風力発電の仕組みや現状、メリット・デメリットについて解説します

電力は私たちの暮らしに欠かすことができないものです。しかし、化石燃料である石油や石炭での発電は、温室効果ガスの発生など環境への影響や資源の枯渇が心配されています。そのため、脱炭素社会への取り組みや、地球温暖化を防ぐための取り組みが活発になっており、環境への影響が少ない再生可能エネルギーが注目されています。これらの取り組みは、SDGs(持続可能な開発目標)の達成にもつながっており、世界中で再生可能エネルギーによる発電が行われているのです。
再生可能エネルギーとは、太陽光、風力、水力、地熱などの枯渇しない自然由来のエネルギーのことです。
本記事では、再生可能エネルギーである風力発電に注目し、国内外での風力発電の現状と新たな取り組みなどについて解説します。
目次
風力発電の仕組みとメリット、デメリット
風力による発電は、1887年にイギリスで始まったことが記録されています。風車を利用し出力3kWの発電を行い、バッテリーに蓄え25年間運転したというものです。その後、風力発電装置は多くの国で研究され、1890年代には現在の風車の基礎が作られました。
風力発電は、風力を利用する発電であるため地球環境への影響が少なく、枯渇しないクリーンなエネルギーです。しかし、自然エネルギーならではのデメリットもあります。
ここでは風力発電の仕組みと、風力発電のメリット・デメリットについて解説します。
参考:JWPA 一般社団法人日本風力発電協会 風車の歴史
風力発電の仕組み
地球は太陽の熱によって温められています。しかし、地球全体を均一に温める訳ではないため、温める場所、陸地や海などで温度差が生じます。その温度差を少なくするために地球規模で対流が起こり、気流となることで風が発生しています。(注1)
この風を利用して発電を行うのが風力発電です。風力発電の設備と仕組みについて解説します。
主な風力発電設備には、次のようなものがあります。
風力発電設備 | 説明 |
---|---|
ブレード | 風により回転し、エネルギーへと換える |
ロータ | ブレードと回転軸等を組み合わせたもの |
ナセル | ロータの中心から後方に伸びた部分/増速機や発電機などを収納する部分 |
増速機(ギアボックス) | ナセル内部にあるロータの回転を発電機に伝える |
ブレーキ装置 | 災害時などにブレードの回転を止める装置 |
発電機 | ロータからの回転を電気に変換する |
電力ケーブル | 送電を行う |
風力発電は、巨大な羽であるブレードが風を受けて回転することで、ロータが回転します。そして、ロータの回転運動の速度をナセル内部の増速機でアップさせて発電機に伝え、発電機が回転の力を電気エネルギーに変換することで発電しています。(注2)
(注1)参考:JWPA 日本風力発電協会 風はどうしておこるのだろう
(注2)参考:関西電力グループ 【イラスト解説】風力発電の仕組みとは?
風力発電の種類
風力発電には大きく分けて、陸上風力発電と洋上風力発電があります。陸上風力発電は設置する場所によって、風車の形を適切なものにすることで発電を効率的に行うことができます。
風車の軸は水平なものと垂直なものがあり、それぞれ風を受ける部分にも、いくつかの種類があります。
水平軸の風車
多翼型、セイルウィング型、オランダ型、プロペラ型
垂直軸の風車
クロスフロー型、サボニウス型、ダリウス型、ジャイロミル型
最も発電効率が良いのは、プロペラ型とされています。しかし、プロペラ型以外の風車では、発電量は少ないものの弱い風でも発電することができるなど、同じ風でも風車の形によって発電量に差が出るのです。
風力発電の5つのメリット
再生可能エネルギーである風力発電は、クリーンなエネルギー源で環境負荷が小さいなどのメリットがあります。風力発電のメリットを見てみましょう。
【1】発電時にCO2を排出しない
風の力を利用して発電するため、発電時に温室効果ガスであるCO2が排出されることがありません。
【2】資源が風であるため枯渇しない
自然界に常に存在する風のため、化石燃料と違い資源の枯渇という問題がありません。
【3】陸上、洋上のどちらでも発電ができる
風力発電の設置は、陸上でも洋上でも行うことができます。
陸上では強い風が吹く山岳地帯に多く設置され、洋上では海風を発電に利用することができます。
【4】エネルギー変換効率が良い
風車の高さやブレードによって差はありますが、風力発電は水力発電の次に高いエネルギー変換効率(自然エネルギーを電気に変換した際に、利用することができる割合のこと)となっています。
【5】夜間でも発電可能
風さえ吹いていれば、昼夜問わずに発電することができます。
太陽光発電は日照時間によって発電量が異なりますが、風力発電においては日照時間を考慮する必要がありません。(注1)(注2)
(注1)参考:資源エネルギー庁 なっとく!再生可能エネルギー 再生可能エネルギーとは
(注2)参考:関西電力グループ 風力発電のメリットは?課題は?普及に向けたポイントも解説
風力発電の4つのデメリット
風力発電は、環境負荷が小さいことや変換効率が高いというメリットがありますが、次のようなデメリットもあります。
【1】発電量が天候に左右される
風力発電は風が吹かなければ発電ができません。しかし、台風などの強すぎる風では、風車が壊れることを防ぐため運転を止める必要があります。
自然状況によって発電量が変動するエネルギーであるため、変動する発電量をカバーするために天候に影響されない発電方法との組み合わせや、蓄電システムが必要となります。
【2】風車を建設する適地が少ない
風力発電に適している場所は、強い風が吹き続ける場所ですが、日本ではそのような場所が多くはありません。また、日本は山地が多いため、山間部に建設する際はコストが膨らんでしまうことがあります。
また、景観が損なわれるなど、建設予定地である自治体などから建設を反対されてしまう事もあります。
【3】風車が回転する際に騒音が発生する
風車が回転することで空気の流れが生まれるため「風切り音」が発生します。また、風車が回転する音は約105デシベルで、電車が通過する際のガード下ほどの騒音が発生しています。近隣住民への影響を少なくするため、住宅地などから離れた広大な土地での建設が求められています。(注1)
【4】自然環境への影響
風力発電施設では、猛禽類などの鳥類がブレードに衝突する事故が発生しています。こうした事故はバードストライクと呼ばれ、野生生物の保全と風力発電推進の両立を目指す際の課題となっています。また、このような自然環境への影響考慮して風車の建設を行う必要があるため、環境アセスメント(事業が環境にどのような影響を与えるかを評価し、環境保全の観点からよりよい事業計画を作ること)に時間がかかることがあります。(注2)
(注1)参考:関西電力グループ 風力発電のメリットは?課題は?普及に向けたポイントも解説
(注2)参考:環境省 風力発電施設に係るバードストライク防止策
日本での風力発電の現状
日本での風力発電量は年々増加しています。しかし、欧米や中国と比較すると、伸び悩んでいるというのが現状です。風力発電に適した場所や、災害への対策によるコストの高さも普及を妨げる要因と考えられます。
また、洋上での風力発電も増加していますが、日本近海は水深が深く、着床式よりコストが高くなる浮体式風力発電の導入が必要となっています。
風力発電は、風車の大型化や導入拡大などにより、国際的にも低価格化が進んでいます。さらに、風車に使用する部品が多いことや、事業規模の大きさから経済波及効果が期待されるなど、日本では今後拡大の可能性が高いエネルギー源なのです。
風力発電での発電量
日本での2021年の風力発電導入量は(実際に運転が開始された発電設備での総容量)、458.1万kWとなりました。1990年はわずか0.1万kWであったため、大幅に増加しているといえます。しかし、日本の風力発電導入量は世界全体で0.5%ほどしかないのが現状です。(注1)
2022年に日本で発電された電力のうち、風力発電量の割合は0.85%でした。2021年の0.88%からわずかに減少する結果となりました。(注2)2021年末時点での風力発電の導入量は、2,574基、出力は約458.1万kWとなっており、未稼働分を含むFIT制度(国が定額で電力を買い取る制度)での認定量(FIT制度の認定を受けた発電設備の総容量)は、合計1,571万kWとなっています。日本では、風力発電の約4割が東北に集中しています。(注3)
また、発電にかかるコストの低減も導入増加につながっています。風力発電の発電量に対するコストを表す均等化発電原価(LCOE)は、陸上発電、洋上発電ともに10年近くでほぼ半減しました。
陸上発電における世界平均のLCOEは、2012年の82ドル/MWhから、2020年は39ドル/MWhとなり、洋上発電では、2012年の147ドル/MWhから、2020年は84ドル/MWhとそれぞれ下がっています。
今後30年のコスト低下ペースは、陸上発電では緩やかに下がると見込まれており、洋上発電では2020年の3分の1の水準まで低減すると見られています。(注4)
日本では、2030年のエネルギーミックス(いくつもの発電方法を組み合わせ、特定のエネルギーに依存しない発電方法)の目標として風力発電409億kWh(陸上風力発電302億kWh、洋上風力発電107億kWh)を目指しています。(注5)
1000W=1kW
1000kW=1MW
1000000kW=1GW
kWh=電力に時間を掛けたもの
1kWhとは、1kWの電力を1時間使った電力量
令和2年度、1世帯当たりの1年間の全国平均消費電力は4,258kWhとなっています。
参考:環境省 家庭のエネルギー事情を知る
(注1)参考:資源エネルギー庁 第3節 一次エネルギーの動向
(注2)参考:特定非営利活動法人 環境エネルギー政策研究所 2022年の自然エネルギー電力の割合(暦年・速報)
(注3)参考:資源エネルギー庁 第3節 一次エネルギーの動向
(注4)参考:JETRO 陸上は中国・米国、洋上は欧州で、風力の導入進む
(注5)参考:資源エネルギー庁 日本のエネルギー 2021年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」
陸上風力発電
日本での陸上風力発電は、2021年末で発電量が4,529MW、2,548基となっています。2021年の電力導入量は、2020年の28%と少ない量となりました。これは、大型案件の運転開始が少なかったこと、廃止されたものが多くあったことが要因です。(注1)
日本の風力発電設備の容量は、2021年末で世界21位となっています。その理由として、日本の地形が諸外国に比べ平地が少なく地形が複雑であるなど、陸上での風力発電の設置が進みにくいことが影響しています。(注2)
しかし、風車の大型化や導入拡大による価格の低下に加え、経済波及効果が期待されているため、2030年の温室効果ガス46%削減(2013年度比)という目標に向け、2021年の陸上風力発電導入量の77億kWhを、2030年のエネルギーミックスでは302億kWhまで増やすことが目標として掲げられています。(注3)(注4)
(注1)参考:JWPA 一般社団法人日本風力発電協会 2021年末日本の風力発電の累積導入量:458.1万kW、2,574基
(注2)参考:資源エネルギー庁 第3節 一次エネルギーの動向
(注3)参考:資源エネルギー庁 日本のエネルギー 2021年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」7.再エネ
(注4)参考:資源エネルギー庁新エネルギー課 2030年に向けた今後の再エネ政策
洋上風力発電
洋上風力発電は、2021年末で発電量が51.6MW、26基となっています。(注1)
洋上風力発電については、2020年7月に経済産業省と国土交通省が「洋上風力の産業競争力強化に向けた官民協議会」を開催しています。この協議会の目的は、洋上風力発電の導入拡大、関連産業の競争力強化を官民一体となり進めることです。(注2)このような取り組みによって、2030年のエネルギーミックスでは、洋上風力発電導入量を107億kWhまで増やすことを目指しています。(注3)
日本には広い海域があることから、洋上風力発電には大きな将来性が見込まれています。日本の国土は世界61位であり、地形も複雑であるため陸上風力発電の適地を探すことが困難ですが、日本の領海と排他的経済水域を合わせた領海の面積は世界6位と広大なため、今後は洋上風力発電の利用促進が期待されているのです。(注4)
洋上風力発電ではプロペラ型が使われています。見える部分での大きな違いはありませんが、海の水深によって設置方法が異なります。洋上風力発電には、大きく分けて2つの設置方法があります。
着床式
・水深が50m以下の浅い海で用いられる方法
・風車の基礎部分を海底に埋め込み固定し、設置する
浮体式
・水深が50m以上の深い海に用いられる方法
・風車を船のように海上に浮かせ、海底に固定したロープに繋ぐ
・着床式に比べコストが高い
現在、洋上風力発電の多くにコストが安い着床式が用いられています。(注5)
(注1)参考:JWPA 一般社団法人日本風力発電協会 2021年末日本の風力発電の累積導入量:458.1万kW、2,574基
(注2)参考:WWFジャパン 日本の風力発電の現状と将来像
(注3)参考:資源エネルギー庁 日本のエネルギー 2021年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」
(注4)参考:JICE 一般財団法人 国土技術研究センター 国土を知る / 意外と知らない日本の国土
(注5)参考:関西電力グループ 風力発電のメリットは?課題は?普及に向けたポイントも解説
世界での風力発電の現状
世界の風力発電の現状はどのようになっているのでしょうか。2021年に、最も風力発電導入量が多かったのは中国でした。中国は、世界の風力発電導入量の約40%を占めています。そして、2位は約16%を占めたアメリカとなっています。
風力発電の取り組みは欧州でも盛んに行われており、2021年の世界での風力発電導入量は8億2,487万kWとなりました。(注1)
2020年、世界での陸上風力発電における新規の年間設備容量は105GWでした。2030年には、310GWに増加すると見込まれています。洋上風力発電での、2020年の新規年間設備容量は6GWとなりました。2030年には、80GWに増加すると見込まれています。(注2)
発電量に対するコストを表す均等化発電原価(LCOE)を地域別に見ると、陸上発電ではアメリカ、洋上発電では欧州や中国が、それぞれほかの地域に比べて低くなっています。
ここでは、中国、アメリカ、欧州での風力発電の現状について解説します。
(注1)参考:資源エネルギー庁 第3節 一次エネルギーの動向
(注2)参考:JETRO 陸上は中国・米国、洋上は欧州で、風力の導入進む
中国での風力発電の現状
中国は2021年の風力発電導入量が世界で最も多い328,973MWでした。中国では、発電事業者に対する政府からの補助が2020年末までであったことから、風力などの再生可能エネルギーの導入が急速に進みました。そのため、大規模発電設備のある北部や西部と、電力の消費地である東部の沿岸部を繋ぐ送電網が必要となりました。
しかし、急速に再生可能エネルギーの導入が行われたことで送電能力不足が起こり、十分に電気が利用されない「棄風」や「棄光」(利用されない風力発電や太陽光発電での電力)が問題となりました。近年、これらの問題は解消されつつあり、風力発電などの導入設備の有効活用が進んでいます。(注1)
中国では、海抜約5,100mという標高の高い場所に大型風車の設置を行いました。これは、世界最高記録となる標高です。高地であるため、風況はよさそうですが、空気の密度が海面の約半分であるため、発電量は不利となっています。(注2)
(注1)参考:JETRO 陸上は中国・米国、洋上は欧州で、風力の導入進む 今後稼働予定の大型プロジェクトと日本企業の進出(2)
(注2)参考:JWPA 一般社団法人日本風力発電協会 風力発電の設置標高の世界記録が更新されました/中国チベット 約5100mで風力発電所が連系
アメリカでの風力発電の現状
アメリカでは、2035年までにクリーンな電力を100%供給することを目指し、再生可能エネルギーの導入を進めています。その中で、風力発電の普及に向けた取り組みを強化するとともに、風力発電施設のタービンを安価で効率的なものにするための技術向上が期待されています。
バイデン政権では電力部門の脱炭素化を公約に掲げ、洋上風力発電などへの補助金を活用し、再エネの開発を推進しています。2020年に設置された新規発電容量のうち、風力発電の容量が最も多く42%となりました。さらに、洋上風力発電のパイプラインも24%増加したことなどによって、多くの雇用も支えられています。
アメリカでの風力発電は、16の州で総発電量の10%以上を占めており、特にアイオア州では57%を風力発電が占めています。(注1)(注2)
(注1)参考:国立研究開発法人 国立環境研究所 アメリカエネルギー省、風力発電の記録的な成長とコスト削減を示す新たな報告書を発表
(注2)参考:JETRO 米エネルギー情報局、2022年の発電量の再エネ比率が22.5%に拡大と予測
欧州での風力発電の現状
欧州では、2022年に「洋上風力およびグリーン水素に関する協力協定」が締結され、複数の加盟国で風力発電地帯や送電網を組み合わせたハイブリットな洋上風力提携事業を共同で開発し、北海地域(ドイツ、デンマーク、オランダ、ベルギー)を「欧州のグリーン電力発電所」として、グリーン電力の供給をするとしています。
北海地域の4カ国では洋上風力発電の発電容量を、2030年までに65GW、2050年までに150GWに拡大させることを目標としています。北海地域での150GWは、2022年の発電能力の10倍に相当します。(注1)
特に、洋上風力発電が盛んなデンマークでは、年間発電電力量に占める自然エネルギーの割合が約84%にもなり、そのうち風力発電が55%にも達しています。風力産業も盛んに行われ、世界で稼働している風力タービンの3台のうち1台、洋上風力発電では10台のうち9台がデンマークの技術やノウハウによって生産されています。(注2)(注3)
(注1)参考:JETRO ドイツ、デンマーク、オランダ、ベルギー、北海における風力発電と水素分野での協力協定を締結
(注2)参考:ISPE 環境エネルギー政策研究所 2022年の自然エネルギー電力の割合(暦年・速報)
(注3)参考:デンマーク王国大使館 エネルギーおよびグリーン・テクノロジー
風力発電に対する取り組み
日本では、2030年度のエネルギーミックスに向けて、風力発電の発電量を陸上で302億kWh、洋上で107億kWhを目指すための取り組みが行われています。
エネルギー政策の方針であるエネルギー基本計画や、洋上風力発電の促進のための再エネ海洋利用法などにより、風力発電の導入を強化し、さらに安全面や環境への影響を最小化する政策も進めています。
日本での、風力発電の取り組みについて解説します。
日本のエネルギー政策の方針である「エネルギー基本計画」
日本では、2050年のカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出を吸収することで実質ゼロにすること)達成に向けた「エネルギー基本計画」があります。この計画の目的は、大きく分けて二つあります。一つは、気候変動への対応として2030年に温室効果ガスであるCO2を46%削減(2013年度比)すること、さらに50%の削減目標に挑戦を続けるとしています。
もう一つの目的は、日本のエネルギー構造が抱える問題の克服です。気候変動への対応を進めながら、安全性(Safety)の確保を大前提として、気候変動対策を進めると同時に、安定供給(Energy Security)の確保やエネルギーコスト(Economic Efficiency)の低減、環境適合(Environment)を同時に実現する政策である「S+3E」の達成に向けた取り組みを進めることです。
そして、2030年のエネルギーミックスの野心的な見通しでは、電源構成の36〜38%を再生可能エネルギーとすることが目標とされ、そのうち風力発電の割合目標は5%とされています。
(注1)(注2)
(注1)参考:経済産業省 資源エネルギー庁 エネルギー基本計画の概要
(注2)参考:経済産業省 知っておきたい経済の基礎知識~S+3Eって何?もっと知りたい!エネルギー基本計画③ 再生可能エネルギー
洋上風力発電を促進するための「再エネ海域利用法」
2019年4月から施行された、再エネ海域利用法(海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律)は、海外でコスト低下が進み、再生可能エネルギーの最大限の導入と国民負担の抑制という観点から重要である洋上風力発電の導入に対し、次の3つの課題を解決するために成立した法律です。
【課題1】海域の占用に関する統一的なルールがない
都道府県の許可は通常3~5年と短期なため、十分な事業期間を確保できませんでした。そのため、国が洋上風力発電が可能な促進区域の指定、公募を行い事業者を選定することや、長期占用(30年)を可能にするための制度を設けました。
【課題2】先行利用者との調整の枠組みが存在しない
海運や漁業関係者など、先行利用者との調整に係る枠組みがなかったため、利害関係者による協議会の設置や区域指定の際に関係省庁と協議するなど、事業者の予見可能性の向上や負担の軽減に向けた取り組みを行います。
【課題3】高コスト
欧米に比べFIT価格が高額であり、国内の経験事業者が不足しているため、事業者を公募、選定することで競争を促しコストの低減を目指します。
日本での再生可能エネルギーの主電源化に向けた取り組みとして、これらの対策により洋上風力発電の導入促進が行われています。(注1)(注2)
(注1)参考:資源エネルギー庁 洋上風力発電関連制度
(注2)参考:洋上風力の産業競争力強化に向けた官民協議会 洋上風力産業ビジョン(第1次)概要
一大産業へと育成する「洋上風力産業ビジョン」
洋上風力発電は、大量導入やコストの低下が可能であり、経済波及効果も期待されることから、再生可能エネルギーを主電源化するために重要なエネルギー源とされています。
さらに、事業規模が数千億円であることや、構成する機器や部品点数の多さからも関連企業への経済効果が高く、雇用にもつながるのです。
洋上風力産業ビジョンの基本戦略は、次の3つです。
- 魅力的な国内市場の創出
- 投資促進・サプライチェーン形成
- アジア展開も見据えた次世代技術開発、国際連携
これらの基本戦略により、3つの目標を目指します。
- 2030年までに洋上風力発電導入量1,000万kW、2040年までに3,000万kW~4,500万の案件を形成する
- ライフサイクル全体(部品製造、調査、建設、運用、メンテナンス、撤去)の国内調達比率を2040年までに60%にする
- 着床式発電施設のコストを2030年~2035年までに8~9円/kWhに低減させる
これらの取り組みによって、産業の競争力強化と国内産業集積やインフラ環境整備を官民一体となって進めることで、2050年のカーボンニュートラルの実現に向け、洋上風力発電の導入拡大が期待されています。
参考:洋上風力の産業競争力強化に向けた官民協議会 洋上風力産業ビジョン(第1次)
これからの生活に重要な風力発電
風力発電は、今後の生活や環境のために重要なエネルギー源となるでしょう。
特に日本では、広い海域があるため洋上風力発電の大量導入による発電が期待されています。そのために、さまざまな技術開発、コストの低減、法整備が行われており、今後の導入拡大が期待されます。
地球温暖化を防ぎ、カーボンニュートラルを目指すためにも再生可能エネルギーである風力発電はとても重要なのです。

身近なアイデアを循環させて、地球の未来をつなげていきましょう。皆さんと一緒に取り組んでいけたら幸いです。