ワークライフバランスの考え方とは?日本の課題と企業の取り組みを紹介

ワークライフバランスの考え方とは?日本の課題と企業の取り組みを紹介

2023.06.01(最終更新日:2024.06.25)
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長時間労働や雇用の格差などの問題が深刻になり「ワークライフバランス」という言葉が浸透してきました。
SDGs目標8「働きがいも経済成長も」を達成するためにも、ワークライフバランスは非常に重要です。
ワークライフバランスとは「仕事と生活の調和」という意味ですが、具体的な考え方と取り組みはどのようなものがあるのかイメージできない人もいるでしょう。

この記事ではワークライフバランスの解説と日本が抱えている課題、そのための解決策についてまとめてあります。
企業の取り組み事例も紹介しているので、ワークライフバランスについて知りたい人、これから取り組みをしたい人にとって必要な知識が得られます。

ワークライフバランスとは

一軒家のダイニングテーブルで、お父さんがPCを開きながら、お母さんと娘さんと一緒にこちらを見ながら微笑む様子
ワークライフバランスとは「仕事と生活の調和」のことを指します。人々が充実した気持ちを持って仕事をしつつ、私生活でも充実した毎日を送るために考えられた価値観です。

プライベートを犠牲にして仕事のために生きるのではなく、仕事とプライベートの両方を満たすことを目的としています。得られるメリットとして仕事とプライベートの相乗効果によるパフォーマンス向上や働く時間や場所の選択肢を増やすことによる作業能率の改善、働きやすい職場環境による人材の定着などがあげられます。

ワークライフバランスの取り組みによって、経済的な基盤を整えながら自分の時間も大切にできる公平な社会にすることが目的です。

ワークライフバランスの定義と行動指針

内閣府の「ワークライフバランス憲章」によると「国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会」と定義しています。
出典:内閣府 「仕事と生活の調和」推進サイト 仕事と生活の調和とは(定義)

ワークライフバランスを実現するために必要とされている条件は3つあります。

  • 就労による経済的自立が可能な社会
  • 健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会
  • 多様な働き方・生き方が選択できる社会

「就労による経済的自立が可能な社会」とは、若者に焦点を当てて非正規雇用などの就業形態にかかわらず、十分な給料がもらえることです。
「健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会」は、長時間労働の削減やメリハリのある効率的な業務をすることで仕事以外の時間も大事にできる環境づくりを重視しています。
「多様な働き方・生き方が選択できる社会」とは、子育て期や中高年期の女性たちが柔軟に働けるための社会的基盤を整えることを目指しています。

この3つが実現することで、一人ひとりが仕事に対して楽しさや達成感をもって働き、同時にプライベートを充実させる時間を確保できる世の中になるのです。

出典:厚生労働省 「仕事と生活の調和推進のための行動指針」

必要とされる6つの理由

なぜワークライフバランスが必要とされているのか、その理由は6つあげられます。

理由 概要
働き方の二極化 正規雇用と非正規雇用の二極化が激しい
共働き世帯の増加と変わらない働き方・役割分担意識 共働き世帯が増加しても、対応するための支援が整っていない
仕事と生活の相克と家族と地域・社会の変貌 仕事で忙殺されて家族や地域で過ごすことが難しく、バランスがとれない
多様な働き方の模索 ディーセントワーク(人間らしい働き方と働く環境の確保)を推進したい
多様な選択肢を可能とする仕事と生活の調和の必要性 さまざまな働き方を選択できるようにして、仕事の生活の調和を実現したい
明日への投資 企業において有能な人材の確保・育成・定着を促したい

出典:内閣府 仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章

さらに大きな理由として考えられるのは、男女の仕事に対するイメージが根深く残っており、それによって社会的な支援が整っていないことです。
これらの理由により、仕事と家庭の両立を目指そうとしても人々の意識や環境が整備されておらず、仕事と生活の両立は厳しいものとなっています。

これら6つの理由を明確に知りその必要性を理解することで、ワークライフバランスへの取り組みはより明確になります。

ワークライフバランスのよくある誤解

ワークライフバランスと聞くと、よく「これからは仕事よりも私生活の時間をたくさん持つようにする」と誤解している人もいます。ワークライフバランスとは仕事と私生活の調和を指す言葉なので、具体的な「こうあるべし」という答えはありません。

よくある誤解として以下の3つがあげられます。

  • 仕事とプライベートは分けなければいけない
  • 仕事・プライベート・睡眠時間は8時間ずつ取ることが望ましい
  • 新人の内は仕事7割・私生活3割の比率を心がける

このように、数式のように時間を削って調整したり数字で表したりするものではなく、人生をより豊かにするために一人ひとりにとって丁度いいバランスに調整できる社会にするという概念です。

よって「こうすればいい」といった単純な考えではなく、いろいろな業務内容やライフスタイルを送っても充実できる選択肢を与えられる環境づくりが仕事とプライベートのバランスをとるために必要な視点なのです。

「ワークライフインテグレーション」の考え方と違い

ワークライフバランスと似た用語で、「ワークライフインテグレーション」という言葉があります。
ワークライフインテグレーションとは、仕事と私生活を対立させずに両方を充実させようという考え方です。ワークライフバランスを仕事と私生活の微調整とするなら、ワークライフインテグレーションは仕事と私生活で相乗効果を生み、人生を豊かにするものです。

仕事と私生活に境界線を設けず延長線上のものと認識して、比率でバランスをとるのではなくお互いに混ざり合いながら調和させるのがワークライフインテグレーションです。

ワークライフバランスを推進する4つのメリット

奥まで続くきれいな砂浜で、簡易的なテーブルと椅子で仕事をする麦わら帽子をかぶった男性
ワークライフバランスの促進させることに対するイメージとして「正しいけど、負担になるだけではないか」と感じる人もいるでしょう。ワークライフバランスを推し進めることで得られるメリットは大きく「労働意欲と生産性の向上」「人材確保」「イメージアップ」「個人のスキルアップ」の4つがあげられます。

労働者の意欲と生産性の向上

仕事と私生活の両立が可能となることで、メンタルが安定し充実して日々を過ごせます。その結果、仕事へのモチベーションが向上してより効率的に仕事に励むことが期待できるのです。
勤労意欲が湧くことにより効率的で高いパフォーマンスを発揮し、長時間労働の削減や残業を減らして業務を遂行できます。そして、一人ひとりのやる気が企業の生産性向上につながることが期待できます。

人材の確保ができる

ワークライフバランスを促進させることで、さまざまな働き方ができるようになります。在宅ワークや短時間労働でも働ける環境を整えることで、多様な人材が集まり「どんなライフスタイルでも働ける」という安心感から人材が企業に定着しやすくなります。

「働きやすい職場」を提供することで、離職率が低下し優秀な人材の発掘・獲得につながるのです。

対外的なイメージアップ

ワークライフバランスの推進により、企業には「人材を大切にする会社」「ホワイト企業」という評判がつきます。そして、企業のブランドイメージとなり、内外ともに信用できる企業と評価されます。
こうしたイメージアップは企業の社会的信用が高い証拠となり、新卒採用などで効果を発揮します。

スキルアップの機会を作る

ワークライフバランスが満たされると、仕事と私生活が充実している状態になります。精神的に余裕も生まれるので、人によってはより人生を豊かにするために自己研鑽に励むことができます。

こうした自己研鑽で磨いたスキルやセミナーなどに参加して得た人脈により、労働者はより高いパフォーマンスを発揮できるのです。

日本の取り組みの現状と課題

日本の現状として、共働き世帯が増えたことによる意識の変化に対して企業の取り組みが不足している点があげられます。

ワークライフバランスの現状を知るための背景として、共働き世帯数の推移と男女のイメージからくる役割の変化について触れておくと、共働き世帯の数は1980年から2018年まで上昇傾向で、614万世帯から1,219万世帯と2倍近く増えています。
さらに、多彩な働き方に対する認識として「夫は外で働き、妻は家を守るべきだ」という考えに「反対」または「どちらかといえば反対」と答えた割合は、男性で49.4%、女性で58.5%です。

これらの結果から、共働き世帯数の上昇とともに男女に対するイメージが変わってきているのです。
出典:内閣府 男女共同参画局 第1節 仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)をめぐる状況

では、企業の取り組みについて前述したワークライフバランスの3つの目標に対する達成度を指針ごとに確認すると、全体的に不十分といえます。
「就労による経済的自立が可能な社会」の実現に対しては、目標値を20~64歳の就業率を80%と設定し、82.2%と目標を達成。2020年時点で進捗状況は良好です。
しかし、他の「健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会」と「多様な働き方・生き方が選択できる社会」に対する取り組みではあまり好調とはいえない結果となっています。

「健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会」について評価している指針と達成率は以下の4つです。

指針 目標 達成率
労働時間などの課題について労働者と雇用主とで話し合いの機会を設けている すべての企業 64%(2019年)
週労働時間が60時間以上の労働者の割合 5% 5.1%(2020年)
年次有給休暇取得率 70% 56.3%(2019年)
メンタルヘルスケアに関する措置を受けられる割合 100% 59.2%(2018年)

「多様な働き方・生き方が選択できる社会」への取り組みは6つあり、達成率は以下になります。

指針 目標 達成率
短時間勤務が可能な企業の割合 29% 16.7%(2019年)
自己啓発を実施している労働者の割合 正規雇用:70%
非正規雇用:50%
正規雇用:39.2%(2018年)
非正規雇用:13.2%(2018年)
出産後の女性の継続就業率 55% 53.1%
子育てサービスを提供している数 116万人(2017年) 111万人(2020年)
男性の育児休暇取得率 13% 7.48%(2019年)
夫の家事関連時間(6歳未満の子どもを持つ家庭) 150分 83分(2016年)

出典:内閣府 「仕事と生活の調和」推進サイト 仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)レポート2020

就業率以外の取り組みでは、日本はどれも難しい状況にあることがわかります。特に労働環境に対しては価値観の変化への対応が追いついていません。

企業が達成できない原因として考えられるのは「導入方法が不明確」「コストがかかるor一時的に生産性が下がる」「マネジメントが困難」などの理由があげられます。

導入方法が不明確

日本企業では、ABS(アクティビティ・ベースド・ワーキング)など多様化された働き方の知識や適切な導入方法が確立されていない場合があり、その結果、自社における適切な導入が難しく形だけ導入して上手くいかないことがあります。

ワークライフバランスの取り組みをするためには、自社の課題を分析してステップアップで導入することが重要です。しかし、導入のためのノウハウがなく、自社の状況を分析せずに形だけ導入して失敗するケースもまだまだ見られます。

このような企業側が「何をしていいかわからない」といった導入までのノウハウの無さがワークライフバランスが浸透しない理由の1つです。

ABS(アクティビティ・ベースド・ワーキング)とは、業務内容に合わせて働く場所や時間を自由に決められる働き方のことです。会社の中にデスク以外にも個室やソファなどの空間を設けたり近くのカフェや自宅でも働けるようにしたりといった例があげられます。
注意点として、本当にどこでも良いのではなく、機密情報を扱う場合は個室や会議室を使用するといった業務内容から適切な場所を判断しなければいけないことです。

コストがかかるor一時的に生産性が下がる

リモートワークなど新しい働き方を導入するには時間とコストがかかります。自社にとって適切な制度を導入するための分析や社内調査をしたり責任者を配置したりしなければならず、人件費がかかります。

さらに懸念されているのが、新しい制度を導入することで発生する一時的な生産性の低下です。
導入初期で短時間労働やノー残業デーなどを実施すると、業務負担は変わらず時間だけが無くなる可能性があります。達成したい業務を完了できず一時的に生産性が低下する恐れがあるのです。

導入する前に業務の効率化をはかったり無駄を省いて効果的に人員を配置したりするなどの準備をしなければ、ワークライフバランスを導入することは困難になります。

マネジメントが困難

短時間勤務や在宅ワークなど、多様な働き方を受け入れると従業員一人ひとりに対して公平に評価することが難しくなります。今までのように全員が同じ働き方をしている訳ではないので、従来のやり方では正しく評価できない人が生まれてしまうのです。

これでは労働者のモチベーションが下がってしまい、ワークライフバランスの本来の目的であるやりがいを感じる仕事から遠ざかってしまいます。
このリスクを避けるためには、企業にとって「望ましい能力」や「求められた役割」などを客観的に把握できる人事管理システムが必要です。

現状に対する解決策

オフィスビルの前でファイルと携帯を抱え、笑顔で微笑む女性
ワークライフバランスが定着しない原因として、具体的な導入方法がわからない、コストの関係でやりたくてもできないといったものがあげられます。
これらの課題を解決するためには経営陣などの企業のトップたちが自主的に啓もう活動を行い、従業員たちを引っ張っていくことがポイントです。

従業員にまかせるのではなく、経営しているトップの人たちから動くことで従業員までワークライフバランスが認知されやすくなります。トップダウンで動けば具体的なプランはあとからついてくるのです。

経営陣が積極的に環境作りをする

ワークライフバランスを浸透させるには、経営陣たちの行動が重要となります。
ワークライフバランスを導入するためには、従来の業務内容の見直しや人事評価システムの再構築といった企業のやり方から変える必要があります。これは経営方針を変える行為に近いので、まずはトップの人間が重要性を理解して従業員たちに意義や取り組みを浸透させなければいけません。

人間は基本的に「今まで通りのやり方」を望みます、よって従業員たちも変化に対して労力を割きたくないという心理が働くことが予想されます。
まずは経営陣自ら取り組む姿勢を見せて、管理職からコミュニケーションの場を設けたり従業員の改善案などの提案を受け止める仕組み作りをしたりと社内に浸透しやすい環境を作ることが重要です。

新しい制度の導入は計画的に実施する

いきなり育児休暇の取得やノー残業デーなどの取り組みをしても、従業員たちから不満が出る可能性があります。
たとえば、育児休暇を推進すると独身の従業員たちから不満が出たり残業代が出なくなることで不平不満をもらしたりする人も出てくるでしょう。

すべてのニーズに応えることは難しいですが、できる限りたくさんの視点から検証して従業員たちのモチベーションが過度に下がらないように計画的に実施しましょう。

定期的な見直し

ワークライフバランスの取り組みは、1度の施策で上手くいく訳ではありません。多様化された働き方に合わせて、すべての従業員たちの仕事と私生活のバランスがとれている状態を目指すので、定期的な修正と改善をする必要があります。

施策が一見うまくいっているようでも、陰で一部の部署に負担がかかっていたり育児休暇などの制度を設けても利用しづらかったりしていないか注意が必要です。

実施している内容が目的達成に近づいているか、面談や従業員アンケートなど定期的な見直しをしましょう。

現状の可視化

ワークライフバランスの取り組みは、すぐに結果がでないことがあります。長期戦になると従業員たちは「この施策に意味はあるのか?」と疑問を抱くようになり、不満やモチベーションが低下する恐れがあります。

私たちが何のために何をしているのか見失わないために、短時間労働など取り組んだ施策の状況を把握したり好ましい事例を取り上げて表彰したりと進捗状況を「見える化」しましょう。
何の取り組みが進んでいて、遅れているのかを把握することは従業員たちに取り組みを周知させる以外にも経営陣が社内の状況を把握するためにも重要です。

効率化のための取り組みをする

ワークライフバランスが満たされている状態は、仕事と私生活がバランスよく調和している状態です。このような職場づくりをするためには、できる限り無駄を省いて、現状の業務内容が効率的か見直しする必要があります。

日々のルーチンワークや繁忙期に増えると思われる業務を明確にして、業務ごとに必要なマンパワーや業務時間を把握しましょう。そして、業務内容とマンパワーが妥当な比率かどうか検討して、より効率的に動けないか考え続けることが重要です。

このような状況把握は、従業員とのコミュニケーションの活性化にもつながり社内全体で協力し合える土台作りにもなります。

出典:内閣府 仕事と生活の調和推進室 社内におけるワークライフバランス浸透・定着に向けたポイント・好事例集

企業の取り組み事例

地球をかたどった背景に、色々な場所で仕事ができる様子を描いたイラスト
ワークライフバランスの取り組みは企業でさまざまな事例があり、これから実施する場合は参考になります。
自社の課題と照らし合わせて、共通点の多い企業の事例を踏襲すれば成功への近道になるでしょう。

株式会社栄水化学の9日間連続有給休暇の義務化

株式会社栄水科学は、育児休暇・介護休暇を取っている従業員の穴埋めをしている従業員たちからの不満を聞き入れ、全従業員に9日間連続で有給休暇をとることを義務付けました。

この取り組みによって「困った時はお互い様」「人を助けることは当たり前」という雰囲気を作ることに成功、誰でも適用できるようにするため、あえて制度化せずに個人の事情を汲み取れるように対応しています。

栄水科学は日々のコミュニケーションを重要視しており、毎日すべての社員が社長に業務日報を送り、仕事の進捗状況を把握できるようにして問題があれば対応できる仕組みとなっています。

出典:内閣府 仕事と生活の調和推進室 社内におけるワークライフバランス浸透・定着に向けたポイント・好事例集

SCSK株式会社の育児と仕事の両立支援

SCSK株式会社は、従業員全員が無理なく働けるようにするために育児と仕事を両立できる支援に力を入れています。
マタニティ休暇・積立年次有給休暇などさまざまな休暇制度やリモートワークなどの場所や時間にとらわれない勤務形態の導入など、男女関係なく働きやすい環境づくりに励んでいます。

他にも、復職支援金や育児休暇から復帰する社員が円滑に働けるための職場復帰セミナーなどを実施しており、2021年度の育児休業復職率は97.3%と長く働ける体制を整え、厚生労働省の「トモニンマーク」を取得しました。

トモニンマークとは、厚生労働省が人材の離職を防止するために作ったシンボルマークです。仕事と介護を両立できる環境づくりへの関心と認知度を高めるために作られました。

出典:SCSK株式会社 ワーク・ライフ・バランス
出典:厚生労働省 仕事と介護の両立~介護離職を防ぐために~

株式会社オーシスマップの業務効率改善と満足度向上

株式会社オーシスマップでは、従業員たちから業務内容に対する不満があがり長時間労働でギクシャクしていました。対策として週に1回の頻度で業務内容に関する「社内満足度向上のためのミーティング」を設けて従業員たちから意見を集めました。

その結果、あいさつなどの社会的なルールから業務効率化のアイデアがあがるようになり徐々に雰囲気が緩和されました。その取り組みの1つとして「家族の日」という月に1度は必ず早く帰る日を作り、業務の効率化と残業時間の減少をはかるための見直しが積極的に行われるようになったのです。

こうした活動をきっかにして、従業員から積極的な動きが出始め、託児所の設置や地域活動への参加など社内外で取り組みへと発展しています。

出典:株式会社オーシスマップ ワークライフバランス

社会福祉法人虹の会によるノー残業デー

社会福祉法人虹の会では、働きやすい環境づくりとして時間外労働の削減や休暇取得に力を入れ、ノー残業デーを設けました。
残業時間削減の取り組みとして、週に1回は必ず残業せずに帰る日を設けており、何曜日に帰るかは現場の判断を反映させることで効果的に機能するように配慮しています。

他にも、残業する日は事前申請を徹底させて残業時間を集計し、長時間労働とならないように原因の分析と対策に講じられるように日々備えています。
なお、残業が月に30時間を超える従業員に対して注意喚起をし、従業員だけでなく施設長や主任といった責任者と一緒に予防と改善に向けて奮闘中です。

出典:働き方・休み方改善ポータルサイト 取組・参考事例一覧

大橋運輸株式会社のダイバーシティの取り組み

大橋運輸株式会社は、ダイバーシティへの取り組みとしてLGBTQの人たちも働きやすい職場づくりに励んでいます。
無意識からくる差別をなくすためにコンサルタントを招いた研修を開き、従業員たちにLGBTQへの啓もう活動を行い、基礎知識を与えました。具体的な取り組みとしては、同性の配偶者も福利厚生の対象となるように就業規則を改定、男女共用のトイレを設置しました。

他には、応募時にストレスを与えないために性別の記載を撤廃したりトランスジェンダーの人たちに本名ではなく通称名で働けるようにしたりといった配慮をしています。

こうした取り組みは読売新聞や中部経済新聞などさまざまなメディアから取り上げられました。

LGBTQとは「レズビアン」「ゲイ」「バイセクシャル」「トランスジェンダー」「クエスチョニングの頭文字から作られた用語です。
同性愛者や体と心の性別が違う人、性別の認識が定まっていない人たちのことを指しており、ジェンダー平等や多様性を認める社会を作るうえで彼らを正しく理解することが重要とされています。

出典:大橋運輸株式会社 LGBTQ理解への取り組み

株式会社セールスフォース・ドットコムの働きがいのある職場づくり

株式会社セールスフォース・ドットコムは創業以来続けている就業時間・会社株式・製品売上の各1%をボランティアやNPOなどに還元する「1-1-1モデル」があり、社会貢献の文化が根付いていました。こうした背景から助け合いの精神や奉仕活動に対して誇りをもつ社員が多く「働きがいのある会社ランニング」で1位に輝く実績までに至りました(2019年)。

従業員たちへの施策では、スポーツクラブやダイエットカウンセリングなど健康のための取り組みに対して月1万円支給される「ウェルビーイング補助」があり、従業員に行った福利厚生制度がどれくらい使われたかをデータ収集し分析。また部下が5人以上いるマネージャーの評価を誰でも見られるように公開することで、企業の取り組みに対して透明化をはかり社員たちからの信頼を得ているのです。

他にも、自由な働き方ができるように在宅勤務やフレックス制度を導入し、画一的に実施するのではなく各部署で最も効率の良い働き方を模索させています。

参考元:ボーグル 企業事例 家族のように従業員を支える。セールスフォースが2019年度「働きがいのある会社ランキング」で1位を獲れた理由

フレックス制度とは、従業員が働く時間を決めることができる制度のことです。月に働く時間があらかじめ決められていて、毎日の出勤時刻や労働時間を自由に選べます。
注意点は、残業が発生する仕組みが終業時刻ではなく1か月の労働時間の総量を超えた時間で計算されること、逆に時間が短かった場合は欠勤扱いか来月に足りない分が追加されるといったルールがあり、企業側が正確に労働時間を把握する手腕が求められます。
出典:厚生労働省 フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き

企業のトップから積極的に動くことが変化につながる

ワークライフバランスとは仕事と私生活のバランスをとり、豊かな人生を送るために必要な考え方です。
取り組みを導入するためには、企業がその概念を正しく理解したうえで役職や経営陣を含むトップの人間が先頭に立ち、啓もう活動や環境づくりに励まなければ難しいでしょう。

ワークライフバランスの取り組みを成功させるには、自社の課題を分析し適切な施策を考えて実行するための準備と、定期的な見直しが必要です。
まずは企業のトップから動いて部下たちを巻き込み、社内一丸となって取り組めるようにしましょう。

この記事の執筆者
EARTH NOTE編集部
SDGs情報メディア
「SDGsの取り組みを共有し、循環させる」がコンセプトのWEBメディア。SDGsの基礎知識や最新情報、達成に取り組む企業・自治体・学校へのインタビューをお伝えし、私たちにできることを紹介します。
身近なアイデアを循環させて、地球の未来をつなげていきましょう。皆さんと一緒に取り組んでいけたら幸いです。
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