ウェルビーイングとは?SDGsとの関係や企業の取り組み事例も解説

ウェルビーイングとは?SDGsとの関係や企業の取り組み事例も解説

2023.10.03(最終更新日:2024.06.19)
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ウェルビーイングと聞いて漠然と「幸せ」をイメージしている方が多いのではないでしょうか。実際、幸せに関する取り組みですが、その構成要素は5つあるとされています。そして、5つの構成要素すべてを良好な形にすることがウェルビーイングの取り組みなのです。

そこで、本記事では上記構成要素を含む下記のことについて解説します。

  • ウェルビーイングの意味と構成要素
  • ウェルビーイングの指標
  • ウェルビーイングとSDGs
  • 企業がウェルビーイングを取り入れるメリットと事例
  • 私たちができるウェルビーイングの取り組み

この記事を読めば、ウェルビーイングの取り組みを理解し、実際の行動に移せます。また、ウェルビーイングとSDGsの関係についても触れるので、本記事を参考にSDGsの理解も深めていきましょう。

ウェルビーイングとは

ウェルビーイング(well-being)とは、簡単にいえば、身体的・精神的・社会的に良好な状態であることです。近年では、感染症の流行もあり、ウェルビーイングを取り入れる企業が増加しています。

そんな注目されているウェルビーイングですが、どのようにして「身体的・精神的・社会的に良好な状態」と判断するのでしょうか。ウェルビーイングが注目された背景とともにみていきましょう。

ウェルビーイングの意味と具体例

ウェルビーイングとは先述したとおり「身体的・精神的・社会的に良好な状態」を表します。例えば下記のようなことです。

内容 具体的な取り組み例
社内コミュニケーション活性化 個人面談、クラブ活動
働きやすい環境整備 リモートワーク、フリーアドレスの導入
健康増進 フィットネスクラブの割引
教育の強化 新人フォローアップ研修、ハラスメント研修

上記は社内で取り組むことですが、個人でヨガに通ったり運動したりすることもウェルビーイングに含まれます。

ウェルビーイングが注目されている背景

では、ウェルビーイングはなぜ今注目されているのでしょうか。ウェルビーイングという言葉が国内で使われ出したのは、内閣府による「経済財政運営と改革の基本方針2019」がきっかけです。こちらにウェルビーイングという言葉が盛り込まれたことで広まることとなりました。その後も日本政府は積極的にウェルビーイングの取り組みを進めています。内閣府では第3回Well-beingに関する関係府省庁連絡会議(2023年7月26日)。デジタル庁では「デジタル田園都市国家構想」を掲げ、ウェルビーイングに関する取り組みを進めているのです。

また、世界に目をむけてみると、OECD(経済協力開発機構)から「OECD Education 2030」が発表されています。2030年の教育展望についてまとめらており、その中でウェルビーイングの必要性についても触れられているのです。

これほどまでウェルビーイングが現在注目されている背景には、下記のことがあげられます。

  • 新型コロナウイルス感染症の拡大
  • 健康経営重視企業の増加
  • 働き方改革の推進
  • 人材確保
  • 価値観の多様化

新型コロナウイルスの流行はウェルビーイングの意識を高めるきっかけとなりました。感染症と向き合いながら「自分がどのように働けば幸せなのか」ということについて改めて考え出されます。そして、リモートワーク、副業などのそれぞれの環境に合わせた働き方がうまれました。企業側も「健康」というキーワードを念頭に置いた経営をはじめ、働き方そのものが見直されることになります。

また、新型コロナウイルスにより、企業は致命的な人材不足に陥ります。その穴を埋めるためにもウェルビーイングの取り組みを導入した健康経営は注目されたのです。

現在では価値観の多様化も進んでいます。企業が多様な人材を受け入れることは、個人一人ひとりに合った働きがいのある職場環境の提供につながります。働き手がやりがいをもって働ければ、それだけ生産性は向上し、企業にとって大きなメリットになるのです。

このような背景があり、現代社会でウェルビーイングが注目され出しました。

ウェルビーイングの5つの構成要素①:PERMA

ウェルビーイングを構成している要素にはPERMAというものがあります。PERMAとは、ポジティブ心理学で有名なマーティン・セリグマンが掲げたウェルビーイング状態の概念です。下記5つの構成要素により成り立つとしています。

構成要素 内容
P(Positive emotion) 明るい感情(うれしい、楽しい、面白い、感謝)
E(Engagement) 物事への積極的な関わり(没頭、夢中)
R(Relationship) 他者とのよい関係(援助、協力)
M(Meaning) 人生の意義の自覚(社会貢献、利他行為)
A(Accomplishment) 達成感(達成、成果)

PERMAのPはP(Positive emotion)のPで明るい感情です。具体的な例でいえば、大切な人と過ごしたり、人に感謝することがあげられます。

E(Engagement)は、簡単に言えば集中している状態。趣味や好きな活動に没頭している状態を指します。

R(Relationship)は、他者との良好な関係。つまり、社内でのコミュニケーションや楽しいと思えるコミュニティ内でのつながりなどです。

M(Meaning)は生きる意味を自覚すること。社会貢献活動や自分の生きる意味を見出せるグループに入ったりすることです。

A(Accomplishment)は、達成感なので、仕事での達成感もプライベートで何か成し遂げた時の感覚などが含まれます。

ウェルビーイングの5つの構成要素②:ギャラップ社の定義

ウェルビーイングの構成要素はもう1つあり、アメリカのギャラップ社が示すものです。ギャラップ社は世論調査などを通して、ウェルビーイングに役立つデータを提供している会社。そのようなギャラップ社が定義するウェルビーイングの構成要素は下記のとおり5つあります。

構成要素 内容
Career well-being(キャリア ウェルビーイング) 仕事、趣味、勉強などの「自分の大半を占める時間」を楽しみ、情熱をもっているか。キャリアのウェルビーイング。
Social well-being(ソーシャル ウェルビーイング) 良好な人間関係を築けているか。人間関係のウェルビーイング。
Financial well-being(フィナンシャル ウェルビーイング) 経済的なウェルビーイングで、資産の活用や財政的な安定があるか。
Physical well-being(フィジカル ウェルビーイング) 身体的にも精神的にも良好な状態を保てているか。心身のウェルビーイング。
Community well-being(コミュニティ ウェルビーイング) 地域社会に貢献するなどして、つながりを感じられているか。

上記5つの構成要素は、信仰・文化・国籍を問わず、共通です。そして、どれか1つでもうまくいっていないものがあると、幸せのダメージになります。また、構成要素のうち1つが突出していても他が満たされていなければ幸せは感じれません。幸せには5つの構成要素それぞれを良好な形にする必要があります。

このように、ウェルビーイングの構成要素にはPERMAとギャラップ社の定義があり、その構成要素を満たすことが大切です。
新緑の木々の下で、白いTシャツを着て腕のストレッチをしている女性

ウェルビーイングの指標

「ウェルビーイングに取り組んでいる」といわれるだけでは、本当に取り組んでウェルビーイングの効果が出ているのかわかりません。よって、ウェルビーイングに取り組んでいるのであれば、その実態が結果として表れているのか明確にする必要があります。つまり「身体的・精神的・社会的に良好な状態」なのかを表す「指標」が必要です。

そのような指標には下記の4つがあげられます。

  • 世界幸福度ランキング
  • OECDの「Better Life Index(よりよい暮らし指標)」
  • 内閣府の「満足度・生活の質に関する調査報告書」
  • Liveable Well-Being City指標(LWC指標)

それぞれ詳しくみていきましょう。

世界幸福度ランキング

世界幸福度ランキングとは、各国の約1000人に「最近の自分の生活にどれくらい満足しているか」を聞きます。その回答を0(完全に不満)から10(完全に満足)の11段階でしてもらい、各国の幸福度を調査するものです。過去3年間の平均スコアで各国がランク付けされており、2023年度の調査では、2020年~2022年の調査結果が出ています。

結果をみてみると、1位はフィンランド、2位デンマーク、3位アイスランドと欧州の国々が目立つ結果に。日本は47位。前年よりは改善しているものの、G7※の中では最下位です。
※G7:フランス、米国、英国、ドイツ、日本、イタリア、カナダの7か国と欧州連合(EU)が参加する枠組。

上記結果から、日本では上位国と比べると、人生の選択や自由度・寛容さにやや課題があることがわかりました。

OECDの「Better Life Index(よりよい暮らし指標)」

続いての指標は、OECD(経済協力開発機構)から出されている「Better Life Index(よりよい暮らし指標)」。「Better Life Index(よりよい暮らし指標)」は、11の項目により構成されており、各項目は下記のとおりです。

項目数 項目名
1 住宅
2 所得と富
3 雇用と仕事の質
4 社会とのつながり
5 知識と技能
6 環境の質
7 市民参画
8 健康状態
9 主観的幸福
10 安全
11 仕事と生活のバランス

上記11項目にわかれている理由としては、幸福を構成数要素は多様であり、複数の項目から国の幸福を把握するためです。

また、「Better Life Index(よりよい暮らし指標)」は「How’s Life」という報告書によって公表されています。「How’s Life」における他国と比較した日本の分析結果は「Howʼs Life in Japan?」で確認できます。

Howʼs Life in Japan?」の分析によると、「就業率」、「平均余命」などは非常に良い結果に。一方で、「過密率」、「休暇」、「負の感情・バランス」などはOECD平均よりも大きく劣っていることがわかりました。

内閣府の「満足度・生活の質に関する調査報告書」

続いての指標は、日本国内での指標です。内閣府が「満足度・生活の質に関する調査報告書」を出しており、こちらで国民の生活満足度がどれくらいなのか確認できます。2023年の調査では、約10,000人へのインターネット調査を実施。総合的な生活満足度、13分野別の満足度、分野別の質問等により、ウェルビーイングを多角的に把握しています。

2023年は下記のような調査結果が得られています。

  • 「生活満足度」は昨年から概ね横ばい。全ての地域でコロナ拡大前と同水準まで回復。
  • 「分野別満足度」は「家計と資産」、「雇用環境と賃金」、「子育てのしやすさ」が低下。男性の40歳-64歳の層で「生活の楽しさ・面白さ」が低下し、大都市圏では「仕事と生活」が上昇。
  • 「生活満足度」の上昇した人、低下した人の割合はいずれも3割程度。
  • 単身世帯よりも家族のいる世帯の「生活満足度」が高い。
  • 仕事へのやりがいを感じる場合は相対的に生きがいもある割合が高い。仕事へのやりがいと生きがいの両方がある場合に満足度が最も高い。

上記結果は生活満足度ややりがい、生きがいなどについて得られたデータであり、ウェルビーイングの指標となります。

Liveable Well-Being City指標(LWC指標)

最後に紹介する指標はLiveable Well-Being City指標(LWC指標)。LWC指標とは、市民の「暮らしやすさ」と「幸福感(Well-Being)」を指標で数値化・可視化したものです。下記のとおり、5つの指標で構成されています。

指標 内容
地域生活のwell-being 地域における市民の主観的な幸せを測る指標
協調的幸福 「場」や「関係性」に関する、地域で循環する幸せを測る指標
ActiveQoL アンケートやウェアラブル端末(手首や腕、頭などに装着するコンピューターデバイス)で日々の生活活動に対する満足度を測る指標
センシュアス・シティと寛容性 実際に市民が取った行動実績を測る指標
暮らしやすさ オープンデータをもとに、ウェルビーイングの構成要素に関わる、地域の生活環境を測定する指標

例えば、大阪府豊能町では、平均値である偏差値50を超えている項目として、「医療・健康(51.3)」や「住宅環境(63.0)」があげられます。一方で「都市景観」や「遊び・娯楽」などの値が低く出ており、市民がどの項目に幸せを感じているのか、感じられていないのかが一目でわかります。

このように、ウェルビーイングは上記で紹介した4つの指標を用い、複数の項目を複合的に考えて数値化されているのです。

ウェルビーイングとSDGsの関係

SDGs(Sustainable Development Goals)とは、環境や社会問題を解決することでよりよい社会を目指す目標のことです。その目標には17個と169のターゲット(目標達成のための方法)があります。

近年、あらゆるメディアで目にする機会が増えたSDGsですが、ウェルビーイングとも大いに関係しているのです。さらにウェルビーイングはポストSDGsともいわれています。SDGsは2030年までの目標ですが、その先の未来を担う概念としてもウェルビーイングは注目されているのです。

そのようなウェルビーイングと大きく関係するSDGsの目標は3と8です。目標3は「全ての人に健康と福祉を」、目標8は「働きがいも経済成長も」を掲げています。それぞれとウェルビーイングの関わりをみていきましょう。

目標3「全ての人に健康と福祉を」

SDGsの目標3「全ての人に健康と福祉を」には、9個の目標と4つのターゲットがあります。例えば「3-4」には「心の健康への対策や福祉もすすめる」と書かれており、この部分とウェルビーイングは関わります。

ウェルビーイングとは身体的・精神的・社会的に良好な状態であることでした。目標3に書かれている「心の健康への対策や福祉」が進むと、人は今よりも身体的・精神的・社会的に良好な状態になります。よって、目標3「全ての人に健康と福祉を」とウェルビーイングが関係しているといえるのです。

その他にも、目標3の「3-6」には「交通事故による死亡やけがを半分にまで減らす」とあります。これは、「地域の生活しやすさ」が改善されることで、交通事故による死亡やけがが減ることにつながるといえるでしょう。

よって、ウェルビーイングの指標で紹介した、Liveable Well-Being City指標(LWC指標)に関わってきます。LWC指標は地域生活の幸せや暮らしやすさを数値化したものでした。

上記のことから、ウェルビーイングはSDGsの目標3と大きく関係しているといえます。

目標8「働きがいも経済成長も」

SDGsの目標8「働きがいも経済成長も」もウェルビーイングと大きく関係しているといえるでしょう。

目標8の3をみてみると「働きがいのある人間らしい仕事を増やす」とあります。例えば、現状の仕事に不満があり、精神的に不安定な人がいるとしましょう。そのような人が転職に成功し、働きがいのある人間らしい仕事に就ければ、身体的にも精神的にもよりよい生活ができます。

つまり、社会が働きがいのある人間らしい仕事を増やすことは、ウェルビーイングにつながる取り組みなのです。よって、社会は、さまざまな種類の仕事を提供することで、働きがいのある会社を増やす必要があるといえるでしょう。

このように、社会が人間らしい仕事を増やすことは、ウェルビーイングにつながり、目標8の達成もみえてくるのです。

企業がウェルビーイングを導入するメリット

では、企業でウェルビーイングを導入することで、どのようなメリットを得られるのでしょうか。

生産性向上

ウェルビーイングに取り組むことで、社員一人ひとりのモチベーションがあがり、生産性が向上します。株式会社アドバンテッジリスクマネジメントの調査によると、ウェルビーイングと仕事の生産性は相関関係にあることがわかりました。例えば、人間関係が悪く、働きがいのない職場はウェルビーイングの取り組みが進んでいません。そのような環境で働いていてもモチベーションはあがらず、生産性にはつながらないのです。

よって、働きがいのあるウェルビーイングが進んだ企業の生産性は向上するため、企業のメリットといえます。

離職率低下・人材確保

企業がウェルビーイングを導入すると、人材を確保できます。ランスタッド・エンプロイヤー・ブランド・リサーチ 2023によると、世界の働き手が勤務先に求める条件は下記のとおりです。

順位 内容
1 給与水準・福利厚生
2 ワークライフバランス
3 雇用の安定
4 快適な職場環境
5 財務体質の健全性

上記にランクインしているものはすべてウェルビーイングの取り組みと関連するといえます。例えば、1位にランクインしている給与水準・福利厚生が安定していない会社があるとしましょう。そのような会社が給与水準・福利厚生の見直しを行い、福利厚生が充実しはじめると、従業員はどうなるでしょうか。

一人ひとりが満足のいく給与でやりがいをもって働け、休日には心身ともに休息できる環境が整います。これはすなわち、ウェルビーイングの取り組みがなされたことといえるでしょう。そのような環境になれば、働き手が求めている条件が満たされ、従業員が会社を辞めないことにつながるのです。

また、パーソル総合研究所の調査では、働く幸せを感じている人ほど、組織において継続して働きたいと感じていることがわかりました。つまり、働く幸せを感じる=ウェルビーイングは従業員が継続的に働くことにつながり、離職率が低下するのです。

人材確保についてもウェルビーイングは関係します。仮に上記で示した表のような、世界の働き手が求めている条件をすべて網羅している企業があったとしましょう。まさにウェルビーイングの取り組みが進んでいる企業です。そのようなウェルビーイング状態にある企業を、働き口を探している人の視点から考えてみましょう。働き手にとってはそのような企業は、非常に魅力的にみえ、「働きたい」という動機につながるのではないでしょうか。

よって、ウェルビーイングは人材確保という点においても企業に大きなメリットを与えるのです。

休職による損失を防ぐ

ウェルビーイングは休職による損失を防ぐことにもつながります。例えば、従業員1人(年収約600万円)の人がメンタル的な不調により、休職するとします。その休職により、追加でかかるコスト(残業等)はなんと422万円にものぼるのです。

ウェルビーイングの取り組みが進んでいる企業だと、従業員がメンタル的な不調に陥ることがないため、このような追加的なコストはかかりません。

また、従業員が休職すると知識・経験の損失にもつながります。休職者が突発的に出たとすると、それを補うために新たな中途採用などの採用活動にコストがかかります。さらに経験次第では研修なども追加で行わなければなりません。一方でその間、休職者は現場で経験を積むことができず、知識や経験が損失することにつながるのです。

つまり、ウェルビーイングには休職によるコスト面や知識・経験面の損失を防ぐ効果があるといえるでしょう。

企業のウェルビーイング取り組み事例

ここまでウェルビーイングの指標やメリットについて解説してきました。では、実際企業ではウェルビーイングに関してどのような取り組みを行っているのでしょうか。

楽天グループ株式会社

楽天市場や楽天モバイルなど、私たちの日常生活に欠かせないアイテムを提供してくれている楽天。そのような楽天では楽天健康宣言 「Well-being First 」という考え方をもとに、ウェルビーイングに貢献しています。

「Well-being First 」とは、従業員の心身の健康や社会的なウェルビーイングの向上を目指すこと。その目的達成のために下記の戦略を掲げているのです。

  • 健康への投資
  • マネジメント体制強化
  • 現状把握・モニタリング
  • 従業員個人の健康への取り組み
  • 健康に関する制度

まず、楽天はウェルビーイング達成のためにさまざまな形で健康への投資を行っています。運動不足や睡眠不足という課題にはフィットネスクラブなどでの運動機会を提供するような形の投資です。この投資が従業員の心休まる睡眠や運動不足が改善し、ウェルビーイングにつながっています。

続いて、マネジメント体制に関しては、常務執行役員(CWO)のリーダーシップのもと、健康・安全・ウェルネス経営の推進体制を構築。ウェルネス部を中心に下記のような取り組みを実施しています。

  • 健康経営に関する勉強会
  • 健康課題のヒアリング
  • 運動施設や保養施設(企業や健康保険組合などが社員の研修や保養などに用いるために作られた施設)の利用機会提供

ウェルネス部を中心に現状の健康課題を把握し、解決に結びつけていく。そのようなマネジメント体制がウェルビーイングにつながっているのです。

そして、楽天では、現状把握という点に関して「ウェルビーイングサーベイ(調査)」と「ストレスチェック」を徹底しています。ウェルビーイングサーベイは、下記3点から従業員の現状の健康課題を把握し、詳細に目標を定めた取り組みです。

  • Body(健康的な体)
  • Mind(健康的な心)
  • Social(健康的な社会とのつながり)

また、ストレスチェックを毎年実施し、結果は産業医と保健師が確認できる環境を整え、従業員の健康管理につながっています。

さらに、楽天では健康に関する社内のイベント活動も積極的に行われており、従業員の心身の健康の向上につながっています。これまで取り組まれたイベントは下記のとおりです。

イベント 内容
社内ウォークラリーイベント 健康管理アプリを使用し、3週間の合計歩数を競う。合計歩数が多かった人は表彰される。
Asakai stretching 全社員参加型会議の朝会にて、ストレッチを行う。
InBody(体成分分析装置)イベント 体成分分析と筋肉・脂肪量を計測。自身の健康状態を知るきっかけに。
フィットネスジムイベント 少人数でトレーニング実施。従業員の運動の機会を設ける。
ピラティスイベント 昼の15分間、ピラティスレッスンを実施。
女性特有の健康課題セミナー 国立成育医療センターのプレコンセプションケアセンターとの協働でプレコンセプションケア※の普及活動を実施。※プレコンセプションケアとは、妊娠前に将来の妊娠、出産に対してヘルスチェックを行ったり、生活環境を見直したりすること

(出典:楽天グループ株式会社-健康・安全・ウェルネス-
楽天では、職場と従業員の健康をサポートする設備や制度面も充実しています。楽天の本社がある楽天クリムゾンハウスでは、従業員の健康をサポートする体制を完備。栄養バランスの取れた食事やフィットネスジム・スパ、さらには社内クリニックも併設しているのです。従業員が心身健康でいるためのサポートを徹底しています。

制度面ではフレックスタイム制を導入。通勤ラッシュを避けて出勤できるなど、現代の社会情勢に合わせた働き方を実現しています。

味の素株式会社

調味料や冷凍食品など、日本で生活している何度も目にする味の素の商品。そんな衣食住の「食」を支えてくれている味の素株式会社では、料理に関連するウェルビーイングの取り組みを行っています。

味の素のスローガンは「Eat Well,Live Well.」。「Eat Well,Live Well.」とは、よりよく食べてよりよく生きる。まさにウェルビーイングの概念と通じるものがあります。

そこで、味の素では、食や料理がどのくらいウェルビーイングに影響を与えるか調査しました。全8回にもおよぶ料理ワークショップを開催。食材から料理のアイデアを導き出す応用力を身につけることが目的です。料理ワークショップの開催前後でアンケートを取り、結果は下記の通りでした。

アンケート内容 ワークショップ開催前 ワークショップ開催後
調理技術・料理に対する自信 自信を持っている:21% 自信がない:79% 自信を持っている:64% 自信がない:36%
レシピがなくても料理ができる自信 自信を持っている:36% 自信がない:64% 自信を持っている:64% 自信がない:36%
自分が作った料理をおいしいと思うか おいしいと思う:21% どちらともいえない、そう思わない:79% おいしいと思う:93% どちらともいえない、そう思わない:7%
料理を楽しいと思うか はい:64% いいえ:21% どちらともいえない:14% はい:100%
自炊することで心が満たされる感覚があるか 満たされると感じる:71% どちらともいえない、そう思わない:29% 満たされていると感じる:100%
食生活の満足度(平均) 5.2点/10点中 6.9点/10点中
生活全般の満足度(平均) 6.5点/10点中 7.5点/10点中

(出典:味の素株式会社-わたしたちのウェルビーイング-
料理ワークショップの取り組みにより、グループ全体のポジティブな意識や生活満足度が上昇していることがわかります。さらに、自炊することで心が満たされ、達成感にもつながっているのです。このようなポジティブな感情や満足感、達成感はウェルビーイングの構成要素でした。つまり、味の素では、食・料理に関係する取り組みを通じて、ウェルビーイングに貢献しているといえるでしょう。

株式会社ジャパネットホールディングス

通販を通して家電などの生活必需品を提供してくれるジャパネットホールディングス。通販といえばジャパネットたかたを想像できるほど、私たちの生活に馴染んでいます。

そんなジャパネットたかたを含む株式会社ジャパネットホールディングスでは、グループとしてウェルビーイングに取り組んでいます。

ウェルビーイングにつながる取り組みは、下記3点の項目に分かれています。

  • 活力を高める
  • 未然に防ぐ
  • いざというときに守る

それぞれの取り組みと内容については下記のとおりです。

【活力を高める】

取り組み 内容
社内コミュニケーションツールの活用 「TUNAG」というアプリを導入。社長からのメッセージ、各社の動き、各部署のお知らせが届き、社員がコメントできる。コミュニケーションの円滑化を図る。
びずめし・ハピめしの実施 「びずめし」は、法人向け社食サービスで、食事費用の一部を会社が負担してくれる。つまり、オフィスに食堂がなくても割安で食事できるシステム。「ハピめし」とは、社員の誕生日を祝うもので、社内コミュニケーション活性化を図る。
社内イベントの実施 社員研修旅行、サマーイベント、大忘年会、月1回のお菓子会など。
業務効率化の推進/日々の休職の確保 単純作業をRPA(ロボット)に任せる、公休日に合わせた9連休または16連休の取得など。

【未然に防ぐ】

取り組み 内容
タニタ食堂・オフィスおかんの導入 栄養バランスの取れたタニタ食堂のメニューを提供する社員食堂。また、社員食堂がない拠点には「オフィスおかん」を導入。オフィスの一角に冷蔵庫・専用ボックスを設置して、従業員に食事を提供できるシステム。
各種研修・資格 業務時間内に健康診断事後研修や睡眠研修、メンタルヘルス研修を実施。さらに、メンタルヘルス検定資格に関して会社が支援する。
禁煙支援 外部の遠隔禁煙サポートを導入。全額無料で禁煙プログラムを受けられる。
健康診断・オプション検診 健康診断を社会保険未加入のパート社員まで実施。がん検診や婦人科検診のオプション検診は会社負担。
ストレスチェックの実施 グループ全拠点でストレスチェックを実施。高ストレス者には保健師による面談など、会社からのサポートがある。

【いざというときに守る】

取り組み 内容
健診事後措置 再検査や精密検査が必要な社員に二次検査の受診を促す。また、担当人事・上司と連携し就業配慮する。
健康相談・不調者フォロー 社員数が多い拠点に産業医と保健師配置。
従業員支援プログラム(EAP) 「ファミリー・ケア・ネットワーク」を活用。「ファミリー・ケア・ネットワーク」とは、外部医療機関による健康情報ポータルサイト。健康の情報提供やハラスメント相談など、いつでも無料で受けられる。

(出典:ジャパネットホールディングス-健康経営の取り組み-
上記以外にも「ジャパネット健康経営ツアー」という取り組みも行い、地域貢献しています。「ジャパネット健康経営ツアー」とは、長崎県内企業へ向けてジャパネットの健康への取り組みを紹介する取り組みです。

このように、ジャパネットホールディングスでは、ウェルビーイングの構成要素を網羅するような取り組みを実施しています。そして、社員個人が幸福を感じながら働ける環境作りに貢献しているのです。

株式会社ローソン

日常生活を送る上で、とても便利に利用できるコンビニ。その中でもローソンをよく利用するという方は多いのではないでしょうか。

そんな私たちの生活を便利にしてくれるローソンですが、ウェルビーイングの取り組みも充実しています。取り組みには下記のことがあげられます。

取り組み 内容
自発的に健康アクションを取れる環境作り 「健康アンバサダー」を各エリア・部署に配置。健康の情報発信や施策の周知をして、従業員が自発的に健康に意識を向けられるような環境を実現。
オプション受診率向上のための取り組み オプション検査を容易に行えるシステムを導入。導入後、オプション受診率は上昇。
健診事後の対応強化 健康的にリスクのある従業員をグループ1~3にわけ、それぞれに応じた対応を実施。転勤等で治療が中断しないように人事と職場の連携もみられる。
リテラシー醸成 ラインケアとセルフケアの両輪により、健康リテラシーを高める。ラインケアでは、ストレスチェックなどで高リスクが出た部署の責任者に健康のワークショップを実施。健康経営について必要な知見をインプットする。セルフケアでは、eラーニングや産業医や保健師による健康コラム実施し、個人の健康意識を高める。
不調者対応 不調者本人・職場・人事・産業保健スタッフの4者間で情報共有する。復職後も働きやすい職場環境を実現している。
食事管理アプリ導入・歩数計測による運動促進 インセンティブとして、アプリへの健康情報入力や歩数などにポンタポイントを付与。日々の健康をチェックする習慣作りに成功している。

(出典:株式会社ローソン-従業員との関わり:健康経営-
従業員が自発的に健康意識を高められるような環境作りにより、ウェルビーイングの取り組みつなげています。このようにローソンでは、健康経営を徹底することで、社員が幸せを感じられるような企業努力をしているのです。

私たち個人ができるウェルビーイングの取り組み

ここまで、企業のウェルビーイングの取り組みをみてきましたが、私たち個人で取り組めることもあります。私たちができるウェルビーイングの取り組みについてみていきましょう。

ウェルビーイングについて学ぶ

まずは、ウェルビーイングについて知って学ぶことが大切です。ウェルビーイングは身体的・精神的・社会的に良好な状態であることですが、その詳細を知るには自ら意欲的に学ぶ必要があります。下記のことを実践するだけでウェルビーイングについて簡単に学べるのです。

  • 読書
  • YouTubeで学ぶ
  • ウェルビーイングに関する記事を読む

書店には、ウェルビーイングに関する本はたくさんあるので、自分の興味がわく文章のものから手に取ってみてはいかがでしょうか。

また、YouTubeも学びのツールとして最適ですし、本記事のようにウェルビーイングに関する記事を読むのも有効でしょう。

上記ツールを利用して、簡単にはじめられるアクションから起こしていきましょう。
本や雑貨が飾られてる壁の部屋で、ソファの前でヨガマットを開き瞑想をしている男性

会話する機会を増やす

会話する機会を増やすことはウェルビーイングにつながります。ウェルビーイングを構成する要素でも解説した、PERMAの法則やギャラップ社の定義。それらの構成要素には「他者との良好な人間関係」が含まれています。そして、他者との良好な人間関係を築くには、積極的な会話が不可欠です。

職場でも、趣味のコミュニティでも、他者と気持ちよく会話することがウェルビーイングの取り組みにつながります。

まだ話したことがない人とも話してみて、会話する機会を増やしてみてはいかがでしょうか。

困っている人たちを支援する

上記同様、PERMAおよびギャラップ社の定義には、地域貢献や他者貢献することもウェルビーイングの構成要素としてあります。

ボランティアに参加したり、身近な人で困っていることがあれば手を差し伸べてみる。実際にやってみるとよい気持ちになり、幸せを実感できます。

また、個人の幸福は社会や集団などの「場」幸福と切り離せない関係です。例えば、職場内で他者同士が険悪な関係であれば、自分は関係なくても、幸せを感じにくいでしょう。その感覚からわかるように、個人の幸せは社会・集団・組織・地域の関わりが欠かせません。

困っている人を支援することは「場」全体の良い雰囲気をもたらします。つまり「場」の雰囲気がよくなると、個人の幸せにもつながるので、ウェルビーイングの取り組みといえるのです。

ウェルビーイングで個人も周りの人も幸せに

今回はウェルビーイングについて解説してきました。要点は下記のとおりです。

  • ウェルビーイングとは、身体的・精神的・社会的に良好な状態。
  • ウェルビーイングの構成要素は2種類あり、PERMAとギャラップ社の定義。
  • ウェルビーイングの有名な指標は4つ。世界幸福度ランキング、Better Life Index、満足度・生活の質に関する調査報告書、LWC指標。
  • ウェルビーイングと大きく関係するSDGsの目標は3と8
  • 企業がウェルビーイングを取り入れることは、生産性面・人材面から効果的といえる

ウェルビーイングの取り組みとは、5つの構成要素を網羅的に満たしていくことが大切でした。5つの要素には2種類ありPERMAとギャラップ社の定義です。良好な人間関係や情熱、楽しみなどがキーワードであり、何事も前向きに取り組めている意識がウェルビーイングにつながります。そのようなウェルビーイングは、4つの指標によって数値化され、現在の満足度を確認できるのです。

ウェルビーイングはSDGsとも関係があります。特に関係が大きい目標は、目標3「全ての人に健康と福祉を」と目標8「働きがいも経済成長も」でした。

近年、企業でのウェルビーイングの取り組みが活発化しています。その背景にはウェルビーイングにより得られるメリットがあり、生産性向上や人員確保が見込めるのです。

そして、私たち個人がウェルビーイングについて学び、実践していくことが、周囲との良好な関係にも直結します。自分と周囲の人たちがポジティブな毎日を迎えられるよう、ウェルビーイングについて実践していきましょう。

<参考文献/参考資料>
厚生労働省:雇用政策研究会報告書
国土交通省:コラム 日本の幸福度はどれくらい?
マイナビ健康経営:ウェルビーイング(Well-being)とは?会社に導入するメリットと取り組み事例を紹介
富山県:Career Well-Being
大阪府豊能町:地域幸福度(Well-Being)指標について
財務省-巻頭言:いまなぜウェルビーイングなのか?
内閣府:企業が仕事と生活の調和に取り組むメリット

この記事の執筆者
EARTH NOTE編集部
SDGs情報メディア
「SDGsの取り組みを共有し、循環させる」がコンセプトのWEBメディア。SDGsの基礎知識や最新情報、達成に取り組む企業・自治体・学校へのインタビューをお伝えし、私たちにできることを紹介します。
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