出てしまうことです。
出典:日本学術会議 提言「マイクロプラスチックによる水環境汚染の生態・健康影響研究の必要性とプラスチックのガバナンス」
国内では、マイクロプラスチックの使用を中止したり、生分解性のビーズに置き変えたりするなどの対応をしている企業もあります。
米国では、2015年に化粧品中のマイクロプラスチックビーズの使用が禁止されました。
消費者の安全や健康を守るという観点からは、原料が自然由来のものかどうかも気になります。
化粧品に関する「ナチュラル」「オーガニック」表記についての認証基準は、エシカルな化粧品を選択するための一つの指標になるでしょう。
認証の要件には、遺伝子組換植物の不使用・動物実験不実施・マイクロプラスチック不使用などの項目が並んでいます。
シーズンごとに魅力的な新製品が開発される化粧品業界ですが、エシカルの観点から選ぶと商品数はかなり絞られてくるでしょう。
「エシカルジュエリー」とは生産者・環境に配慮して作られたジュエリー
ジュエリーは有史以来ずっと人々を魅了し続けてきましたが、ジュエリーが作られる過程で環境や人への悪影響を最小限にする努力が払われているのがエシカルジュエリーです。
ジュエリーの素材となる鉱物や宝石の採掘現場では、地域住民の人権や自然環境が犠牲になっているケースがあります。
膨大な量の化石燃料・爆薬・水が使用され大規模な掘削が行われる採掘現場で懸念されるのが、流れ出る土砂や有害化学物質による河川の汚染や水不足です。
採掘のために森林が伐採され希少な野生生物の生息地が奪われる例や、地域住民が強制的に移住を強いられる例があります。
坑道を掘り進める採掘現場では、子ども達までもが過酷な労働を担い、負傷・死亡事故の危険性と隣り合わせの状況です。
紛争地帯においては採掘地を武装勢力が掌握し、労働者が対価を得ることなく全ての収益が権力者の資金源とされたこともありました。
宝石が採掘されジュエリーとなるまでの間に、人権侵害や自然環境破壊に関わっていないかどうかを確認する方法の一つにトレーサビリティがあります。
トレーサビリティとは、製品がいつ・どこで・だれによって作られたのかを明らかにし廃棄されるまでを追跡可能な状態にすることです。
ジュエリーを選ぶ場合には、素材となっている宝石のトレーサビリティを確認すると良いでしょう。
また、誰かが使っていたジュエリーを今使いたい人のためにリメイクして価値を高めるアップサイクルも注目されています。
既に社会の中に存在する物を使えば、エネルギーとコストをかけて地下から採掘するプロセスを省略することができるので理にかなった方法です。
世代を超えて大切に受け継がれるジュエリーにはそれぞれ持ち主の物語があり、過去の人とのつながりに思いを馳せることで、ジュエリーの価値がさらに高まることでしょう。
「エシカルインベストメント」とは環境や社会問題に配慮した投資
エシカルな理念を掲げて地球環境・人権・持続可能性などに配慮して事業を実施している企業を、投資(インベストメント)の対象に選ぶことをエシカルインベストメントといいます。
これまでにも、企業の財務情報だけではなくE:環境・S:社会・G:企業統治の三つの視点を重視する「ESG投資」という流れが欧米を中心に始まっています。
E:環境・S:社会・G:企業統治に配慮のある企業は社会的意義があるだけでなく、持続的な成長と安定が見込める信頼性があるという考え方です。
ESG投資は広く認知されているエシカルインベストメントの一つといえ、短期的なリターンより中長期的な利益を期待しながら金融分野で社会貢献する手段といえます。
欧米に比べるとまだまだ認知されていませんが、日本でも他の先進国と同じく太陽光・風力・地熱・バイオマスといった再生可能エネルギーに対する投資は活発になってきました。
余裕資金を運用することを考える際に、エシカルやSDGsといった観点で金融商品を選ぶことで個人でもエシカルインベストメントに関わることが可能です。
また、私たちが銀行に預けているお金は企業への融資に利用されているので、エシカルな企業や事業へ融資している銀行を選ぶこともエシカルインベストメントにつながります。
銀行がどのような企業や事業を支援しているのかを知り、共感できるような取り組みがあるかということを銀行選びの基準にするのも一つの方法です。
「エシカルトラベル」とは目的地の環境や生活に敬意と思いやりをはらう旅行
エシカルトラベルはエシカルツーリズムとも言い換えられますが、環境への負荷や目的地における人々の生活へのデメリットを最小限に抑えようとする旅のスタイルです。
今自分が楽しめれば良いという利己的な考えではなく、癒しや感動を与えてくれる観光資源が将来的にも持続するよう「サステナブル」を意識するという一面ももっています。
エシカルな体験を旅の目的にする場合、エコツーリズム・アグリツーリズムがキーワードの一つになるでしょう。
豊かな自然環境の中でのガイドつきツアー・農家に民泊しながら農業体験できるプラン・エシカルな生産者の取り組みや工芸品が作られる過程を見学できるツアーもあります。
出典:環境省 エコツーリズム
出典:農林水産省 農泊の推進について
エシカルトラベルは自然環境や農業の分野だけではありません。
全国各地のお手伝いを必要としている場所でボランティアをしながら観光するという提案をしているサイトもありお勧めします。
旅の目的を特別にエシカルなものにしなくても、環境や人への負荷を意識して旅行することはいつでも可能です。
移動手段をマイカーではなく公共の交通機関を利用すれば、渋滞緩和や排気ガス削減に貢献できます。
飛行機を使う場合は、バイオマス燃料であるSAF(SustainableAviationFuel)を使用する便を探してみることも一つの方法です。
マイバッグやマイボトルを持ち歩き、宿泊先に自分の歯ブラシなどの洗面道具を持ち込めば、使い捨てによる目的地のゴミの増加を防ぐことができるでしょう。
宿泊先は、全国展開のホテルチェーンではなく地域に根ざした宿を選び、地元商店街で買い物することで地域経済の活性化にもつながります。
地元の人の生活に気を使いながら、交流がもてればさらに良い思い出となるはずです。
そもそも旅は、日常から離れて感動を味わい自分の人生を豊かにしてくれるものですので、自分の感性にぴったりのエシカルトラベルを探してみてください。
「エシカル就活」とは社会問題解決に取り組む仕事を探す就職活動
エシカル就活とは、社会課題を解決しようとする企業への就職を志望する就職活動スタイルのことです。
従来の就職活動では、自分の力を活かせる分野において企業の知名度・年収・福利厚生・就職後の安定性などの基準で就職先を選ぶ形が一般的でした。
エシカル就活は、気候変動・人権・貧困問題・地方創生などグローバルな課題からコミュニティの課題まで、解決したいという思いのある人が自分にあった企業を探すものです。
近年では、エシカルな観点から企業の情報を開示して、学生と企業をマッチングさせるプラットフォームもできました。
エシカル就活では学生時代の成績だけではなく、社会課題解決に特化した経験や知識も企業にアピールできるポイントとなるでしょう。
社会的責任を果たすために熱意と行動力のある人材を確保できるという点が、企業側にとってのメリットです。
今後、就職や転職を考えることがあれば、エシカルな視点でも応募先を探してみることをお勧めします。
エシカルな行動は身の回りにあふれている
ここまで、社会の中で注目され始めたエシカルな流れの一部をご紹介してきましたが、私たち個人の日常生活もエシカルな視点から見直すことができます。
エシカルはハードルが高い特別なものと感じる必要はなく、考え方や行動を少しだけ変えるだけで生活にエシカルを取り入れることが可能です。
ある調査ではエコバッグを利用しているという回答が約80%を占めており、意識していなくてもエシカル行動を実践している可能性もあります。
生活の中に無理なく取り入れられそうなエシカルのヒントを以下にご紹介していきますので、参考にしてみてください。
エシカルを見分ける認証マークを探してみる
日々の買い物で、エシカルな商品を見分けたい時に手がかりとなるのが認証マークです。
認証マークのデザインと意味を少しでも知っていると、パッケージに印刷されている認証マークに気づくようになってきます。
環境保全に役立つ商品を示すエコマーク・原料に40%以上の古紙を含む商品を示すグリーンマークはオフィス用品でお馴染みです。
生物由来の資源を活用した環境製品を示すバイオマスマークはレジ袋や食品パッケージによく使われており、目にすることが一番多いかもしれません。
食品選びで注目したいのは、農薬・化学肥料を控えて生産された作物を示す有機JASマーク・持続可能な漁業で獲られた水産物を示すMSC海のエコラベルなどです。
チョコレートやコーヒー選びには、人権・環境に配慮した輸入品を示す国際フェアトレード認証が役立ちます。
他にもたくさんの認証マークがありますので、探してみてください。
商品の認証マークがいつも目につくようになれば、エシカル意識がかなり高まっている証拠です。
認証マークのついた商品を選んで購入する度に、エシカル消費で社会に貢献できることになります。
ゴミの分別を徹底する
私たちはゴミを出さずには生活できない社会システムの中で生活していますが、ゴミの分別の目的にはゴミを捨てることの他にもう一つの側面があります。
処分したい人にとっては不要物は全てゴミですが、ゴミの中に再度加工して利用できるものがあればそれは資源となるため、ゴミ分別=資源分別とも言い換えられるのです。
分別作業は資源にできる素材を寄り分けてリサイクルのルートに載せることであり、処分されるか再利用されるかを決定づける点で大変重要です。
資源に再利用できる素材の種別は自治体によって異なりますが、きちんと分別することを心がけ、リサイクル・リユースのルートへと送り出しましょう。
燃やす方法でしか処理できないものは可燃ごみとなりますが、物を燃やす際には温室効果ガスである二酸化炭素が発生し、一度灰になってしまえば利用価値はほとんどありません。
利用価値のない焼却灰やリサイクルできない燃やせないゴミ、有害ゴミは最終処分場に埋め立てられることになりますが、処分場の許容量には限りがあります。
ゴミ分別を徹底することで、最終処分場に埋め立てられる廃棄物の量をなるべく減らすことも必要なのです。
もちろん、リサイクル・リユース過程でもエネルギーが必要で二酸化炭素を排出することは同様ですが、天然資源の利用を少しでも減らすことができるというメリットがあります。
また、上級者向けとなりますが、自宅で生ごみを堆肥にすると可燃ごみを大幅に減らすことができます。
段ボールコンポスト・EM菌バケツなどさまざまな方法がありますので、挑戦したい場合は情報を探してみてください。
さらに、商品を買う段階で廃棄する時のことをイメージして、リサイクルできるパッケージの物や処分に困らない物を選ぶのがお勧めです。
例えば粗大ごみとなりそうな大きな商品を購入する際には、リサイクルできる素材でできているか、分解して処理できるかどうかなども考慮できると後々役立ちます。
物を買わないという選択肢もゴミ減量につながります。
欲しいと思った物が本当に今必要なのか、新品同然でゴミにしてしまうことはないか、いつも見定めてから購入するようにしたいものです。
省エネを心がけ再生可能エネルギーを選ぶ
私達の生活は電気・ガス・水などのライフラインに支えられていますが、当たり前のように供給されるこれらの使用量を減らすことでエシカルを実践することが可能です。
身近で便利なエネルギーである電気は、発電や送電に環境負荷を伴います。
天然ガスやガソリンは、膨大な資金とエネルギーを投入して地下資源を汲み上げ精製することにより使用できるものです。
水道水でさえ、飲料水用に取水し浄化するまでにエネルギーが使われています。
家庭で消費するエネルギーの量は、快適性や利便性を追求するライフスタイルの変化により1965年から2005年の40年間で2倍以上に増えました。
日々の暮らしの中で、電気・ガス・ガソリン・水道水の無駄遣いをなるべく減らして効率よく使うことで、温室効果ガスの削減や資源の持続的な利用に繋がるのです。
エアコン | フィルター掃除は月に2回 |
室外機の周りに物を置かない | |
オン・オフを繰り返さない | |
扇風機併用で空気を循環させると効率アップ | |
冷房 | 窓の外に日よけを設置して日差しを遮り、冷房効果をアップ |
暖房 | ホットカーペットやこたつは断熱マットを敷いて効率アップ |
外出や寝る20分前にスイッチオフして余熱を利用 | |
テレビ・パソコン | 画面は明るさ、音量を適度に調節 |
掃除機 | 部屋を片付けてから掃除機をかける |
モップや雑巾を使って掃除機の利用を減らす | |
家電全般 | 省エネ家電に買い換える |
使っていない家電のプラグをコンセントから抜く | |
キッチン | 冷蔵庫は季節に合わせて設定温度を調節 |
炎がなべ底からはみ出ないようにする | |
食器洗いの時のお湯は低温に設定する | |
バスルーム | 節水型シャワーヘッドを利用 |
お風呂のふたをしめ、間隔を開けずに続けて入る | |
保温性の高い浴槽を選ぶ | |
洗面・トイレ | お湯が必要ない時は水を使う |
水の出しっぱなしに気をつける | |
電気便座や洗浄水の温度を低くする |
出典:環境省地球環境局地球温暖化対策課国民生活対策室「ふたりで始める『環のくらし』」
出典:東京都環境局地球環境エネルギー部地域エネルギー課「家庭の省エネハンドブック」
出典:東京都地球温暖化防止活動推進センター「夏の省エネリーフレット」
日本国内のエネルギー供給は、石油・石炭・天然ガス(LNG)など化石燃料に大きく依存しており2021年度は83.2%です。
出典:経済産業省資源エネルギー庁 日本のエネルギー2022年度版「エネルギーの今を知る10の質問」
しかし、海外では欧米を中心に、温室効果ガスを多く発生する石炭火力発電から再生可能エネルギーへと比重を移していく流れとなっています。
今後は国内でも太陽光・風力・小水力・バイオマスなど再生可能エネルギーへと発電の主軸を転換していくことが必要です。
再生可能エネルギーを利用する方法は、自宅に太陽光パネルを設置するだけではありません。
再生可能エネルギー100%から一部のみを供給するところまで、近年さまざま電力会社が誕生しているので、情報をもとに検討して契約先を変えることも考えられます。
かつて未来の新エネルギーと称えられた原子力発電ですが、コントロールを誤れば取り返しのつかない重大事故となることが、福島の原発事故で明らかになってしまいました。
原発事故により日常を奪われてしまった人、未だ影響を受け続けている人がいることを忘れずに、思いを馳せることもエシカルといえるでしょう。
再生可能エネルギーも万能ではありません。
太陽光発電は希少金属であるレアアースを必要とし、風力発電は渡り鳥のバードストライクや景観破壊の問題があり、バイオマス発電はバイオマスの確保に課題があります。
やはり個人ができる一番確実な手段は省エネだといえそうです。
マイバッグ・マイボトルで使い捨てを減らす
マイバッグやマイボトルを使うことで、レジ袋やペットボトルなど持ち運びに便利な容器の使い捨てを減らすことができます。
マイバッグについては、利用しているという回答が約80%を占める調査結果もあり、レジ袋の有料化などをきっかけに、マイバッグが市民権を得たのは明らかです。
出典:消費者庁委託資料「倫理的消費(エシカル消費)」に関する消費者意識調査報告書
ペットボトルが登場したのはつい最近のことですが、ガラス瓶よりも軽くて使いやすく蓋をしめられる点でも便利なので、今では社会の中で必需品となっています。
もはやペットボトル廃止というのは現実的ではありませんが、一度使っただけで焼却処分するよりは、確実にリサイクルするのがエシカルです。
使い捨てという観点では、生活の中で見直せる部分が他にもありそうです。
食品トレーや商品のパッケージもリサイクルできる素材が望ましいですが、使い捨てを前提とするより繰り返しリユースできる方がさらに理想的といえます。
衛生面で気を遣う場面以外では、掃除やふき取りの際に使い捨ての紙製品ではなく繰り返し使える雑巾を選択してみては如何でしょうか。
無意識に使い捨てていた物の中には、本来は使い捨てではなく済む物があるはずなので生活の中で意識してみることをお勧めします。
リサイクル品・リユース品を利用し提供する
ゴミを分別して資源とするリサイクルの流れを促進するには、リサイクル原料を使用した商品を使うことも必要です。
古紙を利用した紙製品やペットボトルを原料とした衣類、リユース容器を使った商品などを探してみましょう。
不用品を人に譲る・中古品販売店に売る・オークションやメルカリに出品するという手段で、必要とする人に使ってもらえそうな物をリユースの輪に載せることも可能です。
本であれ服であれ中古品であることを気にしなければ、ネットでも簡単に中古品が手に入るようになり、「新品を買うのが当たり前」ではなくなってきました。
身近なところにも、一時しか使わない子ども用品、もう辞めてしまった趣味のためにそろえた道具などを必要とする人がいるかもしれません。
逆に趣味の話題などから、今必要とする物が自分のところへ回ってくる機会もあるでしょう。
物を通して知り合い同士の関わりが広がったり深まったりすれば、さらに得るものが大きくなります。
出典:環境省 意外と知らない「リユース」の世界自分・社会・地球にやさしい消費行動」
レンタル・サブスクを利用する
一昔前まで、レンタルサービスといえば必要な物を短期間だけ借りるスタイルでしたが、今ではあらゆる物を長期間レンタルすることも可能です。
サブスクリプションは、一定の対価を支払っている期間中に物やサービスの利用ができるというスタイルで、内容によってはレンタルとほぼ同様な意味で使われています。
赤ちゃんの出生直後にしか使わない子育て用品・旅行の時だけ使いたいレジャー用品や高性能カメラもレンタルできます。
家電のレンタルは、一人暮らしを始める時などに買いそろえる出費を抑えられ、不安なく新生活をスタートできる便利なサービスです。
また、高価なデザイン家具や最新家電をレンタルで利用し、気に入らなければ取り換えることができるサービスもあります。
長く借りれば支払総額は買った方が安くなることもありますが、移動・処分・保管などの手間や商品との相性などを考慮すると、総合的なメリットは大きくなるかもしれません。
世の中には物があふれていますが、商品を次々購入して使い終わったら捨てるという消費行動を見直すべき時代になりました。
レンタルやサブスクリプションサービスを利用すれば、物をなるべく所有せずに使い終わったら次の人へ回すという循環型社会の構築にも貢献できます。
フードバンクに寄付する
日本には今日明日の食事にも困るほどの貧困を抱えた家庭が存在し、フードバンクによる食品の無償配布が有効な支援の一つだということがコロナ禍で明らかになりました。
非正規雇用で働く人は経営が悪化した場合に真っ先に解雇される対象となり、非正規社員だったシングルマザーが収入を得る手段を奪われてしまうケースもあります。
コロナ禍は明けましたが、学歴面での弱者や女性が雇用面で引き続きしわ寄せを受けており、フードバンクの継続が必要です。
出典:厚生労働省「生活困窮者自立支援制度における横断的な課題について」
家庭で利用しない食品や日用品を廃棄物にすることなく、困った人を助けることに活かせれば一石二鳥でしょう。
もし寄付できる物が家庭にある場合は、市町村や地域のフードバンクの実施団体で募集しているはずですので問い合わせてみてください。
エシカルは今すぐ誰にでも始められる
ここまで、エシカルとは何か・なぜ必要とされているのかについて解説し、エシカルな行動や商品を選ぶヒントを紹介してきました。
エシカルの視点から、いつもの何気ない行動の一つ一つにおいて「何を選んで」「何を選ばないのか」を決めることで、自分らしいエシカルな暮らしが実現できます。
私たちが普通に暮らしていくだけでも多かれ少なかれ環境への負荷は生じ、全ての分野で完璧なエシカルを追求しようとすれば日常生活が成り立ちません。
自分と周りの人が今この時を幸せに暮らすというのも大切なので、理想と現実のバランスを取りながら楽しく無理なくエシカルを実践してください。
何よりも重要なのは「できることを続けること」で、去年の自分よりも一年後の自分が少しでもエシカルになっていたら素晴らしいことです。
一人ひとりの小さなエシカルが継続することで大きな力となり、地球の明るい未来へとつながっていきます。
これまでのエシカルな自分を再確認し、さらなるエシカルを探してみませんか。

身近なアイデアを循環させて、地球の未来をつなげていきましょう。皆さんと一緒に取り組んでいけたら幸いです。