水力発電の仕組みからメリット・デメリットまで徹底解説

水力発電の仕組みからメリット・デメリットまで徹底解説

2023.09.01(最終更新日:2024.11.13)
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水力発電と聞いて、「ダム」をイメージする方が多いのではないでしょうか。もちろんダムを使った発電方法もありますが、水力発電にはなんと7種類もの発電方法があるのです。
そこで、本記事では

  • 水力発電の仕組みや特徴
  • 水力発電のメリット
  • 水力発電のデメリットや課題
  • 日本の水力発電所の事例や出力量
  • 世界の水力発電

などについて解説します。

本記事を読めば、水力発電がいかに環境に優しい発電方法なのかがわかり、SDGsとの関係も理解できます。水力発電に関する理解を深め、環境に対する意識向上に努めましょう。

水力発電の仕組みや特徴

水力発電はどのようにして発電するのでしょうか。その仕組みや特徴についてみていきましょう。

水力発電は「発電時にどの部分に着目するか」で発電方法が分類されています。大きく2種類あり、下記のとおりです。

  • 水の利用面に着目した分類
  • 落差などの構造面に着目した分類

上記2種類の分類の詳細をみていきましょう。

水の利用面による分類

水力発電の発電方法を、「水をどのように利用するか」に着目して分類すると、下記のとおり4種類あります。

発電方法 特徴
流れ込み式 河川の流れを止めることなく利用する、水量変化により発電量が変動
調整池式 貯水して発電。夜間や週末の電気消費量の少ないタイミングで貯水する。
貯水池式 電力消費量の少ない春や秋の季節に、大きな池に水を貯めておき、電力消費量の大きい夏や冬に利用。
揚水式 上池と下池を利用した発電方法。電力消費量の多い昼間に上池から下池に水を落下させる。その後、電力消費量の少なくなった夜間に下池から上大へ水を引き上げる。

流れ込み式は河川の流れをそのまま利用します。つまり、河川の水の量が多いと発電量が増え、少ない時期には発電量も減ります。

調整池式は調整池に貯水し、電力消費量が多いタイミングで調整できるのが強みです。1日から1週間程度の発電量が調整可能なのが利点。

貯水池式は、長期間の電力変動に対応するために貯水池に水を貯めて発電します。季節や天候など、年間を通じた発電量の調整が可能です。

揚水式は上部と下部の2か所に貯水池をつくり、1日の消費電力量が変動するタイミングで水を落下や引き上げたりします。

構造物による分類

続いて、構造物(ダムなど)に着目した分類です。こちらは3種類あり、下記のとおりです。

発電方法 特徴
水路式 川の上流に堰(水流をせきとめたり調節したりするために、川の途中や湖・池などの水の出口に作るしきり)を設ける。堰に水を取り入れ、水路によって落差が得られる地点まで水を移動させ、発電する方法。
ダム式 高いダムにより、河川をせき止め、水量を確保。ダムから落ちる落差を利用して発電。
ダム水路式 水路式とダム式を組み合わせた発電方法。ダムで蓄えた水を落差を得られるところまで水路で運び、発電する。

水力発電と聞いて、ダムを想像される方も多いのではないでしょうか。ダムは、ダム式やダム水路式で利用されています。

ダム式はダムの下に発電所があり、水車が回って発電します。ダムの水量次第で発電量が変わるのが特徴です。

ただし、ダムだけで大きな落差をつくる場合、建設場所が限られているなどの課題があります。一方、ダム水路式では、水を貯める場所と水を落とす場所が別々になるため、大きな落差を得つつ建設できるメリットがあるのです。
「水力発電の仕組みや特徴」は下記サイトから参照
(出典:NEDO-第8章 中小水力発電-
黒部ダム

水力発電とSDGsの関係

SDGs( Sustainable Development Goals )とは、持続可能な開発目標ことを指します。2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された目標です。持続可能な開発目標とは、簡単にいえば、「環境や社会問題を解決して、短期間で終わらない持続できる良い社会を目指そう」という目標です。

SDGsには17の目標と169のターゲット(目標達成のための手段)がありますが、その中の1つである目標7が水力発電と関連します。目標7は「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」で、内容は下記のとおりです。「7-1」のような数字が目標をあらわし、「7-a」のようなアルファベットがターゲットを示しています。

目標・ターゲット 内容
7-1 2030年までに、だれもが、安い値段で、安定的で現代的なエネルギーを使えるようにする。
7-2 2030年までに、エネルギーをつくる方法のうち、再生可能エネルギー※を使う方法の割合を大きく増やす。※太陽光、風力、地熱など、使っても減らず、二酸化炭素を排出しないエネルギー源
7-3 2030年までに、今までの倍の速さで、エネルギー効率をよくしていく。
7-a 2030年までに、国際的な協力を進めて、再生可能エネルギー、エネルギー効率、石炭や石油を使う場合のより環境にやさしい技術などについての研究を進め、その技術をみんなが使えるようにし、そのために必要な投資をすすめる。
7-b 2030年までに、さまざまな支援プログラムを通じて、開発途上国、特に、最も開発が遅れている国、小さな島国や内陸の国で、すべての人が現代的で持続可能なエネルギーを使えるように、設備を増やし、技術を高める。

上記表の「7-2」をみてみると、「再生可能エネルギーを使う方法の割合を大きく増やす」とあります。もちろん水力発電は資源が「水」であるため、繰り返し使用できる再生可能エネルギーに含まれます。

つまり、水力発電のような、クリーンかつ再生可能エネルギーを増やしていくことはSDGsの目標7達成につながるといえるでしょう。
(出典:日本ユニセフ協会-7.エネルギーをみんなに。そしてクリーンに-

水力発電のメリット

ここまで水力発電の仕組みや特徴についてみてきました。では、水力発電のメリットとはいったい何なのでしょうか。

二酸化炭素を出さないクリーンエネルギー

メリットの1つ目は、発電の際に二酸化炭素を放出しないクリーンエネルギーという点です。水力発電では、「水」を利用するため、発電時に二酸化炭素を放出せず、環境にクリーンなエネルギーといえます。

例えば、火力発電ですと発電時に「物を燃やすこと」が必要なため、大量の二酸化炭素が発生します。近年話題の「地球温暖化」はこの二酸化炭素が原因で進行しているのです。地球温暖化防止のためにも、二酸化炭素の放出は最低限に抑えるべきといえるでしょう。

では、火力発電と水力発電でどのくらい二酸化炭素の発生量が違うのでしょうか。火力発電では943(g-CO₂/kWh)に対して水力発電は11(g-CO₂/kWh)です。比べてみるとその差は歴然で、約85倍もの違いがあります。さらに、水力発電で発生している二酸化炭素はすべて設備・運用による発生で、発電燃料燃焼による発生はありません。

以上のことから、いかに水力発電が環境にクリーンなエネルギーであるかわかります。
(出典:中国電力-エネルギーのはなしと環境問題-

また、地球温暖化が進行すると下記のような問題が発生します。

  • 北極の氷が溶けて生物が生息できなくなる
  • アオコが発生し、生態系に影響を与える
  • 二酸化炭素が雨に溶けて酸性雨が降り、生態系に悪影響を与える

水力発電を発達させることは、地球温暖化防止につながり、上記のような事態を防ぐことにもつながるといえるでしょう。

貴重な純国産の自然エネルギー

水力発電で使用する水は、貴重な純国産の自然エネルギーという点もメリットといえるでしょう。というのも、日本は多くのエネルギー資源を輸入に頼っています。日本が国内の資源でどのくらいエネルギーを自給できているかみてみると、わずか12.1%です。世界的にみると35位で、決して高いエネルギー自給率とはいえないでしょう。

例えば、火力発電で利用される石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料は輸入に大きく依存しています。データでみた日本の化石燃料の海外依存度は下記のとおりです。

  • 石油:99.7%
  • 天然ガス:97.7%
  • 石炭:99.6%

上記データからわかるように、火力発電に関しては資源のほとんどを海外からの輸入に頼っています。

そこで、輸入に頼らずにエネルギーを供給できる水力発電が期待されています。水力発電は水と落差があれば発電可能なので、日本国内の資源でまかなえるのです。日本国内で水力発電が発達すれば、資源を輸入に頼らなくよくなり、低いエネルギー自給率が改善されるでしょう。

繰り返し使える再生可能エネルギー

水力発電に使用する水は、繰り返し使える再生可能エネルギーという点も大きなメリットといえます。水力発電のエネルギーは、雨や雪が溶けてできた水です。例えば、雨が降るとその雨水は川を下って海に注ぎます。そして蒸発して雲となり、雲は再度大地に雨を注ぐのです。

このように、水力発電のエネルギーである水は、永遠に繰り返し使える再生可能なエネルギーといえるでしょう。

一方で、火力発電に目を向けてみると、資源は石油や石炭です。これらの資源は限りがあります。石油であれば54年、石炭であれば、139年といわれています。

このように、他の発電方法と比べてみると、水力発電が再生可能エネルギーという点において、いかに優れているかがわかります。
「水力発電のメリット」は下記参照
中国電力-エネルギーのはなしと環境問題-経済産業省-再生可能エネルギー-、経済産業省-1.安定供給-

水力発電のデメリット・課題

ここまで、水力発電のメリットをみてきました。では一方でデメリットや課題はあるのでしょうか。

膨大なコストがかかる

水力発電の特徴として、設備建設等に膨大なコストがかかるという課題があります。水力発電でエネルギーを得るためにはダムなどの落差を生み出す設備が必要です。それらの建設費は膨大となり、新規参入しづらい現状があります。さらに、事業の開始前には河川流域の長期にわたる調査が必要であり、開発初期のコストが大きくかかります。

また、コストに関しては「バックアロケーション」という問題もあります。バックアロケーションとは水力発電などの施設を作る際、利益を得る業者がその費用を負担すべきだという原則です。例えば、既存のダムを使って水力発電をしようとしても、ダム自体はできているので建設費はかかりません。しかし、このバックアロケーションの原則により、後から参入した事業者はその建設費の一部を担わなければならないのです。

このような背景があり、水力発電はコストが重くのしかかり、新規参入が難しい状況といえるでしょう。
(出典:経済産業省-水力発電は安定供給性にすぐれた再生可能エネルギー-一般財団法人建設経済研究所-第2章 建設産業の現状と課題-

既存のダムの流用が難しい

すでにある既存のダムを水力発電に流用しようとしても法律の壁があります。その法律とは「特定多目的ダム法」です。

特定多目的ダム法とは、簡単にいえば、特定の目的のためにダムを使用しなければならないという法律です。ダムには、農業用水の確保、洪水予防、水道水の確保、発電という具合に目的が定められており、その目的に沿ってダムを使わなくてはなりません。例えば、洪水予防目的のダムを発電用に流用できないか提案しても、国から規制が入ってしまうのです。

このような法律上の規制もあり、水力発電の発展が阻まれているのです。
(出典:e-Gov法令検索-特定多目的ダム法-

水力発電の課題解決に向けて

水力発電の課題解決に向けて、中小水力発電が注目されています。中小水力発電とは、一般河川、農場用水、砂防ダム、上下水道などを利用して発電する方法です。発電の際には、水車を利用します。また、明確な定義はありませんが、出力量で中小水力発電と小水力発電と区別されることが多いです。

  • 中小水力発電:10,000kW~30,000kW以下
  • 小水力発電:1,000kW以下

中小水力発電は大規模な水力発電に比べて下記のようなメリットがあります。

  • 設備利用率(発電設備の実際の発電量が、フル稼働していた際の発電量の何パーセントほどであるのかを示す)が高く、経済的に有利
  • 出力する電力の変動が少ないので、安定した品質の電力を供給できる
  • 設置までに必要なコスト面が少ない

これらのメリットから、これまでの水力発電の課題であった、経済面の改善が期待でき、新規参入業者も増加することが期待できるでしょう。
(出典:環境省-小水力発電情報サイト-関西電力-再生可能エネルギーとは-

日本の水力発電所の事例と出力量

では、日本の水力発電所はどのように導入され、運用されているのでしょうか。実際の事例をみていきましょう。ここでは、日本にある規模の大きい水力発電所も紹介します。

福島県「奥只見発電所」

最初に紹介するのは新潟県魚沼市と福島県檜枝岐村の境を流れる只見川にある、奥只見発電所。昭和35年(1960年)に建設された発電所です。
田子倉から望む奥只見発電所。奥只見ダムで貯めた水面に映る雄大な自然
建設当初の日本は「もはや戦後ではない」と経済白書で宣言されており、実質年間成長率が急激に伸びている時代。日本経済がまさに回復しつつあるタイミングでした。

その時代背景に伴い、電力の需要と供給も急激に伸びていました。そのようなエネルギー需要に対応するため、これまで主流であった水力発電から、発電しやすい火力発電へ移行していったのです。

火力発電が主流になる中、水力発電所の価値は、火力発電所と組み合わせて電力系統の経済的運用をもたらすことでした。専門的にはベースロード(継続的な稼働が可能で、長期にわたり、電力を生産する)とピークロード(ベースロードの電力が足りなくなったときに使われる)といいます。水力発電はピークロードという新たな価値を見出し、再度注目を浴びました。そこで、事業者は奥只見発電所という大規模貯水池式水力の建設に着手したのです。

水力発電所に欠かせないのが河川。奥只見ダムでは、只見川という雪と雨に恵まれた豊富な水資源があります。年間の降水量はなんと2,500~3,000mmで日本国内有数の降水量です。この多い降水量の半分は冬期の降雪によるもので、冬に積もった雪が溶けて、一気に流れ出す特徴があるのです。この特徴は非常に貯水池式水力発電と相性がよく、電力需要が多き時に大量に発電し、需要の少ない時は、流量を減らし貯水池に温存できます。

さらに、奥只見発電所は地形の利点もあります。まず、源流の尾瀬沼は標高1,660mあります。そこから、尾瀬ケ原を経て北流し、奥只見(標高750m)、大鳥(標高550m)、田子倉(標高500m)を経由。最終的に流れを東に転じて会津盆地に向かっているのです。このように、高い場所から低い場所へ向かって流れる河川は落差を得やすく、水力発電に向いている地形といえるでしょう。

【建設時の課題】
奥只見ダムの建設現場は、当時は人跡未踏の地です。そのような場所に当時最大出力のダムを建設する計画だったので、多くの課題に直面しました。具体的には下記の3つです。

  • 豪雪による工事難航(現場の標高は600~800m)
  • 工事用資材の運搬
  • コンクリートに使用する骨材の調達

まず、奥只見ダム周辺は豪雪地帯であり、雪との闘いがありました。本工事着工前に雪崩による事故で15人もの命が奪われています。この惨状からもいかに厳しい現場環境であったかが想像できるでしょう。雪の課題については、越冬隊とよばれる現場の観測や調査を行う人たちにより、入念な実地観測が行われました。越冬隊の活躍により、現場の環境が明らかになることで、雪による被害を抑えられたのです。

続いての課題はセメントや木材などの工事用資材をどのようにして現場まで運搬するかです。この課題に関しては、運搬に使用する既設県道の大改修と、折立~奥只見間に工事用道路を新設することで解消しました。

最後の課題は160万立方メートルにもおよぶコンクリートの骨材をどのようにして調達するかです。この課題には、原石山(骨材を採取する山)の確保、クラッシングプラント(コンクリート用砕石)の整備、上流での堆積砂れきの発見などにより解決します。

このように、奥只見ダムの建設時には気候や運搬、資材調達の課題がありました。それらの課題は、建設に携わる人々の努力と工夫により解消し、奥只見ダムの完成が実現したのです。奥只見発電所は平成11年に増設工事が始まり、電力需要の伸びに対応しています。増設の結果、揚水式以外の水力発電で国内最大出力の56万kWを誇る水力発電所に発展しています。工事中には自然環境に配慮した工事が行われ、土木学会賞の「技術賞」および「環境賞」を受賞しています。
(出典:土木学会関東支部新潟会-わが国の経済成長を電力供給で支えて50年 奥只見ダム・発電所-

東京都「水の戸沢小水力発電所」

水の戸沢小水力発電所は平成30年に売電を開始しました。中小企業者が小水力発電所を設置する最初の事例です。

活用した河川は、東京都檜原村を流れる神戸川支流「水の戸沢」。落差が約91mあり、小水力発電に最適な地形です。

開発に着手した事業者は、地元の土木会社である翠高庭苑株式会社でした。翠高庭苑株式会社の社長は、東日本大震災を契機に次世代に持続可能な社会をつくれないか模索します。そこで、小水力発電に注目し、地元の活性化と地球温暖化対策に尽力しました。

翠高庭苑株式会社は水の戸沢小水力発電所設立にあたり、下記3つの課題に直面します。

  • 小水力発電のノウハウ不足
  • 資金調達
  • 水利権の許可認定

まず、地元の水資源を活用し、小水力発電を始めようにも、事業開始のためのノウハウが不足していました。また、建設当時、翠高庭苑株式会社には小水力発電事業の実績がありません。つまり、実績がないということは金融機関からの融資も受けにくく、資金面でも苦しい課題に直面します。

さらに水利権とよばれる、水力発電のために、流水を排他的・継続的に使用する権利を得ることが困難でした。理由は発電用水を取水した後の河川(減水区間)の適正な維持水量等を判断するための明確な基準が存在しない状況のためでした。

上記課題解決のために、国の再エネコンシェルジュ※が動きました。まず、小電力発電のノウハウ不足を補うため、設計の改善策や水車の選定方法などの助言を行います。

続いて、資金調達の問題を解決するべく、西武信用金庫と日本政策金融公庫との協調融資を提案しました。両者の協力融資が実現し、事業の採算性確保に結びつきます。

最後の水利権の許可認定に関しては、旧建設省河川局が出した通達※を活用し、檜原村との調整が円滑化され、解決しました。

このように、水の戸沢小水力発電所は国と事業者が協力することにより、小水力発電所を実現できたのです。
※再エネコンシェルジュ:再生可能エネルギー事業(発電・熱)の導入に取り組む事業者や自治体を無料でサポートするサービス
※「発電水利権の期間更新時における河川維持流量の確保について」(昭和63年7月14日)
(出典:経済産業省-檜原水力発電株式会社(水の戸沢小水力発電所)-

日本の水力発電所の電力出力量ランキング

では、日本の水力発電所の電力出力量が大きい発電所はどこなのでしょうか。経済産業省のホームページに、日本国内の水力発電所における電力出力量ランキングがあり、そちらで確認できます。

【揚水式】

順位 発電所名 最大出力(kW) 水系名
1 奥多々良木 1,932,000 市川、円山川
2 奥清津・第二 1,600,000 信濃川
3 奥美濃 1,500,000 木曽川
4 新高瀬川 1,280,000 信濃川
5 大河内 1,280,000 市川
6 奥吉野 1,206,000 新宮川
7 玉原 1,200,000 利根川
7 俣野川 1,200,000 旭川、日野川
9 新豊根 1,125,000 天竜川
10 今市 1,050,000 利根川

【揚水式以外】

順位 発電所名 最大出力(kW) 水系名 発電方法
1 奥只見 560,000 阿賀野川 貯水池式
2 田子倉 400,000 阿賀野川 貯水池式
3 佐久間 350,000 天竜川 貯水池式
4 黒部川第四 335,000 黒部川 貯水池式
5 有峰第一 265,000 常願寺川 貯水池式
6 手取川第一 250,000 手取川 貯水池式
7 御母衣 215,000 庄川 貯水池式
8 小千谷第二 206,000 信濃川 調整池式
9 大鳥 182,000 阿賀野川 調整池式
10 一ツ瀬 180,000 一ツ瀬川 貯水池式

(出典:経済産業省-水力ランキング-
上記事例で紹介した奥只見発電所も揚水式以外の水力発電で見事1位にランクインしており、日本の水力発電を担っているのです。また、揚水式による発電は、電力需要が大きいタイミングに対応する必要があります。よって、落差と使用水量を非常に大きく確保しており、出力量が大きくなるのです。

世界の水力発電

続いて、世界に目をむけて水力発電をみてみましょう。発電量に占める水力発電の割合で最も多いのがノルウェー、次いでアイスランド、オーストリアと続きます。それぞれの国ではなぜ水力発電が高い割合で維持できているのかをみていきましょう。
(出典:世界ランキング – 国際統計格付センター-世界・発電量に占める水力発電の割合ランキング-

ノルウェー

国内の発電量に占める水力発電の割合で最も高いのがノルウェーです。なんと国内の約9割もの発電を水力発電により実現しています。その水力発電の発達をもたらすのがフィヨルドとよばれる深い谷の地形。フィヨルドには、冬には雪が積もり、その雪が溶けて豊かな水をもたらしてくれるのです。

さらにノルウェーは電力自由化を実現しています。電力自由化により、周辺国と共同の電力市場「ノルドプール」ができました。ノルドプールにより、冬のフィヨルドの雪が凍っていて水が少なくなってしまう時期でも他国から電力をまかなうことが可能です。逆に過剰な発電は他国へ供給することも行っています。

このように、ノルウェーではフィヨルドとよばれる地形とノルドプールという周辺国との連携により、高い水力発電を実現しています。
(出典: 新電力ネット-北欧の電力自由化-外務省-ノルウェー王国-

アイスランド

アイスランドはノルウェーに次いで、国内の発電量に占める水力発電の割合が高いです。この高さの根源はいったいどこにあるのでしょうか。

アイルランドには氷河の氷が温かい時期に溶けて、豊富な水の確保につながるという地形的特徴があります。その豊富な水資源がアイスランドの使用可能エネルギーの約7割もの発電を担っているのです。

さらに、アイスランドではU字谷と呼ばれる、氷河の浸食によってできた地形が存在します。このU字谷は水力発電に必要な高低差を生み出し、国内の発電に寄与しています。

このように、アイルランドでは地形の利点を有効活用して水力発電が発達しているのです。
(出典:Thred Website-アイスランドがグリーンエネルギーの世界的リーダーになった経緯-みやじまん.com-【地誌編】アイスランド②-

オーストリア

オーストリア国内の水力発電の電力供給量は非常に高く、全発電電力量の約3分の2を占めています。はたしてこの水力発電の割合の高さはどのような理由から維持できているのでしょうか。

オーストリアで水力発電が普及している理由として、地形と国の施策が関係しています。オーストリアにはアルプス山脈が横断しており、国土の約3分の2が山岳地帯。さらに河川も豊富にあるため、水力発電に必要な「高さ」と「水」を兼ね備えた地形なのです。

国の施策に関しては、2021年に「再生可能エネルギー拡大法案」が閣議決定されました。再生可能エネルギー拡大法案により、毎年約10億ユーロもの大金を水力発電などの再生可能エネルギーに投資することが決まっています。

このように、地形の利点や国をあげて水力発電を推進していこうとする動きが、高い水力発電の供給量につながっているのです。
(出典:原子力百科事典 ATOMICA-オーストリアのエネルギー・電力需給と原子力 (14-05-12-02)-日本貿易振興機構(ジェトロ)-議会が再生可能エネルギー拡大法案を可決-

まとめ

今回は水力発電について、仕組みからメリット・デメリットまで解説しました。重要な内容は下記のとおりです。

  • 水力発電の発電方法は、水の利用面か構造物に着目するかで7種類に分類される
  • 水力発電の資源は環境に優しく、純国産であり、再生可能な資源である
  • 水力発電はコスト面で課題があり、新規参入が難しい
  • 水力発電が盛んなノルウェー・アイスランド、オーストリアはそれぞれの地形の利点を活かしている

水力発電の発電方法には、「水の利用面」と「構造物」に着目する分類分けがありました。水の利用面では、流れ込み式、調整池式、貯水池式、揚水式。構造物による分類では水路式、ダム式、ダム水路式があります。

そのような仕組みの水力発電は「水」を資源とするので、環境に優しいクリーンエネルギーです。また、水は純国産の資源でまかなえるので、資源の輸入に頼る必要がありません。さらに、水は何度も繰り返し使える再生可能エネルギーであり、注目されているのです。

一方で、ダムの建設費等、膨大なコストがかかる点が課題です。近年では「中小水力発電」とよばれる、中小規模の発電が注目されており、コストの課題解決に向けて動き出しています。

世界に目をむけてみると、ノルウェーやアイスランド、オーストリアで水力発電が盛んです。中でもノルウェーは国内の約9割もの発電を水力発電により実現しており、地形や電力自由化を活かした取り組みが水力発電の発達につながっています。

現在(2020年)の日本のエネルギー自給率は11.3%であり、多くの資源を輸入に頼っています。今後、水力発電が発達すれば、エネルギー自給率が改善されることが期待できるでしょう。

この記事の執筆者
EARTH NOTE編集部
SDGs情報メディア
「SDGsの取り組みを共有し、循環させる」がコンセプトのWEBメディア。SDGsの基礎知識や最新情報、達成に取り組む企業・自治体・学校へのインタビューをお伝えし、私たちにできることを紹介します。
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