太陽光発電の仕組みや課題、世界の現状について解説

太陽光発電の仕組みや課題、世界の現状について解説

2023.09.29(最終更新日:2024.06.19)
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2015年9月に持続可能な開発目標である「SDGs」 が国連で採択され、同年12月には温室効果ガスの排出量と吸収量の均衡により、温室効果ガスの削減を目指す「パリ協定」が発効されました。
脱炭素社会、持続可能な社会の実現のため、世界中で温室効果ガスの排出が少ない再生可能エネルギーの重要性が高まっています。
家庭でも屋根などで太陽光発電を行い、電力を自家発電で賄う家庭や、大規模な太陽光発電施設での太陽光発電など多くの場所で太陽光発電が行われています。
本記事では、太陽光発電の仕組みやメリット、デメリット、そして日本と世界の太陽光発電の現状について解説します。

太陽光発電は代表的な再生可能エネルギー

近年、耳にする機会が増えた再生可能エネルギーとは、石炭や石油といった化石燃料ではなく、自然界の枯渇しない資源である太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスによって得られるエネルギーです。これらの再生可能エネルギーは、温室効果ガスであるCO2の排出量が少なく、枯渇しないため自然に優しいというメリットがあります。
再生可能エネルギーの中で、もっとも普及している太陽光発電は多くの国が導入し、化石燃料や原子力など環境への負荷が大きいエネルギー源からの供給を減らす動きが進んでいます。
日本では、菅元首相が2020年10月に「2050年にカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と表明したことで、日本全体でカーボンニュートラル実現への動きが活発になりました。

太陽光発電の仕組み

1年間に地球で得られる太陽エネルギーは、石炭に換算すると約90兆トン分といわれ、世界のエネルギー消費量の3万倍にもなります。(注1)この太陽光を利用し発電する太陽光発電は、1839年にフランスの学者が金属の板に太陽光を当てると電気が発生すると発見したことから始まりました。
日本では1955年に初めて太陽電池が作られ、1958年には太陽光発電システムとして実用化が始まっています。

太陽光発電の仕組みについて解説します。
太陽光パネルは、ー(マイナス)電子を帯びやすいn型半導体と、+(プラス)電子を帯びやすいp型半導体を張り合わせ、それぞれ電気が流れる導線で結ばれています。太陽光パネルに太陽光が当たると、n型半導体に電子(-)、p型半導体に正孔(+)が集まり、それらが導線を伝って電子(-)が正孔(+)に移動します。この流れを利用して電気を取り出すことが太陽光発電の仕組みです。(注2)

太陽電池には種類がいくつかあり、大きく分けてシリコン系、化合物系、有機系の3つがあります。現在一番多く使われているのが、最も古くからあるシリコン系の太陽電池です。(注3)

電力の大きさ(出力)は「W=ワット」「kW=キロワット」(kW=1000W)という単位で表されます。
kW=瞬間的に流れる電気のエネルギー(電力)
kWh=kWに時間をかけたもの(電力量)
例えば、200Wのパネルを15枚使用した場合の総出力は、200×15=3000W=3kWとなります。
総出力は太陽電池の「設置容量」、または「容量」と言います。(注1)(注2)

太陽光電池の最小単位を「セル」、セルを複数組み合わせパネル状にしたものを「モジュール」、モジュールを複数組み合わせたものを「アレイ」といいます。(注3)

(注1)参考:クール・ネット東京 東京都地球温暖化防止活動推進センター 太陽光発電システム(太陽光発電の基本的な仕組みと周辺機器)
(注2)参考:環境省 はじめての再エネ活用ガイド(企業向け)
(注3)参考:JPEA 太陽光発電協会 用語集

(注1)参考:TEPCO 東京電力リニューアブルパワー 太陽光発電
(注2)参考:関西電力 おとなも学べる!教えて!かんでん
(注3)参考:産総研 太陽光発電技術 

一般家庭での太陽光発電について

住宅用太陽光発電とは、屋根やカーポート上に設置した太陽光パネルによって発電した電気を、接続箱およびパワーコンディショナを通して分電盤に送るシステムです。(注1)

家庭用太陽光発電の基本的なシステム構成機器は次の7つです。

構成機器 説明
太陽光パネル 太陽光を受けて直流電量を発生させる
パワーコンディショナ 直流電力を交流電力に変換する装置
接続箱 太陽光パネル同士をつなぐ配線を1本にまとめパワーコンディショナに送るための装置
分電盤 電気を分配する装置(ブレーカー)
電力計 電力会社に売った電力や買った電力を計量するメーター
蓄電池 電気をためる装置
発電量モニタ 発電量や消費電力量を表示する装置

住宅の屋根に設置できる太陽光発電のシステム容量(太陽光パネルがどれだけ発電できるかを表す数値)1kWあたりの1日の発電量は2.7kWhが目安となっています。一般家庭での太陽光パネルのシステム容量は3〜5kWなので、1日の発電量の目安は8.2〜13.7kWhとなります。
東京電力グループの一般家庭モデルでの1カ月あたりの平均使用電力量は260kWh、1日あたり8.7kWhとなります。この数値は夜間の使用電力量も含まれるため、太陽光発電が稼働する昼間だけの使用電力量であれば、システム容量3kW未満でも昼間の使用電力量をまかなうことが可能と計算できます。
しかし、太陽光は天気や日照時間に左右されるため、地域や季節によって発電量が異なることを理解しておく必要があるでしょう。(注2)

住宅用太陽光発電システムでのCO2削減効果は、4kWの太陽光発電をする住宅8棟分が東京ドーム1個分の森林面積に相当します。(注3)

(注1)参考:JPEA 太陽光発電協会 住宅用太陽光発電システムとは
(注2)参考:TEPCO 東京電力エネジーパートナー 太陽光発電の1日の発電量は?季節・地域別の発電量、シミュレーション方法も解説
(注3)参考:JPEA 太陽光発電協会 住宅用システムのメリット

産業用太陽光発電について

産業用太陽光発電とは、容量が10kW以上の発電システムを指します。ビルなどの屋上に設置された太陽光パネルから、広い土地を利用し、多くの発電を行う大規模な太陽光発電施設まで、さまざまなものがあります。国内最大規模の太陽光発電所である、作東発電所は約400ha(東京ドーム87個分)の面積で、発電出力は257.7Mw(257,700kW)となっています。(注1)

産業用太陽光発電での必要機器は次のようなものがあります。

構成機器 説明
電池アレイ 直並列接続された複数の太陽電池モジュールを機械的、電気的に架台に取り付けた太陽電池
太陽電池モジュール(PV) 太陽光を受けて直流電量を発生させる
太陽電池架台 太陽電池を所定の傾斜角を持って取り付けるための架台
鋼やアルミ合金製であることが多い
屋根建材型の太陽電池では、不要になることがある
接続箱 太陽光パネル同士をつなぐ配線を1本にまとめ、パワーコンディショナに送るための装置
パワーコンディショナ 直流電力を交流電力に変換する装置
分電盤 電気を分配する装置(ブレーカー)
買電用変電設備 電力会社からの商用電力系統を受電し、必要に応じて低圧の動力電源、電灯電源に変換する設備
買電用積算電力量計 電力会社からの買電量(需要電力量)を測定するための電力量計
売電用積算電力量計 発電した電力を商用電力系統へ売電する時の売電量を測定するための電力量計
PAS 高圧気中負荷開閉器のことで、架空引込方式の場合の配電線路の分岐・区分用開閉器

産業用太陽光システムの設置形態には、地上設置型太陽光システム、営農型太陽光発電システム(ソーラーシェアリング)、水上設置型太陽光発電システム、屋根設置型太陽光システムがあります。(注2)

産業用の太陽光発電は全国的に導入が増える一方、場所によってはさまざまな問題が発生しています。そのため、令和2年から大規模な太陽光発電事業(4万kW以上の太陽光発電事業、または3万kW以上4万kW未満の太陽光発電事業)に関しては「環境影響評価法」の対象事業となりました。
環境影響評価は、その事業内容が環境にどのような影響を及ぼすかについて事業者が調査、予測、評価を実施し、その結果を公表して住民や地方公共団体などから意見を聴き、環境保全の観点からよりよい事業計画を作ることを事業者に促す制度です。
太陽光発電の問題には、次のようなものがあります。

景観
太陽光パネルによって良好な景観が変わることや、景色が見えなくなる可能性がある

濁水
雨が降った際に、濁水が事業区域外に流出する可能性がある

反射光
太陽光パネルからの反射光がまぶしいという問題が起こる可能性がある

工事に関する粉塵、騒音、振動
工事の際に騒音、粉塵、振動が発生し、事業区域外周辺の環境に影響を及ぼす可能性がある

生態系
重要な動植物が生息、生育する場所が消失や縮小することで、環境が変わり影響を与えてしまう可能性がある

土地の安定性
調査や検討が不十分だと、法面の崩壊などにつながるおそれがある

自然とのふれ合いの活動の場
自然とのふれあいの場が、消失や縮小することで快適性や利用性に影響を与える可能性がある

環境影響評価は、対象ではない小規模の太陽光発電施設の設置においても、発電事業者などの自主的な環境配慮の取り組みを促すものとなっています。また、小規模な太陽光発電施設では、環境への配慮の在り方を紹介した「太陽光発電の環境配慮ガイドライン」が設けられています。
(注3)(注4)

(注1)参考:パシフィコ・エナジー株式会社 ABOUT 太陽光発電の紹介
(注2)参考:JPEA 太陽光発電協会 産業用太陽光発電システムとは
(注3)参考:環境省 太陽光発電の環境配慮ガイドライン
(注4)参考:環境省 第7節 環境影響評価 1 環境影響評価の総合的な取組の展開

太陽光発電のメリット・デメリット

世界中で脱炭素社会の実現を目指す動きが活発になり、太陽光発電の設置を義務化する地域も出てきています。一般家庭でも太陽光発電設備が増加しており、エコやCO2の削減などへの関心が高まっています。
しかし、太陽光発電は天候や日照時間などによって発電量が変わる変動制再生可能エネルギー(VRE)です。
ここでは、太陽光発電を利用することのメリット、デメリットを解説します。

4つの太陽光発電のメリット

太陽光発電が増加している理由として、環境や家計に対するメリットが大きいということがあります。
実際に、どれくらいの影響があるのか、太陽光発電での環境や家計へのメリットについて4つ解説します。

二酸化炭素の排出が少なく、環境に優しい
化石燃料を使用する火力発電でのCO2の排出量は1kWhあたり約690g、太陽光発電によるCO2の排出量は1kWhあたり17〜48gといわれています。
家庭での太陽光発電では、3kW〜5kWの太陽光発電システムの使用が一般的です。3kWの太陽光発電システムでの年間発電量は、3000kWhとされており、年間1,950kgのCO2の排出量を減らすことができる計算になります。1,950kgのCO2は、杉の木約140本分の吸収量に相当します。(注1)

自家消費で電気代が安くなる
自家消費とは、自家発電した電気を自宅で使用することです。平均的な戸建て住宅の太陽光発電による自家消費では、年間5万7000円相当の電気代が安くなると計算されています。

売電収入を得ることができる
売電収入とは、太陽光発電で自家発電し、自家消費した後の余剰電力を電力会社に売ることで得られる収入です。この制度をFIT制度(固定価格買取制度)といいます。
太陽光発電1kWhあたり16円(2023年)で太陽光発電の設置から10年間、固定価格での買取が国により保証されています。

災害時の停電対策として使用できる
災害などの停電時でも、太陽光発電設備で発電している日中は電気を使用することができます。
一般家庭での平均電気使用量は約8.7kWhであり、家庭用の太陽光発電量が8.2〜13.7kWhであるため、節電が必要となる可能性はありますが、問題なく電気の使用ができるのです。(注2)

(注1)参考:クール・ネット東京 :東京都地球温暖化防止活動推進センター 太陽光発電システム(太陽光発電システムとは)
(注2)参考:EV DAYS 東京電力エナジーパートナー 暮らしの電化 太陽光発電のメリット・デメリット 
大きな三角屋根の家に設置された太陽光パネル

4つの太陽光発電のデメリット

技術開発が進み、環境にも家計にもメリットがある太陽光発電が100%普及しないのはなぜでしょうか。
太陽光発電は、太陽光がパネルに当たることで発電するため、夜間や悪天候の場合には発電が難しいことや、初期費用やメンテナンス費用が発生するというデメリットを理解しておく必要があります。
ここでは、太陽光発電の4つのデメリットについて解説します。

高い設置コスト
2021年の太陽光設備の設置費用は、1kWあたり約28万円でした。家庭用の屋根には3〜5kWの容量の太陽光パネルが設置されることが多いため、初期費用は84〜140万円ほどかかると計算されます。
しかし、太陽光発電に対する行政からの補助金や、各種サービス、また、太陽光発電の設置費用は年々下がっていることから、以前よりも初期費用を抑えることが可能になっています。
家庭ごとに使用電力量が異なるため、設置後の使用電力量や売電収入なども事前にしっかりと確認しておくことが必要です。

メンテナンス費用が必要
太陽光発電を設置した場合、初期費用のほかにメンテナンスや部品交換の費用が発生します。ただし、太陽光発電のソーラーパネルは、長い保証期間があり約20年間は使用できると考えられます。パワーコンディショナは、15年程度での交換が目安となっています。
また、メンテナンスなどのアフターサービスについても、設置者が行えるものと、専門の業者に依頼するべきものがあるため、設置業者への確認なども必要になります。

発電量が天候により変動する
太陽光発電に欠かせない太陽光は、悪天候や日照時間の少ない季節などによって変動するため、毎日同じ発電量を得ることはできません。また、太陽光のない夜間に発電できないこともデメリットです。

屋根の構造や場所によっては設置ができない
家庭での太陽光パネルは、多くが屋根の上に設置されます。しかし、住宅の築年数、屋根の材質、屋根の向きによっては設置が難しいことがあります。

参考:EV DAYS 東京電力エナジーパートナー 暮らしの電化 太陽光発電のメリット・デメリット 

太陽光パネルのゴミ問題

日本での太陽光発電は、2012年に電気の固定価格買取制度(FIT制度)が導入されたことで、加速度的に増加しました。
しかし、太陽光パネルの寿命は約25〜30年とされているため、2040年頃には太陽光発電設備から太陽光パネルを含む廃棄物が出ると予想されています。
太陽光パネルの適正な廃棄のための取り組みについて解説します。

事業者がきちんと廃棄できる仕組みを作る
ソーラーパネルの廃棄処分は発電事業者や解体事業者が責任をもって行うことが原則です。そのため、FIT制度の再生可能エネルギー買取価格には、廃棄に必要な費用が盛り込まれています。
さらに、FIT制度の強化が検討されており、具体的には、FIT制度の認定を受けた事業者に、廃棄などの費用の積立計画、進捗状況の報告を義務化し、公表するとともに、必要に応じて報告徴収、指導、改善命令を行うことが検討されています。

情報不足を解消して有害物質を適正に処理する
これまで、有害物質を適正に処理するための情報不足が課題となっていました。そのため、2017年太陽光発電協会が「使用済太陽電池モジュールの適正処理に資する情報提供のガイドライン」を策定しました。このガイドラインに基づき、太陽光パネルメーカーや輸入販売業者が、産廃事業者などへ積極的に情報提供をおこなっていくことが望まれます。すでに、一部の事業者が対応していますが、今後はさらに多くの事業者の対応が求められています。

太陽光パネルのリユース・リサイクルの促進
現在、太陽光パネルの大量廃棄は起こっていないため、リユース、リサイクル、処分の実態が把握できていないのが現状です。
そのため、想定される廃棄物の量や、リサイクル、廃棄処理の費用、リサイクルされた材料の需要などを把握し、リサイクル制度の必要性や費用も含めた実態調査を、環境省・経済産業省が共同でおこなうことが求められています。

参考:資源エネルギー庁 2040年、太陽光パネルのゴミが大量に出てくる?再エネの廃棄物問題

日本と世界のエネルギーの現状

日本では、太陽光や風力などの再生可能エネルギーによる発電の割合が増加傾向にあります。また、一般家庭でも太陽光発電をおこなう家庭が増えています。
多くの国が化石燃料からの発電量を減らし、温室効果ガスの削減や再生可能エネルギーの割合を増やす取り組みをおこなっています。
ここでは、日本と世界のエネルギーの現状について解説します。

日本の太陽光発電の現状

日本では、太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入が進められています。2020年の再生可能エネルギーの比率は約19.8%となり、太陽光発電導入量(実際に運転が開始された発電設備の総容量)は中国の253GW(ギガワット)、アメリカの95GWに次いで世界3位の72GWとなっています。(1GW=1000,000kW)
2021年度、日本の太陽光発電の国内累積導入量は6,935万kWとなり、世界の太陽光発電導入量94,569万kWの約8%を発電しています。
2021年世界の累計太陽光発電設備容量の国別円グラフ。中国32.6%、アメリカ13.0%、日本8.3%など
日本でのエネルギー自給率は11.3%で、世界37位と低くなっています。それは、日本にはエネルギー資源が少ないことや、他国では水力発電が盛んに行われていることなどが原因と考えられます。

日本では、エネルギー需給の目標として2021年度の太陽光発電での電源構成割合8.3%を、2030年度のエネルギーミックス(さまざまな発電方法を組み合わせて電気を作ること)において、14〜16%まで増やすことを目指しています。
また、太陽光発電などの再生可能エネルギーを普及させるための支援制度(FIT・FIP制度)が導入され、リチウムイオン蓄電システム(太陽光発電からの余剰電力を蓄電する)の出荷台数が2019年度には11万台を超えました。このうち約9割が家庭用であることから、太陽光発電での余剰電力の自家消費率の向上が期待されています。(注1)(注2)

太陽光発電に使われる既存の太陽電池は壊れにくく、光から電力への変換率も高くなっていますが、材料や製造コストが比較的高いというデメリットがあります。
そこで、次世代の太陽電池材料としてペロブスカイト太陽電池が期待されています。
ペロブスカイトという結晶構造の新しい太陽電池であり、現在の太陽電池に匹敵する変換効率も達成しています。ペロブスカイト太陽電池により、現在の太陽電池よりも低価格で軽量な太陽電池の実現が期待されています。(注3)

(注1)参考:エネ百科【3-1-04】日本の太陽光発電導入量の推移
(注2)参考:資源エネルギー庁 日本のエネルギー エネルギーの今を知る10の質問
(注3)参考:国立研究開発法人 科学技術進行機構 ペロブスカイト型太陽電池の開発

アメリカの太陽光発電の現状

アメリカでは、2050年までに温室効果ガスの排出ネットゼロ(温室効果ガスの排出量から森林などへの吸収量と除去量を差し引いて実質ゼロにすること)の気候変動対策目標を掲げています。そのため、温室効果ガスの大半を占める化石燃料の燃焼による発電から、再生可能エネルギーなどへの転換が進められています。
その中でも、太陽光発電は主要電源になると予測されており、アメリカでは太陽光発電製品の需要が高まっています。しかし、太陽光発電製品のサプライチェーン(原料の調達から販売までの一連の流れ)が集中する中国に対し、アメリカが輸入規制の措置を講じているため深刻な供給不足になっています。(注1)

2021年、アメリカの太陽光発電導入量は、世界2位の95GWとなりました。
しかし、アメリカは温室効果ガスの排出量も多く、温室効果ガスの排出量の削減に向けた電力部門の脱炭素化、太陽光パネルなどのクリーンエネルギー関連施設の建設などの取り組みが行われています。これらの取り組みにより、アメリカでは2050年までに再生可能エネルギーの比率がトップの43.8%となり、構成比が次のようになると見込まれています。

電源構成 2021年 構成比 2050年 構成比予測
天然ガス 37.2% 34.1%
石炭 22.7% 9.6%
原子力 18.5% 12.2%
再生可能エネルギー 20.9% 43.8%

さらに、再生可能エネルギーのみの構成比は次のようになると見込まれています。

再生可能エネルギー 2021年 構成比 2050年 構成比予測
風力 43.0% 30.9%
水力 9.6% 12.1%
太陽光 18.7% 51.0%
バイオマス 4.6% 1.8%
地熱 1.8% 2.0%

これらの取り組みにより、2050年のアメリカでの総発電量の22.4%が太陽光発電となり、主要電源に成長する見通しとなっています。

(注1)参考:JETRO 再エネ推進を追い風に導入加速 米国太陽光発電需給逼迫(前編)

中国の太陽光発電の現状

国際エネルギー機関(IEA)の報告によると、中国は太陽光パネルの主要要素である、ポリシリコン、インゴット、ウエハー、セル、パネル/モジュールは、世界での生産能力の80%以上を占めています。ポリシリコンに関しては、中国・新疆ウイグル自治区だけで世界全体の40%に達しています。
さらに、建設中の生産施設も含めると、今後数年でポリシリコン、インゴット、ウエハーについては、中国のシェアが95%まで高まるとみられています。

中国では、産業政策として太陽光発電の市場拡大のための技術開発を行い、太陽光発電の生産コストを80%以上削減するなど、世界の太陽光発電に貢献しています。しかし、ポリシリコンの生産が停滞するなど、需要と供給のバランスが崩れたことや、物価上昇により2021年の太陽光パネルの価格は20%ほど上昇しました。
このようなことから、太陽光発電関連の生産機能の分散化が求められています。(注1)

2021年、中国の太陽光発電設備容量は2億5,000万kWとなり、6年連続で世界1位となっています。さらに、中国では「2030年までのカーボンピークアウト(温室効果ガスの排出量が減少傾向に転じること)に向けた行動法案」の目標として、2030年までに風力発電と太陽光発電の設備容量を12億kW以上にするとしています。(注2)(注3)

(注1)参考:JETRO IEA、太陽光パネル生産地の分散化を呼びかけ
(注2)参考:JETRO カーボンニュートラル達成に向けた中国政府、企業の対応状況
(注3)参考:JETRO 世界最大の再生可能エネルギー市場・設備製造国として、対外進出にも意欲

欧州の太陽光発電の現状

欧州では自然エネルギーによる発電の割合が高くなっています。変動制自然エネルギー(風力および太陽光発電)VREの割合がもっとも高いデンマークでは53%となっており、2020年の年間発電電力量における自然エネルギーの割合は74%となっています。
そのほかの欧州の国でも自然エネルギーでの発電量が高く、スウェーデンでは67%、ポルトガルでは62%、スペインでは46%、イタリアでは41%、ドイツでは40%となっています。
特に自然エネルギーの割合が高いデンマークでは、2020年に電力セクターで消費された電力量の50%がVREとなりました。デンマークでは、VREの供給が需要を上回る日もあり、余剰分は輸出されています。(注1)

EUではEU Solar Strategyを策定し、太陽光発電によって2025年までに320GW以上、2030年までに600GWを発電することを目標として設定しています。そのための取り組みは次のようなものです。

  1. 一定の規模以上の全ての新築と既築の公共ビルや商業ビルに太陽光発電設備の設置を法的義務として段階的に課す「European Solar Rooftops Initiative」
  2. 許認可手続きの簡素化、迅速化や大規模な公共調達の活用をする
  3. 農業利用と太陽光発電を組み合わせたagrizonや浮体式太陽光発電(水力発電所やダムに浮かべて行う太陽光発電)などの支援をするとともに、Horizon Europeにおける新規発案の技術開発支援などの導入支援を強化をする
  4. EU太陽光発電産業アライアンス(企業が同じ目標に向かい協力する経営)を立ち上げ、IPCEI(欧州共通利益に適合する重要プロジェクト)として、各加盟国からの支援を促進させる
  5. エコデザイン規制、Corporate Sustainability Reporting指令等の規制的措置により、環境への悪影響や強制労働等の問題を有する製品の欧州市場での販売を禁じるなど、健全な域内サプライチェーン発展を目指す(注2)

EU Solar Strategyの目標である、2030年までに600GW分の太陽光発電を目指す取り組みが進むと、2027年には年間90億立方メートル分の天然ガスの需要を置き換えることができるとされています。(注3)

(注1)参考:ISEP 環境エネルギー政策研究所 2021年の自然エネルギー電力の割合(暦年・速報)
(注2)参考:国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 欧州事務所 若林 節子 欧州におけるエネルギー関連政策の動向
(注3)参考:JETRO 「リパワーEU」計画を読み解く 気候変動対策から安全保障への転換(4)

太陽光発電に対する取り組み

日本では、化石燃料への依存を減らし、省エネや再生可能エネルギーへの転換が取り組まれています。
再生可能エネルギーの使用や、省エネへの対策を行う企業が増え、家庭でも、電気価格高騰の影響を考慮し太陽光発電を行うことや、節電を意識する人が増えています。
ここでは、日本での省エネ、再生可能エネルギーへの取り組みについて解説します。
青空の下、草原に並ぶたくさんの太陽光パネル

FIT・FIP制度

日本は石油や石炭などの化石燃料を持たない国であるため、再生可能エネルギーは、社会の維持と発展に不可欠なものです。
そこで、再生可能エネルギーを次世代の主力電源とするための取り組みとして導入されたFIT制度により、再生可能エネルギーの割合が大幅に拡大しました。
そして、FIT制度から自立し、競争力のある電力源となるよう、市場への統合を図る観点からFIP制度が新たに導入されました。
再生可能エネルギーの導入を促進するための、FIT制度とFIP制度について解説します。

FIT制度(フィードインタリフ制度)
2012年に導入されたFIT制度は、再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定期間(10年)固定価格で買い取る制度です。再生可能エネルギーの大量導入を促進することを目的として作られた再生可能エネルギー導入初期の制度であるため、将来的にはFIT制度などがなくとも、再生可能エネルギーの導入が進み、長期安定的な事業運営が必要とされています。
FIT制度は、すべての発電量に対し送配電事業者などによる固定価格での買取が保証されたものです。ただし、家庭用の発電システム(10kW未満)や、ビルの屋上や屋根での発電システム(10〜50kW)は、自家消費したあとの余剰分が買取の対象です。
FIT制度では、蓄電池の活用による需給と価格に応じた売電や、発電予測制度の向上などの再生可能エネルギーの発電事業の高度化、電気市場への統合を進めるなどの電力システムのコスト低減など、再生可能エネルギーのさらなる導入拡大への取り組みが進みづらいという課題がありました。

FIP制度(フィードインプレミアム制度)
2022年4月からFIT制度での課題を解決するため、FIP制度は再生可能エネルギーの自立化へのステップとして、電力市場への統合を促しながら投資の優遇が確保されることを支援する制度です。
電気を卸市場や相対(売り手と買い手が一対一で価格を決定する販売方法)で取引し、電力を売る際に一定のプレミアム(補助額)を上乗せするものです。FIT制度は需給量に関わらず一定の金額が発生しますが、FIP制度は市場価格に連動した金額となるため、再生可能エネルギーの価格競争や自立化が期待できるのです。(注1)(注2)

(注1)参考:資源エネルギー庁 再生可能エネルギーの主力電源化に向けて再エネのルールが変わります。
(注2)参考:資源エネルギー庁 再生可能エネルギー 動画でわかる!

エネルギー基本計画

エネルギー基本計画とは、エネルギー政策の基本的な方向性を示すためにエネルギー政策基本法に基づいて政府が策定するものです。
2021年10月に第6次エネルギー基本計画が閣議決定されました。

エネルギー政策では安全性を前提として、エネルギーの安定供給を第一に、経済効率の向上による低コストでのエネルギー供給を実現させると同時に、環境への適合を図るS+3E(安全性+安定供給・経済効率性・環境適合)(注1)の視点を重要としています。

エネルギー基本計画の主なテーマは次の2つです。

  1. 2020年に表明された「2050年カーボンニュートラル」や、2021年に表明された新たな温室効果ガス排出削減目標の実現に向けたエネルギー政策の道筋を示すこと
  2. 気候変動対策を進めつつ、日本のエネルギー需給構造が抱える課題の克服をするため、安全性の確保を大前提に安定供給の確保や電力コストの低減に向けた取り組みを示すこと

また、2050年のカーボンニュートラルを見据え、2030年に向けた政策対応として徹底した省エネのさらなる追及や、需要サイドでのエネルギー転換を後押しするための省エネ法改正などの制度的対応の検討、二次エネルギー(石炭や石油などの一次エネルギーを原料にして得られる電力)構造の高度化も行われています。(注2)
太陽光発電への取り組みとしては、太陽光発電に特化した技術基準の着実な執行と、小型電源の事故報告強化などによる安全対策の強化、地域共生を円滑にするための条例策定の支援などに取り組むとしています。(注3)

(注1)参考:資源エネルギー庁 日本のエネルギー 2021年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」
(注2)参考:独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構 一次エネルギーとは? 二次エネルギー、最終消費エネルギーとの関係性も解説
(注3)参考:資源エネルギー庁 エネルギー基本計画の概要

ゼロ・エネルギーな建物ZEH・ZEB

エネルギー基本計画では「2030年度以降新築される住宅について、ZEH基準の水準の省エネルギー性能の確保を目指す」とともに、「2030年において新築戸建て住宅の6割に太陽光発電設備が設置されることを目指す」とする政策目標が設定されました。
ZEH(ゼッチ)、ZEB(ゼブ)について、それぞれ解説します。

ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)
ZEHとは、家庭での消費エネルギーに対して、高断熱、省エネ設備機器での省エネと、太陽光発電などの創エネによって、エネルギー消費を実質ゼロにした住宅のことです。
2016年度から、企業が受注する住宅のうちZEHの割合を2020年までに50%以上にする目標を宣言・公言した企業(ハウスメーカーや工務店、リフォーム会社など)をZEHビルダーとして、公募、登録し屋号や目標値の公表を行ってきました。
そして、2021年度から、2020年度の実績に応じて、ZEH化率が50%以上の場合は75%以上を、50%未満の場合は50%以上を2025年度の目標として宣言・公表した新たなZEHホルダー制度の運用が開始されました。
2022年3月のZEHビルダーは4,722社となっています。(注1)

ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)
2021年10月に閣議決定された地球温暖化対策計画では、事務所ビルや商業施設などの建物における2030年度のエネルギー起源のCO2排出量を2013年度に比べ51%削減するという目標が設定されました。
そこで、建物で消費する年間のエネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物がZEBです。
ZEBにはゼロエネルギーの達成状況に応じて4段階のZEBシリーズが定義されています。

ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)
省エネ(50%以上)と創エネで、100%以上の一次エネルギー(自然界にエネルギーで加工されていないもの)消費量の削減をしている建物

Nearly ZEB(ニアリー・ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ニアリー ゼブ))
省エネ(50%以上)と創エネにより、75%以上の一次エネルギー消費量の削減をしている建物

ZEB Ready(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル・レディ(ゼブ レディ))
省エネで基準一次エネルギー消費量から50%以上の一次エネルギー消費量の削減をしている建物

ZEB Oriented(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル・オリエンテッド)
延べ面積10,000㎡以上で、用途ごとに規定した一次エネルギー消費量を削減し、さらに省エネに向けた未評価技術(WEBPROにおいて現時点で評価されていない技術)を導入している建物
(注2)

(注1)参考:資源エネルギー庁 省エネポータルサイト 省エネ住宅 ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)
(注2)参考:環境省 ZEB PORTAL ZEBとは?

初期投資0円での太陽光発電を行うPPAモデル

PPA(Power Purchase Agreement)は電力販売契約のことで、第三者モデルとも呼ばれています。PPAは、企業や自治体が保有する施設の屋根などを事業者が借り、初期投資0円で発電設備を設置し、発電した電気を設置場所の施設で利用することで電気料金とCO2の排出量の削減をするものです。
電気設備の所有は、事業者や出資者が持つため、資産保有をすることなく再エネ利用が実現できるのです。
PPAは、初期費用が不要で電気料金とCO2の削減を行えますが、デメリットとして、契約期間があることや、売電収入を得ることができないなどのデメリットがあるため、事前に確認が必要です。(注1)

(注1)参考:環境省 再生可能エネルギー導入方法 PPAモデル

太陽光発電はこれからの重要なエネルギー源

太陽光発電は、環境への配慮や設置場所の確保、太陽光パネルの廃棄やリサイクルなどの問題があります。また、初期費用が高額であるため、なかなか導入できないという家庭もあるでしょう。
しかし、世界中で、再生可能エネルギーの割合を増やすことは地球温暖化や、化石燃料の枯渇といった問題の解決につながるのです。地球温暖化の原因となる温室効果ガスの排出が少ない太陽光発電は、石油や石炭を持たない日本において、これからのエネルギー源として特に重要なものとなるでしょう。

この記事の執筆者
EARTH NOTE編集部
SDGs情報メディア
「SDGsの取り組みを共有し、循環させる」がコンセプトのWEBメディア。SDGsの基礎知識や最新情報、達成に取り組む企業・自治体・学校へのインタビューをお伝えし、私たちにできることを紹介します。
身近なアイデアを循環させて、地球の未来をつなげていきましょう。皆さんと一緒に取り組んでいけたら幸いです。
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