海洋プラスチック問題とは?SDGs目標14に向けた世界の取り組みを解説

今、世界で起きている大きな環境問題の1つに海洋汚染があります。とりわけペットボトル、ビニール袋、海底に堆積するマイクロプラスチックなどによる海洋プラスチックごみの問題が深刻です。
SDGs目標の14番目に「海の豊かさを守ろう」があります。これは、「持続可能な開発のために海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する」という目標です。
ここでは、海洋プラスチック問題の現状と、日本をはじめとする世界各国の取り組みを解説します。私たち一人ひとりが個人で行える身近な取り組みもあります。一緒に考えていきましょう。
目次
社会・経済発展の裏にある海洋プラスチック問題
海洋プラスチック問題を引き起こしている原因はどこにあるのでしょうか。挙げられる要因は1つに限定されているわけではなく、様々なものがあります。現状の把握を踏まえ、主要なものを見ていきましょう。
増え続ける海洋プラスチックごみ
現在、世界の海には年間800万トンのプラスチックごみが流れ続けていると言われています。海洋に存在しているプラスチックごみは、現在合計で1億5,000万トン以上にも上ると言われ、確実に増え続けています。
この問題を象徴する、南太平洋に浮かぶ世界遺産の「ヘンダーソン島」やハワイの北東にある160万平方キロメートルにおよぶ「ゴミの島」が注目を集めました。
出典:環境省 海洋プラスチックごみ問題の現状
出典:日本財団ジャーナル 今さら聞けない海洋ごみ問題。私たちにできること
出典:世界遺産検定 2020年 7月『ヘンダーソン島』
出典:ハンギョレ 太平洋のゴミの島に新たな「イカダ生態系」が誕生
プラスチック製品
プラスチックは、私たちの生活の中でなくてはならないものになり、当たり前のように使われています。製品だけではなく、ビニール、発泡スチロールなど包装や梱包、緩衝材、ケースなど用途としては広範に渡ります。しかしこの多くが使い捨て、かつ適切に処理されておらず、ごみとなって海に流出されているのです。
全世界で、プラスチックの年間生産量は年々増え続けています。1950年以降に生産されたプラスチックは83億トンを超え、その内63億トンがごみとして廃棄されています。回収されたプラスチックごみの79%が埋立て、あるいは海洋へ投棄され、リサイクルされているのはわずか9%に過ぎません。
このままのペースでは、2050年までに120億トン以上のプラスチックがごみとして海洋に流出することになると懸念されています。
マイクロプラスチック
海に流出したプラスチックごみの中でも、とりわけ問題とされているのが「マイクロプラスチック」の問題です。
マイクロプラスチックとは、5mm以下の細かいプラスチックの粒子です。マイクロプラスチックは、完全に分解されることはなく、半永久的に海に残り続けると考えられています。
マイクロプラスチックは、製造段階で細かく加工された一次マイクロプラスチックと、大きなサイズで製造、投棄され環境中に流出した後に粉砕・細分化される二次マイクロプラスチックの二つに分類されます。
一次マイクロプラスチックはマイクロビーズとも呼ばれ、洗顔料、化粧品などのスクラブ剤、または製品原料となる樹脂ペレットなど、工業的に小さい状態で生産されるものです。
二次マイクロプラスチックは、海や海岸に漂流・漂着し、波などの動的な力が加わるあるいは太陽の紫外線に晒され、長い年月をかけて細かくなったものを指します。
出典:大阪市 マイクロプラスチックについて
陸上からのごみ
海洋プラスチックごみの8割以上は、陸上で発生したものとされています。その中でも圧倒的に多いのが、「容器包装用」として使われたプラスチックです。これらはそもそも使い捨てを想定して作られているもので、世界全体のプラスチック生産量の36%を占めています。さらにこれは、世界で発生するプラスチックごみの47%を占めると考えらます。
出典:WWFジャパン 拡大する問題とその原因 特にアジアの課題
海で発生するごみ
海洋で発生するごみは、陸上から投棄されるごみ程多くはありません。しかし、その多くがプラスチックごみであり、多くの問題を引き起こしているという点は同じです。
特に何らかの理由で海にごみとして投棄されてしまった漁網などの漁具は、毎年50万〜100万トンにのぼるとも言われています。これらに起因し、海洋生物の生息環境が脅かされているという事例が多く報告されており、生態系に深刻な影響が及んでいます。
アジアの経済発展
2010年推計の海洋プラスチックごみの発生量は、アジアの国だけで世界全体の82%を占めています。上位の国々の中でも近年急速な経済発展を遂げた中国が突出して多く、インドネシアやフィリピンなど経済成長が目覚ましいアジアの途上国もそれに続く形となっています。
海洋プラスチックごみの年間発生量ランク(2010年推計) | |
1位 中国 | 132〜353万トン |
2位 インドネシア | 48〜129万トン |
3位 フィリピン | 28〜75万トン |
… | |
20位 アメリカ | 4〜11万トン |
… | |
30位 日本 | 2〜6万トン |
この結果は、急速な経済発展と環境破壊の相関関係を如実に示した結果だと言えるでしょう。このまま環境に大きな負荷をかけ続けると、海洋プラスチック問題はさらに拡大し、取り返しのつかないことになってしまいます。
2016年1月、世界経済フォーラム(ダボス会議)は「海洋ごみに関する報告書」として、2050年までに「海洋プラスチックごみの量が魚の量を上回る」という驚くべき予測を発表しています。
様々な悪影響を及ぼす海洋プラスチック問題
海洋プラスチックごみによる環境破壊は、特定の対象への限定的な影響に留まるものではなく、様々な方面に甚大で深刻な影響を及ぼしています。
生態系への影響①ゴーストギア
大量の海洋プラスチックごみの問題で、最も直接的なものが海洋生物の生態系への影響です。
その中でも特に懸念されているのが、「ゴーストギア」と呼ばれる海中に投棄された漁具などに起因する問題です。ゴーストギアとされる漁網などの漁具は、ほとんどがプラスチックでできており、少なくとも海洋プラスチックごみの10%を占めています。
ウミガメや海鳥がこの漁網に絡まってしまい、抜け出せずにそのまま溺死してしまうケースが世界各地で頻発しています。
出典:NHK NEWS WEB “最も危険”な幽霊 ~命を脅かす「ゴースト・ギア」~
生態系への影響②誤飲
ゴーストギアの被害の他にも、ポリ袋やペットボトルなどのプラスチックごみを餌と間違えて誤飲し、海洋生物が命を落としてしまうケースも頻繁に発生しています。
2018年8月、鎌倉・由比ヶ浜の海岸に打ち上げられたシロナガスクジラの胃の中から、多くのプラスチック片が見つかったことが報道されました。この他にも、スペインでマッコウクジラの体内からプラスチック製の袋やペットボトルが見つかるなど、各国で同様の事例が何件も報告されています。
出典:一般社団法人環境金融研究機構 神奈川県・由比ガ浜の海岸に打ち上げられたシロナガスクジラ赤ちゃん
経済的損失①漁業
海洋プラスチック問題は、産業にも影響し経済的損失が発生しています。漁業・養殖業では、年間3.6億ドルの損失が発生しているという報告があります。
出典:APEC Marine Resources Conservation Working Group(2009) Independent Assessment of the APEC Marine Resource Conservation Working Group (MRCWG)
漁業者の大きな負担となっているのが、水産物に付着・混入した細かいプラスチックごみを除去する作業です。水産品にごみなどの異物が混入していると、商品価値が下がってしまいます。そのため、特に海藻や小魚など細かくて小さい水産物など除去や確認が難しいものは、廃棄を余儀なくされるケースもあります。
経済的損失②観光産業
海洋プラスチックごみ問題は観光産業にも暗い影を落としています。プラスチックごみによって、これまで海水浴やダイビングを楽しんでいた観光客が減少しているのです。美しい景観が失われ豊かな自然が奪われてしまうことは、観光業界にとっては大きな痛手となります。
プラスチックごみの海洋汚染による観光客減、観光業の年間損失は6.2億ドルにのぼると推定されています。
出典:APEC Marine Resources Conservation Working Group(2009) Independent Assessment of the APEC Marine Resource Conservation Working Group (MRCWG)
人体への影響
プラスチック製品が生産される時には、化学物質が添加されていたり、海を漂流する際に何らかの理由で化学物質が混入してしまったりすることも珍しくありません。そのため、マイクロプラスチックには有害物質が含まれている可能性が限りなく高いと考えられています。
さらに、マイクロプラスチックが海洋生物に摂取されると、海水や食塩などをもとにした飲料水や食品に有害物質が含まれてしまうことにも繋がり、影響が問題視されています。
出典:日本財団ジャーナル 【増え続ける海洋ごみ】マイクロプラスチックが人体に与える影響は?
原油使用の増大による地球温暖化への波及
プラスチックの原料になっているのは、炭素を含んだ化石燃料の1つである石油です。プラスチックの製造過程において、この石油内の炭素を燃焼させることでCO2が発生します。このままプラスチックの生産が拡大し続ければ、CO2排出による地球温暖化はますます進行していくのです。
海洋プラスチック問題は、こういった別の環境問題にまで波及してきています。
海洋プラスチック問題で課題を抱える日本
世界的な環境問題である海洋プラスチック問題ですが、日本においてはどのような状況なのでしょうか。その現状と課題を見ていきましょう。
プラスチックの生産も廃棄も世界トップクラス
2021年時点で、日本のプラスチック生産量は世界第2位です。一方、プラスチックごみの排出量は約850万トン(2019年)。このうち約40%が容器包装用途とし使い捨てされたプラスチックごみです。1人当たりに換算すると年間32kgを排出しており、これもまたアメリカに次いで世界第2位の多さです。
つまり生産している分だけ、そのままプラスチックごみを排出していることになります。国際的に見ても、日本は特に海洋プラスチック問題に責任を持たなければいけない立場だと言えるでしょう。
出典:一般社団法人プラスチック資源利用協会 プラスチックごみの現状
海外へ資源として輸出されるプラスチックごみ
日本は、中国などアジア諸国にプラスチックごみを「資源」として輸出していました。しかし最大の輸出国であった中国が、環境問題などを理由に2017年から輸入規制を始めたため、廃プラスチックは行き場を失ってしまいます。結果的にこれらが、今度は東南アジアの国々に輸出されていくことになりました。
2016年時点で、世界では年間およそ150万トンの廃プラスチックが輸出されており、その約60%が中国へ向けたものでした。
処理体制が整っていないアジアの途上国への大量のごみの「押し付け」は、余計に海洋プラスチックごみ流出を加速させることになってしまっています。海外へ輸出するという方法自体を見直していく段階に入ってきていると言えるでしょう。
プラスチックごみに囲まれた日本
日本における海洋プラスチックの問題は、国内の自然そのものへの影響も深刻です。
日本沿岸の漂着ごみは年間約3万トンから5万トンにも及びます。漂着ごみの大半が人工物、とりわけ多いのがやはりペットボトルや漁網などのプラスチック類です。日本海や本州南方海域の単位面積あたりのマイクロプラスチック濃度は、世界平均の27倍にも達するという調査結果も出ています。
出典:海洋生物環境研究所 海洋マイクロプラスチック汚染問題の現状
法整備の遅れ
海洋プラスチック問題を解決していくにあたり、法律の整備など政策面での改善で日本はまだまだ遅れを取っています。
2018年6月のG7シャルルボア・サミットで、2030年までにすべてのプラスチックをリユース、リサイクル、回収可能にすることを目指すとした各国のプラスチック規制強化である「海洋プラスチック憲章」が採択されました。アメリカに加え日本は署名を見送り、このことが尾を引いています。
リサイクルはまだまだ不十分
日本の廃プラスチックの有効利用率は比較的進んでいるとされていますが、実際はリサイクル方法などの面で多くの課題があります。
廃プラスチックのリサイクル方法は大きく分けて3つあります。
- マテリアルリサイクル
- ケミカルリサイクル
- サーマルリサイクル
マテリアルリサイクル
廃プラスチックをそのまま原料にして、新しいプラスチック製品として作り変えるリサイクル方法をマテリアルリサイクルと呼びます。
廃棄されたペットボトルから、新たなペットボトルをリサイクルできる他、衣類や卵のパック、食品用のトレー、包装材・梱包材などリサイクル例は多岐に渡ります。
マテリアルリサイクルは直接的な資源循環であるため、最もサステナビリティが高く理想的なリサイクル手法です。
ケミカルリサイクル
ケミカルリサイクルとは、廃棄物を化学反応で組成変更させるリサイクル手法です。代表的なものとして、廃プラスチックを溶かして合成ガスを生み出すガス化、廃プラスチックを油に戻す油化、廃プラスチックを還元剤として使う高炉原料化などがあります。
ケミカルリサイクルも、少ない環境負荷でリサイクルを行える手法として推奨されています。
サーマルリサイクル
サーマルリサイクルは、廃棄物を燃焼した際のエネルギーを回収して発電などに再利用するリサイクル手法です。
現在、日本ではサーマルリサイクルの割合が最も多くなっています。よって、化石燃料の燃焼で発生したCO2が排出され、地球温暖化へ影響するという別の問題が生じることになります。
いかに持続可能な方法でリサイクルを行なっていくか、ということが日本の今後の大きな課題です。
出典:プラスチック循環利用協会 プラスチック・リサイクルの手法
日本政府の5つの取り組み
日本は、海洋プラスチック問題に対して世界と足並みを揃え取り組んでいくことはもちろんですが、実際は先進国としてそれを上回るような取り組みが求められているのも事実です。
現在、国が行っている具体的な政策や代表的な取り組みを見ていきましょう。
環境省 プラスチック資源循環戦略
環境省が主体となった「プラスチック資源循環戦略」は、2018年に閣議決定した「第四次循環型社会形成推進基本計画」を受けて策定されたものです。
国内のプラスチックの資源循環を推進することが目的ですが、2019年6月に大阪で開催予定のG20サミットに向け、世界のプラスチック対策をリードしていくことを目指したものでもあります。
海洋プラスチックごみ対策アクションプラン
2019年6月のG20に合わせ、政府は海洋プラスチックごみ対策の推進に関する関係閣僚会議を開き「海洋プラスチックごみ対策アクションプラン」を策定しました。
プラスチックの有効利用を前提としつつ、排出抑制や回収の徹底など海洋における新たな汚染を生み出さない世界を目指し、以下のような取り組みを徹底していくとしています。
- まず、廃棄物処理制度によるプラスチックごみの回収・適正処理をこれまで以上に徹底するとともに、ポイ捨て・不法投棄及び非意図的な海洋流出の防止を進める。
- それでもなお環境中に排出されたごみについては、まず陸域での回収に取り組む。さらに、一旦海洋に流出したプラスチックごみについても回収に取り組む。
- また、海洋流出しても影響の少ない素材(海洋生分解性プラスチック、紙等)の開発やこうした素材への転換など、イノベーションを促進していく。
- さらに、我が国の廃棄物の適正処理等に関する知見・経験・技術等を活かし、途上国等における海洋プラスチックごみの効果的な流出防止に貢献していく。
- 世界的に海洋プラスチック対策を進めていくための基盤となるものとして、海洋プラスチックごみの実態把握や科学的知見の充実にも取り組む。
出典:環境省 「海洋プラスチックごみ対策アクションプラン」の策定について
海洋漂着物処理推進法の改正
2019年6月、海岸漂着物処理推進法が改正され、プラスチックの排出抑制が盛り込まれました。
事業者は、マイクロプラスチックの海域への流出が抑制されるように努めるとともに、漂流ごみや海底ごみについて、漁業者等の協力を得ながら処理を推進すること、廃プラスチック類の排出が抑制されるよう努めなければならない旨が追加規定されました。
出典:環境省 海岸漂着物対策を総合的かつ効果的に推進するための基本的な方針の変更について
プラスチックスマートキャンペーン
2018年10月、環境省は個人・自治体・NGO・企業・研究機関など幅広い主体が連携協働して取組を進めることを後押しするため、「プラスチック・スマート -for Sustainable Ocean-」と銘打ったキャンペーンを立ち上げました。
2019年7月29日時点で585団体から、ポイ捨て・不法投棄撲滅の運動やプラスチックの3Rなど810件の取組が登録されました。
出典:環境省 「プラスチック・スマート」キャンペーンの取組について
大阪ブルー・オーシャン・ビジョン
2019年6月に開催されたG20大阪サミットにおいて提案されたのが、「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」です。
「2050年までに海洋プラスチックごみによる追加的な汚染をゼロにすることを目指す」という共通のグローバルビジョンを掲げた推進プロジェクトとして立ち上がりました。
他国や国際機関等にも呼びかけを行い、2021年5月の時点で87の国と地域が共有しています。
世界各国の先進的な取り組み事例
海洋プラスチック問題に対しる具体的なアクションとして、世界の国々では様々な先進的な取り組みがなされており、成果を上げています。
各国の具体的な取り組み事例を見ていきましょう。
次々に進むアフリカの脱プラスチック
アフリカ大陸ではプラスチック袋の規制がほとんどの国で行われています。南アフリカ共和国は、世界に先駆けて2003年に大規模なプラスチック規制を導入しました。ケニアやルワンダ、エリトリアのように、違反に対して厳しい罰則を設けている国もあります。
2013年から2018年までの5年間で、20カ国がプラスチック規制に関連する法律を施行。アフリカ全体の54カ国中、過半数の30カ国がプラスチック袋を規制し、うち「禁止」対象にしている国は24カ国にのぼります。
出典:日本貿易振興機構 世界で一番「エコ」な大陸か?(アフリカ)
レジ袋規制はもはや当たり前
国連環境計画(UNEP)の2018年の報告書によると、現在世界の60カ国以上でレジ袋に禁止や有料化などを含めた何らかの規制がされています。
2020年7月から日本でも有料化されたレジ袋。ごみの削減はもとより、消費者の環境問題・プラスチック問題に対する関心の高まりは世界的に見ても顕著に表れ始めています。またプラスチック袋や紙袋にかけていたコストを削減できることもあり、経済効果における評価も高まっています。
【各国のレジ袋規制】
- 使用禁止:フランス、カメルーン、バングラディッシュなど
- 有料化:南アフリカ、スウェーデン、韓国など
- 課税:デンマーク、ベルギー、アイスランドなど
ヨーロッパの包括的な枠組み「欧州プラスチック戦略」
EUでは、循環経済への移行に向けた、プラスチックのより持続可能で安全な消費と生産方法の支援を目的として「欧州プラスチック戦略」を策定、2018年1月に採択されました。
2つのビジョンと14の目標があり、2030年までに達成するべき具体的な数値目標を掲げ取り組みを行なっています。
- EUに上市する全てのプラ製容器包装は、費用効果的な方法でリユース又はリサイクル可能にする。
- 欧州で発生した廃プラの半分以上をリサイクルする。
- EUのプラ分別回収・リサイクル能力を2015年比で4倍に拡充・近代化、欧州域内で20万人の新雇用創出。
出典:環境省 EUの政策概要
海洋プラスチック憲章
「海洋プラスチック憲章」は、2030年までにすべてのプラスチックをリユース、リサイクル、回収可能にすることを目指すといった各国のプラスチック規制強化について定めたものです。
2018年6月、カナダで開催された主要7カ国首脳会議(G7シャルルボワ・サミット)にて採択され、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、カナダの5カ国とEUが署名しました。
出典:環境省 海洋プラスチック問題に関する国際動向
アメリカは州や自治体ごとに規制実施
アメリカでは州や自治体ごとに、プラスチック規制が各々行われています。
<カリフォルニア州>
2016年から小売店でのレジ袋配布を禁止。2022年1月には、リサイクルシステムの構築を目的に、飲料のプラスチック容器での提供を禁止する「AB-793」という法律が施行。
<ハワイ州>
2020年にレジ袋を全廃、2022年には飲食店での使い捨てプラスチック製品および容器の提供を禁止。
出典:カリフォルニア州政府 Single-Use Carryout Bag Ban (SB 270)
出典:カリフォルニア州政府 AB-793 Recycling: plastic beverage containers: minimum recycled content.
出典:ハワイ州政府 Plastic Bag Ban
出典:ハワイ州政府 Disposable Food Ware Ordinance is in full effect as of September 6, 2022
【ドイツ】使い捨てプラスチック全面禁止スーパー
海洋環境の保護・汚染防止のため、使い捨てプラスチック製品を禁止する法案が、2019年に欧州議会で承認されたことを受け、ドイツでは新たな「包装法」が施行されました。
ドイツの大半のスーパーマーケットでは、レジ袋を廃止、使い捨てプラスチックの全面禁止による「プラスチック断ち」の動きが広がっています。
出典:ニューズウィーク日本版:包装ゼロの店、スーパーはレジ袋廃止──ドイツで「プラスチック断ち」広がる
【イギリス】大型スーパーにプラスチックフリーのストリート
イギリスでは2015年に、プラスチックのレジ袋が有料化されました。段階的な値上げも行われ、有料化してからのレジ袋使用量は半年間で85%も減少しています。2018年にはマイクロプラスチックを使った製品(マイクロビーズ)の生産も禁止されました。
ロンドンの大型スーパーマーケットでは、プラスチックを一切使わないプラスチックフリーのストリートが作られ、世界に先進的な取り組みを示しています。
出典:英国政府 Carrier bag charge: summary of data in England
海洋プラスチック問題解決には主体的な取り組みが必要
海洋プラスチック問題は、普段プラスチック製品を利用している私たちにとって極めて身近な問題です。当事者意識を持ち、問題解決に向けた主体的な取り組みが求められています。
3Rの推進
プラスチックごみの問題を解決するためには3Rを心がけることが重要です。
- リデュース(Reduce):出すごみの総量を減らす
- リユース(Reuse):再利用する
- リサイクル(Recycle):再生産に回す
3Rを徹底し、継続することがプラスチックごみの流出抑制につながります。
日本はプラスチック生産大国のため、「リデュース=出すごみを減らす」がとりわけ重要だと言えるでしょう。中でも半分近くを占める容器包装等の使い捨てプラスチックを減らすことで大きな効果が見込め、いっそうその努力が必要です。
ボランティアへの参加
ごみ拾いなどのボランティア活動に参加することも、プラスチックごみの削減に大きく貢献できます。
定期的な清掃だけでは追いつかない程、海に流れ着くプラスチックごみは膨大な量になってきています。一人でも多くの人が清掃活動などのボランティアに積極的に参加することが必要です。
また、清掃活動を行うだけではなく、海洋ごみの問題を多くの人に知ってもらうためのイベントを行っているボランティア団体もあります。イベントへの参加はボランティの輪を広げていくことができ、海洋プラスチック問題解決に向けた立派な貢献活動になるでしょう。
環境問題に取り組んでいる団体への寄付
ボランティアに参加するだけでなく、環境保護に取り組んでいるNPO団体などへの寄付で間接的にプラスチックごみの削減へ協力することもできます。
NPO団体などに寄付するメリットは、環境問題の現状を伝えるため、政府やメディア、国際社会に向けて働きかけるといった、個人では実施できないようなスケールの大きな活動を支援できることです。
私たちが身近でできる取り組みはたくさんある
プラスチックごみを減らすために、普段の生活で私たちができることはたくさんあります。たとえ一つひとつは小さなことでも、その積み重ねが大きな力になります。
ごみになるものを減らす
リデュースの観点から、ごみになるものを減らすために取り組めることは、日常のシーンにおいてもたくさんあります。特に容器包装などに使われる使い捨て用途のプラスチックの削減努力を心がけましょう。
- ラップの使用を減らすため、食品の保存はフタ付きの容器を使う
- スーパーなどの食品を小分けする使い捨て容器やポリ袋は使わない
- 無駄なものは買ったりもらったりしない
ものを繰り返し使う
ものを繰り返し使う=リユースも普段の生活でできることがあります。これまで使い捨てにしていたものを、繰り返し使えるものに変えるなどが挙げられます。
- マイバッグを持参し、レジ袋は買わない
- マイボトルを持ち歩き、ペットボトルの利用を減らす
- 洗剤や洗面用具などは、詰め替え用ボトルを使う
ごみのリサイクルに貢献する
リサイクル自体は個人レベルでは難しいケースが多いかもしれませんが、リサイクルにつながる行動は行えます。一人ひとりが意識するかしないかで、その結果は大きく変わると言えるでしょう。
- ごみの分別をしっかり守る
- ごみのポイ捨ては厳禁
- 再生プラスチック製品を使う
- 外出先で出たごみは持ち帰って処分する
- 川や海岸の清掃活動に参加する
海洋プラスチック問題解決に向けた企業の取り組み事例
海洋プラスチック問題解決に向けた取り組みは、多くの企業で行われています。普段消費者として利用しているお店でも、その取り組みが反映されたサービスや商品を目にすることが多くなってきたのではないでしょうか。
積極的に取り組みを推進し、発進している企業の事例をご紹介します。
【良品計画】ペットボトルをアルミ缶に
無印良品を運営する良品計画は、2021年にこれまで販売していた全てのペットボトル飲料の容器をアルミ缶にすると発表しました。
アルミ缶はペットボトルに比べて再利用しやすいとされており、光を通しにくいので飲料が酸化しにくく賞味期限も長くなるというメリットがあります。
その他にも、マイボトル持参で来店すると無料給水サービスを受けられるなど、脱プラスチックの取り組みを従来から進めています。
出典:良品計画 ペットボトルからアルミ缶への切り替えと水プロジェクト活動拡大のお知らせ
【スターバックスコーヒージャパン】プラスチックストロー全廃
スターバックスコーヒージャパンでは、2021年に国内全店舗でプラスチックストローを廃止、ストロー不要のリッドでの提供を開始しました。それに加えて商品のプラスチックカップもFSC®認証紙カップに変更しています。
この取り組みによって、年間約6,700万本のストローと同数のプラスチックカップを削減できるとしています。
出典:Starbucks Stories Japan 使い捨てプラスチック削減のため、23品目のアイスビバレッジをFSC®認証*1 紙カップとストロー不要のリッドで4月16日 より順次提供スタート
リサイクル製品の開発を進める【IKEA】
IKEA(イケア)では、2030年までに使用するプラスチックをすべて再生可能素材またはリサイクル素材にするという目標を掲げています。
この目標達成の一環として、企業や科学者、NGOを巻き込み、持続可能な形でプラスチックごみを消費者製品に変えていこうとするイニシアチブ「NextWave」へ参加しています。
新たに石油からつくるプラスチック製品の廃止も段階的に行なっています。
出典:IKEA 海洋汚染の可能性のあるプラスチックごみに対する次のステップ
【エコストア】有効利用されたプラスチックボトルを開発
ニュージーランド発祥のナチュラルケアブランド「エコストア」では、これまでの石油由来のプラスチックから、二酸化炭素の排出を抑えることができるサトウキビ由来のプラスチックボトルを2014年から採用しています。
また、世界的なパッケージ製造会社Pack Teckと協力し、プラスチックを海や河川から回収、ハンドウォッシュボトルとして再生産するという取り組みも行なっています。
出典:エコストア 100%海洋プラスチックを使用したハンドウォッシュを6月8日<世界海洋デー>に数量限定発売!
ごみを出さないリデュース企業【味の素グループ】
味の素グループでは、2030年までにプラスチック廃棄物をゼロにするという目標を掲げています。
具体的な取り組みとしては、スティック商品の包材を紙化し、プラスチック使用量を32トン削減するとしています。また、冷凍食品のパッケージの省資源化、一部商品でトレー不使用にするなど、各製品のプラスチック使用削減を進めています。
出典:味の素 プラスチックごみ削減へ〜味の素グループのプラスチック廃棄物ゼロ化への取り組み
日本のイノベーションを担う【三菱ケミカルホールディングス】
三菱ケミカルホールディングスは、2019年から住友化学や三井化学と共同で、プラスチック問題の解決に向けた基金「AEPW」に参加しています。AEPWは世界各国から集まった30社近くの企業が参加しており、5年間で15億ドル(およそ1600億円)をプラスチックごみ削減の取り組みに投じるとしています。
同社では、ストローや容器に使われる生分解性プラ「バイオPBS」の普及に努めています。
出典:三菱ケミカルホールディングス プラスチック廃棄物問題解決に取組むグローバル・アライアンス 「Alliance to End Plastic Waste」への参画について
出典:三菱ケミカル 生分解性樹脂 BioPBS™(バイオPBS) | 製品情報
プラスチックごみ削減の先駆企業【イオン】
イオンは、使い捨てプラスチックの使用量を2018年比で2030年までに半減するという目標を掲げています。
イオンでは1991年からマイバッグ持参を呼びかけるなどプラスチック製レジ袋の削減に取り組んでおり、2020年4月にはグループ会社すべての売場でレジ袋の無料配布を中止しました。
今後も、全てのPB商品で環境・社会に配慮した素材を使用、PB商品のPETボトルを100%再生もしくは植物由来素材へ転換するとしています。
「海を守る」取り組みを進める【協和キリン】
協和キリンは、地域と協力して海洋環境の改善や維持を目標とした取り組みを行っています。そのプロジェクトの一環として、事業場ごとの河川清掃や、あまごの稚魚放流を行なってきました。
「キリングループ プラスチックポリシー」に基づく貢献活動として、近隣にある境川の清掃活動(境川クリーンアップ作戦)にも協賛企業として参加しています。
私たち一人ひとりの行動が大事
海洋プラスチックごみの問題は年々深刻化し、世界的にも懸念されていますが、それだけ国際的にも危機意識が高まり、様々な取り組みが進んできているのも事実です。
特にプラスチック生産量、排出量ともに多い先進国としての日本は、その責任を十分果たしていく必要があるでしょう。
これは国や企業といった大きな枠組みで取り組むだけではなく、個人レベルにまで落とし込んで考え、私たち一人ひとりが意識し、行動に移していくことが重要です。今からでも遅すぎることはありません。できることから行っていきましょう。

身近なアイデアを循環させて、地球の未来をつなげていきましょう。皆さんと一緒に取り組んでいけたら幸いです。