フェアトレードとは?世界の貧困をなくす取り組みとSDGsの関係を解説

「フェアトレード」という言葉を耳にしたことはあるでしょうか。聞いたことはあるけど、どういう意味なのかは知らない、多少知識はあるけど理解は浅いという人も多いでしょう。
フェアトレードはSDGsの取り組みと、非常に深い関係があります。SDGs目標は17項目ありますが、フェアトレードはその全てにおいて直接的・間接的に関わり合っています。
今回は、フェアトレードについてSDGsとの関係を踏まえ、詳しく解説していきます。
目次
フェアトレードは公平・公正を目指す貿易の仕組み
フェアトレード(Fairtrade)とは、「公平・公正な貿易」を意味する言葉です。発展途上国における立場の弱い生産者や労働者と、経済的にも社会的にも強い立場にある先進国の消費者が対等な立場で取引を行えることを目指す「貿易の仕組み」です。労働に対する正当な対価の支払いや、労働環境・インフラの整備などを通して、生産者の生活改善・向上と自立を図ることを目的にしています。
フェアトレードは貧困の根絶が究極的な目標
フェアトレードの最大の目標は、貧困を解決し公平・公正な社会を作ることです。近年、発展途上国では貧困が深刻化する一方、経済発展を遂げた先進国はますます豊かになり、格差がどんどん拡大してきました。
これからは、途上国の生産者も対等な立場で取引きできる環境や仕組みを整え、誰もが豊かで人間らしく暮らせる社会を作る必要があります。そのためにフェアトレードを推進していくことが必要なのです。
フェアトレードの仕組みは“5者”の関係で成り立つ
フェアトレードは、生産者、輸入者、製造者、販売者、消費者が、お互いに関わり合い成り立っています。
生産者が作った製品は、まず輸入者との間で取引されます。輸入者は生産者に対し、フェアトレード基準に基づいた価格を保証し取引を行います。
その後、フェアトレード製品は原料として製造者の手に渡ります。製造者はフェアトレード製品と他の商品が混ざらないように区別して製造を行います。
製造されたものを販売者が商品として仕入れ、フェアトレード製品だと分かるようにラベルを貼って販売し、最終的に消費者の手に渡ります。
フェアトレードの市場規模は年々拡大傾向
世界のフェアトレード市場の規模は、10〜30%の割合で年々拡大しており、2017年の時点で約85億ユーロ(約1兆742億円)にのぼります。世界の150カ国以上で、30,000点以上の製品が流通しています。
一方、日本国内のフェアトレード認証製品の推定市場規模は195.6億円(2022年)です。2022年は前年比で24%増と、過去10年間で最大の伸び率となりました。
出典・参照:フェアトレード・ジャパン 国内フェアトレード市場規模196億円、前年比124%と急拡大 前年比+38億円と推計史上最大の伸び幅を記録
フェアトレードと特に関係が深いSDGs項目は8つ
冒頭でもお伝えしたように、フェアトレードはSDGs目標を達成するための非常に重要かつ効果的なファクターです。SDGsは17の目標と169のターゲットで構成されており、フェアトレードはその全てと関係していると言えます。
フェアトレード商品の普及・推進に寄与してきた国際フェアトレード認証*は、特に以下8つのSDGs目標に大きく貢献するとして、多くの国際機関や国内外の企業が注目しています。
*国際フェアトレード認証:国際フェアトレードラベル機構(Fairtrade International)が定めた基準に基づき、開発途上国で生産された原料や製品が公平・公正な条件で取引されていること認証する制度
- 目標1(貧困をなくそう)
- 目標2(飢餓をゼロに)
- 目標5(ジェンダー平等を実現しよう)
- 目標8(働きがいも経済成長も)
- 目標10(人と国の不平等をなくそう)
- 目標12(つくる責任つかう責任)
- 目標13(気候変動に具体的な対策を)
- 目標17(パートナーシップで目標を達成しよう)
出典・参照:フェアトレード・ジャパン フェアトレードとサステナビリティ
時代と共に変遷する世界のフェアトレード
年々拡大し、世界的にその動きが広がっているフェアトレード。しかし、はじめはとても小規模なものでした。歴史の中でよりよい形を模索し、フェアトレードのあり方自体も時代に合わせて変化してきました。
フェアトレードのはじまりは戦前
フェアトレードの歴史は、1940年代の第二次世界大戦の頃までさかのぼります。NGOに勤めるアメリカの女性が、プエルトリコの女性たちが作った手工芸品を販売したのが最初と言われています。この後、同様の活動がヨーロッパなどにも波及していきました。
もともとはボランティアの意味合いが強かったものが、1960年代ごろから徐々に「フェアな取引」という現在のフェアトレードに近い形へ変わっていったと言います。
出典・参照:一般社団法人日本フェアトレード・フォーラム フェアトレードのはじまり
フェアトレードがぶつかった壁と転換期
第二次対戦後、西欧諸国の植民地支配は終わりましたが、世界の貧困格差は拡大し、貧困がさらなる貧困を生み出す悪循環を引き起こしてしまいます。それを解決する一つの手段として始まったのがフェアトレードです。フェアトレードは、「新たな貿易」という意味を込めて「オルタナティブトレード」とも呼ばれます。
しかし、1980年代に入りフェアトレードは大きな問題に直面します。それは市場の停滞です。それまでフェアトレードを支えてきた「貧しい生産者を何とかして助けたい」という思いが強い消費者は、品質にあまりこだわりませんでした。当時はそういった消費者自体が全体のわずか数%に過ぎず、市場の拡大が止まってしまったのです。
一般の消費者にもフェアトレードを認知してもらい、製品を買ってもらわなければならない。そのためには、より市場志向性の強い企業的な取り組みが必要になってきます。以降、「フェアトレード」という別の貿易形態ではなく、あくまで同じ一般の市場の中でフェアトレードの動きを広めていくという方向性に変わっていきました。
イギリスで生まれた世界初の「フェアトレードタウン」
フェアトレード市場が拡大するにつれ、個人の単位だけではなく、国や企業、地域が一体となってフェアトレードの推進を行っていくようになります。その一つが「フェアトレードタウン」の取り組みです。
フェアトレードタウンとは、市民、行政、企業など街全体でフェアトレードを支援していくことを打ち出した自治体のことを指します。
2001年、世界初のフェアトレードタウンがイギリスで誕生しました。これをきっかけに、世界中でフェアトレードタウン運動の取り組みが加速していくことになります。
5つの観点から見るフェアトレードのメリット
フェアトレードには、貧困をなくし生産者を救うという大きな目的があります。しかし、生産者だけでなく、消費者や企業など様々な立場の人にとってメリットがあります。
生産者のメリット
フェアトレードの大きな目的は、発展途上国など未開発国における生産者の救済です。貧困から抜け出し生活を改善・向上できれば、さらに所得を増やす機会が得られるようになります。
また、途上国では貧しさから学校へ行くことができず、労働を強いられている子供たちがたくさんいます。フェアトレードで生活が豊かになれば、そうした子供たちが教育を受けられるようになります。
消費者のメリット
フェアトレードが拡大し生産者の所得水準が上がると、設備投資や人的投資ができるようになります。生産体制が強化されれば、より質の高い商品の開発や生産が可能になります。
国際フェアトレード認証の基準には、環境に配慮した持続可能な生産という項目があり、農薬や化学肥料を使用しない有機栽培を奨励しています。農薬を使わない無農薬商品が多く生産されるようになれば、消費者は安心・安全で、品質の高い商品を入手することができるようになるでしょう。
企業のメリット
フェアトレード商品を扱うことは、企業のイメージアップにつながります。消費者から良い印象を持ってもらえれば、さらに商品やサービスを買ってもらうことができ売上も向上するでしょう。
また、発展途上国の人を救い持続可能な社会を作る企業の取り組みは、投資家や株主からも高く評価されます。ESG投資や株式によって資金調達がしやすくなるのも、企業がフェアトレードに取り組むメリットだと言えるでしょう。
社会・環境のメリット
無添加、無農薬のフェアトレード製品の生産が進められることで、環境保護を推進することができます。持続可能な社会を作るためにもフェアトレードは重要な役割を果たします。
貧困は治安の悪化にもつながります。生産者が豊かになり、地域の治安が安定することで戦争や紛争が減ることも期待できるでしょう。平和で安定的な社会の基盤ができれば、地域経済も発展していくことが望めます。
「認知が進まない」というフェアトレードの問題点
フェアトレードは多くの人にとってメリットがある取り組みです。一方、中々社会に浸透していかない現状があるなど、課題も同じように多く抱えています。問題はどこにあり、どのように解決していけば良いでしょうか。
基準が曖昧で分かりにくい
問題の1つとして、フェアトレードの定義、基準が依然として曖昧なことが挙げられます。
国際フェアトレードラベル機構(Fairtrade International)は、「国際フェアトレード基準」を定めていますが、この基準を満たしていなければフェアトレード商品ではないというルールも罰則もありません。
企業や大きなNGO団体などは、独自のフェアトレード基準を設定していることもしばしばです。フェアトレード基準が複数あるという状況は、消費者にとって非常にわかりにくいイメージを植え付けているのは否めないでしょう。
国際的な基準を整備していくと同時に、消費者が自ら判断できるようにしていくことも必要です。
認知度の低さと誤った認識
フェアトレードの歴史が始まってから半世紀以上経っているとはいえ、まだまだ世界全体での認知度は十分と言えません。フェアトレードを知らない人にとっては、ただ値段が高い商品という誤った認識を持たれてしまっている恐れがあります。
一般社団法人である日本フェアトレード・フォーラムが2019年に行った調査によると、日本でのフェアトレードの認知率は、32.8%にとどまるという結果が出ています。欧米諸国では、「国際フェアトレード認証ラベル」の認知度が80%以上と言われており、それを考えると日本の相対的な認知度の低さは顕著です。
残念ながらフェアトレードを「やる自由」、「やらない自由」があるのも事実です。いかにフェアトレードを正しく認知・理解してもらい、行動につなげてもらえるかが課題だと言えます。
出典・参照:一般社団法人日本フェアトレード・フォーラム 「フェアトレード」の認知率 32.8%に上昇
出典・参照:フェアトレード・ジャパン 参加団体インタビュー
商品価格が高くなる問題
商品価格が、他の商品と比べて高いという点もフェアトレード商品のネックになっています。熟達した生産者によって製品がひとつひとつ丁寧に作られれば高品質になりますが、大量生産ができないとなれば当然価格は高くなってしまいます。経済的に余裕がある消費者にしかフェアトレード商品が届かなければ、市場は広がっていきません。
また、生産者保護が重視されるため最低価格が保証されていることや、フェアトレードの認証に手数料がかかることも価格が高くなる要因です。
品質が安定しない問題
手作りのフェアトレード製品は丁寧でこだわりがあるという良いイメージの裏で、仕上がりにばらつきが出るというマイナスの側面もあります。また、最低価格が保証されるため、より高品質なものを作るモチベーションが失われてしまうことも考えられます。意識の問題だけではなく、技術を磨く環境や公衆衛生が十分整備されていないなど、物理的な要因も大きく影響しています。
グリーンウォッシュにつながる恐れがある
実際には行われていないのに、環境に配慮した取り組みをしているように見せかけて、商品やサービスのアピール材料にする企業や団体の行動を「グリーンウォッシュ」と呼びます。
グリーンウォッシュは、フェアトレードでも行われる恐れがあります。例えば、基準が曖昧なことを悪用し、独自のラベルを使用するなど実態がないフェアトレードの取り組みをプロモーションすることなどが考えられます。
現在最も広く用いられているのが「国際フェアトレード基準」
フェアトレードが世界へ広がっていく中で、国際的に共有できる統一の基準が求められるようになってきました。それを受けて作られたのが「国際フェアトレード基準」です。
国際フェアトレード基準には3つの基本原則がある
国際フェアトレード基準は、1997年に発足した国際フェアトレードラベル機構(FLO)によって定められたフェアトレード全般に関する基準です。
内容は以下の項目で構成されています。
- 生産者の対象地域
- 生産者が守るべき基準
- トレーダー(輸入・卸・製造組織)が守るべき基準
- 国際フェアトレード認証対象産品の基準
すべての項目で、「社会的基準」、「環境的基準」、「経済的基準」という3つの原則が重要視されています。
社会的基準 | 安全な労働環境、民主的な運営、差別の禁止、児童労働・強制労働の禁止など |
---|---|
環境的基準 | 農薬・薬品の使用削減と適正使用、有機栽培の奨励、土壌・水源・生物多様性の保全、遺伝子組み換え品の禁止など |
経済的基準 | フェアトレード最低価格の保証、フェアトレード・プレミアムの支払い、長期的な取引の促進、必要に応じた前払いの保証など |
出典・引用:フェアトレード ジャパン 国際フェアトレード基準
生産者の生活を保証するフェアトレード・プレミアム
国際フェアトレード基準では、「フェアトレード最低価格」が設定されており、市場価格が下落しても生産者の生活が苦しくならないように配慮されています。
また、インフラや設備の充実、教育環境の整備など、生産地域の社会発展のための資金として使用できる「フェアトレード・プレミアム」を生産者に保証しています。
世界フェアトレード連盟が定める10項目の基準
世界フェアトレード連盟(WFTO)は、1989年に発足したフェアトレードを推奨する各国の組織の連合機関です。WFTOには、フェアトレード製品の生産団体、輸入して販売する団体、フェアトレードを推奨する団体がそれぞれ加盟しています。
WFTOでは下記10項目の基本指針を定めており、この基準を守って活動することを加盟認定の条件としています。
- 経済的弱者である生産者に機会を与える
- 透明性と説明責任
- フェアトレードの実行
- 公正価格
- こどもの労働、強制労働のない社会
- 差別をせず、男女平等と結社の自由を守る
- 適切な職場環境の確保
- キャパシティー・ビルディング(能力強化)の提供
- フェアトレードの推進
- 環境への配慮
出典・引用:WFTO 10 PRINCIPLES OFFAIR TRADE
フェアトレードの代表的な取扱い品目
フェアトレード製品は、コーヒー、チョコレートの原料となるカカオ、バナナなどの果物、スパイス、コットン製品など多岐に渡ります。割合は減ってきていますが、手工芸品などのクラフト製品は現在でも流通しています。
特に大きな割合を占めるのがコーヒーです。これまでコーヒーの専業農家の収入は非常に不安定である上、生産体制が整備されていないがゆえ品質のばらつきが多く、農薬散布や森林伐採による環境問題、児童の強制労働なども問題になっていました。最低価格が保証されることにより、フェアトレードにおけるコーヒーの市場は急速に拡大していきました。
以下の産品は、国際フェアトレード認証の対象となっているものです。
<食品>
・コーヒー(焙煎豆)
・生鮮果物(バナナ、りんご、アボカド、ココナッツ、レモン、カカオなど)
・スパイス(バニラ、クミン、コショウ、ショウガなど)
・ハーブ(ルイボス、ハイビスカス、カモミールなど)
・蜂蜜
・ナッツ(カシューナッツ、胡桃、アーモンド、マカデミアンナッツ)
・オイルシード・油性果実(ごま、オリーブ、大豆など)
・加工果物・野菜(ドライフルーツ、フルーツジュース、ドライ野菜)
・サトウキビ糖(砂糖)
・茶(紅茶、緑茶など)
・野菜(ピーマン、メロン、ジャガイモ、ひよこ豆、レンズ豆など)
・穀類(米、キヌアなど)
<その他>
・繊維(コットン)
・花(バラ、カーネーションなど)
・スポーツボール(サッカーボール、フットサルボールなど)
・金
出典・引用:フェアトレードジャパン 国際フェアトレード認証対象産品
フェアトレードを認証する「認証ラベル」は1つではない
フェアトレード認証ラベルとは、フェアトレード市場を広げ、より多くの消費者がフェアトレード商品を認知できるようにするため作られたものです。認証ラベルは認証団体ごとに付与され、認証基準もそれぞれの団体で異なっています。
最もポピュラーな「国際フェアトレード認証ラベル」
フェアトレード認証ラベルとして最も有名なのが、2002年に国際フェアトレードラベル機構(FLO)によって作られた「国際フェアトレード認証ラベル」です。国際フェアトレード基準である社会的・経済的・環境的基準を満たし、公平・公正な取引が行われていることが認証され付与されるラベルです。
開発途上国の生産者・労働者と、消費国である欧米や日本など世界30ヵ国以上が参加し、全世界に認証ラベル製品が流通しています。
2002年には、認証に際し透明性と専門性を高めるためフェアトレード認証専門の独立機関「FLOCERT」が発足しました。日本では一部を除き、特定非営利活動法人フェアトレード・ラベル・ジャパンがその役割を担っています。
出典・参照:フェアトレード・ジャパン 認証ラベルについて
国際フェアトレード認証ラベルにも3種類ある
国際フェアトレード認証ラベルは、フェアトレード原料が含まれる割合や形態によって3つの種類に分けられています。生産地域から出荷されるまで完全に追跡可能であり、物理的トレーサビリティが適用された製品にのみ表示されるようになっています。
認証ラベルの種類は以下の3つです。
- コーヒーやバナナなど認証原料100%からなる製品に表示されるもの(認定原料には、コーヒーやカカオ、コットンなど)
- チョコレートやシリアルなど、非認証原料を含む製品に使用されるもの(認証原料と調達方法をパッケージ裏面で確認できる)
- 主に複合材料製品に使用されるFSIラベル(原材料のうち、タブに記載されている原料のみがフェアトレードであることを示す)
WFTO独自で定めた10項目を基準にした認証ラベル
WFTOによるフェアトレード認証ラベルもあります。2000年頃からWFTO独自の認証システムを作り始め、2014年に認証する仕組みが完成し運用が始まりました。WFTOが定めた10項目の基準を満たしていることがラベル取得の条件であり、取得後も自己評価および相互評価によって基準が守られているが確認されます。
日本ではファッションブランドのピープル・ツリーが、WFTOのフェアトレード認証ラベルつき製品をはじめて販売しました。
まだ歴史が浅い「Fair For Life(FFL)」の認証ラベル
Fair For Lifeは、2006年にスイス・バイオ財団とIMOグループによって作られたフランスに本拠地を置く認証機関です。もともとは環境と人権を守るための基準を掲げて発足した機関でしたが、2016年からフェアトレードの基準を新設しました。世界70カ国以上、700以上の認証企業・団体が参加しています。
原材料の80%以上がフェアトレード製品であれば、Fair For Lifeの認証ラベルを表示できます。認証商品の売上は約10億ユーロにのぼり、23万5千人の生産者と労働者に影響を及ぼしています。
出典・参照:Fair For Life Home FAQ
対象製品が幅広い「フェアトレードUSA」の認証ラベル
フェアトレードUSA(Fair Trade Certified)は、1998年にFLOの中のメンバー組織として発足したアメリカの認証機関です。フェアトレードの認証品目を広げることを目的に、2012年にFLOから分離しました。FLOの認証品目に限定されず、幅広い製品を対象に認証を行なっています。
フェアトレードUSAは、品目や事業形態を限定せず、より多くの生産者が適正価格で取引できるよう活動を展開していくことを目指しています。
出典・参照:Fair Trade Certified Fair Trade Certification for Brands and Retailers
企業・団体独自のフェアトレード認証ラベルは無数にある
他にもフェアトレード認証機関はいくつもあり、各企業・団体独自の認証ラベルが存在します。フェアトレードには基準となる法律がないため、中には認証マークがついていなくてもフェアトレード商品として販売されているものもあります。
国際フェアトレード認証ラベルができる以前から、現地の生産者と直接取引している団体などでは、認証団体よりもむしろ厳しい基準を設けている場合もあります。
日本のフェアトレードは徐々に拡大傾向
SDGsの浸透によって日本でもフェアトレードへの認知、関心は年々高まってきています。
日本でフェアトレードが始まった経緯と現状、今後の課題と取り組みを見ていきましょう。
日本でフェアトレードが始まったのは1970年代
1970年代に入り、日本でもフェアトレードの取り組みが始まりました。1972年に設立されたバングラデシュとネパールを支援する東京のNGO団体「シャプラニール」が、洪水災害で困窮した農村の女性たちが作った手工業品を日本で販売したのがはじまりとされています。
1986年にスタートしたフェアトレード商品を扱う店舗「第3世界ショップ」をはじめ、以降フェアトレード事業を手掛ける国内の企業や団体は増えていきました。
出典・参照:シャプラニール これまでの歩み
出典・参照:第3世界ショップ 第3世界ショップとは
日本のフェアトレードは世界的に見るとまだ小規模
2000年代に入ると、大手スーパーや食品メーカーでもフェアトレード製品を取り扱うようになり、一般の消費者層にもようやくフェアトレードが認知されるようになってきました。
同時に地域の自治体でもフェアトレードタウンを目指す動きが高まっていきます。2011年に熊本市が日本で初めてフェアトレードタウンに認定され、以降も多くの自治体が続々とフェアトレードタウンに認定を受け取り組みが活発になっています。
日本のフェアトレード市場は年々拡大していますが、世界的に見るとその規模はまだまだ小さいと言えます。推計市場規模は、ドイツ(2,727億円)に比べると日本は約17分の1、一人当たりの年間購入額は、最も多いスイス(12,765円)が日本の101倍という数字になっています。
出典・参照:フェアトレード・ジャパン 日本市場は広がっているものの、欧米諸国と比べると17分の1など。依然として差は大きい
日本のフェアトレードは「正しい認知」が課題
日本では消費者が品質よりも価格を重視する傾向があり、フェアトレードが浸透しない原因と考えられています。また、認知度が低いため、高品質で安い製品であっても選ばれにくいという状況です。
2019年における調査によると、フェアトレードが貧困や環境に取り組み活動であると答えられた人は32.8%で、80%以上認知されている欧米と比べると低いと言わざるを得ません。
またフェアトレードはボランティアであるといった誤った認識やイメージが依然として強く、市場が広がっていかない要因にもなっています。テレビやWebメディアなどを通して正しい認識を発信していくと同時に、消費者が正しく理解し、判断できるようになることが求められています。
出典・参照:フェアトレード・フォーラム・ジャパン フェアトレードの認知率
企業や自治体によるフェアトレードの事例
世界的なフェアトレードの広がり、フェアトレードタウン運動の推進によって、国内外で多くの企業や自治体がフェアトレードに関する様々な取り組みを行なっています。ここでは、企業や自治体が取り組むフェアトレードの事例をご紹介します。
独自の商品調達原則を掲げたイオン
イオンでは、下記のような独自の持続可能な調達原則に基づいて商品調達を行なっています。
◇イオンが認定する第三者認証を取得した原料を使用していること。
(例)国際フェアトレード認証など
◇生産者や労働者の方々が抱える社会課題の解決に向けたプロジェクトを、イオンが直接、支援し生産地の持続的な発展に寄与していること。
(例)生活・報酬面の課題解決、環境保全活動、労働環境の改善、教育機会の拡大など
この基準に基づき、プライベートブランドで販売するすべてのカカオ製品において、フェアトレードの裏付けが取れた原料を使用することを目標にしています。
他にもグループ各社でフェアトレード商品の開発や取り扱いを積極的に推進しています。
出典・参照:イオン 持続可能なカカオの調達に向けた取り組み
フェアトレード認証商品の開発・販売を進めるローソン
ローソンでは、2011年から導入した「MACHI café」のコーヒー豆に、厳しい認証基準がある「レインフォレスト・アライアンス認証」を受けた農園産の豆を使用しています。2015年にはすべての豆を認証済みの農園豆に変更し、持続可能性を考慮した商品づくりを推進しています。
またナチュラルローソンでは、2021年に国際フェアトレード認証を受けたカカオを使用したオリジナルショコラを開発し、販売をスタートしました。オリジナル商品としての販売は初の試みとなり、今後も新たなフェアトレード商品の開発を行っていく予定としています。
出典・参照:ローソン 「国際フェアトレード認証」カカオを使用 オリジナルショコラ商品を3品発売
フェアトレード製品を数多く供給するダーボン
南米のコロンビアを拠点とするダーボン・グループは、1990年代から有機農法を始めたサステナブルな取り組みの先駆企業です。
有機栽培のパイオニアとしても知られるダーボン・オーガニック・ジャパンでは、様々なフェアトレード製品を世界各国に提供しています。代表的なものには、コーヒーやバナナ・アボガド、砂糖などがあり、中でもパーム油はレインフォレスト・アライアンス認証を受けたものを取り扱っています
出典・参照:ダーボン・グループ 持続可能性と透明性で世界をリード
パタゴニアはフェアトレードUSA と提携
アウトドアアパレルプランドのパタゴニアは、2014年からフェアトレードUSAと提携しフェアトレード認証済み衣類を生産しています。また、フェアトレード認証ラベルを取得した製品に賞与を支払うフェアトレード・プレミアムを導入し、工場労働者の生活向上に貢献しています。
今後も、製品を作るすべての労働者が生活に困らないよう、フェアトレードの取り組みを行なっていくとしています。
出典・参照:パタゴニア フェアトレード
アジア初のフェアトレードタウン熊本市
熊本市は、2011年にアジア初のフェアトレードタウン(シティ)として認定されました。
行政だけでなく、学校や個人によるマルシェやセミナーなどのイベント活動、ホームページや市政だよりなどメディアによる周知など、市全体が一体となって積極的に啓発活動を行なっています。
2021年にはフェアトレードタウン認定を受けてから10周年を記念し、「フェアトレードシティくまもと2021宣言」を行い、世界に認められるフェアトレード先進都市を目指すとしています。
出典・参照:熊本市 フェアトレードシティくまもと
名古屋市の「国際フェアトレードタウンなごや宣言」
名古屋市は、熊本市に続き2015年に日本で2番目のフェアトレードタウンに認定されました。それに伴い、「国際フェアトレードタウンなごや宣言」を行い、市民一人ひとりの買い物を通じて、まちぐるみでフェアトレードを推進し、地域の絆を深めることを目指すとしました。
名古屋市では、コーヒー、チョコレート、ボール、切り花、コットン製品など、フェアトレード商品が約360の店舗で取り扱われています。また、市内にあるフェアトレード商品の取り扱い店舗や観光名所を掲載したマップを作成し、認知度向上を目指しています。
出典・参照:名古屋市 フェアトレード
フェアトレードで公平・公正な社会を
フェアトレードはSDGs目標すべての項目とつながっており、貧困をなくし公平・公正な社会を作っていくために非常に重要な要素です。SDGsの広がりと共に年々フェアトレードへの関心は高まっていますが、日本国内での認知度や関心度はまだまだ世界に比べると少ないのが現状です。
私たちは消費者の立場として日々何らかの消費活動を行なっていますが、いつも何気なく手にしている商品は生産者があって成り立っているものです。個人ですぐにできることは、まずそれに感謝すること、そして一人でも多くの人がフェアトレードについて知ることだと言えるのではないでしょうか。

身近なアイデアを循環させて、地球の未来をつなげていきましょう。皆さんと一緒に取り組んでいけたら幸いです。