干ばつによる世界の危機。頻発する干ばつの現状と対策

干ばつによる世界の危機。頻発する干ばつの現状と対策

2023.08.24
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世界では地球温暖化による異常気象が進行し、その影響が脅威として私たちに迫っています。干ばつはその一つであり、私たちの日常生活にも大きな影響を与えます。特に干ばつは、洪水や台風に比べ長期に渡って私たちの生活に影響を与えます。
干ばつは、乾燥地帯の遠い国で起こっているだけではなく、日本でも渇水や水不足と呼ばれる干ばつが発生しているのです。さらに、多くの農産物を輸入に頼る日本では深刻な問題であり、経済、環境、農業と密接に関係する持続可能な開発目標(SDGs)にも関連しています。
この記事では、地球温暖化による異常気象の一つである干ばつに焦点を当て、その現状と対策について解説します。

干ばつとは?発生原因と気候変動の関係性

干ばつとは、特定の地域において数か月から数年にわたって通常よりも降水量が極端に少なく、水不足が続く気候現象を指します。(注1)
干ばつのもっとも大きな原因は地球温暖化です。石炭や石油などの化石燃料を燃やすことで発生する二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスによって、地球の平均気温が産業革命前と比べ2011年〜2020年に1.09℃上昇しています。そして、地球温暖化による気候変動で、熱波や干ばつ、大雨などが大規模に発生しやすくなっているのです。(注2)

干ばつには、降水量が平均より少ないことで起こる気象干ばつ、気象干ばつが続き土壌の水分量が低下することで起こる土壌干ばつと、農業用水が不足する農業干ばつがあります。さらに、土壌干ばつが継続することで地表面や地下水量、湖や貯水池の水位などに影響をあたえる水文干ばつがあります。
干ばつを評価する指標として「SPI(標準化降水指数)」というものがあります。SPIは、降水量を統計処理することで、各地域や季節での干ばつの発生頻度を情報に変換したものです。SPIの見方は下記のようになります。

SPIの値と干ばつを評価する程度の分類に対する確率的発生頻度

SPI(標準化降水指数) 程度の分類 現象の頻度
0~-0.99 軽度の乾燥(少雨) 3年に1回
-1.00~-1.49 中程度の乾燥(少雨) 10年に1回
-1.5~-1.99 著しい乾燥(少雨) 20年に1回
≺-2.0 極端な乾燥(少雨) 50年に1回

(出典:Standardized Precipitation Index User Guide 2012 P12
(出典:気象庁 標準化降水指数(SPI)

SPIは負の値で表示しますが、正の値で極端な多雨を示すことも原理上可能です。
世界気象機関(WMO)では、日本の気象庁を含む各国の気象水文機関に対し、SPIを干ばつ評価するための指標の一つとして用いることを推奨しています。
異なる期間の降水量に対し同一の方法で計算できるため、気象干ばつや土壌干ばつなど、異なるタイプの干ばつを評価できますが、地表面からの蒸発散量などについては考慮されていません。(注3)

(注1)参考:国立研究開発法人国立環境研究所 気候変動適応編
(注2)参考:全国地球温暖化防止活動推進センター WG1 第1作業部会(自然科学的根拠)
(注2)参考:国土交通省気象庁 標準化降水指数(SPI)

干ばつによる経済への影響

干ばつが起こると、農作物や家畜飼料の収穫量が減ることで経済的な被害が発生します。さらに、農作物の生産国だけではなく、輸入する消費国でも価格の高騰などが起こります。
1983年〜2009年の降水量と収穫量を解析した結果、世界の主要穀物であるトウモロコシ、コメ、ダイズ、コムギの栽培面積の4分の3が干ばつによる被害を受けていました。さらに、干ばつによる27年間の総生産被害額は約1,660億ドルに上りました。(注1)

干ばつにより河川などの水が減ることは、水力発電や冷却水の不足による原子力発電の電力不足につながります。そして、工場などでの電力不足は失業の原因にもなるのです。

(注1)参考:農研機構 (研究成果) 干ばつによる世界の穀物生産被害をマップ化

干ばつによる環境への影響

干ばつが起こると生物の生息環境が変化し、乾燥に弱い生物は適応できず生息地を失うなど生態系のバランスが崩れてしまいます。
特に、干ばつによる植物への影響は、地球温暖化にもつながります。植物は光合成によって温室効果ガスである二酸化炭素を吸収し、酸素を放出することで地球温暖化を抑制する重要な役割を果たしているのです。しかし、干ばつによって植物の成長が制約されると、その吸収能力が低下するため二酸化炭素の濃度が高まり、さらなる気候変動を招く可能性があるのです。(注1)

(注1)参考:WWFジャパン 地球温暖化による野生生物への影響

干ばつによる生活への影響

干ばつにより、農作物が育たないことや家畜の飼料である牧草が育たないこと、生活の糧である家畜が干ばつで死んでしまうことにより、多くの人々が移住を余儀なくされ深刻な食料不安に直面しています。

日本での食料自給率は38%と低く、多くの食料を輸入に頼っているのが現状です。(注1)そのため、海外の干ばつによる農作物の不作は日本にも影響を与えています。実際に、2008年、2021年の小麦価格の高騰は、2006年〜2007年にかけてのオーストラリアでの干ばつ、2021年の北米での干ばつが影響しているのです。(注2)

(注1)参考:農林水産省 日本の食料自給率
(注2)参考:農林水産省 麦の参考資料

干ばつによる各地の現状

干ばつは、多くの水を使用する農業や畜産業、水力発電や原子力発電の電力生産にも影響を及ぼしています。さらに、水不足による河川の水量の低下は、船の運航にも支障をきたし積載量を減らすなどの対策がとられています。
干ばつの影響が大きい地域では、生計を維持することや食料の確保が困難であることから、移住せざるを得ない人々による移民問題も発生しています。
各国の干ばつの状況や対策について解説します。

アフリカの干ばつの現状

東アフリカでは、雨季の降水量が3年連続で平年を下回り、過去40年で最悪の干ばつを経験しています。(注1)
国連世界食糧計画(WFP)の東アフリカ地域局長であるマイケル・ダンフォード氏は「アフリカの角(アフリカ大陸東部)では、度重なる干ばつの影響で、農作物の収穫ができず、家畜が死に、飢餓が拡大しています」と現地の状況について述べています。

特に干ばつの被害の大きな地域であるエチオピア南部と南東部、ケニア南東部と北部、ソマリア中南部の地域では、農民と牧畜民への影響により、主食の価格上昇、インフレ、農業労働に対する需要低下によってさらに状況が深刻化し、食料の確保がますます難しくなっています。
エチオピアでは、深刻な干ばつの影響で推定570万人が食料支援を必要としています。
ケニアでは、2021年9月に政府が干ばつを国家緊急事態と宣言しています。干ばつの影響で、推定280万人が食料支援を必要としています。
ソマリアでは、人道支援がなければ2022年2月から5月にかけて、急性食料不安の人が350万人から460万人に増加すると予測されました。(注2)

(注1)参考:日本赤十字社 アフリカの角:過去40年で最悪の干ばつ被害
(注2)参考:国連世界食糧計画 アフリカの角を襲う干ばつで、1300万人が深刻な飢餓に直面

国際水・衛生NGOのウォーターエイドと英国地質調査所(BGS)の調査によると、アフリカの多くの国では干ばつが発生しても最低5年間、場合によっては50年以上、人々が十分な飲み水を確保できる量の地下水があることが明らかになりました。
しかし、汲み上げた水資源を必要とする人に届ける資金の不足や、地下水源の調査や管理が不十分であることが問題となり、安全で清潔な水を十分に確保できていないのが現状です。

参考:特定非営利活動法人ウォーターエイドジャパン 【プレスリリース】アフリカの多くの国に、干ばつが発生しても5年間、人々が十分な量の飲み水を確保できる量の地下水があることが明らかに

アメリカの干ばつの現状

アメリカでは、2億2,900エーカー分(北海道14個分以上の面積)の作物が干ばつの影響を受けました。この干ばつに関連した農作物の不作により、推定406億3,300万円もの損失が出ています。(注1)
2022年1月〜3月は過去100年以上で最も乾燥した期間でした。そのため、2022年5月には工業用や商業施設の装飾的な芝生への散水が禁止され、都市水道事業者に対しては最大20%の節水に向けた行動が求められました。

カリフォルニア北部のサンタクララ郡では、住民に対しても節水の規則を設け、度重なる違反の場合には最大1万ドルの罰金が課されることになりました。(注2)

(注1)参考:国際環境NGOグリーンピース・ジャパン 世界各地で水不足と干ばつが問題に、その理由と対策は?
(注2)参考:JETRO 米カリフォルニア州知事、干ばつ理由に節水義務化を警告、一部では水道事業者が取り締まり強化

アルゼンチンの干ばつ

アルゼンチンでは、海面水温が低い状態が続くラニーニャ現象の影響を受け、3年連続で降雨不足となりました。この影響で、農地の75%が干ばつの被害を受け、大豆、トウモロコシ、小麦、グレーンソルガム、ヒマワリの総生産量が前年比の34.4%減となっています。特に、小麦の2022年〜2023年の予想収穫量は44.6%も減る見通しです。
これらの、生産量の減少による農作物の2023年の輸出額は、2022年の433億6,300万ドルから48%も減少する見通しとなっています。(注1)(注2)

(注1)参考:JETRO ラニーニャ現象による干ばつで2022/2023年度の穀物生産見通しに暗雲
(注2)参考:JETRO 3年連続ラニーニャ現象で干ばつが深刻化、穀物生産への打撃も

ヨーロッパの干ばつ

グローバル干ばつ観測所(GDO)は、2022年の初めからヨーロッパの多くの地域が干ばつに見舞われ、8月初旬までに深刻度が増加していると報告しました。2022年8月時点で、干ばつの深刻度を3段階で評価する指標のうち、もっとも深刻度が高い「警戒」とされた地域はヨーロッパ全体の17%、2番目に高い「警告」とされた地域は47%にもなっています。(注1)

干ばつによるもっとも深刻な影響を受けている一つが農業です。2022年8月の欧州委員会の共同研究センターの発表によると、トウモロコシ、大豆、ヒマワリの収穫量が2017年〜2021年の平均と比べ、それぞれ12%から16%減少しています。
畜産業では、牧草が育たず備蓄の干し草をあたえることになりました。さらに、コスト削減のために家畜の売却が相次いでいます。(注2)
ヨーロッパでの水不足は、水力発電、原子力発電の電力生産にも影響を与えています。イタリア北部やポルトガルでは水力発電用の貯水量が平年の半分を下回りました。また、河川の水が減ることで船の運航に支障が出ており、オランダのライン川では水位低下のため船の積載量を減らした結果、石炭や石油の運搬に影響が及んでいます。

(注1)参考:JETRO 深刻さ増す欧州の干ばつ、農業や電力部門などへの影響広がる

世界での干ばつへの対策

世界各地で干ばつ問題が起きており、問題を解決するためのさまざまな対策がとられています。原因となる温暖化や気候変動への対策、水不足の影響を低減させるための対策があります。さらに、世界規模である干ばつ問題は多くの国で取り組む必要があるため、現在196の国と地域、EUが砂漠化対処条約を締結しています。
干ばつ問題を解決するための、3つの対策と砂漠化対処条約について解説します。

温室効果ガスの削減

地球温暖化防止の国際協定であるパリ協定では、産業革命前と比べ世界の平均気温の上昇を1.5度に抑えることを目標としています。そのため、温室効果ガスである二酸化炭素、メタンなどの排出量を各国で削減することが課題となっています。

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の最新の報告書(AR6)によると、「1.5度に気温上昇を抑えるためには、2035年までに世界全体で60%の温室効果ガスの削減が必要である」とされました。
そして、2050年までにカーボンニュートラル(二酸化炭素の排出量と吸収量を同じにすることで、二酸化炭素を実質ゼロにすること)を達成するために、2019年を基準として、次の3つのステップで温室効果ガスの削減を行う必要性が示されています。

  • 2030年までに温室効果ガスを43%削減(二酸化炭素は48%削減)
  • 2035年までに60%削減(二酸化炭素は65%削減)
  • 2040年までに69%削減(二酸化炭素は80%削減)(注1)

日本は、2030年までに温室効果ガスの排出量を2013年に比べ、46%削減することを目標としています。さらに、日本では2050年までにカーボンニュートラルを実現するための取り組みの一つとして、2035年までに自動車の新車販売をすべて電気自動車にすることを目指しています。(注2)

(注1)参考:WWFジャパン IPCC報告書AR6発表「2035年までに世界全体で60%削減必要」 
(注2)参考:一般社団法人 日本自動車工業会 カーボンニュートラル

灌漑農業の導入

灌漑農業とは、人の力で水の利用を制御して行う農業のことです。降水量が不足する場合には用水路などから水を補給し、過剰な水を排水することで効率的で安定的な農業を行うことができます。灌漑農業の目的は干ばつへの備えのほかにも、土を耕す作業の容易化、雑草の繁茂の防止、灌漑水中の養分の活用、土壌浸食防止、連作障害の防止、塩類の除去などがあります。

灌漑化がもっとも進んだ地域であるアメリカのカリフォルニア州は、乾燥地域にあたりますが北部のシエラネバダ山岳地帯で十分な降水があるため、ダム群に貯水し全長700㎞を超える水路で導入し、300万haを超える耕地を灌漑しています。これにより、カリフォルニア州の農産物生産額は全米1位となりました。このことから、世界で大部分を占める天水農業(雨水のみで作物を育てる農業)から灌漑農業へ移行することで、世界全体の食料生産の安定性を向上させることが期待できるのです。
しかし、灌漑農業では地下水の枯渇、水質汚染、灌漑施設の管理の負担、灌漑水の中に含まれる塩類が徐々に蓄積するという副作用があります。特に土壌の塩分濃度の問題は農作物の生育に直接作用するため大きな問題です。カリフォルニア州では、約90万haの灌漑耕地が塩類の影響を受けているとされています。(注1)(注2)
灌漑農業は乾燥地帯での農業を可能にしますが、排水システムの適切な管理がされず、塩類の蓄積によって作物が育たなくなるという事例が実際に発生しています。
塩類への対策として、次のような対処法があります。

  • 土壌中の余分な塩類を除去するために、適切な排水システムを整備する方法
  • 塩類に強い植物を栽培することで、塩類を吸収させ除去する方法
  • 土壌改良剤を使用して土壌の塩類を中和し、蓄積を防ぐ方法
  • 極端な蒸発により、土壌表層に集積された塩類層を削って取り除く方法、また、土壌表層に集積した塩分を水で浸透させずに洗い流す方法
  • 根が分布している範囲に集積した塩類を灌漑水で溶かし、除去する方法
  • 稲作を取り入れた輪作(一つの農作地でいくつかの作物を作ること)を行うことで、短期間に集積塩類を除去する方法

これらの対策や地域特有の水利用技術を組み合わせることで、塩類による作物への影響を最小限に抑え、持続可能な農業を実現することができます。

また、水資源の不適切な管理による水源の枯渇も深刻な問題です。
乾燥地域にあるアラル海では、支流のアムダリア川とシルダリア川流域で行われた大規模な綿花栽培のための灌漑農地開発によって、1960年以降の50年間でアラル海の面積が10分の1まで低下しました。その結果、塩類集積、生態系の劣化、砂塵嵐、飲料水汚染が起こり周辺住民の健康に影響を与えました。(注4)

人口増加や経済発展に伴い、水資源の需要は増加しています。しかし、水資源には限りがあるため、環境への配慮と灌漑用水の持続的な使用が求められているのです。

(注1)参考:気候変動適応情報プラットフォーム 世界の食料生産の干ばつ対策は?
(注2)参考:農林水産省 世界のかんがいの多様性(パンフレット)P15~32
(注3)参考:鳥取大学 乾燥地研究センター 特任教授 北村義信 乾燥地における塩類集積の脅威と対策
(注4)参考:ナショナルジオグラフィック アラル海、縮小の歴史

人工降雨・人工降雪

人工的に雨や雪を降らせる技術は、気候変動や降雨不足による干ばつや水不足、山火事の消火、特定の日の天候操作のために、世界50か国以上が取り組み、すでに実施されています。(注1)
日本でも実験を重ね、2006年の実験で本来は降水を起こさない1㎞の薄い雲でも、液体炭酸の撒布によって人工の降水域を形成することに成功しています。(注2)
さらに、2005年の夏に西日本で起こった渇水をきっかけに、2006年度から5年計画で気象研究所を中心に約10の研究機関が参加し「渇水対策のための人工降雨・降雪に関する総合的研究」が実施されました。

世界で行われている、4種類の人工降雨と人工降雪について紹介します。

1 ヨウ化銀法
ヨウ化銀を燃焼、蒸発させ発生した微粒子を地上または航空機から雲に送り込み、ヨウ化銀を核とする氷晶を形成させることで降雨、降雪として地上に落下させる方法です。
デメリットとしては、地上からヨウ化銀を撒布する場合、必要である氷点下に至る雲が存在する条件が少ないことや、ヨウ化銀のヨウ素に弱い毒性があり、科学的環境汚染物質として動植物に影響を与えてしまう問題があります。
ただし、銀については酸化しにくいため、環境への悪影響は比較的少ないとされています。

2 ドライアイス法
ドライアイスを数cmの大きさに砕き航空機で雲の上から撒布する方法です。
デメリットとしては、ドライアイスが垂直運動のみのため降水域が狭くなること、重力で落下する氷晶まで成長する時間がなく水資源に有効な降水量は得られないとされています。

3 散水法
雲の高い部分の温度が氷点下であり、雲内部に直径30ミクロン(0.03mm)以上の雲粒が不足している場合に適用でき、航空機で水を撒布することで、比較的大きな雨粒に成長させる方法です。
この方法は、高温で湿度の高い地域で有効とされていますが砂漠などの乾燥の強い地域では、地表に届く前に蒸発してしまうことが考えられます。
デメリットとしては、大量の水が必要であり費用、運用、降水効率の面で検討が必要なことです。
この問題を解決するために、大量の水の代わりに、ナトリウム塩などの凝結核(空気中の水蒸気が集まって雲粒となるために必要な核になる粒子)に過塩素酸カリウムなどの燃料を加え、航空機に取り付けた燃焼装置で燃焼させた凝結核を放出するという方法が考案されています。(注3)

4 液体炭酸法
過冷却雲(0℃以下でも水滴である雲)の底部近くの層に航空機で液体炭酸を撒布し、液体炭酸の急冷効果により微水滴を発生させ、瞬時に氷晶が発生することで降水を起こす方法です。
この方法は、ドライアイス法よりも製造時のエネルギー、費用、時間が少なく貯蔵時の安全性も高くなっています。
液体炭酸法は広範囲に降雨をもたらしますが、降水量は多くないため洪水にはつながりません。
ただし、液体炭酸法では過冷却雲を用いるため、積乱雲内の上昇気流や雹の影響を考慮し、大型航空機を使用するなどの検討が必要です。

人工降雨は、干ばつに対して有効な手段です。しかし、雨の元である雲が必要であり、干ばつで上空に雲がほとんどない状態では対処できない場合があります。(注4)さらに、人工降雨は近隣地域での水資源を奪うことになるため、実施には配慮が必要です。

(注1)参考:宇宙地球環境研究所 人工降雨の原理
(注2)参考:九州大学 人工降雨を中心とした気象制御技術に関する研究
(注3)参考:公益社団法人 日本気象学会 雲の種を探る
(注4)参考:日本学術会議 農学基礎委員会農業生産環境工学分科会 渇水対策・沙漠化防止に向けた人工降雨法の推進

干ばつや砂漠化に対処する砂漠化対処条約

国連砂漠化対処条約( UNCCD)とは砂漠化の問題に国際的に取り組んで行くために、1994年に採択された条約です。深刻な干ばつ、または砂漠化に直面する国(特にアフリカの国)や地域が砂漠化に対処するための取り組みを実施し、この取り組みに対し先進締約国が資金や技術の支援をすることなどを規定した条約です。2022年12月には、196の国と地域、EUが締約しています。(注1)
乾燥地は地球上の地表面積の4割を越え、約30億人もの人々が暮らしています。乾燥地は砂漠化の影響を受けやすく、食料の供給不安、水不足、貧困の原因になります。(注2)
国連砂漠化対処条約の主な目標は、持続可能な土地管理の推進、土地の劣化防止、生態系の保護、地域の持続可能な開発、貧困対策です。
日本は、資金援助のほか、砂漠化を抑制し農業生産を向上させる技術支援や、土地に頼らずに収入を向上させるための裁縫技術や石鹸製造技術などの支援を行っています。

(注1)参考:外務省 砂漠化対処条約
(注2)参考:環境省 国際的な砂漠化対処

干ばつへの日本の取り組み

日本では、渇水や水不足という呼び方が一般的で、あまり干ばつという言葉を聞くことがないかもしれません。しかし、日本でも平成の大渇水と言われる九州地方での干ばつは、給水制限が1994年6月〜1995年5月にかけて行われ、長崎県の佐世保市では最長22時間もの断水が行われました。さらに、2021年の北海道では、100年に一度といわれる干ばつが起こっているのです。(注1)
日本は、国内の水資源対策に取り組むと同時に、海外の干ばつに対しても政府や団体が支援を行っています。ここでは、日本がどのように干ばつへの対策に取り組んでいるかを解説します。

(注1)参考:国土交通省関東地方整備局 渇水による社会的影響や被害の状況

日本政府の干ばつ地域へ物資供与などの支援

日本では、干ばつによる被害がある国に対して技術や資金、物資の支援を行っています。
日本政府が行った、干ばつに対する支援を紹介します。

2006年〜2011年にかけて、アフガニスタンの首都カブールでは、紛争による避難民の帰還により人口が急増したため深刻な水不足となりました。さらに干ばつの影響で地下水位も低下し、市民生活に大きな影響を与えました。
これらの問題に対処するために、地下水源の把握、水理地質図の作成と関連情報の収集を行い、カブール盆地の地下水の開発、利用、管理計画を作成するための支援を行いました。(注1)

2011年1月から、アフリカの角と呼ばれるエチオピア、エリトリア、ジブチ、ソマリア、ケニアでは、内戦や紛争などの政情不安に加え、干ばつなどによって貧困や飢餓により難民が増加しています。
そのため、日本政府はアフリカの角の干ばつに対する支援として、国連児童基金(UNICEF)、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)などを通じ約9,000万ドルの支援を行いました。
さらに、国連世界食糧計画(WFP)と協力し500万ドル、ジャパンプラットフォーム(JPF)を通したNGOの活動支援のために約140万ドルの支援を行っています。
また、ケニアとエチオピアの難民キャンプへテントや発電機など約110万ドル相当の緊急支援を決定しました。そのほかにも、約2,100万ドルの食糧支援などの実施を表明しています。(注2)

2023年、干ばつが常態化するフィリピンのボホール州において、雨水貯水タンクの建設を行いました。さらに、安全な水の供給と衛生教育の体制作りを行っています。(注3)

2022年6月、キリバス共和国では干ばつによる国家災害宣言が発出されました。
干ばつによる影響で、生活用水である井戸水の汚染などが発生しキリバスの国民12万人が被害を受けています。日本政府は、キリバス政府からの要請を受け、国際協力機構(JICA)を通じ緊急援助物資として浄水器、ポリタンクの支援を行っています。(注4)

(注1)参考:JICA カブール市給水計画調査
(注2)参考:外務省 干ばつに苦しむ「アフリカの角」を救え!
(注3)参考:外務省 ODA(政府開発援助)
(注4)参考:外務省 キリバス共和国における干ばつ被害に対する緊急援助

NPO法人 CWS JAPANの支援活動

認定NGO法人のCWS JAPANという団体は、災害時に支援の手が届かず取り残される人々のいない社会の実現を目指して、国内外での災害対策、防災支援を行っている団体です。

アフガニスタンのバーミヤンで起こった、2017年〜2018年の冬季降雨量の減少による大規模な干ばつ被害軽減のため、CWS JAPANでは、2019年6月頭から2020年3月末にかけて、次の3つの支援を実施しています。

1 灌漑施設の整備
既存の井戸、用水路、溜池の補修と補強を行い、漏水を防ぐことで水資源を有効に利用できるようにしました。さらに、防護壁を設置し農地の地すべりと浸食を防止し、農地の保護と回復を行いました。
また、防災研修により災害への対応能力の強化も行っています。

2 キャッシュフォーワーク
灌漑設備にかかる作業を対象農家自身が行うことで現金収入手段を提供し、農地回復までの食糧の購入などの生活ニーズの保障を行いました。

3 養鶏事業
女性を対象とし、鶏の提供と養鶏の技術支援を実施することで、対象世帯の干ばつによる影響の代替生計手段の提供を行いました。

これら活動により、限られた水資源の有効活用、農地の回復と灌漑施設による作物の収穫量の増加が見込まれ、対象農家の生活水準の向上にも貢献しています。(注1)

(注1)参考:CWS JAPAN アフガニスタン/バーミヤンの干ばつ被害軽減のための農業支援事業

雨水・再生水の利用

日本は、世界でも雨の多い地域であり、降水量は世界の年間平均降水量である約1,171mmの約1.4倍となっています。(注1)
しかし、生活水準の向上や経済活動の発展による水需要のひっ迫のため、節水を目的として昭和50年代から雨水と再生水の利用が本格的に導入されるようになりました。再生水とは、下水処理水を高度処理したものです。雨水と再生水はまとめて雑用水と呼ばれ、河川維持、修景、融雪、工業、農業、トイレなどに用いられています。(注2)
雨水と再生水の利用は、平成6年の列島渇水をきっかけに導入事例が増加していきました。さらに、近年では節水以外の目的として、渇水や地震などの緊急時の水源確保のために雨水と再生水の利用が行われています。
令和3年度末には、全国で4,105施設、約1,244万m3もの雨水の利用が確認されています。(注3)

(注1)参考:国土交通省 日本の水資源の現状
(注2)参考:国立研究開発法人 国立環境研究所
(注3)参考:国土交通省 水資源

干ばつなどの問題解決に向けた取り組みを始めましょう

テレビやニュースなどで異常気象という言葉を聞く機会が増え、異常気象を身近に感じることが増えています。
2023年7月、国連事務総長が「温暖化は終わった。地球沸騰化の時代が到来した」と強い言葉で、世界の平均気温が過去最高であることを表現しました。

国連広報センター アントニオ・グテーレス国連事務総長:地球沸騰化の時代が到来

世界中で気温の上昇に対して早急に取り組まなければ、さらに多くの異常気象が起こる可能性があるのです。
干ばつは、遠い国の問題ではありません。自然現象に対して国境は無意味であり、日本が島国であっても空と海は地球全体とつながっているのです。そのため、私たち一人一人がこの問題に向き合わなければならないのです。
異常気象の原因である温暖化は、二酸化炭素を減らすことが重要な課題です。日常生活において、エコや節電など環境への配慮を意識して生活するなど、個人や社会全体での取り組みが地球環境の保護と温暖化の抑制につながるのです。地球環境と将来の生活を守るために世界で起こっている問題を知り、できることから始めてみましょう。

この記事の執筆者
EARTH NOTE編集部
SDGs情報メディア
「SDGsの取り組みを共有し、循環させる」がコンセプトのWEBメディア。SDGsの基礎知識や最新情報、達成に取り組む企業・自治体・学校へのインタビューをお伝えし、私たちにできることを紹介します。
身近なアイデアを循環させて、地球の未来をつなげていきましょう。皆さんと一緒に取り組んでいけたら幸いです。
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