リカレント教育の意味やメリットを分かりやすく解説。リスキング・生涯学習との違いや日本の現状・具体例とは

社会人が学び直しをする機会であるリカレント教育は、個人や社会にメリットがあることから需要が高まっています。
人生100年時代が構想されるようになり、多様な働き方が選べるようになった現代、リカレント教育はキャリアを重ねる上で重要なものです。
SDGsにおける教育や働きがいなどに関する目標に関係することであり、働く人や雇用する側も知っておくべき内容となっています。
そこで今回は、リカレント教育の概要やメリット、日本の現状と具体例を分かりやすくご紹介します。
目次
リカレント教育とは、大人の学び直し
リカレント教育とは、学校教育が終わり社会へ出た後に、再び必要な教育を受け、学びと仕事を繰り返すことを指します。
「リカレント(recurrent)」という言葉は、繰り返す、再帰する、といった意味を持っており、就労と教育の循環を表しています。
海外では、仕事を中断して教育機関で学びを行い、仕事を再開するケースがありますが、日本においては、仕事を続けながら教育を受ける場合もリカレント教育とされ、社会人になってからも仕事に関わるスキルや知識を学ぶことができます。
リカレント教育は、その趣旨によって以下3つの型に分類できるとされており、それぞれの関係省庁が取組を進めています。
【リカレント教育の3つの分類】
分類 | 趣旨 | 関係省庁 | |
1 | 生活の糧を得るため | 労働者・求職者の職業の安定に資するための職業能力開発、環境整備のための支援 | 厚生労働省 |
2 | 更なる社会参画のため | 競争力強化に向けた環境・機運の醸成 | 経済産業省 |
3 | 知的満足(文化・教養)のため | 実践的な能力・スキルの習得のための大学・専修学校等を活用したリカレント教育プログラムの充実 | 文部科学省 |
この3つの分類は関わり合う部分もあり、今後は「2.更なる社会参画のため」のリカレント教育に注力していくと述べられています。
まずは、なぜリカレント教育が重要視されるようになったのか、その背景やメリット、混合されやすい「生涯学習」や「リスキリング」との違いをご紹介していきます。
リカレント教育が必要とされる背景と歴史
1970年、経済協力開発機構(OECD)がリカレント教育を公式に採用し、1973年に報告書「リカレント教育-生涯学習のための戦略-」が公表されたことで、世界に広く周知されました。
リカレント教育が求められるようになった背景としては、以下のことが挙げられます。
・平均寿命の延び
厚生労働省が公表している令和4年の簡易生命表によると、男性の平均寿命は81.05年、女性は87.09年となっており、昭和22年における男性の平均寿命は50.06年、女性は53.96年と比べると、大幅に寿命が延びていることが分かります。
出典:厚生労働省-令和4年簡易生命表の概況
仕事を引退した後の人生が長くなることで、学び直して新しい職に就くことも可能になります。
また、少子高齢化により、高齢世代を支える現役世代の割合が大きく減少しており、年金受給の年齢も引き下げられ、退職後も働くためのスキルが必要な状況となってきています。
・働き方の変化
これまでの一般的な人生設計では、学校教育の終了後に就職し、一定の年齢で退職、その後の生活を送ることが一般的でした。
現代においては、多様な価値観も広まり、転職や起業で新しく仕事を始める、仕事を辞めて留学する、定年後に新たな職に就くなど、これまでの型に捉われないマルチステージな働き方が増えてきています。
それぞれのライフスタイルに合わせた働き方を選択できるように、必要に応じて新たなスキルや知識を学び直す必要があります。
・技術革新
AIやIOTなどの急速な発展により、雇用環境や仕事内容が変化してきており、それらに対応するために学び直す必要も出てきます。
技術革新の発展により、狩猟社会(Society1.0)・農耕社会(Society2.0)・工業社会(Society3.0)・情報社会(Society4.0)に続き、5番目の新たな社会「Society5.0」の到来が予想されています。
必要なスキルが変化することから、最新の技術や知識の習得を継続していくことが求められます。
出典:内閣府-Society 5.0
リカレント教育で学べることは多種多様
リカレント教育では、学校教育を修了した社会人が仕事で活用するためのスキルや知識を学びます。
そのため、外国語やビジネス、資格習得、ITなど多種多様であり、より専門的な知識やスキルを学べる内容となっています。
政府の「人づくり革命 基本構想」によると、「新規かつ実践的で雇用対策として効果的で必要性の高いリカレント教育のプログラムの開発を集中的に支援する」ことが明記され、産学連携の取組も進められています。
産学連携の取組としては、具体的に以下の内容が挙げられています。
・先行分野におけるプログラム開発
AIやロボットなどを活用したものづくり、経営管理、農業技術、看護、保育、企業インターンシップを取り入れた女性の復職支援等における先行的なプログラムの開発、全国展開
・技術者のリカレント教育
情報処理やエンジニアリングなどの各分野におけるリカレント教育コースを新たに業界と連携
・実務家教員育成のための研修
実務家教員の育成プログラムを開発・実施し、大学等に推薦する仕組みの構築や支援策の検討
・生産性向上のためのコンサルタント人材の養成
生産管理の実務経験がある製造業のOBやシニア人材を、生産性改善を行うコンサルタントとして育成、派遣
・長期の教育訓練休暇におけるリカレント教育に対する助成
企業に対して人材開発支援助成金による支援を行い、学び直しや副業、兼業に向けた社会的気運を醸成
リスキリングとの違いは、学び方
リカレント教育と間違われやすい概念として、2021年のダボス会議で周知されるようになった「リスキリング」が挙げられます。
リスキリングとは、新しい仕事に就くため、または現在の業務で必要とされるスキルの変化に対応するために、必要スキルを身に付ける(させる)ことです。
今後も仕事で価値を創造し続けるため必要なスキルを学ぶ、という点が強調され、今後さらに発展していくデジタル分野や様々なニーズに対応していくため、企業や業界が主体となって進めているといえます。
学びと仕事を繰り返すリカレント教育は、主に個人が自身のキャリア形成のためであり、一度離職して学び直しを行い再就職するパターンが多いですが、リスキリングは働きながら学び続ける点でも違いがあります。
生涯学習との違いは、目的
生涯学習は、生涯を通じて行うあらゆる学習のことであり、社会教育やスポーツ活動、地域活動、文化活動、ボランティア活動、趣味など「生きがい」に繋がる内容や、仕事に関係ない内容も含まれます。
そのため、同じ学びであっても、仕事に活用する技術や知識を学ぶリカレント教育に対して、より生き生きとした人生を送るための生涯教育とは学ぶ目的が異なります。
リカレント教育によるメリット
リカレント教育を進める上で、行う個人、雇用側、社会におけるメリットをそれぞれご紹介します。
・個人のメリット
社会人になった後も新しいスキルや知識を学び直すことで、働き方や生活の選択肢が増え、より多様な生き方や様々な可能性が広がることにつながります。
子育て等のブランクや年齢に関わらず、必要なスキルを学ぶことで、就職や転職に有利となる場合もあり、より良い条件で働けることもあります。
経産省のデータによると、2030年には従来型のIT人材は約9.6万人が余り、先端のIT人材は約54.5万人が不足するとの予測があり、ITスキルは今後更に求められるでしょう。
出典:経済産業省-イノベーション創出のためのリカレント教育
・雇用側のメリット
より優秀な人材の確保と、人材の流出を防ぐことができ、業務の効率や生産性が高まり、企業の成長も促すといえます。
PwC「第22回世界CEO調査」によると、日本含めた世界のCEO(最高経営責任者)は近年8割近くが鍵となる人材の獲得を懸念しており、従業員のスキル不足や欠如を懸念するCEOは年々増加していることが分かっています。
さらに、スキルを高めるための重要な方策として、約5割のCEOが従業員の再教育・スキル向上を挙げています。
・社会全体のメリット
少子高齢化で人材不足が叫ばれる中、労働力を補うことができ、社会全体の活力向上、社会課題への解決、収入の増加により個人の生活が豊かになることで経済や地方の活性化にもつながるといえます。
特にITやAIは生活の中に深く浸透してきており、仕事以外の場面でも活用することができます。
リカレント教育の普及の現状
現代に必要不可欠とされるリカレント教育ですが、日本でどのくらい普及しているのかご紹介します。
他国と比較をしながら、リカレント教育の現状を見ていきましょう。
日本のリカレント教育はニーズに合っていない
まずは、日本における大学(学士課程)と大学院への社会人入学者数の推移を見てみましょう。
大学(学士課程)への社会人入学者数は、平成13年度に約1.8万人のピークを迎え、平成26年度の約1.02万人まで増減し、平成29年度は約1.5万人となっています。
大学院(博士・修士・専門職学位課程)への社会人入学者数(推計)は、平成20年度に約1.9万人のピークを迎え、平成29年度は約1.7万人となっています。
出典:文部科学省-社会人の学び直しの更なる推進に向けて
数字だけ見ると分かりにくいかもしれませんが、日本の状況を他国と比較してみましょう。
OECDは、各国の成人教育政策のパフォーマンスを評価したレポート(2019年)を公表しており、OECD諸国と比較した日本のリカレント教育への評価を確認することができます。
項目 | 日本の順位 |
学習への参画(個人や企業が教育に参画しているか、個人・企業の訓練実施率等) | 32か国中26位 |
包括性(教育の機会が包括的か、参加者の性別・年齢・雇用形態の多様性) | 29か国中21位 |
柔軟性(教育の機会を柔軟に得ることができるか、時間・距離の制約、遠隔教育の整備等) | 34か国中33位 |
ニーズ(教育が労働市場のニーズに合っているか、訓練の有効性、今後のニーズに対応した訓練の実施等) | 31か国中31位 |
効果(教育の効果があるか、賃金やリターンなど) | 34か国中33位 |
緊急性の低さ(教育の改善に取りことの組む緊急性の低さ、高齢化・構造変化・国際化の状況等) | 34か国中21位 |
OECD諸国と比較してみると、日本の順位は全体的に低く、特に労働市場のニーズに合っていない、柔軟に教育の機会を得られにくい、教育の効果があまり得られていないことが分かります。
リカレント教育の課題
日本における社会人の大学・大学院への入学割合を他国と比較しながら見てみましょう。
大学・大学院への25歳・30歳以上の入学者割合(2018年)は以下の通りです。
項目 | OECD平均の割合 | 日本の割合 |
25歳以上の学士課程への入学 | 16%(上位のスウェーデンやスイスは30%超え) | 2.5% |
30歳以上の修士課程への入学 | 26% | 13.2% |
30歳以上の博士課程への入学 | 43.4% | 43.8% |
他国と比較すると、日本は大学・大学院の正規課程で学んでいる社会人の割合が低いことが分かります。
続いて、日本における教育訓練休暇制度等の導入状況(2019年)は以下の通りです。
項目 | 割合 |
教育訓練休暇制度を導入 | 8.5% |
教育訓練休暇制度を導入予定の企業 | 10.7% |
教育訓練短時間勤務制度を導入 | 6.4% |
教育訓練短時間勤務制度を導入予定の企業の割合 | 10.4% |
働きながら教育を受けられる環境を整備している企業の割合は、約1割程度にとどまってる状況です。
そして、働く人の意識の問題として、日本では「働きがいを感じている人が少ない」という結果も分かっています。
オランダ・ユトレヒト大学の教授らが提唱した概念「ワーク・エンゲイジメント・スコア」は、個人の「働きがい」を定量化する試みとなっています。
「仕事から活力を得て生き生きとしている」、「仕事に誇りとやりがいを感じている」、「仕事に熱心に取り組んでいる」についての個人の意識を評価し、数値が高いほど働きがいをもって仕事に取り組んでいることを示しています。
ワーク・エンゲイジメント・スコアによると、上位のフランスやフィンランド、南アフリカはスコア4を超えているのに対し、日本はスコア3にも満たない数値となっています。
日本におけるワーク・エンゲイジメント・スコアを比較すると、全体として正社員はスコア3.41、限定正社員(労働時間や勤務地などが限定)はスコア3.51となっており、限定正社員の方がスコアが高いことも分かっています。
出典:内閣府-リカレント教育の現状
働きがいのある雇用を促進することは、SDGs目標8「働きがいも 経済成長も
」に関わることでもあり、リカレント教育の普及によりそういった課題解決にもつながると考えられます。
リカレント教育が普及しにくい理由
日本ではリカレント教育の普及が遅れている状況が分かりましたが、挙げられる原因について考えてみましょう。
・費用の問題
文部科学省が公表している平成30年の調査によると、42.5%が「学費の負担などに対する経済的な支援」を求めているとしています。
出典:文部科学省-文部科学省におけるリカレント教育の取組について
リカレント教育を受けるにあたり、その費用はプログラム内容や期間、学び方により異なります。
大学に入学し学習する場合は、年間数十万以上の授業料がかかることもあり、通信やオンラインであれば費用を抑えることもできますが、一度離職して学び直す場合は当面の生活費を考えておく必要があります。
費用に関して、国や自治体などによる給付金制度もありますので、後ほどまとめてご紹介します。
・時間・通学の問題
上記の同調査によると、36%が土日祝日や夜間など、開講時間に対しての配慮が欲しいとしており、令和元年度の能力開発基本調査においては、55%が「仕事が忙しくて自己啓発の余裕がない」、23.8%が「家事・育児が忙しくて自己啓発の余裕がない」と答えています。
出典:文部科学省-文部科学省におけるリカレント教育の取組について
出典:経済産業省-イノベーション創出のためのリカレント教育
すでに家庭を持っていたり住居が決まっている社会人にとっては、居住地域で学び直しができれば通学の負担が少ないですし、在職したまま通学する場合は、開講時間が大きな課題となります。
・多様なプログラムと情報を得る機会の充実
文部科学省が公表している平成30年の調査によると、28%が社会人向けプログラムの拡充を、25%がインターネット等で受講できるプログラムの拡充を、22.7%が学習に関する情報を得る機会の拡充を求めています。
出典:文部科学省-文部科学省におけるリカレント教育の取組について
資格取得や就職に生かせるプログラムを増やし、通学しなくても学び直しができる機会を広げていくことが必要です。
さらに、そういったリカレント教育に関する情報を誰もがキャッチしやすいよう、情報の周知を広げていくことも大切です。
・仕組みづくりと周りの理解
日本の企業の傾向としては、以下のことが分かっています。
項目 | 傾向 |
企業が社員の活用やキャリアとして重視していない事項 | 兼業・副業の経験70.6%、学び直しへの支援16.5% |
再教育が労働市場のニーズに反映できているかどうかの国際比較 | 日本はOECD加盟国で最下位 |
学び直しをしたことで、その成果をしっかり仕事に反映できるのかどうかは重要なことであり、職場などは評価をする仕組みづくりが必要です。
また、学び直しのために、社員が職場を離れやすい環境の仕組みづくりも同時に整えなければ意味がありません。
これらのことも含めリカレント教育の促進には、社会や企業、家庭など周囲の理解が必要不可欠ですが、理解が得られにくい理由としては、年功序列制度や最終学歴の重視などの価値観が挙げられるでしょう。
能力や仕事を重視した賃金制度を取り入れる企業が続々と増えてきていることや、世界で学び直しの取組が広がっていることからも、これまでの価値観を脱却していく必要があるかもしれません。
リカレント教育とSDGsの関連
「SDGs(持続可能な開発目標)」は、すべての国で2030年までに達成すべき目標として掲げられていますが、リカレント教育はSDGsの達成のために寄与しているといえます。
特に、以下の目標に関与していると考えられます。
・SDGs目標4:質の高い教育をみんなに
目標4では「すべての人へ包括的かつ公正な質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する」と明記されていますが、あらゆる教育段階で持続可能な開発に向けたスキルや知識を学ぶことができるよう促進することが求められています。
・SDGs目標8:働きがいも 経済成長も
目標8では「包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的雇用と働きがいのある人間らしい雇用を促進する」と述べられています。
ジェンダー格差や失業、働きがいなど、労働する上でのあらゆる問題を解決しながら経済成長を回復させていくことが課題となっています。
日本におけるリカレント教育の支援策
個人や企業にとっても有益であるリカレント教育は、様々な支援制度が用意されています。
まずは各省が行っている制度をご紹介しますので、取り組みたい方は参考にしてみてください。
文部科学省による支援策
・マナパス
文部科学省の事業で運営しているウェブサイト「マナパス」では、様々な社会人の学びについてまとめられており、学びの分野や支援制度、開講曜日など希望するプログラムを検索することができます。
どんな講座を受けるか迷っている時や、今の仕事に必要なスキルを身に付けたい場合など、まずはアクセスしてみて探してみるといいでしょう。
出典:マナパス-社会人の学びの意義とこのサイトについて
・就職・転職支援のための大学リカレント教育推進事業
主に非正規雇用や失業中の方を対象に、全国の大学が企業やハローワークなどと連携して短期間で就職・転職に繋がるプログラムを受講費無料で提供しています。
デジタルや医療、女性活躍などの多様な分野において、40大学63プログラムが採択されています。
一部のプログラムでは、厚生労働省の職業訓練受講給付金を受給しながら学習することも可能です。
出典:文部科学省-就職・転職支援のための大学リカレント教育推進事業
厚生労働省による個人と事業主への支援策
<個人への支援>
・教育訓練給付制度
働く人の主体的な能力開発やキャリア形成を支援し、雇用の安定と就職の促進を図ることを目的とした制度です。
指定する教育訓練を修了すると、自ら負担した受講費用の20%~70%の支給を受けることができます。
出典:厚生労働省-教育訓練給付制度
・高等職業訓練促進給付金
母子家庭の母または父子家庭の父が、看護師や介護福祉士などの資格取得のために、1年以上養成機関で修業する場合、高等職業訓練促進給付金(修業期間中の生活の負担軽減)、高等職業訓練修了支援給付金(入学時の負担軽減)が支給されます。
出典:厚生労働省-母子家庭自立支援給付金及び父子家庭自立支援給付金事業の実施について
・学び・学び直し促進のための特定支出控除における特例措置
指定の教育訓練給付指定講座を受講した場合、研修費と資格取得費に該当するものにつき、給与等の支払者の代わりに、キャリアコンサルタントによる証明を受けることで特定支出控除制度の適用が認められる制度です。
出典:厚生労働省-特定支出控除制度におけるキャリアコンサルタントによる証明制度について
・キャリアコンサルティング
在職中の方を対象に、今後のキャリア等について、オンラインまたはキャリア形成・学び直し支援センターにて、キャリアコンサルタントに無料相談することができます。
出典:キャリア形成・学び直し支援センター-キャリアコンサルティング
・労働者が受講できる公的職業訓練(ハロートレーニング)
希望の仕事に就職するために必要なスキルや知識などを無料で学ぶことができる制度です。
新型コロナウイルスの影響により、休業やシフト減となった人も働きながら訓練を受けることができ、雇用保険の対象となっていない場合でも、一定条件のもと月額10万円の支給を受けながら訓練を受けることができます。
出典:厚生労働省-ハロートレーニング
<事業主による人材育成への支援>
・人材開発支援助成金
雇用している従業員に対し、仕事に関連する専門的な知識と技能の習得のための職業訓練などを実施した場合や、人材育成制度を導入し適用した場合は、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成する制度です。
出典:厚生労働省-事業主への助成金
・生産性向上支援訓練
IoTやクラウド活用などのあらゆる産業分野の生産性向上に効果的なカリキュラムの実施により、生産性を向上させるために必要な知識等を学ぶ職業訓練です。
事業者のニーズに合わせて、カリキュラムをカスタマイズするオーダーコースや、小規模の企業でも利用しやすいオープンコースなどが低コストで利用することができます。
出典:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構-生産性向上支援訓練
・企業内のキャリアコンサルティング(セルフ・キャリアドック)
「セルフ・キャリアドック」とは、企業が従業員の主体的なキャリア形成を支援する仕組みです。
企業内のキャリアコンサルティングの導入を検討している場合、無料でキャリアコンサルタントによるキャリアコンサルティングや相談支援を受けることができます。
出典:厚生労働省-「セルフ・キャリアドック」導入の方針と展開
企業・大学におけるリカレント教育の具体的取組
続いて、企業と大学の取組を見ていきましょう。
スキルアップやキャリア形成などを目的にリカレント教育を推進する企業が増えています。
大学等の高等教育機関でのリカレント教育も進む中、コロナ渦の情勢を受け、全国の大学が企業やハローワークなどと連携してプログラムの提供も行っています。
サイボウズ株式会社
サイボウズでは、社員が自分らしく働くことができるような制度策定に取り組んでおり、優秀な人材の採用や定着、個人やチームの生産性の向上に貢献しています。
「育自分休暇制度」は、サイボウズを退職した人の再チャレンジが目的の制度で、希望者は最長6年間はサイボウズへの復帰が可能となっています。
「大人の体験入部」では、海外含む他部署に体験入部することができ、従業員のキャリア検討や業務へ生かすことを目的とした制度となっています。
出典:サイボウズ-ワークスタイル
日本女子大学
日本女子大学では、「女性のためのリカレント教育」に取り組んでおり、女性の職業生活を後押しするようなコースを設けています。
「再就職のためのキャリアアップコース」では、育児や進路変更などで離職した人が1年間のキャリア教育を受け、再就職を目指します。
「働く女性のためのライフロングキャリアコース」では、就業中の人が半年間のリカレント教育を受け、キャリアのステップアップを目指します。
出典:日本女子大学-リカレント教育課程
千葉大学
千葉大学では、学生以外の社会人等を対象とした一定のまとまった学習プログラム(履修証明プログラム)を開設し、修了者には学校教育法に基づく履修証明書を交付する制度を設けています。
園芸技術者養成や教育・学修専門職養成、農福連携の人材育成、病院経営スペシャリストの養成など、多様なプログラムを開設しているのが特徴です。
出典:千葉大学-履修証明プログラム
リカレント教育を始めるなら、様々な支援を活用しよう
リカレント教育は、学校教育を終えた社会人が再び必要な教育を受け、学びと仕事を繰り返すことであり、技術革新や働き方の変化といった時代背景から重要性が高まってきています。
学べる内容は、外国語や資格取得など多種多様ですが、特にAIやロボットなどの先行分野におけるプログラム開発や、技術者のリカレント教育といった産学連携による取組は力を入れて行われています。
個人や企業、社会全体にとってもメリットの大きいリカレント教育ですが、他国に比べて日本は取組が遅れていることが分かっており、働きがいを感じている人が少ないことも課題です。
学び直しが遅れている原因としては、費用や時間、プログラムの充実、周囲の理解などが挙げられており、世界では学び直しが広がる中、企業では能力等を重視した賃金制に移行していることからも、リカレント教育を進める仕組みづくりは急務となっています。
各省は個人や雇用側に向けたニーズに応じた支援策を設けており、気軽な相談からも利用することができ、大学や企業も学び直しの取組に進んで取り組んでいます。
リカレント教育に関心のある方は、有効な支援策を活用して取り組んでみてくださいね。
<参考文献/参考資料>
出典:内閣府大臣官房政府広報室-「学び」に遅すぎはない!社会人の学び直し「リカレント教育」
出典:総務省-リカレント教育の必要性
出典:経済産業省-リスキリングとは
出典:経済産業省-イノベーション創出のためのリカレント教育
出典:内閣官房内閣広報室-人づくり革命 基本構想
出典:内閣府-リカレント教育の現状
出典:文部科学省-文部科学省におけるリカレント教育の取組について
出典:文部科学省-学び直しに関する参考資料集

身近なアイデアを循環させて、地球の未来をつなげていきましょう。皆さんと一緒に取り組んでいけたら幸いです。