増え続ける絶滅危惧種の現状と保全への取り組み

増え続ける絶滅危惧種の現状と保全への取り組み

2023.07.14(最終更新日:2024.06.24)
この記事のタイトルとURLをコピー

絶滅危惧種と聞いて思い浮かぶのは、遠い国や保護施設でしょうか?実は、絶滅危惧種は私たちの身近にも多く存在しています。
絶滅危惧種は私たち人間の活動によって年々増加しており、保全に向けた取り組みが世界中で行われています。

私たちの生活は、自然の恩恵に支えられており、絶滅危惧種を守り、生態系を保全する活動は私たちの生活を守ることでもあるのです。また、生態系を守ることは持続可能な開発目標(SDGs)の達成にもつながります。
そこで、本記事では絶滅危惧種を守る必要性と、生態系の保全活動について紹介します。

絶滅危惧種の現状と保全の必要性

生物は互いに直接的、間接的に作用しながら、長い年月をかけて生態系のシステムを作り上げてきました。私たちの生活も、多くの生物に支えられており、食料や水、また森林からのさまざまな恩恵によって成り立っています。
しかし、私たち人間の活動によって生態系のバランスが崩れ、多くの生物が絶滅によって姿を消しているのです。

生態系の一部である生物が一種でも姿を消すことで、生態系のバランスは大きく崩れてしまいます。
例えば、食物連鎖の頂点の肉食動物が絶滅することで、草食動物が増え、植物を食べつくすことにつながります。植物が減ると、雨が直接地面に届き表面の土が流され災害が起きやすい環境にもなるのです。
このようなことから、生態系の保全は私たちの生活を守るためにも必要なのです。

2022年10月までに確認されている生物種は、菌類、植物、昆虫、鳥類、哺乳類など213万1,499種、そして、このうちの14万7,517種に絶滅の危険があるとされています。
特に絶滅の危険度の高い絶滅危惧種は、2021年に3万7,400種以上とされていましたが、2022年10月には4万1,459種にも増えています。(注1)
生物が絶滅危惧種となる原因は、環境汚染、開発による生息地の減少、乱獲、密猟や密輸などさまざまですが、原因の大部分は人間の活動によるものです。日本国内でも、2020年に絶滅が危惧されている生物は3,772種と発表されています。(注2)

(注1)参考:WWFジャパン 絶滅の危機に瀕している世界の野生生物のリスト「レッドリスト」について
(注2)参考:環境省 生物多様性センター いきものログ
2018年から2022年までの全評価種数に対する絶滅危惧種の割合を表した棒グラフ(2022年28.0%など)
(表2)参考:国際自然保護連合 Summary Statistics table 1b

絶滅危惧種が発生する理由

生物が絶滅の危機とされるまで生息数が減る原因は、生息地の減少や開発、密猟、乱獲、環境汚染、外来種による影響などがあります。それぞれの生物が減少する原因を解説します。

【生息地の減少】
開発や農業を行うために生息地である自然環境を開発することで、エサとなる植物や動物が減ってしまい生きていくことができなくなります。
また、自然の生息地で十分エサを確保できずに人の住む場所に危険な動物が出没する問題も起きています。
毎年、自然環境は10万ヘクタールも失われており、これは毎週東京都と同じ面積の森林が消失し続けているということです。(注1)
(注1)参考:WWFジャパン 今日、森林破壊を止めるためにできること

【乱獲や密猟】
食べ物としてや、薬品や漢方薬の原料、装飾品やペットとするために乱獲や密猟が起こっています。
食料としてや、装飾品としての象牙やワニ皮、毛皮、また、銃の性能が向上したためにハンティングなどの狩猟でも多くの生物が犠牲になっています。そして、ペットとしても多くの生物が乱獲され密輸されています。このような野生生物犯罪は、年間約2兆円もの規模であると推測されています。(注1)
(注1)参考:WWFジャパン 密猟や違法な取引から、野生生物を守ろう!

【環境汚染】
農業や工業による汚染された水によって水質汚染が起こっており、その水に依存している多くの生物に影響が出ています。
また、大気汚染により酸性雨が降ることで、植物が枯れる影響も出ています。

【外来種】
人の活動によって他の地域から持ち込まれたり、ペットとして輸入された生物が野生化したりすることで、本来その地域に生息していた生物に影響を及ぼします。本来生息している生物を食べることや、生息地やエサを奪い、新たな感染症を持ち込むなどの影響があります。
また、外来種とは海外から持ち込まれた生物だけではなく、国内でも別の地域から持ち込まれた生物は外来種となります。

レッドリスト

絶滅の恐れのある野生生物をリストアップしたものを「レッドリスト」と言います。
国際的には、IUCN(国際自然保護連合)によって発表され、5年ごとに更新されており、日本の環境省もIUCNのレッドリストを参考に日本国内のレッドリストを作成しています。
また、IUCN以外にも国や、地域によってそれぞれのレッドリストが発表されています。
レッドリストでは、絶滅危惧の度合いによって分類されており、「絶滅危惧ⅠA類」「絶滅危惧ⅠB類」「絶滅危惧Ⅱ類」の三項目が、特に絶滅の危機が高い種とされています。

2022年10月には存在が確認されている213万1,499種のうち、14万7,517種に絶滅の危機があるといわれています。(注1)
しかし、地球上のすべての生物種を把握することは困難であり、未知の種を含めると地球上には数百万から数千万の生物種が存在していると推定され、実際に、2020年には新たに224種もの新種の生物が発見されています。(注2)

(注1)参考:WWFジャパン 絶滅の危機に瀕している世界の野生生物のリスト「レッドリスト」について
(注2)参考:WWFジャパン メコン地域で224種の新種発見!最新報告を発表

【表1】絶滅危惧種の分類

カテゴリ 略称 内容 主な生物
絶滅 EX すでに絶滅した種 ニホンオオカミ、ニホンカワウソ
野生絶滅種 EW 飼育・栽培されている、または自然分布ではないものが野生化した状態でのみ存続 クニマス、トキ
絶滅危惧ⅠA類 CR ごく近い将来野生での絶滅の危険性が極めて高いもの クロサイ、ツシマヤマネコ
絶滅危惧ⅠB類 EN ⅠA類ほどではないが、誓い将来に野生での絶滅の危険性が高いもの ウナギ、トラ
絶滅危惧Ⅱ類 VU 絶滅の危機が増大している種 メダカ、オオクワガタ
準絶滅危惧 NT 現時点では絶滅の危険は小さいが、生息条件の変化によって「絶滅危惧」になる可能性がある種 トノサマガエル、ニホンイシガメ
データ不足 DD 評価するための情報が不足している種 ドジョウ、オシドリ
絶滅のおそれのある地域個体群 LP 孤立した地域個体群で、絶滅のおそれが高い種 四国のツキノワグマ

(表1)参考:環境省 環境省レッドリスト2020の公表について

世界の絶滅危惧種

絶滅危惧種は年々増加していますが、その原因は地域によって異なり、開発途上国などでは日本では少ない密猟や密輸が原因の場合も多くあります。
ゾウの牙やサイの角を狙うことや、ペットとして海外へ販売する目的で乱獲されること、また、ハンティング目的での乱獲も個体数が減少する原因となっています。
主な絶滅危惧種を紹介します。

<クロサイ>
角を目的とした密猟によって激減し、生息していた27ヵ国中、15ヵ国で絶滅しています。(※注1)

<アフリカゾウ>
象牙を目的とした密猟によって激減し、1970年代から1980年代にかけて年間10万頭から20万頭が殺されたといわれています。また、生息地の開発も生息数の減少の原因とされています。(※注1)

<トラ>
20世紀初頭には、世界に10万頭が生息していたといわれていますが、骨が漢方薬の材料とされ、高値で取引されるため捕獲されました。また、毛皮を狙った密猟や生息地の減少によって2010年には3,200頭まで激減しました。(※注1)
(※注1)参考:WWFジャパン 野生生物の保全

<レッサーパンダ>
野生での生息数は2,500頭から10,000頭と推定されています。レッサーパンダは森林破壊の影響、毛皮やペットを目的とした密猟、また、出生数が1頭から2頭と少ないことも生息数の回復が難しい原因とされています。(注1)
(注1)参考:静岡市 レッサーパンダの現状

チンパンジーやチーターなど、多くの野生生物が絶滅の危機に瀕していますが、野生生物の保護活動も盛んに行われています。その結果の一例として、ジャイアントパンダは、2016年に絶滅の危機がワンランク引き下げられました。

日本の絶滅危惧種>

日本には3,774種もの絶滅危惧種がいます。日本での野生生物の絶滅危機の原因は、環境汚染や外来種による影響、肉食獣が少ないためにシカやイノシシなどによって植物が多く食べられることが挙げられます。
また、人が管理することで環境のバランスを保っていた里山の環境が、高齢化などによって人手不足となり、里山の管理が出来ずに生態系のバランスが崩れていることなどが挙げられます。
日本で絶滅の危機が高まっている種を紹介します。

<イリオモテヤマネコ>
生息地の減少や交通事故、また飼い猫との間での感染症によって激減しました。2005年から2007年にかけての調査では推定約100頭のみとされています。(注1)
(注1)参考:環境省 イリオモテヤマネコ

<ニホンウナギ>
ウナギも絶滅危惧種です。ウナギの減少理由は、ウナギが繁殖するスピードよりも多く獲っていることや、生息域の開発や温暖化による海水温の上昇によって、産卵場所にたどり着けずに繁殖が出来なくなっていることが挙げられます。(注1)
(注1)参考:WWFジャパン ウナギという魚の絶滅の危機

<メダカ>
水質の悪化や、開発、外来種による捕食の影響を受け、全国的に激減しています。また、メダカの生息数を回復させるためにメダカの放流なども行われていますが、本来その地域に生息していないメダカの放流なども行われており、何万年もかけて形成された遺伝子が交雑する例も発生しています。日本国内でも、関東と関西ではメダカの持つ遺伝子は異なっており、メダカの保全活動を行う際に、正しい知識に基づいた取り組みが必要とされています。(注1)
(注1)参考:環境省 メダカ

<ツキノワグマ>
ツキノワグマは九州では絶滅し、四国でも20頭ほどしか生息していないとされており、保全が急がれています。ツキノワグマの絶滅理由は主に開発による生息地の減少です。また、生息地の減少により近親交配が続き、遺伝子の劣化が進むことで、絶滅する可能性が高くなってしまいます。
ツキノワグマの日本国内での生息数は10,000頭前後とされており、必ずしも絶滅の危険が高い動物ではありませんが、四国など地域別にみると絶滅の危機があります。(注1)
(注1)参考:WWFジャパン 日本に生息する2種のクマ、ツキノワグマとヒグマについて

そのほかにも、タンチョウヅル、アオウミガメ、クロマグロ、ツキノワグマコウノトリ、ヤンバルクイナ、シマフクロウなども絶滅が危惧されています。
参考:環境省 国内希少野生動植物一覧
雪の大地を悠々と歩く2羽のタンチョウヅル

絶滅が間近に迫る絶滅危惧種3選

絶滅危惧種でも、とくに生息数が少なく絶滅が近いとされている生物を紹介します。

<キタシロサイ(ケニア)>
残り2頭。どちらもメスの親子です。繁殖適齢期は過ぎていますが、凍結した精子での繁殖が試みられています。(注1)

<コガシラネズミイルカ(メキシコ)>
残り約10頭。しかし、昔から遺伝的多様性が低く近親交配に耐えられるため、違法漁業などによる死亡がなければ、頭数回復が可能とされています。(注2)

<アメリカアカオオカミ(アメリカ)>
野生では約17頭。人工的な繁殖により生まれた4頭が自然復帰しています。しかし、別の4頭の大人のアメリカアカオオカミを野生復帰させたところ3頭が交通事故で死亡し、1頭が私有地で射殺されています。(注3)

(注1)参考:ナショナルジオグラフィック 絶滅寸前のサイ、冷凍精子でハイブリッド胚を作成
(注2)参考:ナショナルジオグラフィック 残り10頭のコガシラネズミイルカ、違法な漁やめれば絶滅回避可能
(注3)参考:ナショナルジオグラフィック 世界で最も絶滅に近いオオカミ、復活計画が進行中

絶滅危惧種を守るための取り組み

生体系を構成する生物の一種が絶滅、激減するなど、生態系のバランスが崩れてしまうと、その種に依存するほかの種にも影響が出てしまいます。そのため、生態系の保全と絶滅危惧種を守るために、世界中でさまざまな取り組みが行われています。

日本でも、絶滅危惧種を守るための法律である「種の保存法」が平成5年に制定されました。
ここでは、日本と世界で行われている取り組みを紹介します。

絶滅危惧種を守るための法律「種の保存法」

国内外の絶滅のおそれのある野生生物の種を守るため、1993年4月に「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」(種の保存法)が施行されました。
2020年には、種の保存法に基づいて指定される「国内希少野生動植物種」は約350種になっています。

国内希少野生動植物種は、法律により頒布目的の陳列、捕獲、譲渡、販売、採取、殺傷、損傷、輸出入が原則禁止されています。(注1)
2017年の法改正で「提案募集制度」が導入されました。これにより、一般国民が、「国内希少野生動植物種」の候補を国に提案できるようになり、2019年に新たに63種が選定されています。

また、販売目的のみを禁止する「特定第二種国内希少野生動植物」というものが新たに設けられました。「第二種」とは、国内希少野生動植物のうち、生息地、生育地の環境が消滅や悪化していても、個体数は減っておらず、かつ繁殖による個体数の増加が見込まれる種のことです。
この第二種の販売目的ではない捕獲が可能になり、調査や教育による捕獲をすることで保全活動を行うことができます。(注2)

(注1)参考:環境省 種の保存法の概要
(注2)参考:WWFジャパン 日本の希少種63種が新たに法律上の保護対象に

絶滅危惧種を保護する生息域外保全

絶滅危惧種を安全な施設に保護し、育てて増やすことによって絶滅を回避する方法を「生息域外保全」といいます。安全な施設とは、動物園、水族館、植物園などの飼育、栽培の専門施設です。
そして、増やした生物を生息地に戻す「野生復帰」の取り組みも行われています。

生息域外保全には4つのステップがあります。

1.長期的な計画と十分な準備
生物の飼育、栽培の専門家によって、長期的な計画を立てます。生息域外保全の多くは10年以上となる取り組みのため、さまざまなデータに基づいて、十分な準備を整える必要があります。

2.野生生物の慎重な確保
現地の環境と対象となる絶滅危惧種へ悪い影響を与えないように、保護する生物を確保します。

3.飼育、栽培と増殖
保護施設では、生物の「自然の性質」を失わないようにすることが重要です。いつでも生息地に戻せるよう、人に慣れさせないように育て、繁殖を行います。また、「自然の性質」を保ちながら野生生物を育てるために、広いスペースが必要になります。そのため、動物園や水族館で普段目にする展示スペースの裏にある飼育場の「バックヤード」で、絶滅危惧種の飼育や栽培を行っています。

4.生育地への野生復帰
施設で育てた生物を生息地に戻すことです。
しかし、現地でのエサとなる生き物を減少させることや、病気や寄生虫を持ち込む危険もあるため、慎重に野生へ戻すかの判断をします。環境に悪影響を与えると判断した場合、野生復帰を行わないこともあります。
すべてのステップは、生物学的なデータをもとに取り組まれます。また、近年は、遺伝子の解析なども重要となっています。(注1)
(注1)参考:環境省 日本の絶滅危惧種

水族館でのフンボルトペンギンの保全活動

フンボルトペンギンは絶滅危惧種に指定されています。そのため、下関にある水族館「海響館」では、フンボルトペンギンの保全活動を行っています。
保全活動として、半永久的保存が可能な凍結精子を用いて人工授精を行い、世界初となるフンボルトペンギンの人工授精に成功しています。

また、海響館とチリ国立サンチアゴ・メトロポリタン公園が協力し、チリでのフンボルトペンギンの飼育下での繁殖を支援することで、野生地での研究や保全に貢献する国際協定を結んでいます。
海響館における「フンボルトペンギン特別保護区」での飼育、繁殖技術はフンボルトペンギンの保護につながるため、チリ国立サンチアゴ・メトロポリタン公園より「生息域外重要繁殖地」の指定を受けています。

参考:市立しものせき水族館海響館 フンボルトペンギンの人工授精の技術精度向上に成功しました!!
海の中で寄り添いながら泳ぐ2羽のフンボルトペンギン

WWF トラの保護活動

20世紀初頭、世界には10万頭のトラが生息していましたが、2010年には約3,200頭と激減しています。トラの減少の主な原因は森林破壊、密猟、違法取引です。
トラの生息地の一つ、インドネシアのスマトラ島では、1985年に2,540万ヘクタールの熱帯林がありましたが、半分以上がすでに消失しています。また、高価な薬の原料となるトラの骨、毛皮を狙った密猟も横行しています。

トラには数種類の亜種が存在します。亜種とは、同じ生物種でも、生息する環境によって、身体的な特徴などに違いが発生したものです。
トラの亜種として、ベンガルトラ、シベリアトラ、アモイトラ、インドシナトラ、マレートラ、スマトラトラ、カスピトラ、バリトラ、ジャワトラがいますが、バリトラ、ジャワトラ、カスピトラは絶滅しており、アモイトラもほぼ絶滅したとみられています。

このようなことから、2010年に野生のトラが生息している国々が集まり、2022年までにトラの個体数を倍増させる国際目標「TX2」が設定されました。この目標を達成するために各国で保全活動が行われ、2022年には推定4,500頭までトラの生息数を増やすことが出来ています。
特にネパールでは、2009年には121頭だったトラを増やすために、生息地の保全、地元住民との協働、密猟の防止、そしてトラの生息地を自然環境でつなぐコリドー(緑の回廊)の設置などが行われた結果、2022年には353頭に増えています。しかし、トラの生息地は現在も大幅に減っており、100年間で約95%が失われ、生息地の回復も求められています。

参考:WWFジャパン 残りおよそ3,000頭。絶滅に瀕したトラを救うために。

EUにおける野鳥指令と生息地指令での生物多様性保全の取り組み

EUでの生物多様性の保全と再生の取り組みとして、1979年の「野鳥指令」と、1992年の「生息地指令」によるヨーロッパ・エコロジカルネットワークの形成という法政策が実施されています。エコロジカルネットワークとは、自然条件のいい場所を生物多様性の拠点とし、その拠点を相互に連結させることです。(注1)

野鳥指令は、野鳥にとって生息環境が良好な状態を維持することを目的としており、絶滅危惧種の野鳥のほか、渡り鳥のための特別保護地域の指定を各加盟国に求めています。また、生息地指令では、生物多様性保全の実現のために保全特別地域によるエコロジカルネットワークを形成し、生物多様性保全を目指しています。(注2)

実際に、これらの取り組みによって、かつては稀にしか確認できなかったウ、サギ、ノスリといった鳥を大都市でも見ることができるようになっています。(注3)
また、2015年には絶滅危惧種であるニシハイイロペリカンが数十年前と比べ、約5倍の2,500の繁殖ペアができ、カオジロオタテガモは1977年の22羽から2,000羽以上と増加が確認されています。(注4)

(注1)参考:環境省 エコロジカル・ネットワークとは?
(注2)参考:環境省 諸外国における自然再生事業の特徴
(注3)参考:一般社団法人バードライフ・インターナショナル東京 野鳥にとってトーロッパをより安全にしてきたEUの野鳥指令が今、議論となっている
(注4)参考:一般社団法人バードライフ・インターナショナル東京 EUの野鳥保護関連法が絶滅危惧種を守っていることを科学者が証明

絶滅危惧種を守るためにできること

世界中で多くの生物種が絶滅の危機を迎えている現在、多くの国、専門機関、団体が絶滅危惧種を守るための取り組みを行っています。しかし、保全活動の前に、私たちが普段の生活でできることを考えることも重要です。

絶滅危惧種が発生する理由の多くは、私たちの生活環境にあります。自然環境を守るための行動や、野生生物との共存を意識した生活をすることで、自然環境を守り野生生物を守ることにつながります。
ここでは、野生生物を守るためにできることを紹介します。

ペットを自然に放さない

ペットとして飼育された生物は、そもそも野生で生きていくことが難しく、環境に適応出来ずに死んでしまうことがあります。
また、環境に適応できたとしても、本来生息していた生物に影響を与えてしまうことがあるのです。

例えば、ペットとして飼われていた生物が、エサとなる植物や動物を食べることで、本来その地域に住んでいた生物のエサが減ってしまいます。そして、生息地の縄張り争いや、新たな感染症を持ち込む可能性もあることから、ペットとして飼われた生物を自然に放すことは危険なのです。

ペットを飼う際は、必ず最期まで面倒を見られるかを考えましょう。そして、何らかの理由で飼うことが難しくても、次の飼い主を探すなどの責任を果たす必要があります。

野生の生き物に餌を与えない

自然が多い地域に行くと野生動物に出会うことがあります。しかし、野生動物に安易にエサを与えることはやめましょう。
野生動物が人からエサをもらえると学習することで、人の住むエリアに出没する機会が増えてしまいます。

野生動物が人の住むエリアに出没すると、直接動物から危害を加えられる危険性、田畑の農作物が荒らされる可能性、野生動物からの感染症などの問題につながります。

環境省でも野生動物へのエサやりや、接近の禁止を呼びかけています。
国立公園や生物保全のための特別地域では、エサやり行為などに対しての罰則もあります。

旅行先でも、生き物の加工品などは購入しない

海外への旅行では、さまざまな商品を購入する方が多いですが、野生生物への影響に配慮されているかを確認しましょう。
動物の毛を使った製品や、ワニやヘビの皮、剥製や象牙などを加工して作られたものを購入することで、次の製品を作るために新たな動物を犠牲にしてしまうことや、密猟や密輸につながってしまうのです。

海外での買い物の際には、由来が不確かな動植物の購入は避けることが賢明です。

野生生物の保全は私たちの生活にもつながります

私たちの生活を豊かにするために、自然環境と多くの野生生物が影響を受けています。
絶滅する種が多くなり生物多様性が失われることは、自然環境からの恩恵を受ける私たちの生活も危ぶまれてしまうのです。

将来の私たちの生活と、野生生物を守るために、自然環境に配慮するなど一人一人が考え、野生生物や環境への影響を減らす生活をしていくことが重要です。

この記事の執筆者
EARTH NOTE編集部
SDGs情報メディア
「SDGsの取り組みを共有し、循環させる」がコンセプトのWEBメディア。SDGsの基礎知識や最新情報、達成に取り組む企業・自治体・学校へのインタビューをお伝えし、私たちにできることを紹介します。
身近なアイデアを循環させて、地球の未来をつなげていきましょう。皆さんと一緒に取り組んでいけたら幸いです。
この記事のタイトルとURLをコピー
関連するSDGs
pagetop