男女の賃金格差の現状と解決策とは?改善のための日本の取り組みを紹介
男女の賃金格差の改善は、持続可能な開発目標(SDGs)の実現にも大きく貢献します。平等な労働環境は企業のパフォーマンス向上や多様性の促進に繋がり、社会の持続可能な発展を後押しするでしょう。
しかし、日本は世界から見ても男女の格差が大きく、企業は改善のためにさまざまな取り組みをしていますが、他国と比べて成果は小さいといえます。
この記事は日本で男女の賃金格差が大きい理由とその解決策を提示し、具体的な企業の取り組みについてまとめています。これから男女の賃金格差の改善に取り組みたい人は、まずは原因を知ってから対策を練りましょう。
目次
日本における男女の賃金格差の現状
日本では男女の賃金格差は大きく、男女平等とは言い難い状況です。これは世界と比較しても同じであり、今後も改善に努めるべき課題となっています。
この問題を解決するには世界と比較して日本はどの程度遅れているのか、国内の推移は変化していないのか、日本における男女の賃金格差はどの程度あるのか、これらの現状を知る必要があります。
世界と比較した日本の賃金格差は約2倍
OECDによると男女の賃金格差の世界平均スコアは11.4なのに対して、日本は22と倍近い数値となっています。アメリカ・イギリス・フランスなどの先進国は14~16程度なのと比較すると、日本は頭一つ抜けて高い傾向です。
これは女性の経済的自由が得られない可能性だけでなく、ジェンダー平等の観点から見ても問題視されるものであり、改善すべき課題といえます。
出典:OECD 男女間賃金格差
日本国内での男女の賃金格差の現状
国内での賃金格差は、2021年時点で男性の平均水準を100とした場合、女性は75.2%といった結果となっています。たとえるなら、10万円の給料を男性がもらえるのに対して女性は約7万5千円しかもらえていないのと同じ状況です。
2011年から2021年までの推移で見ると70.6%から75.2%と上昇傾向ではありますが、男性との賃金格差はまだまだ大きな開きがあります。日本は先進国といわれていますが、男女平等の取り組みでは他国と比べても進みが遅く、課題が多く残されている状態です。
出典:厚生労働省 男女間の賃金格差解消のためのガイドライン
出典:内閣府 男女共同参画局 男女間賃金格差(我が国の現状)
女性の就業率は改善傾向
女性の就業率は上昇傾向となっており、雇用に関しては改善が見られています。
財務省のデータによると、15歳~64歳までの日本における女性の就業率は2020年で70.6%、2000年時点では56.7%でしたので、推移としては年々改善傾向です。カナダを除いたG7の平均は63.4%なので、日本は先進国の中でも平均より高い数値であることから一定の成果をあげているといえます。
日本は賃金格差に関してまだまだ課題が多く残っていますが、雇用問題に関しては一歩ずつ前進しています。まとめると、日本の女性は働く機会はある反面、待遇面に難ありという一部のみ発展途上というのが現状です。
出典:財務省 男女間賃金格差の国際比較と日本における要因分析
現状における課題・問題点
我が国の男女の賃金格差に関する課題は「正規雇用と非正規雇用の比率」「管理職の比率」「女性の就業率」「家事に費やす時間」の4つがあげられます。
これらの課題に対して、今どのような状況なのかを把握することで、次のステップに進めます。
正規雇用と非正規雇用の比率は男性の倍以上
25歳~34歳の女性は非正規雇用の割合は34.3%、男性は14.4%と男性の倍以上です。役職に就くであろう35歳~44歳の女性は49.6%で男性は9.0%、働き盛りといえる20代から40代の間でこれほどの男女差があるなら賃金格差が生じるのは無理のないことです。
就業率の改善だけでなく、女性の正規雇用の割合も増やしていかないと男女の賃金格差は改善されないでしょう。
出典:内閣府 男女共同参画局 男女共同参画白書令和3年版 年齢階級別非正規雇用労働者の割合の推移
管理職の比率は低い
世界と比較すると管理職に就いている女性の割合は、日本は13.3%、アメリカは41.1%、イギリスは36.8%、フランスは34.2%です。諸外国と比べて女性の割合は低い水準といえます。
※日本とアメリカは2020年、その他の国は2019年時点でのデータを引用(内閣府 男女共同参画局 就業者及び管理的職業従事者に占める女性の割合(国際比較)より)
しかし、国内の上場企業に勤める女性で役員に就いている割合は2006年で1.2%から2020年で6.2%と改善されています。民間企業の係長クラスの女性は1.3%から21.3%、課長クラスは2%から11.5%、部長クラスは4.6%から21.3%と推移だけ見れば上昇傾向であり、今後の改善が期待できます。
それでも世界と比べるとまだまだ差は開いているので、油断はできません。これからさらなる努力が必要となるでしょう。
出典:内閣府 男女共同参画局 就業者及び管理的職業従事者に占める女性の割合(国際比較)
出典:内閣府 男女共同参画局 上場企業の役員に占める女性の割合の推移
出典:内閣府 男女共同参画局 階級別役職者に占める女性の割合の推移
女性の就業率は格差が大きい
女性の就業率の推移は改善傾向となっていますが、問題がないわけではありません。OECDによると、2019年の就業率では日本の男性は3位、女性は13位とやはり男女で差が開いています。
さらに、男女別の就業率格差を出すと、世界で9番目に格差が大きい数値です。日本のこれまでの推移を見れば改善傾向である就業率も、まだまだ大きな課題として残っているといえます。
出典:内閣府 男女共同参画局 男女共同参画白書 令和3年版 就業をめぐる状況
家事に費やす時間が多い
OECDが2020年にまとめたデータによると、日本では家事に費やす時間が男性よりも女性の方が圧倒的に多いとデータで出ています。1週間で家事に割いている時間は男性で41分なのに対して、女性は224分です。
世界全体で女性の方が家事に時間を割いている点は変わりないですが、男女差が日本は激しく5.5倍にもなります。家事と仕事も含めると日本女性は496分、日本男性は493分です。これは諸外国の中でもトップクラスで労働時間が長いことを意味します。
ちなみに食事や睡眠時間などの身体を休ませる時間に関して日本女性は626分とされ、世界の女性の中では最も短い時間です。総合的に見れば、日本の女性は家事も仕事も働き過ぎで、かつ休息をとる時間が短いということになります。
出典:内閣府 男女共同参画局 男女共同参画白書令和2年版 生活時間の国際比較
男女の賃金格差が起こるのはイメージからくる偏見
なぜ我が国は男女の賃金格差が他国と比較しても大きいのでしょうか。考えられる理由は長年根付いてしまっている男女のイメージが考えられます。
男性は黙って仕事、女性は家を守る、子供の面倒は女性の仕事、結婚したら女性は家庭に入るのが当たり前。現在では徐々に古い考えになってきていますが、日本人が持つ男女のイメージはまだまだ残っています。
性別からくる役割のイメージ
男女共同参画のデータではアメリカ、ドイツ、スウェーデン、日本における男女の格差やジェンダー平等に関する問題に対して「男女の役割分担で社会的に抱くイメージや古くからの習慣が強い」のが理由だとどの国も感じています。
2つ目の理由は国ごとに分かれていて「男女が育児や家事をするための制度が整っていない」「男性の男女差別に対する意識の低さ」「男性は仕事優先、企業を第一に考える意見が根深い」などがあげられています。
日本で多い理由は「男女の役割分担で社会的に抱くイメージや古くからの習慣が強い」と「男性は仕事優先、企業を第一に考える意見が根深い」の2つです。どちらの理由も制度が整っていないなどの物理的な理由ではなく、古くから抱いてきた男女のイメージから生じています。
ジェンダー平等への取り組みをSDGsの目標に掲げていても、いまだ「女性は家庭を優先する」というイメージから抜け出せずにいるのです。
出典:内閣府男女共同参画局 男女共同参画に関する4か国意識調査
採用・人事面で男女の偏りがある
男女の賃金格差は、女性の非正規雇用の多さと管理職の割合の低さが原因となり、物理的に社会で活躍できないことも理由にあげられます。
日本はパートタイムなど非正規雇用の比率が女性の方が多く、結果として女性の給料が低い傾向にあります。さらに勤続年数も男性よりも低いので、スキルの習得やキャリア形成にかける時間も十分に持てず、出世が難しいのが原因の1つです。
さらに女性は家事に割く時間が多く、社会で活躍する時間が少ない背景も合わさり、結果として労働時間の長い男性が活躍し女性は機会を逃してしまうのです。
生活時間が長い
生活時間とは家事や育児など生活に関わる時間のことです。日本女性は家事に割く時間が多く仕事に割ける時間が少ないことは前の章で述べましたが、さらに子どもができると育児の時間も加算されます。
内閣府による男女共同参画白書令和2年版のデータでは、6歳未満の子どもがいる夫婦で、家事と育児に割く時間を割り出したものがあり、男性は育児に49分、家事に34分割いているのに対して、女性は育児に3時間45分、家事に3時間49分とかなり差があります。
世界と比較しても、家事と育児に書ける時間が多く、日本女性は家事と育児の時間を合わせると7時間4分、次にドイツで6時間11分、イギリスが6時間9分、アメリカが5時間48分です。世界的に見ても日本女性は家事に多くの時間を割いています。
出典:内閣府 男女共同参画局 男女共同参画白書令和2年版 6歳未満の子供を持つ夫婦の家事・育児関連時間
男女の賃金格差の解決策
男女の賃金格差をなくすためには、男女の区別なく働ける環境づくりと男女の役割へのイメージを払拭することです。
そのために、企業が男女の格差について自覚できる体制つくりや労働環境を整える必要があります。
格差の見える化の促進
実態が見えていないと問題を認知できないので、男女の格差はなくなりません。まずは社内で男女格差がないか現状を透明化して、課題に気付ける状態にする必要があります。
令和4年7月に女性活躍推進法の制度改正が行われ、労働者が301人以上いる事業主を対象に男女の給料の差異を公表することが義務になりました。この改正により、今まで不透明だった男女の賃金格差をはじめとする社内の男女格差をデータとして客観的に把握できるようになります。そして、企業に現状を実感させて、改善に努めさせることができるのです。
公正で客観的な評価制度
男女の賃金格差をなくすために、性別のイメージに引っ張られない客観的で公正な評価制度を確立することが重要です。
たとえば、職種・勤続年数・学歴・年齢など項目ごとに整理された賃金表の作成や透明化された昇給基準を作ることなどがあげられます。他にも一部の労働者に偏らない生活手当などの福利厚生の導入、出産・育児から復帰した人が不利にならない人事評価の検討などに取り組むことで公正な体制づくりの土台になります。
これらが不透明だったり明確な基準がなかったりすると、無意識の中で男女の格差が生じてしまい、人事評価や昇給で偏りができる可能性があるので要注意です。
明確な基準とそれが評価される労働者に内訳が見えるようにすることで、全ての人に公正な体制づくりができます。
労働環境の見直し
日本女性は世界から見ても労働時間と家事、育児などの生活時間に多くの時間を割いています。長時間労働は働いている女性たちに追い打ちをかけることになるので、解決策としてワークライフバランスを推進する必要があります。
手段として残業のない効率的な業務内容の見直しや在宅ワークなどの働く環境を整える取り組みが重要です。働く選択肢を増やすことで仕事と生活を調和させ、両立できず埋もれてしまった人材が再び活躍できる環境を用意することで、能力はあるにも働けない女性たちの社会参加を促せます。
男女のイメージに依存しない文化作り
古い慣習やイメージからできる男女の役割によって、日本では管理職が男性で構成されているなど事実上の男女格差を生んでいます。これをなくすために企業が積極的に施策をすることをポジティブアクションと呼びます。男女格差を解決するためには、こうした積極的な取り組みが必要です。
具体的な施策は以下になります。
- 女性の管理職割合を増やす
- 家庭を持っている女性でも昇進・昇給できる人事評価制度を確立する
- 男女ともに働きやすい職場環境を整える
- 育児休暇・出産で復帰しやすい労働環境を作る
- 男女比で女性が不足している部署には積極的に女性を配置する
- 女性のスキルアップのため研修などを行う
このような具体的な取り組みを企業側から率先して実施することで、男女の格差を解消できます。
格差をなくすための取り組み6選
日本が取り組んでいる男女格差をなくすための取り組みは沢山あり、その中の成功事例を紹介します。
格差をなくすための取り組みをするさいに、成功事例を参考にすることでスムーズな導入が期待できます。自社と合っている企業を参考にして導入を検討しましょう。
日本の男女活躍推進法
男女の賃金格差をなくすため、政府は課題の「見える化」により問題点を自覚して改善できるようにするための施策をし、労働者が301人以上の企業に対して公開しなければならない項目を増やしました。これにより男女間で収入の差が生じないように公平性を保つことを企業に求めています。
公開を義務化された項目は以下になります。
大項目 | 小項目 |
女性が働きやすくキャリアアップにつながる機会の提供 |
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仕事と家庭の両立 |
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これらの大項目ごとにある小項目を1つ以上公表させることで、男女での差が生じない職場づくりを目指しています。
さらに男女間の格差を解消するために3つの視点でガイドラインを作成しました。
施策 | 具体例 |
賃金や雇用管理における制度面の見直し |
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賃金や雇用管理にける運用面の見直し |
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ポジティブアクションの推進 |
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出典:厚生労働省 報道発表資料 男女間の賃金格差解消のためのガイドラインを作成
具体的な例をあげることで、男女間の格差をなくすための現実的な対応策を促しています。
日本アイ・ビー・エム株式会社の女性キャリア形成
日本アイ・ビー・エム株式会社は、結婚や育児などを理由にして女性がキャリア形成を諦めないように、さまざまな取り組みをしました。
企業風土を改善するために、女性自らが課題分析をして在宅勤務の導入などの職場環境の見直しから施設内に保育所を設立するなどの福利厚生まで、実現可能な施策を行っています。
女性活躍のための取り組みとして、柔軟な働き方ができるように在宅勤務とオフィス勤務を業務状況に合わせて選択できるようにワークライフインテグレーションを実施。結果として在宅勤務比率は2021年で約80%まで改善されました。
さらに女性の管理職比率を向上させるため、2024年までに女性管理職の割合を22%まで引き上げることを目標に設定し、2021年時点で17.6%まで達成。目標達成に向けて、育成プログラムの実施やプログラムを受けた女性職員の昇格状況の集計などを行い改善に努めています。
出典:日本アイ・ビー・エム株式会社 女性の活躍を支援する取り組み
株式会社資生堂の子育て中社員サポート
株式会社資生堂は、社員全員が専門性とリーダシップを発揮できる職場を目指し、多様な働き方に対応できるように努めています。
子育てをしている社員に向けては以下の取り組みをしています。
- 育児休業制度:子どもが3歳まで最大5年間の育児休業取得可。特別な事情で延長も可能。
- 産前産後休暇:産前6週間と産後8週間の有給休暇取得が可能。
- 短期育児休業制度:子どもが3歳まで最大2週間の有給休暇取得可。パートナーも特別休暇取得可能。
- 育児時間制度:子どもが小学校3年生まで1日最大2時間の勤務時間短縮可能。
- 店頭販売スタッフへのサポート:カンガルースタッフの派遣により、勤務時間短縮時の販売業務を代打で支援。
- 事業所内保育所:保育施設の設置により、常時保育と一時保育を提供。
- 育児補助金:保育料や教育費用の補助金支給(カフェテリア制度)。
- 授乳のための福利厚生:授乳スペースの提供と搾乳機の購入補助。
- 看護休暇制度:子どもの看護や健康診断のための有給休暇取得可能。
- 配偶者同行制度:小学校3年生以下の子どもを持つ社員のパートナーの同行支援。
- 異動に関する運用ガイドライン:育児中や介護中の社員の転居を伴う異動に配慮。
このように家庭を持った社員が安心して働けるような施策をしており、出産から育児までにかかる経済的負担や身体的負担を有給休暇や補助金制度で軽くしています。さらに保育園や授乳スペースを設けることで、子どもがいても働きやすい環境を整えているのです。
日本マクドナルド株式会社の女性が働ける環境づくり
日本マクドナルド株式会社では、繁忙期やプライベートの予定に合わせて労働時間を調整できるように変形労働時間勤務制度やフレックス勤務制度、育児時短勤務制度を導入しています。これらの制度により職位関係なくワーキングママのキャリアアップが達成されています。
女性がより働きやすい環境づくりの一環として取り組んでいるのが「ファミリーサポート制度」「スタッフ公募制度」「WELBOXの導入」です。
ファミリーサポート制度では、出産や育児、介護に関する休暇や短時間勤務が提供されています。育児休暇は最長1年6か月まで取得でき、育児短時間勤務は小学校卒業まで利用可能です。また、誕生日特別有給休暇やリフレッシュ休暇などもあり、ワークライフバランスのサポートまで充実しています。
スタッフ公募制度では、資格や条件を満たせば誰でも応募できる制度があります。これは自身のキャリアを真剣に考えて、目指すキャリアにチャレンジして実現するための制度です。専門知識の習得からリーダーシップスキルまで、多彩な能力を向上させるためのプログラムが用意されており、多くの経験を積みながら成長できます。
また、総合福利厚生メニュー「WELBOX」では、社員の働き方をサポートするために宿泊やレジャー、生活や健康支援のプログラムが提供されています。個々のニーズに合わせて利用できるプログラムが用意されており、手軽に利用できる福利厚生サービスです。
以上の取り組みにより、従業員のファミリーサポートやキャリア開発を支援し、より良い働き方と充実した福利厚生を提供しています。
出典:厚生労働省 1年単位の変形労働時間制度
フレックス勤務制度:あらかじめ決まっている一月の労働時間のなかで、ライフスタイルに合わせて出勤と退勤を自由に選べる制度です。いつもより遅く出勤したり好きな時間に休憩時間を設けたりできます。全員が出勤する「コアタイム」といつでも働いて良い「フレキシブルタイム」を使い分けることで、柔軟な働き方ができるシステムです。
出典:厚生労働省 1 フレックスタイム制とは
育児時短勤務制度:3歳未満の子どもがいる人を対象に勤務時間を短縮できる制度です。1日の勤務時間を6時間以下にしなければいけないと定められており、適用できない場合はフレックスタイム制度や出勤・退勤時間の繰り上げなどの措置をしなければいけません。ただし、入社1年未満の人や週日勤務以下の労働者など対象外の人もいます。
出典:厚生労働省 育児・介護休業法の概要
株式会社しまむらの女性管理職の増加
株式会社しまむらは、女性職員が活躍できるように女性の管理職比率20%以上を目標にさまざまな取り組みをしています。
女性社員が活躍できるための支援として、管理職に向けて育児短時間勤務制度を導入し社内報で周知させ、12名の管理職者が利用しました。さらに「子の休憩室利用」と「保活サービスの子育てみらいコンシェルジュ」を導入。導入するだけでなく作った制度を社内に周知させることで活用を促しました。
他にも能力のある主婦層を想定して、高い処遇と仕事と家庭を両立できるシフト制を取り入れた「M社員制度」や管理職を3年以上務めた社員を対象に結婚・介護などが理由で退職しても10年の間は再雇用できる「再雇用制度」など、女性が働きやすい職場づくりに励んでいます。
これらの取り組みの成果とした、2023年2月時点で管理職の女性比率は15%、有給休暇取得率75.4%を達成しています。
株式会社イトーヨーカ堂のえるぼし認定の取り組み
株式会社イトーヨーカ堂は、女性の活躍を推進するためにさまざまな取り組みをしています。理由は日本の女性管理職の割合が低いこと、利用客の多くが女性であることから女性視点での商品・サービス開発が顧客満足度向上につながると考えたからです。
管理職への啓もう活動として「リ・チャレンジプラン」という育児・介護両立支援制度の周知と女性登用の意義を伝え、取り組むための環境を整えました。また、女性従業員同士のコミュニケーションの促進と情報共有の場として「リ・チャレンジプラン」を利用している従業員との意見交換することで育児中の経験が活かされる機会を作っています。
管理職の登用も積極的に行い、2016年で係長以上の役職に就いた女性の比率は25.3%となり、男性の育児休暇取得率も60%まで改善しました。
またイトーヨーカ堂は、パートタイムの約8割が女性であり、彼らが働きやすい環境づくりとして柔軟性のあるキャリアアップ制度や計画的な教育・育成システムを構築。販売員の基本知識と専門知識が習得できるように教育体制を整えて、正社員の登用とワークライフバランスを推進しています。
こうした取り組みの結果、東京都内初の「プラチナくるみん」企業に認定、パートタイム労働者活躍推進企業表彰で最優秀賞を受賞、女性活躍推進企業の認定マーク「えるぼし」を最高ランクで取得しました。
出典:厚生労働省 くるみんマーク・プラチナくるみんマーク・トライくるみんマークについて
パートタイム労働者活躍推進企業表彰:厚生労働省がパートタイム労働者の活躍を支援している企業を表彰する制度です。成果を上げている企業を表彰することで他の企業に認知させ、取り組みを促進させることが目的です。ランクは「奨励賞」「優良賞」「最優良賞」の三段階で、最優良賞は他の企業の模範になれるほど顕著な成果をあげた企業に贈られます。
出典:厚生労働省 パートタイム労働者活躍推進企業表彰の概要
えるぼし:女性活躍推進法に基づいて、女性が活躍できるための取り組みが一定の要件を満たして優良である企業に贈られる認定マークです。3段階評価で評価項目は「採用」「継続就業」「働き方」「管理職比率」「多様なキャリアコース」の5つがあり、イトーヨーカ堂が認定されたえるぼし(3段階)はこれらすべての基準を満たして、かつ毎年「女性の活躍推進企業ベース」に実績を公表しているという条件をクリアしなければいけません。えるぼし認定を受けた企業は、女性が安心して働ける企業として信頼性が高いとアピールできます。
出典:厚生労働省 えるぼし認定、プラチナえるぼし認定の概要
男女の賃金格差は公正な体制づくりが重要
男女の賃金格差が起きる原因は、古くからある男女の役割のイメージが定着していることで、物理的な環境が整っていないことがあげられます。
解決策としては、性別に依存しない公正で明確な評価基準を設けて能力に応じた昇給システムを確立することです。
さらに、子どもができた女性が仕事と家庭を両立できるための体制づくりも重要です。
日本女性は仕事も家事も多く男性は極端に労働時間が長い傾向があります。夫婦がバランスよく仕事と家事をするために男性は育児休暇などで家事をする時間を作り、女性は家事の時間を男性が請け負った分、キャリアアップに時間を割ける環境を整えなければいけません。
男女のイメージの払拭と女性が評価される人事制度の確立、さらにワークライフバランスを推進させることで、男女の賃金格差は改善されます。こうした取り組みを進めるために、成功している企業の事例を参考にして自社に合った取り組みを進めてみましょう。
身近なアイデアを循環させて、地球の未来をつなげていきましょう。皆さんと一緒に取り組んでいけたら幸いです。