相対的貧困とは?先進国での現状や課題と私たちにできること

相対的貧困とは?先進国での現状や課題と私たちにできること

2023.12.08(最終更新日:2024.06.05)
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SDGsの目標1「貧困をなくそう」では、あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせることが求められていますが、この「あらゆる形態」に含まれるものに相対的貧困があります。私たちが暮らす日本のような経済大国にもはびこるこの問題を解決しないことには、SDGsの目標達成も明るい未来もあり得ません。

この記事では、相対的貧困の定義や現状、問題点やSDGsの目標に関連した解決法、私たちが個人で取り組むことができる活動について詳しく解説します。相対的貧困のない世界を創るにはどうすれば良いのか、一緒に考えていきましょう。

目次

相対的貧困は全ての国で起こる深刻な問題

SDGsの目標1に関わる重要な問題である相対的貧困は、多くの人がイメージしやすい絶対的貧困と違い、国によって貧困の度合いが違うために正しく理解することが難しい問題と言えます。そこで、ここではまず、相対的貧困への理解を深めるために、相対的貧困の定義や絶対的貧困との違い、相対的貧困率について説明します。

相対的貧困とは周囲と比べて生活が貧しいこと

相対的貧困に関する問題を知り、解決への方策を考えるためには、まずは相対的貧困そのものを知らなければなりません。相対的という言葉から、何かと比較するものだという推察はできると思いますが、この「何か」というのは同じ国に暮らす国民です。

簡単に言うと、同じ国に暮らす人びとと比較したとき、収入や資産が少なく生活が安定していない状況のことで、直近的に生死に関わるような状況ではないが、周囲と比べて生活が貧しいことと言い換えることもできます。

具体的な定義としては、等価可処分所得(世帯の可処分所得を世帯人数の平方根で割ったもの)の中央値の50%または60%(国によって違う、日本は50%)が相対的貧困における貧困ラインで、この数値を下回るとその国における相対的貧困者とみなされます。ちなみに可処分所得とは、収入から税金や社会保険料などを除いた所得で、いわゆる手取り収入と呼ばれるものです。

等価可処分所得が変動性のあるものであるため、貧困ラインもそれに伴い変動する可能性があり、年度ごとに変動する数値であるというのが特徴です。また、この貧困ラインに世帯人数の平方根をかけることで、その国における世帯人数ごとの貧困ラインを求めることもできます。

貧困線を算出する際、可処分所得ではなく等価可処分所得を使用するのは、可処分所得が世帯人員数に影響される数値であるからです。一般的には世帯人員が少ない方が生活コストが割高になる傾向があるため、世帯人員の違いを調整するために世帯人員の平方根を用いています。

例えば同じ家賃の家に住んでいても、1人暮らしの人と4人家族では1人当たりのコストは4倍違いますし、光熱費や食費などの世帯人員共通の生活コスト全般でも同様の傾向があります。

絶対的貧困との違いは絶対的数値の有無

相対的貧困と対を成す言葉に「絶対的貧困」がありますが、この貧困を意味する両者の違いとして、まずは世界共通の絶対値の有無が挙げられます。絶対的貧困には、世界銀行が世界情勢などから算出した数値が一般的に用いられていますが、相対的貧困は国ごとの指標であるため世界共通の数値は存在しません。

また、主な対象となる国や地域にも違いがあり、絶対的貧困が主に発展途上国に対して使用される言葉である一方、相対的貧困は先進国や中所得国で使用されることが多い言葉です。貧困という言葉から、アフリカなどの途上国を連想される方も多いと思いますが、相対的貧困は日本やアメリカといった経済大国と呼ばれる国でも大きな社会問題となっています。

相対的貧困率は貧困ラインを下回る人の割合

その国や地域で定められている貧困ラインを下回る等価可処分所得しか得られていない人の割合を「相対的貧困率」といい、国民の所得格差を示す数値の1つでもあります。

相対的貧困率は貧困ラインと同じく経済成長や所得格差に影響を受けて変動し、例え経済全体としての所得が上昇したとしても、所得の不平等が続いた場合などには、変わらなかったり増加したりすることもあります。

また、経済成長や所得水準の変動に対する感受性が高いため、社会的不平等や経済的な格差を評価するのに適した指標です。しかし、相対的な指標であるため、どの程度の所得が実際に「貧困」と捉えられるかは国や文化によって異なる可能性があり、数値と実際の国民感覚との乖離が課題とされる一面もあります。

先進国をも蝕む相対的貧困の現状

駅内で2人の小さな子供と手を繋ぐ大きな荷物を持った女性の後ろ姿
主に途上国での問題である絶対的貧困と違い、相対的貧困は先進国でも大きな問題であることが分かったと思いますが、具体的な現状はどうなっているのでしょうか。ここでは、先進国の代表としてアメリカと日本の現状、日本の相対的貧困率が先進国中最悪の数値である理由について見ていきます。

経済大国アメリカでも高い割合になっているのが実情

ここからは相対的貧困の世界における現状を見ていきますが、まずは下の表をご覧ください。

貧困率(トータル) 貧困率(~17歳) 貧困率(66歳~)
1 コスタリカ 0.203 0.274 0.224
2 ルーマニア 0.175 0.217 0.180
3 イスラエル 0.169 0.201 0.170
4 メキシコ 0.166 0.199 0.198
5 ラトビア 0.160 0.096 0.322
6 エストニア 0.158 0.106 0.346
7 ブルガリア 0.158 0.170 0.283
8 日本 0.157 0.140 0.200
9 スペイン 0.154 0.218 0.113
10 韓国 0.153 0.098 0.404
11 アメリカ 0.151 0.137 0.228

参照:OECD 主要統計|貧困率(Poverty rate)

相対的な指標であるため、日本やアメリカのような経済大国と呼ばれる国でも高い数値になっていることが、この表から見て取れると思います。

わかりやすい例としてアメリカを見ていきます。国全体として見るととても豊かな国であると言えるアメリカですが、人びとの自由と自立を守るという社会的合意があるため、社会保障も自由を尊重する形で設計されており、日本でいうところの国民皆保険制度がありません。また、アメリカの憲法には生存権という概念がないため、生活保護制度もないのです。

全くないというわけではありませんが、高齢者や障がい者を対象にしたものや一時的なものなど、日本のように全ての国民を恒久的に対象としたものではありません。こうしてアメリカでは、自由が守られる代わりに個人の責任が大きく、貧困層も自分の力・責任で貧困から抜け出さねばならないという土壌があります。

では、富裕国であるはずのアメリカに、相対的貧困に陥っている国民が多いのはなぜなのでしょうか。アメリカでは、極端な資本主義により富裕層と貧困層の二極化が明確になり、黒人やネイティブアメリカン、アジア人への偏見・差別も貧困層を生む要因になっています。

また、海外から安くて良質な商品・材料を輸入したり、コストの低い国で生産したりするようになったため、国内の労働者が職を失ったことも原因の1つとして挙げられます。

このように、国それぞれの考え方や制度などに起因して引き起こされるのが相対的貧困なので、解決するためにはそれぞれの国の問題に合わせた対策が必要なのです。

日本の現状は先進国最悪

一方、私たちが暮らす日本における相対的貧困の現状は、どのようになっているのでしょうか。2023年7月4日に厚生労働省から発表された国民生活基礎調査では、日本の2021年の相対的貧困率は15.4%で、米国の15.1%、韓国の15.3%に抜かれて先進国最悪の数値となってしまいました。

中でも、高齢者世帯や1人親世帯に多くなっており、2021年の生活保護の被保護者世帯の55.3%が高齢者世帯で、50.8%が単身者世帯、4.5%が2人以上の世帯という内訳になっています。また母子世帯も全体の4.6%に上り、高齢者世帯と母子世帯が全体の約6割を占めています。

参照:厚生労働省 生活保護の被保護者調査(令和3年1月分概数)の結果を公表します

高齢化や1人親世帯の増加、雇用の非正規化が日本の原因

では、なぜ日本の相対的貧困率は他の先進国と比較して高い数値になっているのでしょうか。いくつかの原因がありますが、まずは単身高齢者の増加が挙げられます。

子どもを持たない単身高齢者による1人暮らしの数は、1980年には男性約19万人、女性約69万人であったものが、2015年には男性約192万人、女性約400万人にまで増加しています。また、1986年には全世帯の13.1%であった単身高齢者世帯数も、2022年には31.8%にまで及んでいるのです。

単身高齢者は1人で生活費の全てを賄う必要があり、子どもがいないため子どもからの援助も受けられません。年金額も少子高齢化の影響で減少傾向にあるため、年金だけでは足りずに貯蓄を切り崩して生活しなければならないなど、単身高齢者の貧困は今後も引き続き大きな問題です。

2つ目の原因として挙げられるのが1人親世帯の増加です。1人親家庭の貧困率は50.8%にも上り、1人親世帯の数自体も1989年の190万世帯から2022年には366万世帯に増加しています。さらに、母子世帯の令和2年度の平均年間就労収入は236万円で、これは父子世帯の496万円と比較すると半分にも満たない額です。

そして3つ目の原因が雇用の非正規化です。近年、日本の労働市場では非正規雇用(パート、アルバイト、契約社員など)が増加しており、正規雇用者と比較して給与が低い傾向にある非正規雇用者は福利厚生も不十分な場合が多く、収入の格差を生む要因となっています。

参照:内閣府 3 家族と世帯|令和元年版高齢者社会白書(全体版)
  :男女共同参画局 「共同参画」2019年2月号
  :厚生労働省 2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況|世帯数と世帯人員の状況
  :厚生労働省 令和3年度全国ひとり親世帯等調査結果報告 

相対的貧困は貧困の固定化・社会の分断・公平さの喪失を生む

命に直結する問題である絶対的貧困と違い、相対的貧困の問題点は可視化されにくいため大きな問題と捉えられにくい側面があります。しかし相対的貧困に陥っている当事者には極めて大きな問題であり、問題点の正しい理解なくして解決には至りません。ここでは、相対的貧困が引き起こす数ある問題点の中から、貧困の固定化、社会の分断、公平さの喪失の3つについて解説します。

貧困の固定化が連鎖を生む

相対的貧困の問題点には大きく3つありますが、1つ目に挙げるのは「貧困の固定化」です。貧困に陥っている状態は機会の喪失につながり、教育やさまざまな体験機会の喪失は学力や学歴にも直結する傾向にあります。

結果として貧困層の方が低学歴になりやすく、機会を失った親の子どももやはり機会を失いやすくなり、「貧困の連鎖」が起こるのです。また、貧困状態の家庭では適切な栄養や医療を受けることが難しい場合もあり、健康面での問題を抱えやすくなることで就労や所得に影響を及ぼす可能性も高くなります。

こうした連鎖から抜け出そうにも、国からの援助も最低限の生活を営める程度のものなので、一度陥ってしまうと貧困の連鎖を断ち切るのは容易ではありません。

社会の分断が連帯感を喪失させる

次に挙げる問題点は「社会の分断」です。相対的貧困率が高まり富裕層と貧困層が二極化されると、生活、仕事、教育などさまざまな社会的分野での分断が起こります。また、富裕層が暮らす地域と貧困層が暮らす地域に分かれることで、地域的な分断が進む可能性もあるのです。

さらに、価値観の違いが生まれ政治的な分断を招くこともありますし、経済的に困難な状態にあることで社会的な活動やコミュニティへの参加が限られ、社会からの孤立感を覚える人も出てきます。このような分断は対立や争いの原因にもなり、人びとの連帯感が失われることにもつながるのです。

そして親の世代の分断はやはり子どもの世代にも影響し、大きな社会問題となっているいじめの一因にもなり得ます。貧富の差を小さくし社会の分断を食い止めることが、さまざまな問題解決にもつながります。

公平さの喪失が不公平感を生み出す

そして最後は「公平さの喪失」です。貧困の連鎖に陥ってしまうと生まれたときから貧困状態にあるため、周囲の豊かな生活を送っている人と比べて不公平感を感じてしまいます。

例えば、難関大学に合格するのは都市部に暮らす経済的に豊かな家の子どもが多いですが、それにはいくつかの理由があります。親が経済的に裕福であるため、質の高い私立学校や塾、予備校に子どもを通わせたり家庭教師を付けたりする余裕がありますし、勉強に専念できる環境も整えやすくなるのです。

決して貧困層の子どもが難関大学に合格できないというわけではありませんが、やはり生まれ持った環境によるハードルには違いがありますし、子どもによっては理不尽さや不公平感を感じることにもつながります。

これはあくまで1例に過ぎず、生まれたときから貧困の連鎖に取り込まれていると人生のさまざまな場面で不公平感を感じ、とても公平な社会と感じることはできないでしょう。相対的貧困率が高いということは、不公平な社会であるという見方もできるのです。

問題解決にはSDGsの目標と関連した施策が必要

掬うような仕草の両手
相対的貧困はSDGsに関する問題であり、SDGsは全ての目標がそれぞれ強く結びついています。ですので、相対的貧困を解決しようと思うなら、SDGsの他の目標に関連した施策を行うのが効果的であり、同時に他の目標にも寄与することにもなるのです。ここでは、目標1「貧困をなくそう」、目標4「質の高い教育をみんなに」、目標5「ジェンダー平等を実現しよう」、目標8「働きがいも経済成長も」の4つの目標に関連した施策を紹介します。

目標1での施策は社会保障の拡充や税制改革

SDGsの目標1「貧困をなくそう」は「地球上のあらゆる形態の貧困をなくそう」という目標であり、相対的貧困が直接言及されている目標でもあるので、ここでの解決が1番直接的な解決法と言えます。

具体的には、所得の低い世帯に対して最低限の生活を保証する、生活保護やベーシックインカムなどの社会保障制度の強化、基本的な医療サービスや健康診断を低所得者にも利用しやすくすることで、健康的な生活をサポートして労働能力を維持することなどが挙げられます。

また、養育費や介護費用の負担軽減、住宅補助など、生活に必要な費用を軽減させることや、税制の見直しや税率の調整なども相対的貧困の解決につながります。

ベーシックインカムは基本所得、または無条件基本所得とも呼ばれ、国が国民に一定の金額を定期的に支給する制度です。ベーシックインカムには「完全支給型」と「限定的支給型」があり、前者は無条件で全国民に、後者は所得などの条件を満たした国民に支給されます。一部の国で導入や実験が行われており、貧困問題の解決につながる制度であると注目されています。

また、アメリカや韓国など、先進国の多くで導入されている「給付付き税額控除」も限定的ベーシックインカムの一種とされ、収入が十分にあって納税している人には減税を、収入が少なく税金を収めていない、もしくは少額の納税である人には減税に見合うだけの現金支給がされるという制度です。

目標4の施策は教育格差の縮小や質の向上

次に見ていくのは目標4の「質の高い教育をみんなに」に関する解決法です。ここでの解決法は、教育の普及と質の向上を通じて能力を高め、将来の選択肢を増やすことにより相対的貧困率を下げようというものです。

具体的には、早期教育を普及させることによる教育格差の縮小や、教育者の養成、学習環境の改善、カリキュラムの見直しなどによる教育の質の向上が挙げられます。

また、奨学金制度の拡充や授業料の免除など、経済的な側面から教育の機会を逸することのないようにサポートすることで、すべての子どもが質の高い教育を受けられるようにすることも重要です。

国民に教育を普及しその質を向上させていくことは、貧困問題を解決するだけではなく、持続的な国力の向上にもつながる重要な課題でもあります。

目標5の施策はジェンダー平等と賃金格差の是正

SDGsの目標5「ジェンダー平等を実現しよう」に関する解決法は、男女平等の促進とすべての女性の権利強化に取り組むことで、相対的貧困率の低下に寄与しようというものです。先ほども触れた通り、1人親の世帯の約半数が相対的貧困に陥っていますが、その大半は母子家庭です。

これにはやはり男女での賃金や労働機会の差が大きく影響しており、この差を埋めることは1人親世帯の貧困率低下に直結します。男女平等を促すためには、意思決定における女性の役割を高めることが重要で、社会的・経済的な政策や方針の形成に女性の視点や経験を取り入れることが求められます。

ジェンダーの平等と女性のエンパワーメント(力や権利を与えること)は、経済的な成長や持続可能性、そして社会的な包括性を促進する上で非常に重要です。

目標8の施策は労働者の保護と経済成長の促進

SDGsの目標8「働きがいも経済成長も」に関する解決法は、経済成長というマクロな視点と、労働機会や労働環境というミクロな視点、両面から考える必要があります。

労働機会や労働環境の問題を解決するための具体的な方法としては、就職支援や資格取得支援を通じて労働機会の拡充を図ったり、労働者の権利を守って労働環境の保護に務めたりすることが挙げられます。また、非正規雇用者の保護策を強化し、正規雇用に移行させていくことで経済的な安定性の向上を図ることも大切です。

保育環境の拡充も重要な課題と言われており、障がいを持った子どもを受け入れる施設や、医療的ケアと長時間保育を両立させた施設を増やしていくことによって、労働機会や労働時間の確保につなげることができます。

こうした労働機会や労働環境の問題に取り組み、技術革新や新しい産業の成長に取り組むことで経済成長が促進され、さらに新しい雇用が生まれるという好循環が、持続可能な貧困問題の解決に必要なことなのです。

自らの行動と組織の支援で相対的貧困に取り組もう

相対的貧困はさまざまな原因から多くの問題を抱えており、国を挙げて取り組んでいる大きな課題です。では、このような大きな課題に対して、私たち個人にできることは果たして何もないのでしょうか。ここでは、個人レベルでできる取り組みとして、理解を深めて共有すること、政治への積極的な参加、支援活動への参加の3つについて説明します。

理解を深めて共有することが全ての取り組みに必要

相対的貧困を解決するために、国やさまざまな機関・団体などが取り組んでいますが、私たち個人にできることには何があるのでしょうか。いろいろなことが考えられますが、まず初めに行うべきはやはり相対的貧困についての理解を深めることです。

本屋で買ったり、図書館で借りたりして書籍で知識を得ることも良いですし、インターネットで手軽に調べることももちろん良いでしょう。ただし、インターネット上の情報には個人で載せている情報などもあるため正確性に欠ける情報も散見されますので、公的な機関の情報を参照するなどして正確性を担保することが必要になります。

また、セミナーなどに参加して生の情報に触れることも、知識を得る上で大きな助けになるでしょう。ただの文献的な知識だけではなく、開催者の経験に基づいた話などが聞けるため、新しい視点での知識や価値観が得られる可能性があります。

そして、得た知識を他人と共有することも大切です。家族や友人、クラスメイトや職場の同僚と貧困問題について話したり、SNSで世界中に発信することで多くの人に情報を届けたりと、1人でも多くの人を巻き込むことは、やがて大きな力に変わる可能性を秘めています。まずは正しい知識を得て、身近な人と共有することから始めてみてください。

政治への積極的な参加がより良い未来を創る

政治に興味を持ち積極的に参加することも、相対的貧困の問題を解決するためには大切です。相対的貧困には社会保障や女性の雇用問題など、政治に関わる問題が多いため、政治の部分からしっかりと考えていく必要があります。

政党や候補者が掲げる政策やマニフェストをしっかりと理解し、貧困問題を解決する政治を行ってくれそうだと思う政党や候補者に投票することが、より良い日本の未来を創っていくことにつながるのです。

また、政治に参加することは、特定の社会的・経済的背景を持つ人びとの声や関心が、政策や法律として反映される可能性も高めるため、貧困層のニーズや懸念が無視されるリスクを減少させることにもつながります。

もしあなたが、今まであまり投票活動を行ってこなかったのなら、この機会に政治について考え、一度投票に参加してみてはいかがでしょうか。

支援活動への参加で自分の強みを活かせる

地域や団体で行っているイベントやボランティアに参加することも、相対的貧困を解決するための一助となり得ます。簡単なところでは、地域や団体が行っているイベントに参加して、盛り上げに一役買うだけでも十分貢献できるでしょう。

また、ボランティアにはさまざまな分野での参加が可能ですので、自分が得意とする分野で参加することで、大きな力になれるはずです。例えば、子どもに勉強を教えることや教材を寄付することで学習支援を行ったり、職業訓練で技能の獲得をサポートするプログラムやワークショップに参加したりと、何かしら力になれることがあると思います。

無償のボランティアはもちろん、インターンやアルバイトなどいろいろな形態での参加ができるものもありますので、興味があるならぜひ気になる団体などに問い合わせてみましょう。

お勧めの支援団体5選

個人でできる取り組みにはいろいろあり、そのどれもが相対的貧困の解決には大切なことですが、やはり個人で出来ることと大きな団体でできることには差があるのが事実です。ここでは、支援団体に寄付することで相対的貧困の解決に貢献するための、お勧めの支援団体を5つ紹介します。

支援団体への寄付は手軽に大きな効果が期待できる

ここまで、相対的貧困の解決に向けて私たちが個人でできることを紹介しましたが、知識を学んだり、時間を使って行動に移したりすることにハードルを感じる人もいると思います。そのような人にお勧めなのが「支援団体への寄付」です。支援団体に寄付するだけであれば思い立ったときにすぐにできますし、支払い方法もさまざまあり、毎月自動で引き落としされる手間がかからないものも多いです。

また多くの支援団体は、長年の経験と専門知識を有しているため、資金を最も効果的に使う方法を知っていますし、大規模なプロジェクトを行っていることが多いため、個人が直接行動を起こすよりも多くの人びとに影響を与えることができます。

ですので、「相対的貧困の解決に向けて何かしたいが、直接的に行動することは難しい」という人は、支援団体に寄付することによる間接的な取り組みを検討してみてはいかがでしょうか。ここでは、主に日本国内の相対的貧困層に向けた支援を行っている下記の団体を5つ紹介します。

  • 自立生活サポートセンター・もやい
  • カタリバ
  • Learning for All
  • Good Neighbors japan
  • Florence

どの団体も素晴らしい理念の下に活動を行っている団体ですので、ぜひ参考にしてみてください。

自立生活サポートセンター・もやい

認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやいは、「日本の貧困問題を社会的に解決する」ことを団体のミッションとしており、「経済的な貧困」と「つながりの貧困」の2つの側面から貧困問題の解決に向けて活動している団体です。

もやいの活動は、ホームレス状態の人がアパートに入居する際の連帯保証人を引き受けるという、入居支援の取り組みからスタートし、交流事業や生活相談・支援事業、広報・啓発事業など、さまざまな取り組みにより多くの人たちを支援してきました。

支援対象もホームレス状態の人を始め、単身男性、女性、セクシャルマイノリティの方、障がいのある方、派遣で働く若者、ひきこもりがちな無職の方などさまざまで、それぞれの状況に応じた細やかな支援を行っています。

もやいへの寄付にはいくつかの種類があり、まず1番手軽な「今回のみのご寄付」では、クレジットカードや銀行振込、郵便振替で寄付が行なえます。継続して寄付を行いたいなら「継続的なご寄付(マンスリーサポーター)」が便利で、一度手続きを行えば、クレジットカードや銀行からの自動引き落としで毎月自動的に寄付することが可能です。

もやいへの寄付には、さらに「遺贈・相続財産によるご寄付」「本によるご寄付」もできるので、ご自身が利用しやすい方法を選んで寄付することができます。

自立サポートセンター・もやい もやいへのご寄付

カタリバ(katariba)

認定NPO法人カタリバは、「どんな環境に生まれ育っても未来をつくりだす力を育める社会を目指し、すべての10代が意欲と創造性を手にできる未来を実現しよう」と活動している団体です。

社会の分断と格差が進み、生まれ育った環境や受けた教育によって「きっかけ格差」が広がっている現代において、学校に多様な出会いと学びの機会を届け、社会に10代の居場所と出番をつくるための活動に取り組んでいます。

また、「DISCOVER~10代の日常を探求に~」「RESILIENCE~逆境から未来をつくる~」「GLOCAL~未来の学力をいなかから~」「POST TRAUMATIC GROWTH~災害の悲しみを強さへ~」の4つのテーマを掲げたサービスは、10代の学びや心の安心、意欲や創造性の育成、災害地での教育支援など多岐に渡っています。

カタリバへの支援は若年層の教育を支えることにつながりますので、長期的なスパンでの相対的貧困の根本的な解決への支援とも言えます。

カタリバへの支援にもさまざまな方法が用意されていて、都合の良いときに自由な金額と回数で寄付できる「今回のご寄付」では、クレジットカードと銀行振込の利用が可能です。また、毎月継続の「毎月のご寄付」では、クレジットカードと口座振替によって毎月自動的に寄付をすることができます。

さらに、「遺贈・相続財産のご寄付」や「Yahoo!ネット基金」「寄付型飲料水自動販売機」などさまざまな寄付の方法からも選ぶことができるようになっています。

認定NPO法人カタリバ NPOカタリバへのご寄付

Learning for All

認定特定非営利活動法人Learning for All(LFA)は、主に子どもの貧困の本質的解決を目指している団体で、貧困、虐待、発達障害、いじめ、社会的マイノリティなど、さまざまな生きづらさを抱える子どもたちを支援しています。

2010年に学習支援から活動をスタートし、現在では1人の子どもが自立するまで、地域で連携して幅広くサポートできるモデルを構築しています。さらには活動を全国へ広げるとともに法・制度を変え、子どものあらゆる「貧」と「困」をなくす社会をつくろうとしている団体です。

具体的な活動としては、居場所づくりや学習支援、食事支援などで「一人に寄り添う」ことや、培ったノウハウの展開や共有で「仕組みを広げる」こと、普及啓発や人材育成、政策提言を行い「社会を動かす」ことなどさまざまなものがあり、現場のリアルな知見を基に子どもたちの未来をつくるために取り組んでいます。

また、多くの企業や団体がサポーターとして支えていることも特徴で、サポーターの中に誰もが知っている大企業が散見されることからも、LFAの活動の社会的意義がいかに素晴らしいものであるかを、うかがい知ることができるのではないでしょうか。

LFAへの寄付には、1回ごとの支援ができる「ワンポイントサポーター」と、毎月継続で支援することができる「マンスリーサポーター」が用意されています。ワンポイントサポータの支払い方法にはクレジットカードと銀行振込、マンスリーサポーターの支払い方法にはクレジットカードと口座振替があり、ご自身にあった方法で子どもたちの支援をすることができます。

Learning for All サポーター募集

Good Neighbors japan

NPO法人Good Neighbors japan(GNJP)は国際NGOであるGood Neighbors Internationalの一員で、アジア・アフリカの7か国と日本国内を対象にした支援活動を展開しています。

日本を含む、世界が抱えるさまざまな課題へ多角的に取り組むことで、途上国および日本国内の子どもたちの環境を改善し、貧困の連鎖から抜け出す手助けをしている団体です。
具体的な取り組みとしては、学校や図書館の建設・運営などの「教育」、健康診断やワクチン提供などの「医療・保険」、衛生環境改善のための井戸や浄水器の設置などの「水・衛生」、農業研修や職業訓練などの「収入向上」といったものがあり、貧困の連鎖から抜け出すために必要不可欠なものを支援する取り組みを行っています。

また、災害時における食糧や緊急支援物資の配布、医療支援などの「緊急支援」や、日本国内の1人親家庭のフードバンクである「グッドごはん」などの「日本国内の貧困問題」へも取り組んでいます。

GNJPへの寄付にはさまざまなものがあり、「今回のみのご寄付」ではクレジットカードや銀行振込、郵便払込の利用が可能です。また、子どもを継続的に支援する「海外子どもスポンサー」と「国内子どもスポンサー」では、1度の手続きで毎月クレジットカードや銀行口座から一定額が引き落とされるので、長く子どもを支援したい方にお勧めです。

さらに、「ハート募金箱」や「物品寄付」「遺贈・相続財産・お香典のご寄付」といった寄付も用意されていますし、日本だけでなく、世界のこどもの支援がしたい人はGNJPの支援を検討されてはいかがでしょうか。

特定非営利活動法人Good Neighbors japan ご寄付・ご参加

Florence

認定NPO法人Florenceは「こども達のために、日本を変える」をキャッチフレーズに活動する国内最大級の認定NPO法人で、子どもの虐待、子どもの貧困、障がい児家庭の支援不足、親子の孤立といった課題を解決するために、さまざまな事業を展開しています。社会で子どもを育むことを設立時からの理念としており、日本の子ども・子育て領域において全国的に福祉・支援活動を広げながら社会課題の解決を行っている団体です。

具体的な事業内容としては、子育てと仕事の両立可能な社会を目指した「訪問型病児保育」や、待機児童問題を解決に導くための「おうち保育園」、障がい児保育問題の解決のための「障害児保育園ヘレン」「障害児訪問保育アニー」「医療的ケアシッター ナンシー」があります。

また、孤独な子育て(孤育て)世帯の支援のための「こども宅食」や「こども宅食応援団」、赤ちゃんの虐待死ゼロを目指した「赤ちゃん縁組」、母子家庭の貧困問題を解決するための「ひとり親家庭支援事業」などの事業もあり、子どもや子どもを持つ親を支援することで社会課題の根本的な解決に取り組んでいることも大きな特徴です。

Florenceへの寄付にもいろいろな方法が用意されており、「今回のみの寄付」ではクレジットカードや銀行振込、Amazon Payでの支払いができ、毎月の寄付である「マンスリーサポーター」ではクレジットカードでの引き落としで、毎月一定額の支援が可能になっています。

さらに「遺贈・相続財産の寄付」や法人からの寄付も募っており、幅広い方法での支援により子どもや子どもを持つ親を支援することができます。

認定NPO法人Florence 寄付で子どもの支援をする

1人ひとりの力が貧困のない未来を創る

相対的貧困は私たちにとって身近な問題であり、豊かな日本、豊かな世界を創っていくために必ず解決しなければならない問題です。そのためには、国や支援団体だけではなく、私たち個人の力がとても大切になってきます。1人ひとりの力は小さくても、輪を広げて多くの人と手を取り合うことができれば、それは何よりも大きな力になるのです。

この記事を読んで少しでも何かを感じてもらえたなら、小さな一歩から何か始めてみませんか?あなたの一歩が、きっと周りにいる誰かの力になるはずです。

この記事の執筆者
EARTH NOTE編集部
SDGs情報メディア
「SDGsの取り組みを共有し、循環させる」がコンセプトのWEBメディア。SDGsの基礎知識や最新情報、達成に取り組む企業・自治体・学校へのインタビューをお伝えし、私たちにできることを紹介します。
身近なアイデアを循環させて、地球の未来をつなげていきましょう。皆さんと一緒に取り組んでいけたら幸いです。
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