スマートシティとは?日本の自治体の取り組みや海外の事例も紹介

スマートシティとは?日本の自治体の取り組みや海外の事例も紹介

2023.10.30(最終更新日:2025.09.19)
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「スマートシティという言葉自体は耳にするけど、イメージしづらい」という方も多いのではないでしょうか。スマートシティとは最先端の技術を組み込んだ都市で、私たちの生活に密接に関わってきます。さらに、近年よく聞くSDGsとも深い関係にあり、社会問題に興味がある方は知っておく必要があるでしょう。

そこで、本記事では下記について解説します。

  • スマートシティの意味や概要
  • スマートシティのメリット・デメリット
  • 日本や海外のスマートシティの事例

この記事を読めば、スマートシティについて理解し、日本や海外の都市がどのような未来を描いているのかみえてきます。

本記事を読んで、スマートシティに興味がわけば、身の回りに最新の技術が導入されているか考えてみましょう。

スマートシティとは?意味や定義について

スマートシティとは、簡単にいえば「最新のテクノロジーを駆使してできた便利な都市」です。また、都市に最新の技術が取り入れられることをスマートシティ化といわれます。交通や仕事など、日常生活そのものをより便利にし、私たちの生活の質を向上させるような都市をつくることが目的です。

そのようなスマートシティについて、詳しくみていきましょう。

スマートシティ=「Society 5.0」の先行的な実現の場

スマートシティは「Society 5.0」の実現の場といわれます。では、「Society 5.0」とはいったい何なのでしょうか。
「Society 5.0」とは、第5期科学技術基本計画で初めて提唱された、日本が目指すべき未来社会の姿です。Society 5.0の「5.0」は「1.0」から始まっており、各内容は下記のとおりです。

  • Society 1.0:狩猟社会
  • Society 2.0:農耕社会
  • Society 3.0:工業社会
  • Society 4.0:情報社会
  • Society 5.0:未来社会

人類は進化を重ね「Society 1.0」から始まり「Society 5.0」を目指す段階にまで来たのです。では「Society 5.0」は何によってできあがるのでしょうか。

それは、サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムです。サイバー空間とは、コンピューターやネットワークによって構築された仮想的な空間を指します。フィジカル空間は、私たちが現実に目でみて身体で体験できる空間です。両者を融合させたシステムを構築することにより、「Society 5.0」の社会が開かれます。

では「Society 5.0」までの「Society 4.0」では何が問題としてあげられるのでしょうか。「Society 4.0」では、知識や情報が十分に共有されず、分野を横断した連携が不十分なために行動が制限される問題があったのです。例えば、あらゆる情報から的確な情報をみつけて分析・処理することが困難だったり、年齢・障害による労働や行動制限があげられます。

そこで「Society 5.0」では、IoT(Internet of Things)を利用し、すべての人とものが情報共有される新たな社会を作り出します。例えば、人工知能(AI)により、必要な情報が瞬時に提供されることで、分析・処理能力が高まるのです。また、ロボットや自動走行車でこれまでの行動制限をなくし、どんな人も快適に暮らせる社会を目指します。

さらに「Society 5.0」は経済発展と社会的課題の解決を両立する可能性を秘めています。現代社会では、経済発展に伴いエネルギー需要の増加や食料需要が増加している状況です。その発展の裏では、温室効果ガスが大量に排出されたり、食料ロスの増加という社会問題を抱えています。このような経済発展に伴う社会問題をロボットやAIなどの最新技術を駆使し、解決するのです。具体的な例でいえば、農作業を自動化することで食料の増産システムをつくる、AIによる分析で効率的なエネルギー供給を実現するなどです。

このような形で「Society 5.0」には経済発展と社会的課題の解決の両立させる側面があります。

そして、ここまで説明した「Society 5.0」を実現する都市、それこそスマートシティなのです。

IoT(Internet of Things):モノのインターネット。モノがインターネット経由で通信することを指す。例えば、スマホと家電をインターネットでつなぐことなどがIoTだといえる。

スマートシティ実現の技術や仕組み

では、スマートシティ実現にはどのような技術や仕組みが必要なのでしょうか。その実現には、下記4つ技術が必要になります。

  • ネットワーク技術
  • センシング技術
  • 情報通信技術
  • アプリケーション技術

ネットワーク技術とはネットワークの中でさまざまなデバイス同士を接続する仕組みです。現在ではスマホ、サーバー、家庭用電気製品まであらゆるものとものが相互に接続されますよね。この技術をネットワーク技術といいます。

センシング技術とはセンサーを用いて画像や温度、振動、音などの情報を計測し定量化する技術を指します。センサーと呼ばれる装置や機器を使用する技術の総称です。

情報通信技術はインターネットを利用した技術のことです。ICT(Information and Communication Technology)などとよばれることもあります。私たちが普段使用しているスマホやパソコンには情報通信技術が使われているといえるでしょう。

最後はアプリケーション技術です。アプリケーションには「適応」や「応用」といった意味があり、「特定の作業を行う目的で設計されたソフトウェア」を作る技術のことを指します。

では「特定の作業を行う目的」とは、どのようなことでしょうか。例えば、普段私たちがよく利用する「Excel」は表計算に特化していたり「Word」だと文章作成に特化しています。このようにそれぞれの目的に沿ったアプリを作ることをアプリケーション技術とよびます。

ネットワーク技術、センシング技術、情報通信技術、アプリケーション技術はそれぞれ複合的に関連し合います。そして、私たちの生活がより良いものに変わっていくことが、スマートシティの実現なのです。

スマートシティリファレンスアーキテクチャ:スマートシティにおけるものごとの構造や関係性を表す設計図のこと。内閣府から出されている(スマートシティリファレンスアーキテクチャホワイトペーパー)。社会課題の解決にスマートシティを活用する際の指針として作成された。

スマートシティが注目される背景

スマートシティが注目される背景には下記のことがあげられます。

  • コロナウイルスの流行
  • 世界的な人口増加と都市集中

2020年に発生したコロナウイルスの流行により、3密(密閉・密集・密接)を避けて生活する必要がでてきました。3密を避けて生活するには、最新の技術により日常生活の利便性を向上させる必要があります。例えば、できるだけ出勤しないようにIT技術を取り入れ、在宅で働けるようにしたり、家庭で楽しめる食事を提供するシステムをつくるなどです。これらはすべてスマートシティにより実現しているのです。

また、世界的な人口増加に対応しなければならないことも背景にあります。世界人口は、2050年には今よりも20億人増加し、70%近くが都市部周辺で住むようになるといわれているのです。つまり、都市部への人口集中が現在よりも加速するといえるでしょう。

よって、その都市部への人口集中に対応するためにスマートシティが注目されています。人口増加、さらには都市部への人口集中が進めば、都市部の行政の圧迫や交通網がパンクすることは予想できるでしょう。そのような業務の煩雑さやエネルギーを軽減するために、最新技術を駆使して電力や行政、交通を円滑に利用できるようにするのです。

スマートシティとスーパーシティの違いや用語一覧

スマートシティとよく似た言葉として「スーパーシティ」があります。両者の違いは下記のとおりです。

単語 意味 違い
スマートシティ 都市の抱える諸課題に対して、ICT等の新技術を活用しつつ、マネジメント(計画、整備、管理・運営等)が行われ、全体最適化が図られる持続可能な都市または地区。 キーワードがICTなどの「技術の活用」。分野※ごとの取組を徐々に広げていく。
スーパーシティ 2018年に内閣府が打ち出したスマートシティの一類型。住民が参画し、住民目線で、2030年頃に実現する未来社会を先行実現することを目指す構想であり、国家戦略特別区域※法に基づく。①生活全般にまたがる複数分野の先端的サービスの提供、②複数分野間でのデータ連携、③大胆な規制改革、を主なポイントとしている。 キーワードが「住民目線」や「住民参画」。最初から分野横断的※なデータ連携基盤を整備し、大胆な規制改革を実施する。

※国家戦略特別区域:「世界で一番ビジネスをしやすい環境」を作ることを目的に、大胆な規制・制度の緩和や税制面の優遇が行われる区域
※分野:①移動、②物流、③支払い、④行政、⑤医療・介護、⑥教育、⑦エネルギー・水、⑧環境・ゴミ、⑨防犯、⑩防災・安全 等

スマートシティは最先端の技術を通して持続可能な都市を目指すことで「技術面」に重きがおかれます。一方でスーパーシティは「住民参画」というのがキーワードで、住民主体で便利な都市を作り上げていく構想のことです。

また、スマートシティと検索すると見慣れない言葉や初めて聞く用語がたくさん出てきます。そのような時のために、スマートシティに関する用語を下記にまとめました。

用語 意味
スマートシティ ICT 等の新技術や官民各種のデータを有効に活用することで、人々により良いサービスや生活の質を提供する都市や地域。
都市OS スマートシティ実現のために導入されるITシステムの総称。様々な都市のデータやサービスを連携するネットワーク同士のつながり。
Society5.0 経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会。サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより形成される。
トラスト サイバー空間でのデータの信頼性を確保すること。
IT(Information Technology) 情報技術を指す。ICTとほぼ同じ意味の言葉。
ICT(Information & Communications Technology) ICTは情報通信技術。ITはコンピューターなど情報技術そのものであるのに対し、ICTは情報技術に加えてインターネットのような通信技術も含む。
DX(Digital transformation) ICTの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変革させること。
ワーケーション 「ワーケーション」とは、ワーク(仕事)とバケーション(休暇)を組み合わせた欧米発の造語。長期滞在先でパソコンなどを使って仕事をすること。
AI(Artificial intelligence) 人間の思考と同じような形で動作するプログラムや情報処理・技術といった広い概念。
スマートローカル 地域資源を生かし、身の丈に合った便利な都市や地域を作ること。東京一極集中をなくし、地方都市・地域でも快適な生活の場を実現する。
Well-Being 身体的・精神的・社会的に良好な状態であること。
デマンドサイド(demand side) 需要側という意味。サービス等を受ける側。
サプライサイド(supply side) サプライサイドは供給側。サービス等を提供する側。
デジタルリテラシー ICTを用いてデジタル情報を発見、理解、評価、創造、伝達する能力。
パーソナライズ 一人一人の属性や購買、行動履歴にもとづいて最適な情報・サービスを提供すること。
レジリエンシー(Resiliency) 何らかのリスクや危機を「乗り越える力」のこと。
パーソナルデータ 個人情報や個人との関係性が見出される広範囲の情報。
コンソーシアム 複数の組織(企業、地方公共団体等)が集まり共通の目的を持ち事業活動する集団(共同事業体)のこと。
ガバナンス 「統治・支配・管理」という意味。組織などをまとめる際に決められる方針やルールを決め、実行すること。
エリアマネジメント 特定のエリアを単位に、民間が主体となって、まちづくりや地域経営(マネジメント)を積極的に行う取組み。
スマートシティ運営法人 スマートシティを運営するために特別に設置される法人(株式会社、社団法人等)。
地域まちづくり団体 地域の活性化や質的向上等の取組を担っている団体。特定地区の関係者により構成される。エリアマネジメント法人やタウンマネジメント組織(TMO)などが該当する。
アーキテクト 建築家、設計者などの意味。スマートシティにおいては、スマートシティの構想全体を企画する人物やその役割のことを指す。
CIO(Chief Information Officer) 最高情報責任者。
CDO(Chief Digital Officer) 最高デジタル責任者。
スーパーシティ 2018年に内閣府が打ち出したスマートシティの一類型。住民が参画し、住民目線で、2030年頃に実現する未来社会を先行実現することを目指す構想のこと。
サプライヤー サービス提供する主体のこと。
リビングラボ 生活環境の場で実験を重ね、利用者と提供者が共同でサービスや商品を生み出す活動。オープンイノベーションを生活の場で実践することともいう。
API(Application Programming Interface) アプリケーションやサービス間のデータ接続のこと。あるサービスやアプリケーションにおいて、その機能や管理するデータ等を他のサービスやアプリケーションから呼び出して利用する。それがAPI。
サイロ型システム サイロは家畜飼料などの倉庫を指す。倉庫では窓がなく、周囲からみえないことから、他のアプリやサービスと連携することなく孤立したシステムを意味する。
IoT(Internet of Things) あらゆるモノインターネットにつながり、新たな付加価値を生み出すこと。「モノのインターネット」といわれる。
GIS(Geographic Information System) 地理情報システム。位置に関する様々な情報を持ったデータを電子的な地図上で扱う情報システム技術の総称。
オープンデータサイト 無償で利用できる公共データの案内・横断的検索を目的としたサイト。
ITベンダー コンピューターシステムやネットワークシステムなどの提案・開発・コンサルティングを行う企業の総称。
アジャイル 「俊敏な」「すばやい」という意味。そこから、要求仕様の変更などに対して、機敏かつ柔軟に対応するためのソフトウェア開発手法を意味する。
ベンダーロックイン ある特定のメーカーの製品・システム・サービスに依存した構成にすることで、他社への乗り換えが困難になること。
PoC(Proof of Concept) 新しい技術などが、実現可能か、目的の効果や効能が得られるかなどを確認するために実験的に行う検証工程のこと。
PoB(Proof of Business ) PoCで得られた結果をもとに、どのようにビジネスとしてお金をとっていくのか、その方法を構築していくこと。
グリーンフィールド 埋立地や工場跡地などの更地を新規に開発し、そこに新たに住民を集める新規開発型の手法。
ブラウンフィールド 既存の街区における再開発。
エコシステム 分業と協業が共存する関係。ビジネスの「生態系」ともいわれる。
スマートシティリファレンスアーキテクチャ スマートシティを実現するための共通的な枠組み。スマートシティを実現するために必要なことが描かれている。
PIA(PrivacyImpact Assessment) プライバシー影響評価。プライバシー侵害のリスクを分析した上で、そのようなリスクを軽減する措置を講じていることを確認する行為。
オプトイン 利用者の同意を得た上で、データを取得・活用すること。
オプトアウト 本人が反対をしない限り個人情報の第三者提供に同意したものとみなすもの。
LPWA(Low Power Wide Area) 従来よりも低消費電力、広いカバーエリア、低コストを可能とする無線通信システムのこと。
スモールスタート 新たな事業を立ち上げる際に、最初は小規模に展開し、順次規模を拡大させていくこと。
クラウドファンディング 「群衆(クラウド)」と「資金調達(ファンディング)」を組み合わせた造語。つまり「インターネットを介して不特定多数の人々から少額ずつ資金を調達する」ことを指す。
PFS(Pay for Success) 国や地方公共団体等が、民間事業者に委託等する事業。
SIB(Social Impact Bond) PFSによる事業(PFS事業)のうち、民間事業者が地方公共団体等から受けた支払に応じて返済等を行うこと。
企業版ふるさと納税 国が認定した地方公共団体の地方創生プロジェクトに対して企業が寄附を行った場合に、法人関係税から税額控除する仕組み。
BID(Business Improvement District) 不動産所有者や事業者から徴収される負担金により、維持管理、開発、プロモーションを行う地区。
シビックテック Civic(市民)とTech(テクノロジー)を掛け合わせた造語。つまり、市民がテクノロジーを活用して、地域が抱える課題を解決しようとする取り組みや考え方を指す。
マッシュアップ されたさまざまな情報やコンテンツを組み合わせて、新たなコンテンツやサービスなどを作ること。
ビッグデータ デジタル化によって得られる位置情報や行動履歴などの膨大なデータ
アクティブ・ブローカー 積極的にデータ仲介を実施している都市OS運営者を指す。

スマートシティについての情報を得る際に参考にしてみてください。

スマートシティ実現には自治体や企業との連携が必要

スマートシティ実現には自治体や企業との連携が不可欠です。例えば、広島県では県と自治体が協調してスマートシティ実現を目指しています。

広島県では2019年に「ひろしまサンドボックス」とよばれる、最新のAIやIoTを活用した産官学のオープンな実験場を構築しました。「砂場」をイメージしており、さまざまな企業・人が集まって実証が行われているのです。

県が「ひろしまサンドボックス」のような企業や自治体が連携する場所を提供することで、地域課題の解決が促進されていきます。そして、課題が解決すると、そこからビジネスが生まれ、人材が育っていくという流れです。

実例としては、ドローンやロボットによるレモンの栽培・収穫です。広島県は日本で最もレモンの収穫量が多い県ですが、その栽培・収穫をする人たちの高齢化が懸念されていました。そこで、ひろしまサンドボックスで行われた実験をもとに、ドローンやロボットを使って高齢化問題を解決したのです。

このように、スマートシティ実現には企業や自治体などが一体となって取り組む必要があるといえるでしょう。

スマートシティとSDGs

ここまで説明してきたスマートシティは、SDGsとも関わります。SDGsとは、簡単にいえば「環境問題や社会問題を解決して持続可能な社会を実現するための目標」のことです。その目標には17個設定されており、169個のターゲット(目標達成のための方法)があります。

そのような17個ある目標の中で、スマートシティと大きく関わるのは、目標11「住み続けられるまちづくりを」です。

目標11の中をみてみると、「すべての人が、安い値段で、安全に、持続可能な交通手段を使えるようにする」とあります。

スマートシティ化が進むと、多くの人が安全に交通手段を使える社会が実現するのです。

「日本のスマートシティの事例」でも紹介しますが、長野県伊那市ではAIを利用した乗合タクシーを実現しています。高齢者でも慣れ親しんだリモコンを利用し、誰でも簡単に乗合タクシーを呼べます。また、AIが最適な経路情報を運転者に伝え、効率よく利用者を迎えに行けるのです。よって、高齢者で外出が困難な人であっても、タクシーが迎えに来てくれて安全に外出できます。

このように、スマートシティが実現すれば、すべての人が便利で安全な交通を利用できる都市へと近づくのです。よって、SDGsの目標11にスマートシティが深く関わっているといえるでしょう。

スマートシティのメリット・デメリット

ビル群のイラストにいろいろなデジタルが複雑に絡み合っている様子をイメージしたイラスト
ここまでスマートシティの概要について説明してきましたが、スマートシティのメリットやデメリットはどこにあるのでしょうか。スマートシティ化を進めるにあたってみえてくる利点や課題についてみていきましょう。

スマートシティのメリット・利点

スマートシティが実現すると、私たちはどのような便利な生活ができるのでしょうか。わかりやすく、現状とスーパーシティ実現後にわけてまとめました。

分野 現状の課題例 スマートシティ実現後
交通・モビリティ 都市部・観光地の交通混雑。過疎地の公共交通。交通事業者の人で不足。 位置情報や交通データを利用し、市民の移動が最適化する。自動運転による混雑緩和と交通空白地帯の解消し、現状よりも人出が不要になる。
環境・エネルギー 気候変動問題。災害時のエネルギー供給難。エネルギーコストの上昇。 新技術応用によるエネルギー総使用量の削減。再生可能エネルギーの普及。電源分散化によるエネルギー効率上昇と災害時対応力の向上。建物の断熱性と最新技術を組み合わせることによる低コストで快適な生活。
防災 異常気象に伴う災害の被害。避難先での生活難。困難な救助。 地形や気象をデータ化し、災害を予測することで最適な対策ができる。災害発生時の情報の可視化と素早い分析により、適切な避難誘導や災害対応が可能になる。ロボットやAIを活用した救助活動により、困難な救助にも対応できる。
インフラ維持管理 インフラの安全性確保のための投資コスト。インフラを通した生活水準の維持・向上。 センサー技術を活用し、データを集めることでインフラの効率的な運用ができる。投資の最適化により、コストを削減しながら安全なインフラを完備。データ収集を通して、インフラに関する新たなサービスを展開。
観光・地域活性化 地域の発信力向上。観光地域の見せ方の工夫。感染症拡大による消費の落ち込み。 最新技術を通して目的地を可視化し、より観光地へ誘致しやすくする。ICTを利用した新たなサービス展開により、消費の拡大を促せる。
健康・医療 生活習慣が原因の病気。医療コストの増大。過疎地域における医療機関訪問の負担。一人暮らし高齢者・共働き世帯の子どもの健康管理。 個人の移動や健康データを活用し、市民に最適な健康サポートができる。遠隔地から医療アクセスを可能にし、医療関係者の訪問負担が軽減する。これまでの既往歴などから、本人に最適な健康情報が届く。
セキュリティ・見守り 犯罪や事故の発生。育児・介護の負担。 防犯カメラの設置と事件情報の分析により、犯罪の予防が可能になる。各地に設置された見守り用のカメラや検知器により、高齢者や子どもの位置が瞬時にわかり、育児・介護負担が軽減する。
物流 煩雑で非効率な物流システム。物流業務従事者の減少。 ロボット、ドローン、自動走行トラック導入により、運搬物が早く確実に届き、人件費の削減を実現する。最新のシステム導入による煩雑な手続きをなくし、ペーパーレス化する。
都市計画・整備 都市全域のデータ把握が困難なこと。 アナログ情報をデータ化することでビッグデータを作成。そのビッグデータで都市全域のデータ把握に努め、都市計画を整備する。
農林水産省 農林水産業従事者の減少。非効率な生産と不安定な作業。 ロボットの導入により、作業の負担を軽減する。熟練者の技術やノウハウをデータ化し、品質向上・収穫量増加につなげる。農作物の発育や害虫の発生、気象情報の収集・分析により、より効率的な作物の生産を実現。

上記のように、スマートシティは私たちの現状抱えている困難を解決し、より便利な社会をもたらしてくれるのです。つまり「私たちの生活の質の向上」がスマートシティによりもたらされるメリットといえます。

スマートシティのデメリット・課題と対策

スマートシティは最新の技術を駆使し、より便利な都市を目指すことですが、そこには下記のようなリスクも潜んでいます。

  • プライバシーの保護や安全性
  • システム障害のリスクがある

スマートシティではビッグデータとよばれる、膨大な情報が入ったデータをもとに都市の利便性を追求します。例えば、SNSの投稿から得られる位置情報や投稿内容がデータとして蓄積され、観光客の行動パターンが把握できるなどです。そのようにしてビッグデータは活用されますが、プライバシーという観点でみると課題があります。自分が意図しない形でデータが流出していたりなど、トラブルになる可能性もぬぐい切れません。よって、より慎重にデータを取り扱うことが求められるといえるでしょう。

プライバシー保護に関しては総務省からスマートシティセキュリティガイドライン(第2.0版)が出されており、そこにはスマートシティにおける以下のようなリスクと対策が盛り込まれています。

起こりうる問題 対策
システムの委託や再委託が進むことで、要求が十分に伝わらず、セキュリティが弱くなる。 システムを運営していく主体が関与する委託先、再委託先を把握し、スマートシティ全体の管理を行う。
システムの委託が進むと、情報流出などが発生した際にどこが責任を取るのか不明確になる。 システムの責任分岐点を明確にする。スマートシティを構成するシステム全体のつながりを把握しておく。
アプリケーションなどのサービスで不正ログイン等が発生した場合、サービス提供者がたくさんいる場合、原因究明までに時間がかかる それぞれのサービス提供者ごとに連絡窓口を設け、全体で情報を共有できるシステムにする。サービス提供の主体が連携する事業者を把握して起き、何か起きた際には早急に対応できるようにする。
データの利用が進み、サービス提供の契約時にデータの利用目的や権限が明確に定められていない。 利用目的やサービス利用者との同意内容に応じたデータの運用を行う。契約や規約の中でスマートシティ内で扱われるデータの取り扱い基準を明確化し、サービス提供事業者の共通認識にする。
分野や地域を越えたデータ連携が行われ、データの連携先・連絡先が拡大してしまう。 データ連携する際はセキュリティチェックシートや第三者認証を活用することで、セキュリティ体制の確認・評価を実施する。連携するデータが増えることをあらかじめ想定し、サービス利用者から追加の同意を得る仕組みを整えておく。

また、スマートシティは最新の通信技術等を駆使するため、システム障害が発生すると多大な被害がでる側面もあります。身近な例でいうと、地震などの災害が発生した際、スマホの通信ができなくなり、パニックに陥るなどです。

よって、サービス提供を行う各事業者はシステム障害やセキュリティ事故発生時の対応体制を事前に整理し、把握しておくことが必要です。また、リスクの分析結果や対応体制を定期的に見直し、更新していくことも大切でしょう。

スマートシティの失敗事例

上記で紹介したようなデメリットもあることから、スマートシティは必ずしも成功するとはいえません。以下で紹介するのはスマートシティの失敗した事例です。

【トロントの未来都市「IDEA」の開発中止】

2017年に「Sidewalk Toronto」というカナダのトロントにスマートシティを作る計画が発表されました。この計画はGoogleの姉妹企業であるSidewalk Labsが2017年に発表します。注目を集めましたが、3年後の2020年には中止となりました。では、なぜ「Sidewalk Toronto」は中止になったのでしょうか。

大きな要因としてはプライバシー侵害の問題があったためです。「Sidewalk Toronto」プロジェクトによって、膨大なデータが収集・活用されることに対して大きな反発があったのです。

よって、スマートシティ事業を推進するには最新の技術を優先させるだけでなく、政府・企業・民間・市民の合意形成が重要であることがわかります。

【裾野市の「次世代型近未来都市構想」を廃止】

静岡県裾野市では「次世代型近未来都市構想(SDCC構想)」とよばれる、スマートシティ化計画がありました。SDCC(スソノ・デジタル・クリエーティブ・シティ)構想はトヨタ自動車が構築する実験都市「ウーブン・シティ」と連携して、まちづくりを進める取り組みです。しかし、構想発表からわずか年半で終了します。いったい何が原因だったのでしょうか。

それは「構想が市民生活の現状にそぐわないこと」です。構想発表当初は、裾野市の人口減少と高齢化の課題を解決するべく、人工知能やドローンといった最新技術の活用を計画していました。産学87団体が参画し、裾野市と共同で43事業の実験にも取り組みます。しかし、裾野市は高齢者が多い場所で最新技術の用語が浸透していませんでした。つまり、住民の理解を得られないことが中止につながったのです。

裾野市の村田悠市長は中止の発表後、SDCC構想にとらわれず、その時々に合った方法で裾野市の課題を解決していくとしています。

裾野市の失敗例からもわかるとおり、スマートシティ形成において住民の理解はなくてはならないといえるでしょう。

日本のスマートシティの事例

路面電車が走っている富山駅前の風景
ここからは、日本でスマートシティに成功している事例をみていきましょう。

富山県富山市

最初に紹介するのは、富山県富山市のスマートシティです。富山市では、コンパクトシティとよばれる、住まい、交通、公共サービスなどを効率化した都市を目指しています。

そのような富山市では、以下の基本方針と施策により、コンパクトシティ化を進めているのです。

基本方針 施策
公共交通軸の活性化 鉄軌道ネットワークを充実させ、路線バス網もより快適に利用しやすくする。公共交通の魅力を高め、公共交通の沿線に人口や都市機能を集積する。
地域特性に応じた多様な生活交通の確保 生活交通を充実させ、郊外や山間部でも便利な交通を確保する。
公共交通利用促進 ICTを活用し、公共交通の利用を促進する。

実際、富山市の交通網は富山駅を中心に、鉄軌道7路線と約60路線の路線バスという放射状のネットワークを形成することに成功してます。そういった公共交通網が充実することにより、過度に車に依存した生活から「歩いて暮らせるまち」を実現したのです。

コンパクトなまちづくりの効果は数値にも表れており、平成26年から令和元年までで路面電車の利用者数は約15%も増加します。さらに、高山線(鉄道路線)の利用者は実験開始前と比べて約31%も増加したのです。富山市は、まさに交通軸を利用したスマートシティの実現といえるでしょう。

長野県伊那市

長野県伊那市は伊那市新産業技術推進協議会を立ち上げ、伊那市のスマートシティ化を目指しています。伊那市では「自家用車を持たない高齢者は移動・買い物が困難な状況」という課題がありました。

その課題を解決すべく、下記の取り組みを実施します。

  • ゆうあいマーケット
  • ぐるっとタクシー
  • 高齢者見守り


まず、伊那市の特徴として、高いケーブルテレビ普及率があげられます。その普及率はなんと約65%です。そこに伊那市は注目し「高齢者が慣れ親しんだリモコンのみで完結するサービス」を考えました。

1つ目が「ゆうあいマーケット」です。ゆうあいマーケットとは、ドローンを利用した物流のことです。ケーブルテレビの画面上に表示される商品300品の中から午前11時までに注文すると、なんと夕方までに商品が自宅に届きます。利用者は週1~2回の頻度で利用しており、まさにスマートシティを実現しているといえるでしょう。

続いては交通に関するスマートシティ化です。伊那市では、ぐるっとタクシーとよばれるAIによる最適運行・自動配車を実現しました。ぐるっとタクシーはケーブルテレビから当日予約可能な乗合タクシー※で、AIが最も効率の良い運行ルートを判断してドライバーへ配信してくれます。こちらも慣れ親しんだリモコンから予約可能で、伊那市の特徴を利用することで交通そのものを支えているのです。
※乗合タクシー:決まった路線や運賃、運行時間で不特定の乗客を輸送するタクシー。

伊那市は高齢者が多い特徴もあります。そのため、高齢者が安心して生活できるように地域として見守ることも必要でしょう。そこで登場するのが、「安否確認」と「リマインド」機能です。

安否確認はケーブルテレビを一定期間利用していないことがわかると、家族にメールで知らせるシステムです。リマインドは何か忘れたりすることを防止するため、忘れたくないことがケーブルテレビ上にメッセージで表示されます。両方ともリモコンで簡単に操作できることが特徴です。

上記であげた取り組みにより、伊那市では高齢者でも安心して買い物や交通を利用できるスマートシティを実現しています。

香川県高松市

続いて紹介するスマートシティは香川県高松市です。高松市では「スマートシティたかまつ推進プラン」で、デジタル化に取り組む姿勢や基本方針、具体的施策をまとめています。そのプランをもとにスマートシティ化を進めているのです。

スマートシティたかまつ推進プランの基本方針は、以下のように設定されています。

市民全員がデジタル技術を活用でき、社会全体のDXを進めることで、誰もが、どこからでも利便性を享受できる「スマートシティたかまつ」の実現

この基本方針をもとに、下記の取り組みを実施しています。

施策体系 具体的な施策
持続可能で魅力的なまちづくり 防災・災害時に有効なデータを可視化することで、災害時に必要な情報を市民へ効果的に伝達する。デジタル技術を導入し、農業経営を安定化させ、農業の復興を図る。
市民ニーズに応じた行政サービスの効率的な提供 オンライン申請のプラットフォームを活用して、申請・届出のオンライン化を進める。行政の政策立案時に最新技術を活用したデータの収集・分析にもとづく評価・検討を重ねる。
多様な主体の出会いと協同を推進する仕組みづくり スマートシティたかまつ推進協議会と連携し、データ利活用人材の確保・育成と人材コミュニティを創出する。スマートシティの取り組みをオープンな場でいつでも誰でも意見交換できるようにする。
誰もがデジタル社会の恩恵を享受できる環境整備 高齢者など、デジタル機器に不慣れな方向けにサポート体制を充実させる。地域コミュニティ協議会でICT機器の活用を進める。

高松市では、上記表のように、4つの施策体系にもとづき、スマートシティ化を進めています。そして、その進捗状況は、毎年度を1サイクルとして、プランの進捗管理が行われる予定です。各施策が着実に推進されていることや、プランの評価、新たな課題まで柔軟に対応します。

上記のような取り組みを通じて高松市はスマートシティ化を進めているのです。

栃木県宇都宮市

栃木県宇都宮市では、市民や行政など多様な主体が支え合いの「わ」を形成するネットワーク型コンパクトシティ形成に向けて動き出しています。その事業推進は下記のように大きく4つにわけられ、進められているのです。

事業 内容
ルネッサンス大谷 大谷地域の観光振興を目指す。大谷地域とは、宇都宮市が有する観光地で、年間70万人を超える観光客が来場。大谷資料館や地底湖クルージングなど有名なポテンシャルを活かしつつ、快適に観光できる交通を整える。グリーンスローモビリティ※を採用し、環境との共存も目指している。
スマート・モビリティサービス LRT※を軸とした交通ネットワークを構築。ジャンボタクシーとよばれる、ワゴンタイプのタクシーで多くの人の輸送を可能にする。さらに、UD(ユニバーサルデザイン)車両も採用し、障がい者や高齢者も安心して交通を利用できるようにする。
スマート・ホスピタリティ 国際的なスポーツイベントを開催し、外国人を誘致するシステムやホテル、商業施設を充実させる。顔認証技術を中心としたキャッシュレス化や出入国管理を行い、外国人がストレスなく国内で過ごせるようにする。
スマート・エネルギーマネジメント 再生可能エネルギーの地産地消を実現する。そのために地域に新電力会社を設立し、宇都宮市内で作った電力を市内の公共交通などに活かす。

※グリーンスローモビリティ:時速20km未満で公道を走ることができる電動車を活用した小さな移動サービス。
※LRT(Light Rail Transit):乗降の容易性、定時性、速達性、快適性などの面で優れた特徴を有する軌道系交通システム。路面電車と似ているが、路面電車よりも速度が速く、車内に段差がない。走行時の騒音や振動も少なく、快適に乗れる。

上記の事業をとおして、宇都宮市はスマートシティへ近づくのです。将来的には民間企業のICT活用も進め、官民共同で事業推進できるようにする仕組みづくりを計画しています。そして、宇都宮市で効率的に使用されたシステムは他自治体も導入できるよう、その活用手法が公開される予定です。

福島県会津若松市

福島県会津若松市では、「地域活力の再生に向けた取組み~ステージ2~」という市の施策や方針まとめたものがあります。その中で、「スマートシティ会津若松」の推進を掲げています。そこで重要視されているのが、下記3つの視点です。

  • 地域活力の向上
  • 市民生活の利便性向上
  • 市民との情報共有の促進

1つ目の地域活力の向上では、企業・大学・市が協力して先進的な取り組みを実施しています。例えば、会津大学との連携した人材育成などです。それらの取り組みで、地域経済の活性化を目指します。

2つ目は市民が安心安全かつ快適に暮らせるようなまちづくりを実現することです。ICTを活用し、情報収集や各種証明書手続きを簡素化していきます。そのことにより、市民がより快適に過ごせるまちを実現するのです。

最後は情報共有、つまり「まちの見える化」を指します。会津若松市では、スマートメーター※を用い、徹底したエネルギー管理を行うことでまちの見える化を実施しているのです。さらに、GISとよばれる住民情報等を地図上に表示するシステムを空き家対策・バス路線の最適化に役立てています。また、データに関しては「DATA for CITIZEN(データフォーシチズン)」という情報基盤を構築しました。公共データをウェブ上で公開し、まちの見える化を実現するのです。

このように、会津若松市はまち全体が協力し、情報を見える化することで、住民が快適な暮らしができるような取り組みを進めています。
※スマートメーター:専用の機器を取り付けることにより、モニターで電力の使用状況を把握できる。

スマートシティに取り組む自治体一覧

上記で紹介した以外に、日本のスマートシティの候補地としてはどこがあてはまるのでしょうか。
2019年に国土交通省からスマートモデル事業の公募が行われました。スマートモデル事業は最新技術や産官学連携をとおして、地域の課題を解決していく事業です。よって、スマートシティと大きな関連があるといえるでしょう。

スマートモデル事業の実施地域として下記都市があげられています。先行モデルプロジェクトはスマートシティ全体を推進していく事業で、例えば顔認証技術やデータ活用などが進められます。

重点事業化促進プロジェクトは、高齢化社会に伴う交通難など、それぞれの重点事業に特化したプロジェクトが進められる予定です。
【先行モデルプロジェクト】

プロジェクト実施地区 対象区域
北海道 札幌市 市の中心部および郊外
秋田県 仙北市 市全域
茨城県 つくば市 市全域
栃木県 宇都宮市 市全域
埼玉県 毛呂山町 町全域
千葉県 柏市 柏の葉キャンパス駅周辺
東京都 千代田区 大手町・丸の内・有楽町エリア
東京都 江東区 豊洲エリア
静岡県 熱海市、下田市 熱海市市街地、下田市市街地
静岡県 藤枝市 市全域
愛知県 春日井市 高蔵寺ニュータウン
京都府 精華町、木津川市 けいはんな学研都市(精華・西木津地区)
島根県 益田市 市全域
広島県 三次市 川西地区
愛媛県 松山市 中心市街地西部

【重点事業化促進プロジェクト】

プロジェクト実施地区 対象区域
宮城県 仙台市 泉パークタウン
茨城県 守谷市 市全域
群馬県 前橋市 市全域
埼玉県 さいたま市 美園地区、大宮駅周辺地区
東京都 大田区 羽田空港跡地第1ゾーン
神奈川県 横浜市 みなとみらい21地区
神奈川県 川崎市 新百合ヶ丘駅周辺地区
神奈川県 横須賀市 市全域
新潟県 新潟市 市全域
福井県 永平寺町 町全域
岐阜県 岐阜市 市全域
愛知県 岡崎市 乙川リバーフロントエリア
大阪府 大阪市 うめきた2期地区、夢洲地区
兵庫県 加古川市 市全域
岡山県 倉敷市 中心市街地
広島県 呉市 市全域
広島県 福山市 市全域
徳島県 美波町 町全域
香川県 高松市 市全域
愛媛県 新居浜市 市全域
福岡県 福岡市 九州大学箱崎キャンパス跡地等および周辺地域
長崎県 島原市 島原半島
熊本県 荒尾市 南新地地区

上記表から、日本国内の自治体でスマートシティ化に関する取り組みが盛んに行われていることがわかります。

海外のスマートシティ事例

ここまで日本国内のスマートシティについてみてきましたが、海外にはどのような最新技術を採用した都市があるのでしょうか。

韓国

まず紹介するのは隣国でもある韓国です。韓国の世宗特別自治市と仁川広域市ではスマートシティ化を進める取り組みを実施しています。

【世宗特別自治市】

世宗特別自治市では、「世宗創造村」といわれる従来の農業にICTを融合し、最新の農村モデルを展開しました。また、生産された農作物を地域で消費する「地産地消」の環境を整え、地域の虚走力向上に努めています。「いきいき市場」という150種もの農作物や加工品を販売し、安全で良質な地元の農作物を提供しているのです。

世宗特別自治市では、子どもの割合が多い特徴があることから、社会全体で子育てをサポートするサービス作りにも取り組んでいます。その取り組みから、2017年にはユニセフの「子どもにやさしいまち」認証を取得しました。

さらに、世界のスマートシティとの交流も盛んにおこなわれています。WACA(世界行政都市連合)を構成し、5つのグローバル行政都市との親交を深めているのです。

そして、2018年にはBSI(英国規格協会)の世界5大モデル都市に選出され、スマートシティの先導都市として世界を牽引しています。

【仁川広域市】

仁川広域市は市民とともに公共交通のスマートモビリティ化に挑戦している都市です。

仁川広域市では、「I-MOD」とよばれる乗客が呼び出すとリアルタイムで最速ルートが生成されるバス配車システムを構築しました。

さらに、市民参加団という地域交通の不便さ解消の討論をする場が設けられ、その構成員は地域住民です。つまり、市民が参加できる形でスマートシティを目指しているといえるでしょう。

上記取り組みは、市民の公共交通待ち時間や移動時間を短縮することにつながりました。

このように、韓国では地域の特色を活かし、市民が参加できる形でスマートシティを実現しています。

ポルトガル・リスボン

ポルトガルの首都リスボンではスマートシティ実現に向けた取り組みが行われています。その取り組みは「リスボン・インテリジェント・マネジメント・プラットフォーム」と呼ばれています。AIや最新技術で膨大なデータを収集・分析し、市民や観光客がより便利なサービスを使えるようにする取り組みです。

リスボンでは、市民のQOL(Quality of Life、生活の質)を改善するため、NECと協力し、散らばったシステムの統合を目指します。30以上の官民機関から集められたデータを統合、管理、表示する基盤作りに成功し、各地の散らばったデータの統合が進められました。このことにより、自治体の活動が統合的になり、市民へ提供するサービス向上につながったのです。

具体的には下記のような成果が得られています。

  • 各所に設置されているセンサーや監視カメラで捉えられたデータが市の安全性を向上させている。
  • 事件発生時に警察を素早く派遣できる。
  • ごみ箱にセンサーが設置され、ごみ箱がいっぱいになった時に通知される。よって、ごみ収集の作業効率が上昇。
  • 貸し出しに利用される自転車はすべてアプリと連動している。よって、今使われている台数をリアルタイムで把握でき、今自転車を借りられるのか瞬時にわかる。

このように、ポルトガルのリスボンでは、企業と協力し、データ管理を円滑化することで市民のQOL向上させているのです。

アメリカ

アメリカでは、ニューヨークとシカゴでスマートシティ化が進められています。それぞれどのような最新技術が導入されているのでしょうか。

【ニューヨーク】

ニューヨークでは「LinkNYC」によるスマートシティ化が進められています。「LinkNYC」とは、キヨスク端末※のことを指し、下記のような機能があります。

  • 持参したデバイスで無料Wi-Fiに接続できる
  • アメリカ内で電話をかけられる
  • 911などの緊急電話にかけられる
  • USBポートがあり、スマホの充電ができる
  • 地図や案内がみられる

※キヨスク端末:店舗や公共施設、鉄道などに設置されている自立式の情報端末。名前は簡易構造物一般を指す英語「kiosk」に由来する。

上記機能が無料で使えるのです。では「LinkNYC」はどのように運用されているのでしょうか。

その仕組みは「LinkNYC」に公共広告・企業広告などを表示させることで収益を得ているのです。公共広告では、交通情報やローカルエリアの情報を表示させ、観光客から地元民まで興味深い情報を提示させています。また、「LinkNYC」は歩道や車道の脇に設置されることが多く、視認性がいいことから、企業の広告塔として多くのニーズがあるのです。

このように、ニューヨークでは「LinkNYC」により市民の生活の利便性を向上させ、スマートシティ化を進めています。

【シカゴ】

シカゴでは「Array of Things」という各地に設置されたセンサーによるネットワーク形成を進めています。「Array of Things」は産官学共同でデータ収集が行われ、研究・公共利用のために活かされているのです。具体的には、下記のような分野での活用が期待されています。

  • 洪水や交通渋滞といった問題へのデータ分析
  • 大気汚染やヒートアイランド現象、騒音、渋滞のデータ分析
  • 夜間の安全な通行ルート推奨
  • 渋滞時の歩行者の安全に配慮した信号制御

このプロジェクトでは、シカゴ市のイノベーション・テクノロジー局と交通局、企業、研究者、近隣住民などの市民が参加し、進められています。まさにシカゴ全体が参加してスマートシティの取り組みを進めているといえるでしょう。

中国

中国の杭州市では「ET都市ブレイン」を導入し、スマートシティ化を進めています。「ET都市ブレイン」とは交通信号を人工知能で管理し、スムーズな交通・渋滞解消を実現することです。交通信号の人工知能管理には下記のようなことがあげられます。

  • 救急車などの緊急車両の移動に合わせて、信号を青に切り替え、到着時間を短縮させる
  • 監視カメラの映像から交通違反・交通事故を自動認識し、自動で警察へ通報させる

特に杭州市民が効果を実感しているのが渋滞の解消です。2016年まで渋滞のひどい都市ワースト5位だったのが、「ET都市ブレイン」を導入後、ワースト57位まで改善しました。

杭州市全体の4分の1もの交差点が人工知能で管理され、消防などの緊急時対応に活かされているのです。

このように、中国の杭州市では人工知能による交通の円滑化を実現することで、住民の生活をより豊かにしています。

エストニア

北欧にあるエストニアも最新技術を導入した電子国家で、スマートシティ化が進んでいます。なんと行政手続きの99%をオンラインで実施可能にしているのです。その仕組みを支えているのはいったい何なのでしょうか。

それは「eIDカード」とよばれる、日本でいうマイナンバードの存在です。エストニアでは15歳以上の国民に「eIDカード」の保持を義務付けているため、99%という高い普及率を実現しています。

そして、その「eIDカード」より、行政手続きが完結するため、行政手続きの99%をオンラインで実施可能にしたのです。

エストニアでは他にも、世界中から起業する人が増加しており、12,000を超える法人が設立されています。その理由は「e-Residency(イーレジデンシー)」という制度にあるのです。イーレジデンシーを利用して、手続きをすると誰でもエストニア国民になれるので、なんと法人設立の手続きもオンラインにより完結します。さらには口座開設、契約の署名もオンラインでできることから、さまざまな国の人々が注目する国へと成長しているのです。

このように、エストニアでは電子技術を通したオンラインによる手続き簡素化で、スマートシティを実現しています。

スマートシティの取り組みに注目しよう

今回はスマートシティについて解説しました。重要な内容は以下のとおりです。

  • スマートシティは最新のテクノロジーを駆使してできた便利な都市
  • スマートシティは私たちの生活の質を向上させる
  • スマートシティの課題はプライバシーやシステム障害

スマートシティは最新技術を駆使してできた、私たちの生活をより便利に快適にしてくれる都市のことです。スマートシティが注目された背景には、近年流行している新型コロナウイルスや人口増加・人口の都市集中がありました。

そのようなスマートシティが実現すると、あらゆる煩雑な作業が最適化します。よって、交通や防犯、防災システムが整い、治安が向上したりなど、私たちの生活の質を向上してくれるのです。

一方でスマートシティの課題もあり、プライバシー管理の問題やシステム障害のリスクが該当します。その対策には、サービス提供の主体がすべての提携先を把握することや事前に緊急時の対策を組み込んでおくことがあげられました。

また、スマートシティは各国で取り組みが進んでおり、例えば、エストニアでは99%の行政手続きがオンラインで完結している状況です。

このように、スマートシティ化により、私たちの生活は今後より便利になっていくでしょう。私たち個人も今後のスマートシティに関する取り組みに注目し、都市がどのような未来を描いているのか学んでいきましょう。

<参考資料/参考文献>
内閣府:Society 5.0
内閣府:スマートシティガイドブック
ソフトバンクニュース:【センシング技術】~1分で分かるキーワード #79
国際連合広報センター:人口構成の変化
国土交通省:スマートシティに関する取り組み
内閣府:スーパーシティ・デジタル田園健康特区について
首相官邸:国家戦略特区
内閣府:スマートシティガイドブック 別冊3
首相官邸ホームページ:日本のスマートシティSDGsなど世界が抱える課題を日本のSociety5.0で解決
business leaders square wisdom:スマートシティの実現に向けて自治体が取り組むべきこと
内閣府:スマートシティガイドブック 別冊1
内閣府:地域課題を解決するための スマートシティサービス事例集
business leaders square wisdom:スマートシティとは?国内外の事例や実現に向けた課題を紹介
総務省:スマートシティセキュリティガイドライン(第2.0版)
日経COMEMO:スマートシティのアカウンタビリティ問題を考える
WIRED:グーグルがトロントで夢見た「未来都市」の挫折が意味すること
ふるさとメディア「あなたの静岡新聞」:廃止を発表 裾野市の「次世代型近未来都市構想」とは?
富山県:富山市の目指すコンパクトシティ
国土交通省:長野県伊那市版スマートローカル「INAスーパーエコポリス」について~環境・経済・都市の融和~
国土交通省:「未来都市うつのみや」を目指して
国土交通省:グリーンスローモビリティ
国土交通省:LRTの導入支援 – 道路
会津若松市:「スマートシティ会津若松」について
会津若松市:スマートシティ会津若松パンフレット2022年度版
国土交通省:スマートシティプロジェクト箇所図
スーパーシティメディア:スマートシティモデル事業とは。スマートシティプロジェクト一覧
K-Glocal Newsletter Vol.2:みんなが幸せなスマートシティ世宗特別自治市
K-Glocal Newsletter Vol.2:仁川広域市 市民とともにスマート公共交通モビリティにチャレンジ
NEC:リスボン市様: 導入事例 – NEC
Worker’s Resort:ニューヨーク、スマートシティ化の立役者 – 公共無料Wi-Fiキオスク”LinkNYC”が変えるニューヨーカーの働き方
ジェトロ:北米(アメリカ、カナダ)におけるスマートシティの取組
中華IT最新事情:人工知能が交通信号を制御。ET都市ブレインが杭州市でいよいよ本格始動
広報かが:エストニアって、どこ?
高松市:スマートシティたかまつ推進プラン(2022~2024)

この記事の執筆者
EARTH NOTE編集部
SDGs情報メディア
「SDGsの取り組みを共有し、循環させる」がコンセプトのWEBメディア。SDGsの基礎知識や最新情報、達成に取り組む企業・自治体・学校へのインタビューをお伝えし、私たちにできることを紹介します。
身近なアイデアを循環させて、地球の未来をつなげていきましょう。皆さんと一緒に取り組んでいけたら幸いです。
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