地域活性化の目的と魅力ある町づくりの方法。教訓と成功した取り組みを紹介

地域活性化の目的と魅力ある町づくりの方法。教訓と成功した取り組みを紹介

2023.06.15(最終更新日:2024.06.25)
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地方では人口減少と若者が都市部へ流れてしまうことで、経済が停滞し過疎化が進んでいます。この現状を打破するために地域活性化という取り組みが生まれました。
この取り組みは、SDGs目標11の「住み続けられるまちづくりを」にもつながり、持続可能な世界をつくるためにも乗り越えなければいけない課題です。

しかし、人を集めて活気ある町づくりのために沢山の自治体が地域活性化に取り組んでいますが、成功することもあれば失敗することもあります。

取り組む前に知っておきたい地域活性化の概要と教訓にすべき失敗事例、お手本となる成功事例を紹介します。
これから地域活性化の取り組みを検討している人は、取り組む前に注意すべき点と参考となる成功事例をもとに施策を検討しましょう。

地域活性化とは?必要な理由は人口問題

地域活性化に明確な定義はありません。しかし、理念は2014年から取り組みが開始された「まち・ひと・しごと創生法」に基づいています。
「まち・ひと・しごと創生法」とは名前の通り「まち」と「ひと」と「しごと」の3つの柱を中心に活気のある町づくりを目指すことです。別の呼び方で「地方創生」という言葉があります。

「まち」とは、一人ひとりが夢や希望をもって豊かで潤いのある生活を継続して営める地域社会をつくることです。
「ひと」は、上記のような地域社会を作るために必要な人材を確保することを目的としています。
「しごと」とは、地域での魅力ある仕事に就ける機会を作り出すことです。

現在「まち・ひと・しごと創生法」は廃止され「まち・ひと・しごと創生総合戦略」と変わりましたが、基本的な理念は変わっていません。まち・ひと・しごと創生総合戦略の第一期で基本的な理念が考えられ、2020年から第二期がスタートして本格的な取り組みが進んでいます。

地域活性化の基になった「まち・ひと・しごと創生法」の基本理念は以下の7項目です。

  • 一人ひとりが魅力ある地域社会で豊かな生活を送れるように各地方の実情に合わせた環境づくり
  • 日常生活と社会生活の基盤となるサービスを継続的な需要と供給のバランスを考慮しつつ、住民にかかる負担も考えて、さらに事業者と住民の理解と協力を得ながら今も未来も提供し続ける
  • 結婚・出産は個人の自由であることを前提として、希望をもって結婚・出産・育児を検討できる社会となるように環境を整備
  • ワークライフバランスを推進できる環境を整える
  • 地域ごとの特性を生かした仕事づくりを推進して事業活動を活性化させ、魅力ある就業の機会を作り出す
  • 各地域の現実と向き合いながら、地方公共団体が協力し合って効率的かつ効果的な行政運営を続ける
  • 国・地方公共団体・事業者がお互いに連携をはかりながら協力する努力をする

これらの基本理念に基づいて、さまざまな取り組みが行われており、このような各地方での取り組みのことを「地方創生」または「地域活性化」と呼んでいるのです。

地域活性化が必要とされた背景として「地域の人口が減少した」「東京などの都市部に人口が集中している」「地域と都市部の経済格差」があげられます。これらの問題から少子高齢化で人口そのものが減少し、さらに若者が都心部に集まることで人口密度の格差も生まれ、現在までさまざま問題が発生しています。
こうした問題への解決策として考えられたのが地域活性化です。

出典:首相官邸まち・ひと・しごと創生法の概要

人口が減少した

地域活性化が重要視されるようになった原因の1つに人口減少問題があげられます。
総務省のデータによると、1950年から2019年までの間で日本の人口は減少傾向であり、2010年以降は人口増減率がマイナスになっています。日本は9年連続で人口が減り続けており、総人口はマイナス27万6千人、働き手となる15~64歳の割合は59.5%で過去最低を記録しました。

都道府県別では、人口が増えたのは東京都、沖縄県、埼玉県、神奈川県、愛知県、滋賀県、千葉県の7県のみです。残りの40県はすべてマイナスの結果となっています。さらに愛知県、滋賀県、沖縄県以外の44県で、75歳以上の人口が15歳未満の人口を上回り、未来の働き手の割合が全国レベルで減少傾向となっているのです。

出典:総務省統計局人口推計(2019年(令和元年)10月1日現在)

人口増減率:今年の人口が去年と比較してどの程度変化したかをみるもの。たとえば、去年が100人で今年は105人の場合、人口増減率はプラス5%となります。

都市部に人口が集中している

地方の人が都市部へ移り、人口密度に格差が生まれてしまっているのが問題視されています。
2021年で他の都市から引っ越してくる人数が多いのが47都道府県の中で東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県、群馬県、茨城県、山梨県、滋賀県、大阪府、福岡県の10県のみでした。残りの37道府県は他県へ出て行ってしまう人数が他県から引っ越してくる人数よりも多く、地方の人口が減り続ける要因になっています。

他県から引っ越してくる人数が多い都道府県は、東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)と名古屋圏(愛知県、岐阜県、三重県)と大阪圏(大阪府、兵庫県、京都府、奈良県)の3大都市周辺に集中しています。
2021年時点で3大都市周辺に引っ越した人口は6万5873人、過去の推移と比較すると全体的な数は減少傾向ですが、都市部に人が集まり続けている事実は変わりません。

出典:総務省統計局住民基本台帳人口移動報告2021年(令和3年)結果

転入超過:引っ越してくる人口が他県などへ出ていく人口よりも多いこと。
転出超過:他県などから引っ越してくる人口よりも出ていく人口のほうが多いこと。

地域と都市部で経済格差が生じる

地方よりも都市部の方が経済的にも勝っています。2015年の東京圏の平均所得は386万8000円に対して、東京圏以外の都道府県では312万円と地方の所得の方が94万8000円低い結果となっています。

財政力を測る財政力指数は、需要に対して十分な収入があるとされているのは東京都のみで、次に需要に対して7割から9割程度の収入がある都道府県は愛知県、神奈川県、大阪府、千葉県、埼玉県の5府県です。その他の41都道府県は需要に対して収入が7割以下と財政難と見なされる数値です。
とくに低いのは3割を下回っている鳥取県、高知県、島根県で、深刻な財政難に陥っています。

このように地域と都市部での経済的な格差が、地域の経済を停滞させる原因となっているのです。

出典:総務省地域・地方の現状と課題(令和元年)
出典:総務省都道府県財政指数表

地域活性化が目指している4つのこと

青空と山々を背景に、田んぼの真ん中に走る真っすぐな1本道
地域活性化に向けて、地域の特性や状況に応じたケースバイケースの取り組みが必要です。そのために日本が掲げている基本目標が4つあります。

  • 地域の特性を生かして生産性の高い雇用の機会をつくる
  • 地域に人が集まるようにすることで人の流れを作る
  • 地域で結婚・出産・子育てできるための支援をする
  • 人が集まり安全に暮らせる町づくり

これら4つの目標を達成して地方でも良い仕事と住みやすい環境を整えれば、人が都市部に行かなくても豊かに暮らせる町づくりができると考えています。

地域の特性を生かして生産性の高い雇用の機会をつくる

地域活性化のためには、その地域で暮らす住民が満足できる水準の収入を得る必要があります。都市部と比べて地方の平均所得は低く、出稼ぎのように都会へ引っ越すケースが多いのです。
この問題に対して、地方でも納得できる給料がもらえれば解決しますが、そのためには農業、林業、水産業、地域資源を生かしたサービスなどをはじめとする企業の生産性が向上し、経済を潤すことが重要です。
さらに観光業などの特性を生かせるような魅力や新しい事業の支援で経済を発展させるような取り組みも必要になります。

こうした地域独自の魅力を生かしつつ収益を見込める事業を実現して、労働者が安心して働ける環境づくりをすることで、地域活性化を促します。

地域に人が集まるようにすることで人の流れを作る

地方に移住したい人たちの積極的な受け入れや企業の移転を推進したりテレワークの導入をしたりすることで、地方から都市部へ移動しなくても仕事ができるようにします。さらに、若者が都市部へ流れていかないようにするためにも、大学などの教育機関の充実に力を入れることも重要です。

仕事に関しては関係人口で多くの人を巻き込めるように二地域居住などの多様なライフスタイルを持つ人たちの受け皿を用意します。そして、地域との接点を生み出し興味を持ってもらうことで人口の拡大をはかります。

関係人口:移住する人ほど接点はないが、仕事や地域内に親せきがいるなどの継続的な関係を持っている人たちのことです。
二地域居住:住居と職場のように2つの拠点を持つ人。平日は都市部で働いて、長い休みは地方でのんびりするといったライフスタイルのことを指します。
出典:関係人口ポータルサイト
出典:国土交通省二地域居住

出典:地方創生各府省庁の地方創生関連施策
出典:国土交通省ライフスタイルの多様化と関係人口に関する懇談会~関係人口と連携・協働する地域づくり~

地域で結婚・出産・子育てできるための支援をする

地域では、人口減少対策として育児支援やワークライフバランスの推進をはかっています。状況に応じた保育園の増加や育児休業の取り組みで、子育て世代が生活しやすい環境づくりを目指しています。
また、空き家や住民の高齢化が問題となっている住宅団地の再生をはかり、就業の機会を作るきっかけとして機能させるため住宅再生の支援も必要です。たとえば旧小学校の建物をオフィスにしたり空き家をリフォームして住居として再利用したりすることがあげられます。建物だけでなくバスなどの交通機関の整備や高齢化した住民のための介護施設、コミュニティバスを充実させる取り組みも魅力ある町づくりに必要です。

こうした環境を整えることで、子育て世代が安心して結婚・出産・育児ができるのです。

出典:地方創生【基本目標3】結婚・出産・子育ての希望をかなえる
出典:国土交通省住宅局住宅団地再生の手引き

人が集まり安全に暮らせる町づくり

地域活性化のための町づくりとして必要な要素が「安心」と「活気」です。そのために質の高い暮らしができる環境整備と地域資源を活用した個性ある町づくりのための取り組みが重要になります。
地方都市として利便性の高い町とするために、都市の中心部に必要な商業施設や公共施設を充実させるコンパクトシティ化を推進したり、インフラを整備したりすることで安心安全な町づくりを目指します。さらに、よくある地方として埋もれないようにするための地域資源をうまく活用した農業、林業、漁業などの産業と観光地域づくりも重要な取り組みです。

暮らしの質を高めたなら医療・福祉サービスの充実や災害に対する対策、通学路や生活路の安全の確保なども必要になります。
これらの取り組みを十分に行うことで、経済として活気があり安全に暮らせる環境が形成されます。

出典:地方創生各府省庁の地方創生関連施策

地域活性化の失敗事例と考えられる原因

地域活性化では成功させるための事例も必要ですが、まずは失敗しないための注意点を把握することも重要です。
成功事例は調べれば沢山あげられますが、それ以上に失敗している取り組みもまた沢山あることを知らないと損失を招く恐れがあるからです。
事例を参考にして失敗する原因と考えられるものは以下の3つになります。

  • 準備不足で事業を始める
  • ノウハウが不足した状態でショッピングモールを開発する
  • 地元の人と協力関係を築けず導入する

事例も取り上げつつ、施策をする前の注意点として教訓にしましょう。

準備不足で事業を始める

準備段階では十分に検討したつもりでもいざ実践すると準備不足だった、というケースで失敗する事例があります。山梨県南アルプス市の環境客の「完熟農園」がその事例です。
南アルプス市は登山客や果物狩りを目的に年間60~70万人の環境客が訪れていましたが、彼らが食事したりお土産を買ったりする施設が無かったため市外へ流れてしまうのが課題でした。完熟農園はその観光客対策と地元農家の収益アップを見越した試みで、地元の新鮮な作物を販売し農家に収益が入るようにしつつ観光客が登山以外でも立ち寄れる場所を提供することで地域活性化をはかるのがねらいでした。

結果は約3か月で経営破綻するほどの赤字経営となり、予算で約8億円注ぎ込んだ結果としては大失敗に終わります。
完熟農園は、レストランと地元の作物を販売するマルシェの2つの事業で2015年に開始し、レストランは開園当初で行列ができるほどの人気を誇っていましたがマルシェの売上が伸びませんでした。
マルシェで用意したオリジナル商品のラインナップが少なく、売れ行きに対して単価が上がらなかったのです。さらに作物の不作や天候で収穫時期がずれたことで開園時期と合わず商品となる作物の調達が間に合わないことも重なり、結果赤字となりました。

事業としてのねらいは正しく、取り組みも間違っていませんでしたが、十分な収益を上げるための商品準備と不作によるリスクヘッジが間に合わず、計画が甘かったことが原因と考えられます。

ノウハウが不足した状態でショッピングモールを開発する

開けた土地に大型のショッピングモールが建設される風景はイメージしやすいと思います。地方のショッピングモールや道の駅などの公共施設は箱物企画と呼ばれ、都市開発が進み地域活性化に貢献することもあれば、失敗に終わり損失を生むこともあります。

2001年に青森県青森市で約185億円かけて建設した複合商業施設「アウガ」は、新聞にも取り上げられ注目を浴びる施策でした。しかし、オープンした初年度から赤字が続き、再生計画を立てるも状況は変わらず閉鎖する結果となりました。

経営破綻した根拠は明言されていませんが、大々的に取り上げられた割にはバブル崩壊後の不況の影響で集客があまり見込めず、テナント料を負担できなくなり経営破綻となったことがあげられます。アウガはその後、商業施設ではなく図書館や市役所を置く公共施設となりました。

実はアウガをはじめとするショッピングモールを活用した町おこしは、地域活性化の典型的な失敗例といわれています。助成金に頼った財政計画により資金を回収できず、赤字が続くこと、さらに経営に携わる人材が経営ノウハウのない自治体の職員であることが失敗の原因です。ビジネス経験のない人材が事業をした結果、失敗につながるとされています。

地元の人と協力関係を築けず導入する

地域活性化の障壁とされているのが地元住民との協力関係です。どれだけ計画的に施策を考えても地元の人たちと協力関係を築けなければ上手くいきません。
事例として、福島県会津若松市の「電子マネーの導入」を取り上げます。

地域活性化の取り組みとして、地元の加盟店での買い物や健康診断の受診、ボランティアでポイントが貯まるサービスを2016年1月に導入しました。しかし、普及されることなく失敗に終わりました。
理由は、地元住民から認知されず浸透しなかったことがあげられます。施策で新しいものを導入する際に必要なことは、周囲の人たちに存在を認知してもらうことです。
この場合、電子マネーの基本的な知識とそのメリットを地元住民の視線に寄り添いながら説明して、心理的なハードルを下げる必要がありました。お互いにWin-Winな関係を築くことで地元住民を味方につければ、結果は変わっていたかもしれません。

新しいシステムや試みを実施するときは、事前準備や啓もう活動といった導入前の計画がとても重要になります。地域活性化は地元住民の理解と協力なしには成立しないのです。

考えられる解決策

失敗事例を参考にして地域活性化を成功させるなら、考えられる解決策は以下の4つになります。

解決策 概要
地域独自の資源を生かす 導入時のコストやノウハウの習得をショートカットでき、他県との差別化につながる
地域から個人まで全体で取り組む 住んでいる人たちと協力し合って発展する
豊かさを維持するモデルを考える 小さな変化でも継続して成長できる施策をする
事例を形だけ真似しない 地域の特徴・課題と噛み合う事例を参考にする

これらを意識することで、地域活性化の取り組みが成功する確率が上がります。

地域独自の資源を生かす

新しいものや新規事業も魅力がありますが、地域の特徴を伸ばして独自性を出していくことが重要です。
地域資源を上手く活用できれば、他の地方との差別化にもなり競争でぶつかることがありません。元々あるものなので歴史も深く、地元住民の協力も得られやすいでしょう。元からある資源を活用できれば、新規事業のようにゼロから作る必要はないのでその分の人件費やコストを削減することも可能です。

これまでにない取り組みで足りない箇所を補うという考えは正しいですが、すでにある地域の特徴や産業を生かす方が近道になります。地域に初めからあるものは、他と比べると珍しく目新しいと思われる可能性もあるのです。

地域から個人まで全体で取り組む

地域活性化は地元住民の協力が不可欠です。そのために一人ひとりが積極的に取り組んでもらえるような施策が必要になります。
施策というと自治体などの行政が主導で行うものというイメージがありますが、目指すゴールは住んでいる人たち全員が豊かにいきいきと暮らせる町づくりをすることです。

行政だけでなく個人レベルまで協力し合うことで、地域活性化は進んでいきます。

豊かさを維持するモデルを考える

地域活性化は人口減少とそれに伴う経済の停滞を改善するための取り組みです。よって、一時的な成果ではなく恒久的に持続するものであることが望まれます。
予算を使って1回限りの大規模なイベントを企画して、仮に成功を収めたとしてもその後が続かなければ意味がありません。短絡的な成果に目がくらんで一時的に人が集まっても、しばらくすれば元の状態に戻るでしょう。

すぐに結果が出ないものであっても、少しずつ浸透していく取り組みの方が、最終的には成長や発展につながります。

事例を形だけ真似しない

成功事例は確かに参考になりますが、ただ形だけ実施しても効果は薄いでしょう。地域活性化は各地域の特徴や状況に合わせて最適な施策を実施する必要があるからです。
「他では〇〇で成功したから同じことをやってみよう」とただ形だけ取り入れてもノウハウもなく、施策の意図や本質も理解できないため、ただの二番煎じに終わる可能性が高いでしょう。住んでいる地域の特徴や抱えている課題などを分析して、必要な施策として活用できそうだと判断できるまで、むやみに真似するのは控えるべきです。

自身の地域と相性が良い成功事例と類似した施策をした失敗事例を事前に調べて、慎重に計画を立てましょう。

地域活性化に成功した取り組み

森林の中、きれいな水の小川が段になり流れている様子
失敗事例の教訓を意識しつつ、地域活性化の成功事例を参考にすればゼロから考えるよりも効率的に施策を考えられます。
さまざまな取り組みの中で、成功した地域の施策を見て自身の地域ではどのような施策が効果的か検討しましょう。

北海道ニセコ町のリゾート地化

北海道ニセコ町は、外国人観光客をターゲットにした観光資源を活用して、地域のビジネスチャンスを掴みました。
きっかけは海外のスキー愛好家たちがニセコ町のパウダースノーの魅力を発見し、口コミから知名度が上がったことです。これを境に海外からのスキー客が訪れるようになり、地域が賑わいました。

スキーだけでなく、ラフティングや乗馬など夏にできる体験観光(アドベンチャーツーリズム)も成功し、徐々に訪問者数が増えていきました。ニセコ町はより持続的な発展を推進するために観光開発や地域内の起業をサポートし、積極的に地元のビジネスを推進する取り組みをしました。
地域で役所と民間企業が一体となって取り組んだ結果、2019年時点の外国人来道者数は244万2000人となり10年前の67万5350人と比較して約3.6倍まで増加しています。

アドベンチャーツーリズム:「自然」「アクティビティ」「文化体験」の3つの要素で2つ以上を満たせる旅行のことです。観光客の視野の拡大や学び以外にもその地域ならではの体験ができ、地域資源を活用できます。
出典:国土交通省観光庁観光地域づくりアドベンチャーツーリズムの推進

出典:北海道経済部観光局観光振興課「訪日外国人来道者数(実人数)の推移(平成9年度~令和3年度)」
出典:内閣府個性を活かした地域戦略の取組(事例集)

埼玉県川島町のブランドづくり

埼玉県川島町ではプロモーションイベントやWebメディアを活用した広告を積極的に行い、川島町のブランド力向上に成功しました。
川島町は「豊かな自然景観」「のどかな田園風景」「東京へのアクセスの良さ」「豊かな農作物と健康的な食文化」などさまざまな魅力がある町でしたが、認知度が低いことが課題でした。

改善施策として「KJ(KawaJima)ブランド」と名付け、専門家から商品パッケージや効果的な販促ツールの検討などを依頼し、特産品の磨き上げ支援でブランド力向上を目指しています。
他にはWebコンテンツを制作して川島町の魅力を発信したり首都圏に住んでいる家族層へ向けてマルシェを開催したりして、川島町に住んでいる住民や事業者がスタッフとして参加。実際に顧客の感想を聞く機会を持つことで魅力の再発見しつつPR活動に励んでいます。

KJブランドを立ち上げたのは、他地域との差別化をはかるためのブランドづくりと地域住民からも認知されることにより地域全体で取り組む雰囲気を作ることがねらいです。
そのために戦略的に川島町の魅力を定義してターゲットに訴求する必要があり、川島町は方向性を3つに絞って取り組んでいます。

取り組み 概要
モノづくり わかりやすいロゴマークやキャッチフレーズ 特産品を活用したお土産の開発 イメージカラーを活用したストーリーづくり
ヒトづくり 商品開発や情報発信ができる人材の育成と発掘 外国人観光客に対応できる人材育成
話題づくり SNSやPR動画を活用した情報発信 KJブランドを購入できる販路の開拓

これら3つの取り組みを通してKJブランドの認知拡大と商品の売り上げ向上により、雇用の機会と収益アップ、川島町の移住促進をはかっています。

出典:川島町政策推進課KJブランド戦略
出典:埼玉県川島町公式サイトKJブランド戦略

青森県田舎館村の田んぼアート

青森県田舎館村では、観光振興を目的として田んぼアートを作り観光客の増加と農業に触れる機会の創出をはかりました。
田舎館村は昔から稲作が盛んな地域であり、その特徴を生かした施策として実施。現在では全国レベルで活動が広まり、全国田んぼアートサミットが開催されるまでに至っています。

田んぼアートは7色12種の稲を使用しており、青森県の奨励品種「つがるロマン」がベースとなっています。これらの品種から緻密な作品を作り上げており、その芸術性が注目された結果、年間30万人以上の集客に成功しました。

成果として、2015年の観光者数は約34万人、展望料収入は6,200万円となり、2016年では9,300万円を記録しました。2018年で観光者数は40万5000人となっており、毎年平均で40万人の観光客が訪れるようになっています。

出典:田舎館村公式サイト第6次田舎館村総合振興計画
出典:内閣府地方創生推進事務局地方創生事例集

徳島県神山町のサテライトオフィス誘致

徳島県神山町は現状の過疎化を受け入れたうえで外部から若者や優秀な人材の確保をはかり、従来の農林業に頼らない地域活性化を目指しました。
神山町は過疎化につながる原因は仕事と雇用の少なさにあると考え、雇用の機会を新たに作り出す「神山プロジェクト」を実施しました。

主な取り組みとして、本社と遠い場所に拠点を置くサテライトオフィスの導入や将来有望な起業家や労働者を神山町からスカウトするワークインレジデンス、人材育成のための神山塾を実施。減少傾向だった転入数を増加させることに成功しています。
さらに、ワークインレジデンスの取り組みの一環として、空き家をオフィスに回収するオフィス・イン神山を実施。外部からの労働者の誘致と神山塾で職業訓練を終えた人材が起業するための事務所として機能させるなど、働き手を受け入れる環境づくりに励んでいます。

オフィスだけでなく芸術方面にも力を入れており、芸術家を招き入れて、地元住民の協力のもと芸術活動をする「KAIR」を立ち上げました。この取り組みで芸術を見に来る観光客を獲得し、制作した芸術家たちの滞在満足度を向上させることで、神山町という場所の価値を高めることがねらいです。

これらの活動を通して、働ける環境と人材を発掘・育成することで、2011年で転出数が転入数に対してプラス12人、2019年ではプラス4人と増加傾向となっています。
まだまだ課題は多い数値ではありますが、減少し続ける中でその流れを変えた試みとして高く評価されています。

出典:徳島県神山町公式サイト町を将来世代につなぐプロジェクト(PDF)
出典:徳島県神山町公式サイト神山アーティスト・イン・レジデンス(KAIR)
出典:総務省神山プロジェクトのポイント
出典:一般財団法人地方自治体公民連携研究財団(PPP財団)神山町で人口8年ぶり社会増

茨城県取手市の起業家支援

茨城県取手市では、20~30代の若者が市外へ流出しないための取り組みとして起業家へのサポートをしました。
起業を始めたばかりの人たちに向けてレンタルオフィス機能を備えた施設を設けたり市内の金融機関との連携をはかれるようにサポート体制を整えたりする施策を実施しました。
たとえば、地域のレンタルオフィスの割引などの恩恵が受けられる「起業家カード」を発行し、市内外から起業家を集めています。地域全体で起業家をサポートするため企業応援団を結成して起業したばかりの人材に応援サービスや割引を提供しています。

こうした活動を通して、地方での安定した雇用機会を作ることで人口減少に歯止めをかけています。
2016年時点で起業家カードは18枚発行され、41人の起業家がレンタルオフィスのある施設を利用しました。企業応援団の参加企業数は99社となっています。

出典:内閣府地方創生推進事務局地方創生事例集

地域活性化は成功と失敗両方から学ぶことが大切

地域活性化が必要となった背景は「地域の人口が減少」「都市部に人口が集中」「地域と都市部の経済格差」があげられ、改善施策としてさまざまな形で人が集まる町づくりが実施されています。

地域活性化の手段はたくさんありますが、方向性は「雇用の創出」「結婚・出産・育児の支援」「安心・安全な環境づくり」の3つ内容に基づいて実施されます。
ただし、上手くいっている市町村の事例をそのまま真似しても、失敗する可能性があるので注意が必要です。地域の特徴と現状を分析して噛み合う施策でないと効果が薄いでしょう。
地域活性化を成功させるには、よくある失敗事例も踏まえつつ地元と共通点の多い地域の成功事例を参考にして取り組みましょう。

この記事の執筆者
EARTH NOTE編集部
SDGs情報メディア
「SDGsの取り組みを共有し、循環させる」がコンセプトのWEBメディア。SDGsの基礎知識や最新情報、達成に取り組む企業・自治体・学校へのインタビューをお伝えし、私たちにできることを紹介します。
身近なアイデアを循環させて、地球の未来をつなげていきましょう。皆さんと一緒に取り組んでいけたら幸いです。
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