密漁の問題とは?密漁の現状と防止対策について

密漁の問題とは?密漁の現状と防止対策について

2023.09.25(最終更新日:2024.06.19)
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密漁が世界中で大きな問題となっていることを知っていますか?
密漁による乱獲などの影響により水産資源の減少が続き、身近な魚が姿を消す可能性があるのです。
そのため、多くの国が水産資源を守るために、漁獲量の制限を設けています。しかし、決められた漁獲量を守らず、環境にも配慮していない密漁が横行しているのです。
本記事では、SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」にも掲げられている、密漁による生態系や法に則った漁業への影響、密漁の取り締まりについて解説します。

日本の水産資源を脅かす密漁

密漁とは、国際間の取り決めや国による法令を守らない漁業のことです。日本でも漁業権が設けられており、漁場や漁業の可能な時期などが細かく決められています。これは、水産資源の乱獲や獲りすぎを防ぎ、水産資源と生態系を守るために重要な役割を果たしています。しかし、レジャー感覚での密漁や漁業権を守らない漁業が日本でも多く発生しているのです。
密漁は、世界でも大きな問題となっており、水産資源を守る取り組みが急がれています。

日本の水産資源の現状

日本周辺の太平洋北西部の海域は、世界で最も漁獲量が多い海域です。この海域での2021年の漁獲量は、世界の漁獲量の21%(1,930万トン)となっています。
特に日本の沿岸には多くの暖流と寒流が流れ、海岸線も多様です。そのため、日本周辺の海域には、世界の海生哺乳類127種のうちの50種、世界の海水魚1万5,000種のうちの約3,700種(日本固有種は約1,900種)が生息する、極めて生物多様性の高い海域となっています。
さらに、日本は国土の3分の2を森林が占めており、水源涵養機能(森林の貯水と水質改善機能)や降水量が多いことにより水資源に恵まれ内水面(国内の河川や湖沼、港など)でも地域ごとに特色のある漁業が行われています。(注1)

日本の漁業は第二次世界大戦後、沿岸から遠洋へ漁場を拡大し発展しました。しかし、昭和50年代に沿岸から約370㎞(200海里)の水域に外国船が入り漁をすることを世界各国が次々と規制(排他的経済水域)したことで、遠洋漁業が難しくなり漁業生産量の4割を占めていた遠洋漁業は平成以降1割ほどになっています。
2019年度の水産白書によると、日本の生産量は442万トン、生産額は1兆5,579億円となっています。日本の漁業生産量のピークは1984年の1,282万トンでしたが、その後は緩やかな減少が続いています。
2022年の日本周辺の水産資源は、獲りすぎや環境の変化などにより枯渇しているものが56%、豊富なものはわずか22%しかないのが現状です。

日本では、養殖も盛んに行われ2008年から2018年の間にブリ類は約4倍、ホタテガイ類は約7倍も輸出量が増加しました。養殖での生産量は、1994年に最も多い134万トンとなり、その後は緩やかな減少傾向となっています。(注2)

(注1)参考:水産庁 (1)我が国周辺の水産資源
(注2)参考:水産庁 (1)漁業生産の状況の変化
澄んだ水の浅瀬で泳いでいる、ウナギのような魚のアップ

日本の漁業権

日本の漁業権制度は、都道府県知事の免許を受けることで、一定の水面において排他的に特定の漁業を営む権利を取得する制度です。漁業権は漁場ではなく漁業を排他的に営む権利です。免許を受けた漁業を営むことを妨げる漁業権侵害に対して、排除と予防が可能となっています。しかし、漁業権侵害でない限り、同じ漁場内でほかの活動を行うことが可能となっています。

漁業権には、次の3つがあります。

1.共同漁業権(存続期間10年)
採貝、採藻などの漁場を地元の漁民が共同で利用して漁業を営む権利

2.区画漁業権(存続期間5年又は10年)
一定の区域で、養殖業を営む権利

3.定置漁業権(存続期間5年)
大型定置(身網の設置水深が原則27m以上の定置)などを営む権利
※小型定置は共同漁業権などに位置付けされる(注1)

そして、水産政策の改革として、2020年に施行された「漁業法等の一部を改正する等の法律」では、水産資源の適切な管理と水産業の成長産業化を両立すること、漁業者の所得を向上させること、年齢バランスの取れた漁業就業構造を確立することを目指した取り組みが行われています。(注2)
漁業は自然の生態系に依存し、その一部を採捕することで成立する産業であるため、海洋環境や海洋生態系の保全は漁業を持続的に行うために重要な前提条件となっています。
(注1)参考:水産庁 漁業権について
(注2)参考:水産庁 水産政策の改革について

レジャー感覚での密漁問題

アワビやナマコといった高級食材を狙った組織的な犯罪だけではなく、潮干狩りや釣りなどのレジャーでも、生物の種類、場所、時期などによっては密漁になる可能性があります。
近年、日本ではレジャー感覚での密漁が増えていることから、法律が改正され、罰則も強化されています。実際に、2019年の密漁の検挙数1,556件の内、漁業者以外の検挙数が1,236件となっています。
日本の沿岸部では漁業権が設定されているため、一般の人が漁業権の対象となっている水産動植物を捕ることはできないのです。漁業権の対象になっている沿岸域には「漁者のみなさんへ」「注意」などの看板が設置され、注意を促しています。このような場所で、一般の人が漁業権の対象生物を捕ると、漁業権の侵害になり「密漁」となるのです。

都道府県ごとに潮干狩りや釣りなどで水産動植物を捕る際に使用できる道具、水産動植物の種類、大きさ、採捕の禁止区域、禁止期間が定められています。
たとえレジャーであっても「知らなかった」は通用しないのです。

参考:政府広報オンライン 自分で食べるだけなら・・・レジャー感覚でも「密漁」に!?知っておきたい遊漁のルール

知らないうちに密漁とならないよう、都道府県ごとに決められた遊漁で使用できる漁具・漁法などを確認しましょう。
参考:水産庁 都道府県漁業調整規則で定められている遊漁で使用できる漁具・漁法(海面のみ)

日本での密漁の現状

日本では、多くの密漁者が検挙されています。海上保安部、都道府県警察及び都道府県における密漁(漁業関係法令違反)の検挙数は、2019年は1,556件、2020年は1,361件となっています。
近年の傾向として、漁業者の違反操業は減少していますが、漁業者以外の密漁が増えています。そのため、2018年の漁業法改正において、罰則が大幅に強化され、最大で3年以下の懲役又は3,000万円以下の罰金となりました。3,000万円という金額は個人に対する罰金では最高額であることから、密漁の防止に大きな効果が期待されています。
さらに、海上保安庁、警察、都道府県などの関係機関と連携し取り締まりを強化することや、密漁対策への支援、一般市民への普及啓発などが行われています。

特に悪質な密漁が行われているアワビ、ナマコ、シラスウナギなどを特定水産動植物に指定し、漁業権、漁業の許可に基づかない、これらの採捕が原則禁止されています。
また、特定水産動植物を違法に採捕されたものと知りながら、運搬、保管、取得、処分などをした場合にも密漁者と同じ罰則が適用されます。
さらに、密漁を防ぐために使用する船舶の停泊命令などがあります。これは、密漁者が使用する船舶の出港自体を禁止するものです。また、漁具の陸揚げ命令では漁具の使用自体を不可能にするため、密漁の実行を困難にする観点から効果的なものとなっています。(注1)(注2)

日本の排他的経済水域では水産資源の安定的な供給を維持するために、外国籍漁船の操業が規制され、周辺諸国の間で各種の漁業協定が結ばれています。しかし、日本では外国籍の漁船が密漁により検挙されるという事例がほぼ毎年発生しているのです。
2021年には、日本の排他的経済水域において韓国の漁船を発見し、韓国人船長が逮捕されています。(注3)

(注1)参考:水産庁 密漁を許さない~水産庁の密漁対策~
(注2)参考:水産庁 密漁を許さない 沿岸密漁の対策について
(注3)参考:海上保安庁 治安の確保

世界での密漁の現状

日本でも多くの検挙者が出ている密漁は、世界でも大きな問題となっています。多くの国が、水産資源の持続可能な利用を行うために漁獲量を調整するなどの取り組みを行っていますが、密漁が増えることで、水産資源の管理や持続可能な利用が難しい状況となっています。しかし、密漁の問題は、ただ取り締まるだけでは解決できません。それは、貧困による問題や人権の問題などが絡んでいるため、経済的な支援を行うなどの活動が必要になっているのです。
ここでは、世界の密漁のさまざま問題について解説します。

世界の水産資源の現状

2020年の世界での漁業、養殖業の生産量は2億1,402万トンとなっています。漁業での漁獲量は1980年代後半から横這い傾向ですが、養殖業の生産量は急激に伸びています。
過去20年間の漁獲量は、EU、アメリカ、日本などの先進国では過去20年ほどの間、ほぼ横這いの推移ですが、中国、インドネシア、ベトナムなどアジアの新興国や開発途上国で漁獲量が増加傾向となっています。
養殖業では、中国、インドネシアの生産量の増加が著しく、中国では世界の57%となる7,048万トン、インドネシアでは12%となる1,485万トンもの生産がおこなわれています。

FAO(国際連合食糧農業機関)の発表によると、1974年は90%の水産資源が適正に利用されていましたが、2017年にはその割合が66%まで下がっています。さらに、この66%のうち、漁獲量の適正レベル上限まで漁獲されている水産資源の割合は60%です。漁獲量が適正で、今後生産量を増大させる余地のある資源の割合はわずか6%となっています。(注1)
そのため、養殖業による水産資源の確保が各国で行われていますが、養殖業にも次のような問題があります。

  • 養殖場のためのマングローブの伐採
  • 養殖場からの排泄物、エサの食べ残しによる水質汚染
  • 養殖での抗生物質の乱用、薬耐性菌の発生と人への健康被害
  • エサとなる水産資源の乱獲
  • 脱走した魚による生態系への影響
  • 稚魚の採捕

養殖魚のエサとなる水産資源の獲りすぎを防ぐために、大豆やトウモロコシなどの配合が行われていますが、それでも世界の漁獲量の12%が養殖魚のエサとなっています。
稚魚の採捕に関しては、人工ふ化も行われていますがクロマグロやニホンウナギなどは天然種苗の依存が高くなっています。(注2)

さらに、漁業を行うための補助金が各国で使われていますが、一部の補助金が過剰漁獲や密漁などにつながっていることも問題となっています。SDGs14では、このような有害な補助金の撤廃や禁止も目標として掲げられています。

(注1)参考:水産省 (1)世界の漁業・養殖業生産
(注2)参考:WWFジャパン 第1章拡大する養殖業の課題と責任ある養殖業への需要
ちょうど海面から見た、海上に生息するマングローブ

大きな問題となっているIUU漁業

近年、乱獲や獲りすぎによる漁獲量の減少が問題となっています。
そのため、各国が科学的な根拠に基づいた資源管理を行うため、法律や制度を作成し水産資源の持続可能な利用を目指しています。
しかし、このような水産資源の管理のための法律や制度を守らないIUU漁業が国際的な問題となっています。
IUU漁業とは、次のような違法、無報告、無規制(Illegal, Unreported and Unregulated)で行われる漁業のことです。

違法漁業(Illegal)
国や漁業管理機関の許可がないことや、国内法、国際法に違反して行う漁業

無報告漁業(Unreported)
法律や規制を守らず、報告をしない、または虚偽の報告を行う無報告漁業

無規制漁業(Unregulated)
無国籍、当事国以外の船舶が、規制や資源の保全管理措置に従わずに行う漁業

IUU漁業対策として、FAO(国際連合食糧農業機関)が2001年にIUU漁業対策の考え方を取りまとめたIUU漁業国際行動計画が採択されました。この計画に基づき、日本では国内漁船がIUU漁業に従事しないよう適切に管理するとともに、EEZ(排他的経済水域)内で行われる漁業について適正な管理・検査などを実施しています。
また、2003年に公海において操業する漁船での旗国(所属する国)の責任を定めたフラッギング協定(保存及び管理のための国際的な措置の公海上の漁船による遵守を促進するための協定)が発効しました。日本では、フラッキング協定の履行のため、国内漁船に対して適切に漁業許可制度を運用することで、IUU漁業を排除しています。(注2)

(注1)参考:WWFジャパン IUU漁業について
(注2)参考:水産庁 (5)資源の持続的利用の取組

IUU漁業での漁獲量

IUU漁業は、水産資源の持続可能な利用などを考慮せずに行われ、さらに無報告で行われるため、正確な被害を把握することが難しくなることから、資源管理がさらに困難になってしまうことも問題です。

世界のIUU漁業での漁獲量は、1,100〜2,600万トン、被害額は100〜235億USドルになると推定されています。日本での漁業と養殖業の生産量である442万トンよりも多くの水産資源が、IUU漁業によって乱獲されているのです。
日本では2015年に輸入した天然水産物215万トンのうち24〜36%、1800〜2700億円がIUU漁業によるものと推定され、日本でも多くの水産資源がIUU漁業によるものとされています。
2015年、日本においてIUU漁業から多く輸入された水産資源は次のようになっています。

魚種 IUU漁業からの輸入量 IUU漁業からの輸入割合
中国産のウナギ 8,160トン以上 45〜75%
中国産のイカやコウイカ 2万6,950トン以上 35~55%
アメリカ産のスケトウダラ 2万6,000トン以上 15~22%
ロシア産のサケ 1万3,000トン以上 30~40%

さらに、天然水産物だけではなく養殖の場合にも、稚魚や養殖魚のエサとなる水産資源もIUU漁業で得られている場合が多くあるのです。
IUU漁業が横行している理由として、水産物の流通が複雑であることや、IUU漁業による水産物を識別、排除する仕組みが整っていないこと、IUU漁業由来ではないことを証明するために必要な漁獲情報を記録、保持し、流通の過程で正確に伝達する仕組みがないことが考えられます。

このようなことからIUU漁業が世界中で蔓延し、水産資源の観点などから大きな問題となっているのです。

参考:WWFジャパン IUU漁業について

IUU漁業がもたらす問題

IUU漁業では、水産資源の持続的な利用のための漁獲制限などを行わないことから、乱獲や獲りすぎなどが問題となっています。さらに、無報告で漁業が行われるなど、科学的な情報に基づいた水産資源管理を困難にしているのです。

IUU漁業での漁獲量は、日本の漁獲量の2.5〜5.9倍にもなりますが、生産額は日本と同等となっています。これは、IUU漁業での水産物が安価で取引され、正規の漁業者の利益を損なうことにつながっているのです。
アメリカでの研究では、IUU漁業による損害を漁業者は約10億米ドル被っており、IUU漁業を排除することができると、漁業者の利益を20%増やすことができると算定されています。(注1)

また、IUU漁業による問題は乗組員や漁業監視員、加工工場などの労働者の人権問題にも及んでいます。
世界の水産業界では、児童の強制労働や人身売買などの違法行為が発生しているのです。人権侵害の実例として、虐待、搾取的な労働条件、賃金の引き下げ、違法な長時間労働、パスポートの没収などがあります。また、食事を十分に与えず、栄養失調などから病気になり死亡する事件も発生しているのです。

(注1)参考:WWFジャパン IUU漁業について
(注2)参考:認定NPO法人 ヒューマンライツ・ナウ 水産業における人権侵害と日本企業の関わりに関する報告

IUU漁業での拉致や奴隷労働などの人権問題を取り上げたドキュメンタリー映画「ゴースト・フリート」は、2017年ノーベル平和賞にノミネートされた、タイ人パティマ・タンプチャヤクルさん達の活動を紹介しています。

密漁に対する取り組み

日本は、多くの水産資源を輸入していますが、EUやアメリカに比べIUU漁業による水産資源の輸入に対する規制が遅れ、違法に漁獲されたものが国際的に集中していました。
日本では、この問題に対処するための規制を新たに設け、IUU漁業からの水産資源の輸入量を減少させる取り組みが行われています。
ここでは、日本と世界のIUU漁業に対する法的枠組みや規制について解説します。
水揚げされ、加工するために網から出される大量のサバ

水産物流通適正化法

2022年12月に施行された水産物流適正化法(特定水産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律)は、国内で違法、過剰な採捕の可能性が大きく、特定第一種水産動植物に指定されたアワビ、ナマコ、ウナギの稚魚について、国内水産資源の減少を防ぎ、違法に採捕された水産資源の輸入を規制し、罰則を強化しています。違法漁獲物が確認された場合には、取引記録などを追跡調査し流通適正化を図るための法律です。また、漁業権の対象となるサザエやイセエビなどを制限なく採捕した場合にも罰則が適用されます。
主な内容は次のようなものです。

漁業者の届け出
特定第一種水産動植物などの採捕や譲渡を行う場合、適法に行われることを行政に届け出る。その際、通知される番号を含む漁獲番号伝達し、譲渡しを行う

情報の伝達
届出採捕者、一次買受業者、流通業者、加工業者等は、名称や漁獲番号などの情報を事業者間で伝達する

取引記録の作成・保存
特定第一種水産動植物の取引をした際には、名称、重量、年月日、相手の氏名、漁業番号等の事項に関して取引記録を作成、保存すること

輸出の規制
特定第一種水産動植物などは、適法に採捕されたことを示す国が発行した適法漁獲等証明書を添付してあるものでなければ、輸出できない

輸入の規制
特定第二種水産動植物(サバ、サンマ、マイワシ、イカなどの国際的にIUU漁業のおそれの大きい魚種)については、適法に採捕されたことを示す外国の政府機関などが発行の証明書を添付してあるものでなければ、輸入を禁止する

このように、水産物に漁獲番号を付け、国内、輸入、輸出に関して適正に管理、流通させることで違法に採捕された水産物の流入を防ぐことを目指しています。

参考:水産庁 特定水産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律の概要

水産資源の持続可能な利用を目指す地域漁業管理機関(RFMO)

多くの水産資源の管理には、国内だけではなく関係国間の協力が必要です。そこで、国際的な漁業管理の中心的な役割を担っているのが地域漁業管理機関(RFMO)です。
沿岸国や地域、高度回遊性魚種(マグロやカツオ等)を漁獲する遠洋漁業国等が参加し、対象資源の保存管理措置を決定しています。

世界のRFMOは13あり、海域、魚種ごとに設置されています。

  • ICCAT 大西洋まぐろ類保存国際委員会
  • CCSBT みなみまぐろ保存委員会
  • IATTC 全米熱帯まぐろ類委員会
  • WCPFC 中西部太平洋まぐろ類委員会
  • IOTC インド洋まぐろ類委員会
  • NEAFC 北東大西洋漁業委員会
  • NAFO 北西大西洋漁業機関
  • GFCM 地中海漁業一般委員会
  • SEAFO 南東大西洋漁業機関
  • NPFC 北太平洋漁業委員会
  • SPRFMO 南太平洋漁業管理機関
  • SIOFA 南インド洋漁業協定
  • CCAMLR 南極の海洋生物資源の保存に関する委員会

水産資源の管理は、海の憲法とも呼ばれる国連海洋法条約(UNCLOS)を基礎に、国連公海漁業協定(UNFSA)により、排他的経済水域(EEZ)の内外に分布する水産資源の保存と、持続可能な利用を確保するための一般的規範が制定されています。UNFSAに基づく魚種別、海域別の保存管理措置は法的拘束力のあるものとなっています。

RFMOの加盟国は、年次会合などにおいて漁獲量の規制や漁法、漁具などに関する技術的規制など、水産資源の保存管理措置の議論や措置の策定を行います。また、各RFMOの枠組みの中で、IUU漁業船リストの作成や、漁船の管理、取締などが行われています。また、違法漁獲物の国際流通を防止するための漁獲証明制度などの遵守を確保するなどの対策が講じられています。
日本は、責任ある漁業国として、日本漁船の操業海域や漁獲対象魚に関して設立された地域漁業管理機関には原則加盟し、資源の適切な管理と持続可能な利用のための活動に積極的に参画しています。(注1)(注2)

(注1)参考:外務省 地域漁業管理機関
(注2)参考:水産庁 (2)地域漁業管理機関による国際的な資源管理

法的拘束力がある違法漁業防止寄港国措置協定(PMSA協定)

IUU漁業が水産資源の持続可能な利用に対する脅威となっていることから、IUU漁船に対する措置を決めた違法漁業防止寄港国措置協定(PMSA協定)があります。
この協定は、国連食糧農業機関(FAO)によって2016年に発効され、IUU漁業の防止、抑制、廃絶を目指す法的拘束力のある国際協定です。
この協定は、IUU漁業対策の一環として、寄港国の措置に焦点を当てた初の多数国間条約です。

この協定の主な内容は次の3つです。

入港拒否
RFMOが作成するIUU漁船のリストに掲載されているなど、入港を希望する船舶がIUU漁業に従事していることがわかる場合には、その船舶の入港を拒否することができる

港の使用の拒否
入港した船舶がIUU漁業に従事したと判明した場合、魚類の陸揚げや燃料補給などの港の使用を拒否することができる

船舶の検査
この協定が定める基準に従って、特に自国に入港した船舶が、IUU漁業に従事した疑いある場合は、その船舶の検査をすることができる

PMSA協定の利点として、費用効率がいいことや、合法的な漁業を行っている漁業者の生計を守ること、沿岸国、旗国(所属する国)、地域漁業管理機関間の効果的な協力や情報交換の促進、漁業管理の強化などがあります。
この協定に、日本は2017年に批准しています。2022年11月、PMSAの締約国は73カ国と1機関となっています。(注1)(注2)

(注1)参考:外務省 違法漁業防止寄港国措置協定
(注2)参考:WWFジャパン IUU漁業について

水産資源を守るMSC認証・ASC認証

密漁などによる、乱獲や過剰漁獲の問題は海の生態系が崩れることや、将来の水産資源不足につながります。養殖業では、海洋環境の悪化、エサとなる天然漁の大量消費、魚の脱走による生態系への影響などが問題となっているため、環境や生態系に配慮した水産資源の管理が重要となっています。
そこで、これらの問題を解決するため、持続可能な漁業で獲られた水産物に付けられるMSC認証ラベルと、環境と社会への影響を最小限に抑えた養殖場で育てられた水産物に付けられるASC認証ラベルがあります。
これらの認証ラベルを取得した水産物をサステナブル・シーフードといいます。
MSC認証とASC認証について解説します。

【MSC認証】
MSC(海洋管理協議会)は、将来の世代まで水産資源を残していくために、MSC認証制度と水産エコラベルを通じて、持続可能で適切に管理された漁業の普及に努める国際的な非営利団体です。

MSC認証ラベルは、水産資源や環境に配慮していることを、第三者の審査機関によって認証された水産物を表すラベルです。MSC漁業認証の取得には、平均1年〜1年半ほどかかります。さらに、認証取得後は審査員による年次審査を受け、認証の更新は5年ごとに行われています。
MSC認証漁業の多くは世界で最も革新的であり、最優良事例を実践している漁業なのです。(注1)

2022年3月の世界でのMSC認証取得漁業が539件、日本でのMSC認証漁業は18件となっています。
また、MSC認証ラベル付き製品販売数は、世界では20,447品目、日本では579品目となっています。(注2)

【ASC認証】
水産養殖管理協議会(ASC)は、WWF(世界自然保護基金)とIDH (オランダの持続可能な貿易を推進する団体)の支援により、2010年に設立された国際的な非営利団体です。

ASC認証は、ASCが管理運営している養殖に関する国際認証制度で、自然環境の汚染や資源の過剰利用の防止に加え、労働者や地域住民との誠実な関係構築を目指しています。
しかし、自然環境への配慮以外にも、養殖業では児童労働や奴隷労働といった人権問題が報告されており、普段食べている水産物が、労働者の虐待によって生産、加工されているということがあり得るため、自然環境と同時に人権問題への配慮も求められています。

ASC認証を受けるための責任ある養殖のための7つの原則があります。

ASC基準の基本7原則

  1. 国および地域の法律、規制への準拠
  2. 自然生息地、地域の生物多様性と生態系の保全
  3. 野生個体群の多様性の維持
  4. 水資源および水質の保全
  5. 飼料およびその他の資源の責任ある利用
  6. 適切な魚病管理、抗生物質や化学物質の管理と責任ある使用
  7. 地域社会に対する責任と適切な労働環境

この7つのASC基準は、FAO(国連食糧農業機関)の「水産養殖認証に関する技術的ガイドライン」と、ISEAL(国際社会環境認定表示連合)が定める「社会環境基準設定のための適正実施規範」を遵守し、科学的知見に基づき、水産関係者、科学者、NGOなどが協働で策定しています。さらに、これらの基準への適合性の判断を適合性評価機関(CAB)というASCから独立した機関が行っています。
また、新たな知見と生産技術の向上に合わせ定期的に改定することで、常に厳格な認証システムとなるための改善が続けられています。(注3)(注4)

(注1)参考:Marine Stewardship Council MSC「海のエコラベル」とは
(注2)参考:一般社団法人 MSCジャパン【2023年9月号】MSCジャパン ニュースレター
(注3)参考:ASC ASC認証
(注4)参考:WWFジャパン 海を守るマーク(2) 養殖水産物の認証制度ASCについて

水産資源の持続可能な利用のためにできることから始めましょう

世界では、多くの人が水産資源から収入を得て生活しています。しかし、水産資源は減少が続いており、適切な管理と利用が重要となっています。しかし、密漁による水産資源の乱獲が横行し、多くの国が密漁への対策を行っていますが、すべてを取り締まることは難しいのが現状です。

密漁は、私たちの食生活にも大きな影響を与えます。世界で起こっていることを知り、消費者としてMSC認証やASC認証の密漁ではない水産資源を選ぶことで、漁業と水産資源、さらに人身売買や奴隷労働などの人権問題の解決にもつながるのです。
SDGs目標14にも掲げられているIUU漁業を終わらせるために、できることから始めましょう。

この記事の執筆者
EARTH NOTE編集部
SDGs情報メディア
「SDGsの取り組みを共有し、循環させる」がコンセプトのWEBメディア。SDGsの基礎知識や最新情報、達成に取り組む企業・自治体・学校へのインタビューをお伝えし、私たちにできることを紹介します。
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