子ども食堂とは?現状や役割を初心者向けに徹底解説

子ども食堂とは?現状や役割を初心者向けに徹底解説

2023.07.13(最終更新日:2024.06.24)
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「子ども食堂」と聞いて、「子どもたちが集まる食堂?」と思った方は多いのではないでしょうか。実は子ども食堂は、子どもだけでなく、地域全体の親子が集まる憩いの場として注目を集めています。

そこで、本記事では

  • 子ども食堂の概要
  • 子ども食堂のメリット・デメリット
  • 子ども食堂とSDGs
  • 子ども食堂の運営や取り組み事例
  • 子ども食堂に対して私たちができること

などについて、初心者目線で解説していきます。

本記事を読めば、子ども食堂の役割や運営、SDGsとの関わりまで理解できます。
子ども食堂は、地域住民の協力によって成り立っているので、私たちにもできる簡単なことから協力してみましょう。

子ども食堂とは?

子ども食堂について、農林水産省のホームページには下記のとおり書かれています。
近年、地域住民等による民間発の取組として無料または安価で栄養のある食事や温かな団らんを提供するこども食堂等が広まっており、家庭における共食が難しいこどもたちに対し、共食の機会を提供する取組が増えています。
(出典:農林水産省-こども食堂と連携した地域における食育の推進-

つまり、子ども食堂とは、無料または安価で地域住民に共食の機会を提供することです。では、子ども食堂は、どのような経緯で始まったのでしょうか。子ども食堂の始まりから現状、目的までみていきましょう。

子ども食堂の始まり

子ども食堂の始まりは2012年です。東京都大田区にある八百屋の店主が、店の一角を子ども食堂として始めました。始めた理由は、ご飯を十分に食べられない子どもたちがいることを知り、皆が十分にご飯を食べられるような環境を作りたいという思いがきっかけです。
当初は食の偏りをなくすため、栄養バランスの取れた食事を提供することが目的でした。その後、子ども食堂は、地域住民中心に広がりをみせ、子どもを見守ったり、地域の振興行事として扱われ始めます。

子ども食堂の現状

現在ではSNSの普及もあり、地域住民だけでなく、全国のボランティアや学生が協力できる仕組みができました。
子ども食堂は、2012年以降広がりを見せ、2022年には7,363箇所にまで増加しています。

子ども食堂の数
2016 319
2018 2,286
2019 3,718
2020 4,960
2021 6,014
2022 7,363

(出典:認定NPO法人 全国こども食堂支援センター・むすびえ-2022年度こども食堂全国箇所数発表(2023年2月 確定値)-

子ども食堂の数を都道府県別にみると、最も多いのは東京都、続いて大阪府、神奈川県です。
(出典:認定NPO法人 全国こども食堂支援センター・むすびえ-2022年度 こども食堂全国箇所数発表(2022年12月 速報値)-

子ども食堂が増加している理由としては下記の3点があげられます。

  • メディアやSNSで子ども食堂が紹介される
  • 農林水産省が「食育の推進」で表彰するなど、子ども食堂を運営する団体に支援する
  • 地域の民間企業が積極的に支援している

子ども食堂はボランティアなどの「協力してくれる人たち」によって成り立っています。よって、メディアやSNSで取り上げられることで「私も協力してみたい」という人が増え、子ども食堂の活性化につながるのです。

農林水産省の「食育の推進」については農林水産省-こども食堂と連携した地域における食育の推進-に詳細があるので参考にしてください。
また、民間企業の支援でいえば、子ども食堂の食材を提供したり、開催場所を提供したりということがあげられます。

このように、2012年から始まった子ども食堂は、現在では大きな広がりをみせているのです。

子ども食堂の目的

では、子ども食堂の目的を考えていきましょう。目的は大きく下記の4点があげられます。

  • 食事提供
  • 孤食解消
  • 食育・学習支援
  • 地域のコミュニティ形成

まず、食事の提供は子ども食堂の始まりから一貫して変わっていない目的です。無料もしくは安価で食事を提供し、十分に食事ができない環境の子どもたちに食事を提供し、生活改善を目的とします。もちろん、栄養バランスのとれた食事で健康的な面でもサポートします。

孤食解消については、一人だけで孤独に食事を食べる子どもをなくし、みんなで食卓を囲み楽しみながら食事を取ることが目的です。
1つの大きなテーブルを囲み食事をしている8名の子供たちのうち、こちらを見て微笑んでいる2名の男の子と女の子
また、子ども食堂は子どもだけでなく、親子が集まれる場所です。そこで、食事や学習、普段の悩みなど話し合えるコミュニティとしての役割もあります。子ども食堂を通じて子ども同士はもちろんのこと、親同士もつながることで、地域のコミュニティが活発になるのです。

子ども食堂のメリット

ここまで、子ども食堂のはじまりや現状についてみてきました。
それでは、子ども食堂ならではのメリットとは何でしょうか。子ども食堂だからこそ得られるメリットについて解説していきます。

手作りで出来立ての食事をとれる

子ども食堂では、手作りで出来立ての食事が摂れます。例えば、「子ども食堂に行ったけど、ご飯が冷めている…」なんてことがあると、子どもや地域の人とたちは集まりません。

子ども食堂では、ボランティアの人たちが手作りで温かい食事を提供してくれます。また、栄養士が監修して栄養バランスを考えている子ども食堂もあり、子どもから大人まで満足できる食事を摂れるのです。

格安で食事ができる

子ども食堂の食事は無料もしくは安価であることが特徴です。有料の場合でも、子どもは100~500円で利用でき、格安です。

例えば、夕飯をコンビニ弁当などで済ませると、弁当1つで400~500円かかります。一方、子ども食堂では、無料または格安で出来立ての温かい食事が摂れるのです。よって、子ども食堂で食事をすることは、価格面で大きなメリットがあるといえます。

みんなで食事を楽しめる

「みんなで食事を楽しめる」ことは子ども食堂ならではの大きなメリットでしょう。子ども食堂では、地域の子どもたち、ボランティア、親など、さまざまな人が集まります。
子ども食堂ではそのような人たちと食卓を囲みながら楽しんで食事ができるのです。

近年、共働きの普及に伴い、子どもたちの「孤食」が問題としてあげられています。子ども食堂では、そのような「孤食」改善に大きく役立つでしょう。地域住民の目の届く範囲で、楽しみながらご飯を食べられる、そんな魅力的な食堂が子ども食堂なのです。

親同士のコミュニティができる

子ども食堂は子どもたちのためだけに存在するのではありません。親同士が子育てや学習における悩みなどを共有できる場でもあるのです。
例えば、子ども食堂で親同士が顔見知りになり、異なる学年の親とも仲良くなることも多いです。すると、その学年特有の悩みやあらかじめ準備しておいた方がいいことなど、有益な情報交換をできます。

学年が変わることで子どもは大きく成長し、それに合わせた教育が必要です。その不安や悩みを子ども食堂という場を通して共有し、子育てに活かせるのはメリットといえるでしょう。

子ども食堂の課題・デメリット

「子ども食堂のメリットは分かるけど、デメリットはないの?」と疑問を持たれる方も多いでしょう。そこで、子ども食堂の課題やデメリットについても解説していきます。

運営費

子ども食堂は地域の寄付やボランティアで成り立っているため、運営費の確保が課題です。子ども食堂を開催する場合、食事は無料や格安で提供します。その価格帯で食事を提供する場合、地域の寄付や運営している人たちが自ら食材を持ち出すことで準備することが多いのです。

当然、寄付やボランティアの数が少ないと、運営そのものが危ぶまれます。よって、子ども食堂を支えるためにも、私たち個人が寄付やボランティアなどの行動に移すことが求められます。

人・場所の確保

続いての課題は、人や場所の確保が難しい点です。先ほども触れましたが、子ども食堂はボランティアなどの協力してくれる人によって成り立っています。

しかし、ボランティアは企業で働く職員のように安定的に確保することが難しいのが実態です。人それぞれの家庭や仕事もあり、継続的に参加できるスタッフを確保するのは困難な状況です。
また、場所に関しても無料で提供してくれるようなことは少なく、地域の協力が不可欠といえます。例えば、仮にボランティアがたくさん募ってくれて、「子ども食堂をやろう!」という時に場所が確保できなければ本末転倒です。

よって、SNSなどを使って積極的にボランティアを呼び掛けたり、地域住民の場所の一角を使わせてもらったりすることが求められます。

本当に支援が必要な親や子どもに支援できているか

子ども食堂は誰でも気軽に利用できるがゆえに、本当に支援を必要としている親子が利用できているかまでは確認できません。「子ども食堂の始まり」でも触れたように、子ども食堂のきっかけは十分に食事ができない子どもたちに食事を提供することからはじまっています。よって、本来は生活に困っている人たちも利用できるような環境が理想です。

この課題の解決には、困窮している家庭にまで情報を届け、気兼ねなく子ども食堂を利用できるようにすることが求められています。例えば、学校や自治会で子ども食堂の存在を周知するなどして情報がどの世帯にも行き渡る仕組み作りが大切です。

行政との連携

行政と子ども食堂の連携はまだまだ進んでおらず、人や場所の確保も地域住民が行うことが多いです。行政の連携例としては、区だよりに子ども食堂のことを掲載したり、出張子ども食堂(子ども食堂のない地域への支援)を開催するなどの連携があげられます。
また、区役所の担当者が何らかの支援を必要としている子どもたちを、子ども食堂に誘うなどの事例もあります。
(出典:農林水産省-こども食堂と連携した地域における食育の推進 にいがたふじみ子ども食堂-

このような形で行政と連携し、子ども食堂の活性化を進めることも課題の1つといえます。

子ども食堂とSDGs

続いて子ども食堂とSDGsについてみていきましょう。
「SDGsってそもそも何かわからない」という方に向けて、まずはSDGsの概要を説明します。

SDGsの読み方はエスディジーズで、「Sustainable Development Goals」の頭の文字を合わせた言葉です。日本語では「持続可能な開発目標」と呼ばれます。
簡単にまとめると、「世界中の環境問題・差別・貧困・人権問題などの課題を、自然環境を維持しながら解決していこう」という目標です。
2015年9月にニューヨーク国連本部にて開かれた国連サミットで、150を超える加盟国首脳の全会一致で採択されました。

そんなSDGsには17の目標があり、子ども食堂は多くの目標と関わっています。ここでは、17の目標のうち、特に関りが深い5つの目標についてみていきましょう。

【目標1】貧困をなくそう

「目標1:貧困をなくそう」は、下記の5つの目標(「1-1」~「1-5」)と2つの手段(「1-a」~「1-b」)が掲げられています。

目標・手段 内容
1-1 2030年までに、世界中で「極度に貧しい※」暮らしをしている人をなくす。
※1日あたりに使えるお金が(食事、水、電気、住むところや着るもの、くすりなどすべて合わせて)1.25米ドル(約135円)未満で生活しなければならない状態
1-2 2030年までに、それぞれの国の基準でいろいろな面で「貧しい」とされる男性、女性、子どもの割合を少なくとも半分減らす。
1-3 それぞれの国で、人びとの生活を守るためのきちんとした仕組みづくりや対策をおこない、2030年までに、貧しい人や特に弱い立場にいる人たちが十分に守られるようにする。
1-4 2030年までに、貧しい人たちや特に弱い立場にいる人たちをはじめとしたすべての人が、平等に、生活に欠かせない基礎的サービスを使えて、土地や財産の所有や利用ができて、新しい技術や金融サービスなどを使えるようにする。
1-5 2030年までに、貧しい人たちや特に弱い立場の人たちが、自然災害や経済ショックなどの被害にあうことをなるべく減らし、被害にあっても生活をたて直せるような力をつける。
1-a 開発途上国、特に最も開発が遅れている国で、「貧しさ」をなくすための計画や政策を実行していけるよう、いろいろな方法で資金をたくさん集める。
1-b それぞれの国や世界で、貧しい人たちのことや男女の違いなどをよく考えて政策をつくり、「貧しさ」をなくすためのとりくみにもっと資金などを増やして取り組めるようにする。

(出典:日本ユニセフ協会-1.貧困をなくそう-

それでは、目標1がどのように子ども食堂と関わるのかみていきましょう。
例えば、上記表の「1-3」をみてみると、「人びとの生活を守るためのきちんとした仕組みづくりや対策を行う」と書かれています。子ども食堂では、食事を提供するだけでなく、地域の人が集まるコミュニティとしての機能もあります。

よって、貧困に苦しむ人たちを救うだけでなく、地域の人々が話し合い、協力して子ども食堂を盛り上げていく場でもあるのです。その活動は目標「1-3」の人びとの生活を守るためのきちんとした仕組みづくりや対策につながるといえるでしょう。
このように、子ども食堂は目標1達成のために貢献しているといえます。

【目標2】飢餓をゼロに

「目標2:飢餓をゼロに」は、下記の5つの目標(「2-1」~「2-5」)と3つの手段(「2-a」~「2-c」)が掲げられています。

目標・手段 内容
2-1 2030年までに、飢えをなくし、貧しい人も、幼い子どもも、だれもが一年中安全で栄養のある食料を、十分に手に入れられるようにする。
2-2 世界の国ぐにが約束した、2025年までに、栄養がとれない、または栄養のバランスが良くないことによって、成長がさまたげられる5さい未満の子どもを減らす目標を達成するなどして、2030年までに、いろいろな形の栄養不良をなくす。妊娠していたり、赤ちゃんがいたりするお母さん、お年寄りの栄養について、よりよい取り組みを行う。
2-3 2030年までに、小規模の食料生産者(特に女性、先住民、家族農家、牧畜や漁業をしている人々)の生産性と収入を倍にする。そのために、土地や資源、知識を得たり、金融サービスを使ったり、食料を売ったり、農業以外の仕事に就いたりするチャンスを平等に得られるようにする。
2-4 2030年までに、食料の生産性と生産量を増やし、同時に、生態系を守り、気候変動や干ばつ、洪水などの災害にも強く、土壌を豊かにしていくような、持続可能な食料生産の仕組みをつくり、何か起きてもすぐに回復できるような農業を行う。
2-5 2020年までに、作物の種子、栽培される植物、家畜の遺伝的な多様性※を守る。そして、作物や家畜の利用に関して、人類がこれまでに生み出してきた知識や、そこから得られる利益を、国際的な話し合いのもと、公正に使い、分配できるようにする。※さまざまな異なる種類が幅広く存在すること
2-a 開発途上国、特に最も開発が遅れている国での農業の生産量を増やすために、国際協力などを通じて、農業に必要な施設や研究、知識の普及、技術開発や、遺伝子の保存(ジーン・バンク)に資金をだす。
2-b 国際的な約束にしたがって、世界の農産物の貿易で、制限をなくしたり、かたよった取り引きをなくしたりする。
2-c 食料の価格が極端に上がったり下がったりしてしまわないように、市場(マーケット)がきちんと機能するようにしたり、今どれだけの食料の備えがあるのかという情報を、必要な時に見られるようにしたりする。

(出典:日本ユニセフ協会-2.飢餓をゼロに-

では、「目標2:飢餓をゼロに」と「子ども食堂」の関わりをみていきましょう。子ども食堂は、始まった当初から貧困家庭の子どもたちをサポートすることを目標にしています。そのため、「目標2:飢餓をゼロに」という目標そのものに密接に関わるのです。

具体的に上記表の「2-1」をみてみると、「貧しい人も、幼い子どもも、安全な食事を手に入れられるようにする」とあります。子ども食堂の食事は、誰でも食べられるだけでなく、安全性の管理も徹底されています。よって、子ども食堂は、目標2の達成に大きく関わっているのです。

【目標3】すべての人に健康と福祉を

「目標3:すべての人に健康と福祉を」は、下記の9つの目標(「3-1」~「3-9」)と4つの手段(「3-a」~「3-d」)が掲げられています。

目標・手段 内容
3-1 2030年までに、赤ちゃんがおなかの中にいるときや、お産のときに、命を失ってしまうお母さんを、2030年までに、産まれる赤ちゃん10万人あたり70人未満まで減らす。
3-2 すべての国で、生まれて28日以内に命を失う赤ちゃんの数を1000人あたり12人以下まで、5さいまでに命を失う子どもの数を1000人あたり25人以下まで減らし、2030年までに、赤ちゃんやおさない子どもが、予防できる原因で命を失うことがないようにする。
3-3 2030年までに、エイズ、結核、マラリアや、これまで見放されてきた熱帯病などの伝染病をなくす。また、肝炎や、汚れた水が原因で起こる病気などへの対策をすすめる。
3-4 2030年までに、予防や治療をすすめ、感染症以外の病気で人々が早く命を失う割合を3分の1減らす。心の健康への対策や福祉もすすめる。
3-5 麻薬を含む薬物やアルコールなどの乱用を防ぎ、治療をすすめる。
3-6 2020年までに、交通事故による死亡やけがを半分にまで減らす。
3-7 2030年までに、すべての人が、性や子どもを産むことに関して、保健サービスや教育を受け、情報を得られるようにする。国はこれらを国の計画のなかに入れてすすめる。
3-8 すべての人が、お金の心配をすることなく基礎的な保健サービスを受け、値段が安く、かつ質の高い薬を手に入れ、予防接種を受けられるようにする(ユニーバーサル・ヘルス・カバレッジ)。
3-9 2030年までに、有害な化学物質や、大気・水・土壌の汚染が原因で起こる死亡や病気を大きく減らす。
3-a すべての国で、たばこを規制する条約で決められたことが実施されるよう、必要に応じて取り組みを強める。
3-b 主に開発途上国で大きな影響をおよぼす病気に対するワクチンや薬の開発を助ける。また、国際的な約束や宣言にしたがって、安い値段で薬やワクチンを開発途上国にも届けられるようにする。
3-c 開発途上国、特に、最も開発が遅れている国や島国で、保健に関わる予算と、保健サービスに関わる職員の数や能力、その人たちへの研修を大きく増やす。
3-d すべての国、特に開発途上国において、その国や世界で健康をおびやかす危険な状態が発生したときに、それにすばやく気づいて知らせ、危険な状態を減らしたり、対応したりする力を強める。

(出典:日本ユニセフ協会-3.すべての人に健康と福祉を-

では、子ども食堂と目標3の関わりをみていきましょう。上記表の「3-7」をみてみると、すべての人に性や子どもを産むことの保健サービスや教育を提供することを目標にしています。子ども食堂は、開始当初は貧困家庭をサポートする目的でしたが、現在は子育て中の親子などが集まる憩いの場でもあります。よって、さまざまな情報を皆で集まって情報交換できるのです。
このような形で、子ども食堂は目標3達成のために貢献しているといえます。

【目標10】人や国の不平等をなくそう

「目標10:人や国の不平等をなくそう」は、下記の7つの目標(「10-1」~「10-7」)と3つの手段(「10-a」~「10-c」)が掲げられています。

目標・手段 内容
10-1 2030年までに、各国のなかで所得の低いほうから40%の人びとの所得の増え方が、国全体の平均を上回るようにして、そのペースを保つ。
10-2 2030年までに、年齢、性別、障がい、人種、民族、生まれ、宗教、経済状態などにかかわらず、すべての人が、能力を高め、社会的、経済的、政治的に取り残されないようにすすめる。
10-3 差別的な法律、政策やならわしをなくし、適切な法律や政策、行動をすすめることなどによって、人びとが平等な機会(チャンス)をもてるようにし、人びとが得る結果(たとえば所得など)についての格差を減らす。
10-4 財政、賃金、社会保障などに関する政策をとることによって、だんだんと、より大きな平等を達成していく。
10-5 世界の金融市場と金融機関に対するルールと、ルールが守られているか監視するシステムをより良いものにして、ルールが、よりしっかりと実行されるようにする。
10-6 世界経済や金融制度について何か決めるときに、開発途上国の参加や発言を増やすことによって、より効果的で、信頼できる、だれもが納得することのできる制度を作る。
10-7 計画にもとづいてよく管理された移住に関する政策を実施するなどして、混乱がなく安全で、手続きにしたがい責任ある形の移住や人びとの移動をすすめる。
10-a 開発途上国、特にもっとも開発が遅れている国ぐにに対して、世界貿易機関(WTO)協定にしたがって、貿易において、特別な、先進国と異なる扱い※をする。※先進国に安く輸出したり、国内産業を守るために輸入品に高い関税をかけるなど
10-b もっとも開発が遅れている国や、アフリカ諸国、開発途上の小さい島国、内陸の開発途上国などの、もっとも資金を必要とする国ぐにへ、それらの国の計画にそって、政府開発援助※や直接投資などの資金が流れるようにする。※政府開発援助(ODA):先進国の政府などが、開発途上国の経済や社会の発展、福祉の向上に役立つために、資金・技術を提供すること。
10-c 2030年までに、移住労働者※が、自分の国にお金を送る時にかかる費用が「送る金額の3%」より低くなるようにし、「送る金額の5%」を超えるような費用がかかる送金方法をなくす。※移住労働者:開発途上国から出稼ぎに出ている人など、母国をはなれて外国に出て働いている人

(出典:日本ユニセフ協会-10.人や国の不平等をなくそう-

それでは、目標10はどのように子ども食堂と関わるのでしょうか。
上記表の10-2で全ての人が社会的に取り残されないようにしていくとあります。子ども食堂は、どんな人でも利用できる社会的なコミュニティなので、非常に関りが深いといえます。よって、子ども食堂は目標10の達成にも貢献しているのです。

【目標11】住み続けられるまちづくりを

「目標11:住み続けられるまちづくりを」は、目標10と同様に、下記の7つの目標(「11-1」~「11-7」)と3つの手段(「11-a」~「11-c」)があります。

目標・手段 内容
11-1 2030年までに、すべての人が、住むのに十分で安全な家に、安い値段で住むことができ、基本的なサービスが使えるようにし、都市の貧しい人びとが住む地域(スラム)の状況をよくする。
11-2 2030年までに、女性や子ども、障害のある人、お年寄りなど、弱い立場にある人びとが必要としていることを特によく考え、公共の交通手段を広げるなどして、すべての人が、安い値段で、安全に、持続可能な交通手段を使えるようにする。
11-3 2030年までに、だれも取り残さない持続可能なまちづくりをすすめる。すべての国で、だれもが参加できる形で持続可能なまちづくりを計画し実行できるような能力を高める。
11-4 世界の文化遺産や自然遺産を保護し、保っていくための努力を強化する。
11-5 2030年までに、貧しい人びとや、特に弱い立場にある人びとを守ることを特に考えて、水害などの災害によって命を失う人や被害を受ける人の数を大きく減らす。世界の国内総生産(GDP)に対して災害が直接もたらす経済的な損害を大きく減らす。
11-6 2030年までに、大気の質やごみの処理などに特に注意をはらうなどして、都市に住む人(一人当たり)が環境に与える影響を減らす。
11-7 2030年までに、特に女性や子ども、お年寄りや障がいのある人などをふくめて、だれもが、安全で使いやすい緑地や公共の場所を使えるようにする。
11-a 国や地域の開発の計画を強化して、都市部とそのまわりの地域と農村部とが、経済的、社会的、環境的にうまくつながりあうことを支援する。
11-b 2020年までに、だれも取り残さず、資源を効率的に使い、気候変動への対策や災害への備えをすすめる総合的な政策や計画をつくり、実施する都市やまちの数を大きく増やす。「仙台防災枠組2015-2030」にしたがって、あらゆるレベルで災害のリスクの管理について定め、実施する。
11-c お金や技術の支援などによって、もっとも開発の遅れている国ぐにで、その国にある資材を使って、持続可能で災害にも強い建物をつくることを支援する。

(出典:日本ユニセフ協会-11.住み続けられるまちづくりを-

では、目標11は子ども食堂とどのように関わるのでしょう。
上記表の「11-3」をみてみると、「だれも取り残さない持続可能なまちづくりをすすめる」とあります。子ども食堂は、誰でも参加できますし、地域住民との関わりが非常に密接な事業です。また、定期的に開催されるので、「いつも来ていたのに急に来なくなった」などの変化にもいち早く気付けます。
よって、子ども食堂の開催により、子どもたちが取り残されるという心配がないため、目標11の達成に貢献しているのです。

子ども食堂の運営に必要なこと

ここまで子ども食堂の基本的な内容についてみてきました。では、実際に「子ども食堂を運営したい!」と思ったら、どのようなことが必要なのでしょうか。
ここでは、子ども食堂の運営に関する部分についてみていきます。

届出

子ども食堂では食事を提供するため、保健所に開催頻度や規模、場所に応じた届出が必要です。厚生労働省から出ている「保健所管轄区域案内」を参考に、お住いの保健所に確認してください。

場所・ネットワーク

子ども食堂を運営しようと思った時に真っ先に思いつくのが「場所」の問題ではないでしょうか。結論から言うと、場所は公共施設や個人の住宅など、さまざまな場所で行われています。
事前にお住いの自治体に確認し、安価または無料で提供してくれる場所がないか確認しましょう。

また、場所と同様にネットワークも重要です。子ども食堂を運営するには、協力してくれる「人」がいなければ成り立ちません。その「人」を集めるのに有効なのがネットワークです。

例えば、こども食堂ネットワークでは、「食べたい人」、「手伝いたい人」、「作りたい人」で区分し、それぞれのネットワークを展開しています。自分が現在子ども食堂についてどうしたいのかを考え、ネットワークに触れ、交流を深めてみてはいかがでしょうか。

安全・衛生管理の徹底

子ども食堂では参加者に食事を提供するため、食事の安全・衛生管理は徹底しなければなりません。
どのレベルの安全性を求められるかは地域によって異なります。そのため、子ども食堂を開始する前に確認しておきましょう。
確認先は厚生労働省の「保健所管轄区域案内」で保健所に問い合わせて確認できます。
きんぴらごぼうや漬物、卵焼きや煮物など、画面いっぱいに並べられたたくさんの小鉢

行政の支援

行政の支援で子ども食堂と大きく関わるのは下記2つです。

  • 地域子供の未来応援交付金(内閣府)
  • 子どもの生活・学習支援事業(厚生労働省)

それぞれ詳しくみていきます。

【地域子供の未来応援交付金(内閣府)】
地域子供の未来応援交付金の目的は地域のネットワークを形成することです。支援対象は地方公共団体で、子ども食堂の提供も含まれます。
では、なぜ「子ども食堂」と「地域子供の未来応援交付金」が密接に関わるのでしょうか。子ども食堂は食事を提供するだけでなく、親子のコミュニケーションや地域のつながりを活発化します。よって、子ども食堂の運営が直接的に地域ネットワークの形成につながるのです。

地域子供の未来応援交付金の概要は内閣府のホームページから発出されているので参考にしてみてください。

【子どもの生活・学習支援事業(厚生労働省)】
続いて厚生労働省から出ている子どもの生活・学習支援事業です。子どもの生活・学習支援事業の目的は、子どもの生活・学習・食事の支援により、生活の質を向上させること。支援対象は地域子供の未来応援交付金同様に、地方公共団体です。

そこで、「子ども食堂」と「子どもの生活・学習支援事業」の関わりを考えてみます。子ども食堂は、さまざまな環境の親子が情報交換できるコミュニティの場です。そこで、子育てや教育について情報を交換することが、「子どもの生活・学習支援事業」の目的にかなっているといえます。また、子ども食堂開設当初の「食事の提供」という面でも「子どもの生活・学習支援事業」と深く関わります。

子どもの生活・学習支援事業については厚生労働省から発出されているので参考にしてみてください。

このように、国をあげて子ども食堂の運営を支援していることがわかります。

日本の子ども食堂の取り組み事例

ここまで子ども食堂の運営についてみてきました。その中で、「実際に子ども食堂を運営している事例はないの?」と疑問に持たれる方もいるのではないでしょうか。
そこで、実際に子ども食堂を運営している事例をみていきましょう。

大阪府大阪市:にっこりキラキラこども食堂

大阪市の「にっこりキラキラこども食堂」は2021年10月にオープンした新しい子ども食堂。
コンセプトは子どもたちが「お腹すいたぁ」と気軽に来られて、笑顔で帰れる場所の提供です。上記で紹介した「【目標2】飢餓をゼロに」や「【目標3】すべての人に健康と福祉を」、「【目標11】住み続けられるまちづくりを」などのSDGsと深く関わっています。

奈良県奈良市:たんぽぽの家

奈良市で運営している「たんぽぽ子ども食堂」は2017年に5月にオープンしました。
コンセプトは「もつひとつの居場所づくり」。地域の人たちがおいしいごはんを食べながら、楽しかったことや悩みなどを話し合う憩いの場です。
食をとおして、「ひとりじゃない」という場所の提供をしています。よってSDGsの貢献にも深く関わっているといえるでしょう。
感染症対策として現在(2023年3月)は、お弁当の配達を行い、地域の交流を深めています。

神奈川県横浜市:みやまえ食堂

横浜市の「みやまえ食堂」は、子ども食堂に集まる両親や地域の高齢者・企業・団体、行政とも繋がってより良い地域にすることがコンセプト。みやまえ食堂では下記3つの「こしょく」を改善するのを目標にしています。

  • 「孤食」:一人で食べる食事
  • 「個食」:ばらばらに食べる食事
  • 「固食」:好きな物だけ食べる食事

これらの「こしょく」が改善できれば、SDGsの「【目標11】住み続けられるまちづくりを」の達成に大きく貢献するでしょう。
また、みやまえスタディという学習支援も同時に開催しており、子どもたちの学習支援サポートも充実しています。

子ども食堂と私たちができること

ここまでの記事を読んで、「私も子ども食堂に貢献したい!」と感じた人もいるのではないでしょか。では、私たちが子ども食堂に対してできる簡単な取り組みをみていきましょう。

ボランティア

子ども食堂の運営には協力してくれるボランティアが必要です。よって、子ども食堂のボランティアに応募することで子ども食堂に貢献することにつながるでしょう。
ボランティアの内容はさまざまです。例えば、下記のような内容があります。

  • 食事の調理
  • 食事の配膳
  • 子どもたちの学習支援
  • 食材の調達
  • 広報
  • 悩みや相談解決

食事関連から、運営の事務的なことまで、それぞれの子ども食堂によって異なります。気になる子ども食堂があれば必ず問い合わせ先があるので、どのようなボランティアを募集しているか聞いてみてください。
このように、ボランティアに参加することで、子ども食堂やSDGsの貢献につながるのです。

寄付

続いて、私たちが簡単にできることは寄付です。子ども食堂は、地域の人々の寄付によって成り立っています。よって、私たちが寄付することで子ども食堂への貢献につながるのです。
寄付の内容は寄付金だけでなく、学習用具や食材まで、さまざまな物品も受け付けていることが多いです。「寄付してみたい」と思った方は、気になる子ども食堂のホームページを検索してみてください。どのような物を寄付してほしいか書かれています。

簡単にできることから子ども食堂とSDGsに貢献!

今回は、子ども食堂を初心者向けに解説してきました。重要な内容をまとめると下記のとおりです。

  • 子ども食堂は、子どもたちへ満足のいく食事を提供することからはじまった
  • 現在では地域住民が集まるコミュニティとしての役割もある
  • 運営には保健所への届出が必要でネットワークの活用が重要
  • SDGsの目標1、2、3、10、11と深く関わる
  • 運営していくには地域住民だけでなく私たちのボランティアや寄付も不可欠

子ども食堂は2012年からはじまり、子どもたちに満足のいく食事を提供できる環境をつくりたいという思いがきっかけでした。現在では食事の提供だけでなく、親子や地域住民が集まる憩いの場としての役割もあります。

子ども食堂の運営には、保健所に届出が必要で、ネットワークを有効活用することが大切です。ネットワーク「こども食堂ネットワーク」で確認できるのでぜひ参考にしてみてください。

また、子ども食堂は多くののSDGsと関わります。特に関係が深いのが「【目標1】貧困をなくそう」、「【目標2】飢餓をゼロに」、「【目標3】すべての人に健康と福祉を」、「【目標10】人や国の不平等をなくそう」、「【目標11】住み続けられるまちづくりを」の5つでした。

そんな社会貢献度の高い子ども食堂に対して、私たちが簡単にできることは「ボランティア」と「寄付」です。簡単にできることからはじめて、子ども食堂とSDGsの貢献に一役買ってみてはいかがでしょうか。

この記事の執筆者
EARTH NOTE編集部
SDGs情報メディア
「SDGsの取り組みを共有し、循環させる」がコンセプトのWEBメディア。SDGsの基礎知識や最新情報、達成に取り組む企業・自治体・学校へのインタビューをお伝えし、私たちにできることを紹介します。
身近なアイデアを循環させて、地球の未来をつなげていきましょう。皆さんと一緒に取り組んでいけたら幸いです。
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