ヘイトクライムとは?SDGs目標10との関係、差別をなくすための取り組みを解説

ヘイトクライムとは?SDGs目標10との関係、差別をなくすための取り組みを解説

2023.10.31(最終更新日:2024.06.05)
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2020年のコロナウィルス感染症拡大によるパンデミックで、「ヘイトクライム」という犯罪が急激に注目を集めるようになりました。ニュースで見聞きすることも多くなったヘイトクライムという言葉ですが、実際に世界でどのような問題が起こっており、私たちが考えていかなければならないことは何でしょうか。

ヘイトクライムは、SDGsの10番目の目標として掲げられた「人や国の不平等をなくそう」と直接的に関係している問題です。今回はヘイトクライムとは何なのか、SDGs目標10との関係を解説します。またヘイトクライムや差別をなくすために私たちにできること、日本を含めた世界の取り組みを紹介します。

目次

ヘイトクライムとは一方的な差別や偏見に基づく犯罪

ヘイトクライムは、差別や偏見が引き起こす犯罪です。ヘイトクライムの定義とは何なのか、類似表現との違い、具体的な事例を挙げて解説します。

ヘイトクライムの定義は世界共通

ヘイトクライムの一般的な定義は、特定の人種・民族・宗教・性的指向に対する偏見や憎悪が原因で引き起こされる犯罪を指し、直訳すると「憎悪犯罪」という意味になります。

アメリカの連邦公法では、「人種・宗教・性的指向・民族への偏見が、動機として明白な犯罪 (Public Law101-275) 」と定義されています。その他の国でも文言こそ違いますが、ほぼ同じ意味で捉えられています。

一般的に偏見の意図を含む犯罪行為、たとえば肉体的暴行や脅迫、窃盗、公共物の破壊行為などが行われたときにヘイトクライムとみなされます。さらにアメリカのニューヨーク法などでは、嫌がらせや脅迫を目的として、黒人差別の象徴とされている「まんじ」を描いたり、縄を木に吊るしたりする行為もヘイトクライムとされています。

出典・参照:アメリカ政府出版局 PUBLIC LAW 101-275—APR. 23, 1990

ヘイトスピーチも犯罪にあたるケースがある

ヘイトクライムと同じように、「ヘイトスピーチ」という言葉もある時期から頻繁に聞かれるようになりました。ヘイトスピーチとは、特定の人種・民族・宗教・性的指向を理由に、個人あるいは集団を攻撃、脅迫、侮辱する発言や言動を指します。

国連ではヘイトスピーチを「ある個人や集団について、その人が何者であるか、すなわち宗教、民族、国籍、人種、肌の色、血統、ジェンダー、または他のアイデンティティー要素を基に、それらを攻撃する、または軽蔑的もしくは差別的な言葉を使用する、発話、文章、または行動上のあらゆる種類のコミュニケーション」と定義しています。

ヘイトスピーチとヘイトクライムという二つの概念の本質は共通しており、ヘイトスピーチでも法に触れる行いがあれば犯罪となります。ヘイトスピーチによって差別の助長や扇動が行われ、結果的に犯罪(ヘイトクライム)へつながる危険性もあります。

出典・参照:国連広報センター ヘイトスピーチとは何か

ヘイトクライムの事例は広範に渡る

ヘイトクライムはあらゆる差別・偏見が対象になっているため、これまで発生した事件にも様々な事例があります。たとえば、実際に起こったヘイトクライムの具体的な事例としては以下のようなものがあります。

  • 街を歩いていてアジア人の男女が、「自分の国へ帰れ」と言われ、刃物を突きつけられた。逃げようとすると、追いかけてきて怪我をさせられた。
  • 建物の壁にペンキスプレーで黒人差別の象徴であるまんじを書いたり、木に縄を吊るしたりした。
  • バスの乗客が、手をつないでいる同性カップルに対して「ゲイは嫌いだ」と言って殴ると脅迫した。

実際に犯罪行為として扱われなければヘイトクライムとして報告されず、線引きが難しい例もあります。把握できていないだけで、明るみになっていない事例も数多く存在すると考えられます。

ヘイトクライムの解消はSDGs目標10の達成に直結

SDGs目標10として「人や国の不平等をなくそう」があります。ヘイトクライムの問題を解消することは、このSDGs目標10の達成に直結しています。

現在では多くの国で人種差別を禁止していますが、それでも未だ差別は世界中に存在しています。差別意識というものは非常に根が深く、積極的に取り組まなければ解消することが難しい問題です。まずは、ヘイトクライムをはじめ多くの差別問題が存在していることや、差別・偏見にさらされている人がいる事実を知ることが大切でしょう。

またヘイトクライムは、以下のSDGs項目にも関連しています。

  • SDGs目標5「ジェンダー平等を実現しよう」
  • SDGs目標16「平和と公正をすべての人に」

ヘイトクライムは、人種差別だけではなく男女間の性差別、LGBTQなどマイノリティに対する差別・偏見に起因する事例も多く発生しています。アメリカの学際誌「Science Advances」では、LGBTQが犯罪被害に遭う確率は、そうでない人の約4倍近くも高いという研究論文も掲載されています。ジェンダー平等、LGBTQへの差別・偏見をなくすことは、ヘイトクライムをなくすことに大きく貢献します。

SDGs目標16では、暴力や差別の根絶、国民を守るための公平な裁判が行われるようにするということが掲げられており、これもヘイトクライムを解消することにつながる目標だと言えるでしょう。

出典・参照:Science Advances Victimization rates and traits of sexual and gender minorities in the United States: Results from the National Crime Victimization Survey, 2017

男女の雇用機会均等が進み、生まれた概念にダイバーシティ(=多様性)という言葉があります。そのダイバーシティとしばしば混同されるのが「インクルージョン」という言葉です。ダイバーシティが、組織などの集団の中に多様な背景を持つ人材がいることを指すのに対し、インクルージョンはその多様な人材がそれぞれの特性を活かし、組織の中で活躍し相乗効果を生み出している状態を指します。

ヘイトクライムは「犯罪」遭わないこと加わらないことを意識する

壁際に押し付けられお金を取られる海外の子供
ヘイトクライムは私たち日本人にとっても決して対岸の火事ではありません。実際に外国ではアジア人への差別にもとづくヘイトクライムが多数発生しています。ヘイトクライムの被害に遭わないようにすることはもちろん必要ですが、自分達が知らず知らずのうちに「加害者」になってしまっていないかも意識しなければいけません。

ヘイトクライムから身を守ることが大事

ヘイトクライムは、その多くが人種差別や外国人への偏見にもとづく犯罪です。特に海外へ渡航する際には、被害に遭わないように十分注意する必要があります。予防策には以下のようなことが挙げられます。

  • 深夜の外出は避け、できるだけ複数名で行動する
  • 暗くて人通りが少ない場所は避け、明るい大通りを歩く
  • 見知らぬ人が挑発的な言動を起こしてきても相手にせず、不必要に刺激しない
  • 身の危険を感じたら大声で助けを求める

また、ヘイトクライムは加害者と被害者の間に面識がないケースばかりではありません。知人間で、生活習慣や文化の違いなどによる摩擦が生じてしまった場合は、第三者に相談するなどして間に入ってもらった方が良いでしょう。

ヘイトクライムに加担しないようにすることも大事

差別や偏見は、さほど自分たちが意識していなかったとしても、知らず知らずのうちに相手を傷つけてしまっている場合があります。また、自らの言動が周囲へ影響を及ぼしヘイトクライムにつながる可能性もあるということを認識しておくことが必要です。たとえば、以下のような注意点が挙げられます。

  • 相手との文化の違いを尊重する
  • 相手と話す内容や態度には気を遣う
  • 特定の人種や国籍、宗教、性別、性的指向に対して茶化す、冗談を言うなどしない
  • 周囲で差別やハラスメントがあった場合、決して容認せず報告する

もし、自分達の言動がヘイトクライムにつながってしまえば、「差別をしているつもりはなかった」では済まされません。差別が差別を呼ばないよう、加害者にならないという観点もしっかり持っておく必要があります。

ヘイトクライムを引き起こす社会背景

メガホンを手に叫んでいる男性とプラカードを持っている海外のデモの様子
ヘイトクライムという概念は突如として生まれたわけではなく、広く知られるようになったのには社会的背景があります。社会における差別は古くから存在し、社会の情報化が進んできたことに伴い、顕在化してきたに過ぎないと言えるでしょう。

社会を揺るがした2つのヘイトクライム

ヘイトクライムという概念は、1970年代頃のアメリカで認知されるようになったとされています。しかし、社会に広く知られることになるのは、それから20年以上経ってからでした。

それは、1998年にアメリカのワイオミング州で起きたマシュー・シェパードという同性愛者の殺人事件と、同年にテキサス州で起きた白人至上主義者らによる黒人男性の殺害事件でした。この2つの事件を受け当時のビル・クリントン大統領が非難声明を出したことで、ヘイトクライムへの関心が急激に高まってくることになります。

2009年には、1998年の事件にもとづき、性的指向、障害を理由とした犯罪を新たにヘイトクライムに規定するマシュー・シェパード法が、バラク・オバマ大統領の署名で成立しました。

世相を反映し増加するヘイトクライムの現状

米連邦捜査局(FBI)の報告によると、アメリカでは2021年に10,840件(被害者は12,822人)のヘイトクライム事例があったとされています。そのうち、10,530件(被害者は12,411人)は、一つの偏見に基づくもの、310件(被害者は411人)は複数の偏見に基づくものでした。また、アメリカにおけるヘイトクライムの発生件数は、2014年から年々増加しています。
アメリカのヘイトクライム発生件数の棒グラフ
一つの偏見に基づくヘイトクライムのうち、64.5%が人種・民族・血統についての偏見によるものです。続いて性的指向についての偏見に基づく犯罪が15.9%、宗教についての偏見に基づく犯罪が14.1%となっています。

アメリカにおける人種間の対立の象徴とも言えるのが黒人差別ですが、依然としてその割合の多さが下記の統計からも見て取れます。同時に白人に対する差別がそれに続く形となっており、アメリカ社会の分断を如実に表しているとも言えます。

人種・民族・血統についての偏見に基づく犯罪(全体の64.5%) 件数
黒人、アフリカ系アメリカ人に対する偏見 3,277件
白人に対する偏見 1,107件
アジア人に対する偏見 746件
ヒスパニックまたはラテン系に対する偏見 698件
性的指向についての偏見に基づく犯罪(全体の15.9%) 件数
男性同性愛者に対する偏見 948件
バイセクシャル、トランスジェンダーへの偏見 521件
女性同性愛者に対する偏見 187件
宗教についての偏見に基づく犯罪(全体の14.1%) 件数
ユダヤ教に対する偏見 817件
シーク教に対する偏見 185件
イスラム教に対する偏見 152件
カトリック教に対する偏見 97件

出典・参照:外務省 外務省海外安全情報 4 ヘイトクライム

ヘイトクライムが多発するアメリカ社会

アメリカでは、1950年代から1960年代にかけて広がった公民権運動により、それまで日常的に行われていたあからさまな差別はなくなりました。しかし、多様な人種・民族が共存し、人種のるつぼともいわれるアメリカ社会において、ヘイトクライムが発生するリスクは極めて高いのが現状です。

それを再認識させられてしまうことになったのが、コロナ禍で急増したアジア系へのヘイトクライムです。2020年にヘイトクライムの標的となった外国人の大半は中国人でしたが、韓国や日本、フィリピンなど他のアジア系国籍の人々も多く被害に遭っています。
アジア系ヘイトクライムの対象の国別を表した円グラフ
出典:National Report (Through December 31, 2021) – Stop AAPI Hate

また、近年では2020年に黒人男性が白人警官から暴行を受け死亡した「ジョージ・フロイド事件」に端を発し、世界的に広がっていった抗議運動「ブラック・ライブズ・マター」が大きく取り上げられ、黒人と白人の対立があらためて浮き彫りになる結果となりました。

過剰な防衛意識や歪んだ正義感が引き起こすヘイトクライム

ヘイトクライムは許されざる犯罪行為です。「差別や偏見はだめだ」と断罪する、非難するなど声を上げることはもちろん大事でしょう。それに加え、なぜ憎悪犯罪は起こってしまうのか、その原因を理解した上で、どのように解消していくべきなのかを考える必要もあります。

ヘイトクライムには大事な認知プロセスが抜け落ちている

コロナ禍におけるヘイトクライムの急増は、多くの事例においてアジアが発生源だとする偏見が生んだものだとされました。世界の主要都市でロックダウンが行われ、多くの人々が経済的な損害を被ったことは事実ですが、犯罪を犯していい理由にはもちろんなりません。

コロナウィルスの感染拡大という脅威を前にして「何とかしなければならない」という防衛意識が働くのは自然なことだといえるでしょう。しかし、「アジア人が悪い」ましてや暴力を行使するという結論につながるのは考えが飛躍してしまっています。

私たちは、人種や国籍などで他者を排除するのではなく、まず多様性のある社会、文化の違いを認め合った上で、問題に対処していくということに目を向けなければならないでしょう。

ある対象を評価するときに、その対象が持つ特徴にひきずられて全体の評価が歪められてしまうことを、社会心理学では「ハロー効果」と呼びます。「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」ということわざがあるように、人種差別はこの認知プロセスが否定的に働いてしまったものだといえるでしょう。

全世界に広がるヘイトクライムの火種

ヘイトクライムは前述の通り、その社会構造上とりわけアメリカでの発生が広く取り沙汰されることが多い傾向にありますが、世界中で起こっている問題でもあります。

たとえば、「移民大国」といわれているドイツでは、人種差別による暴力やテロ事件が数年前から増加傾向にあります。特に大規模な移民受け入れ政策を行った2013年から2015年にかけて、人種、民族、宗教にもとづく暴力事件が2年間で87%にまで増加したと報告されています。

また、カナダではイスラム教徒に対するヘイトクライムの増加が顕著です。2013年頃からヘイトクライム全体の件数も増加傾向にあり、2017年は前年比で47%と急激に増加しました。

出典・参照:アムネスティ・インターナショナル ドイツ:憎悪犯罪の増加への対策が不十分
出典・参照:在モントリオール日本国総領事館 ヘイトクライム発生状況

在日朝鮮人に対するヘイトスピーチの問題

日本では、在日韓国・朝鮮人に対するヘイト・スピーチが長年問題になっています。2007年頃からはインターネット上での匿名の差別的書き込みが急増。各地で排外主義的なデモや差別的な街宣行動が数百人規模で行われるなど全国的に広がっていきました。

2009年の京都朝鮮学校公園占用抗議事件など刑事事件として立件された事例や、2021年には、在日朝鮮人が多く住む地域とされる京都府宇治市のウトロ地区で、韓国人に対するヘイト感情を動機とした放火事件が発生し大きな問題となりました。

日本には、もともと士農工商という身分制度が公然と存在していました。この士農工商よりさらに下の身分に置かれた人々がおり、のちに部落差別問題へとつながっていきました。また、北海道の先住民族として知られるアイヌ民族への差別が行われていた時代もあります。世界の差別問題を知るとともに、国内の歴史にも目を向け知っておく必要があるでしょう。

世界各国で進むヘイトクライムへの対策や法整備

「I AM ASIAN AMERICAN」と書かれたプラカード
ヘイトクライムが表面化してきたのは近年になってからではありますが、事態が明るみになってきたことにより各国では具体的な関連法の制定や改正などの法整備が進んでいます。ヘイトクライムは重大な人権侵害であるとともに、れっきとした犯罪であるということを社会に知らしめていくことが今後も必要でしょう。

最初のヘイトクライム法とされるアメリカの「連邦保護活動法」

実はアメリカでは、1968年に最初のヘイトクライム法といわれる「連邦保護活動法」がすでに制定されています。連邦保護活動法では、「連邦により保護される活動」「公正住宅権の妨害罪」「宗教関係財産の損壊」という条項において、人種、民族、宗教を理由とした差別を行ってはならないと規定しています。

1990年には、統計の対象になる犯罪を詳細に定めた「ヘイトクライム統計法」が制定され、ヘイトクライムの認知強化が図られています。1994年には、暴力犯罪制御法執行法の一部として「ヘイトクライム判決強化法」が成立、2007年のマシュー・シェパード法へつながっていくことになります。

欧州でもヘイトクライムの罰則法でアメリカに追随

ドイツでは、アメリカの「ジョージ・フロイド殺害事件」をきっかけに、人種差別に対する抗議運動が各地で行われるようになりました。また、国内においてもトルコ人やシリア人など一部のイスラム教徒への差別があることを受けて、2006年に「一般平等取扱法(差別禁止法)」が制定されました。人種差別だけではなく、年齢、宗教、性別や思想、性的指向などあらゆる差別を禁止する法律です。

イギリスでは、1986年に改正された「公共秩序法」で人種的嫌悪を煽動すること、あるいは文書等を所持・頒布することを犯罪として規定しています。2007年には、これまで含まれていなかった宗教的憎悪も規制対象として同法に追加されました。

日本ではまだ罰則規定にまでは踏み込めていない

日本では、ヘイトスピーチの急増を受けて、2016年に「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律(ヘイトスピーチ解消法)」が成立しました。ヘイトスピーチ解消法に禁止罰則規定はありませんが、「本邦外出身者」に対する「不当な差別的言動は許されない」と宣言しています。

法務省では、ヘイトスピーチは許されるものではなく、ヘイトスピーチが行われていることを広く社会に認識してもらうことが必要として、さまざまな啓発・広報活動を行なっています。

【ヘイトクライムを生まないために】国内外の企業の取り組み

ヘイトクライムをなくすためには、国だけではなく、多様な人材が集まる組織である企業においても取り組みを推進していくことが求められます。海外や国内の企業で行われている具体的な取り組みを紹介します。

大規模な黒人支援策を発表したアディダス

大手スポーツ用品メーカーのアディダスでは、2020年の「ブラック・ライブズ・マター」の抗議運動に応える取り組みとして、人種差別をなくすための3つの支援策を発表しました。

  • 従業員の新規雇用における黒人あるいはラテン系の人々の割合を3割以上にする
  • 黒人コミュニティを支援するプログラムへ、4年間で2,000万ドル寄付する
  • パートナースクールの黒人学生のために、5年間奨学金支援を行う

出典・参照:adidas MESSAGE FROM THE ADIDAS BOARD: CREATING LASTING CHANGE NOW

アップルの支援活動「人種的公平と正義のイニシアチブ」

アップルでは、人種差別問題解消のための黒人コミュニティーへの支援活動「人種的公平と正義のイニシアチブ」の一環として、2021年に全米で初となる黒人起業家支援施設をデトロイトに開設すると発表しました。

また、黒人の学生に向けた育成プログラムである「歴史的黒人大学(HBCUs)」や、マイノリティーの起業支援を行うベンチャーへの投資など多くの取り組みを行う予定だとしています。

出典・参照:Apple Apple opens Developer Academy in Detroit, creating new opportunities for careers in the iOS app economy
出典・参照:Apple Apple teams up with HBCUs to bring coding and creativity opportunities to communities across the US

「人種差別を決して容認しない」積極的なウーバーの取り組み

ウーバーでも、「ブラック・ライブズ・マター」において黒人コミュニティとの連携を図り、積極的に人種差別に反対する企業になると宣言しています。人種差別解消に向け「ウーバーで働く人や、ウーバーとともに働く人が、平等に扱われ、存在価値を感じられる会社になる」ことを目指すとしています。

具体的な取り組みとしては、黒人オーナーが経営するレストラン支援、反人種差別のトレーニングプログラムへの資金提供、賃金の公平性の確保などを行なっています。

出典・参照:Uber 人種差別に対するゼロトレランスポリシー

大手化粧品メーカーは相次いで「美白」表現を撤廃

世界最大手の化粧品メーカーであるフランスのロレアルは、2020年にすべてのスキンケア製品から「美白」や「色白」、「明るい」などの言葉を外すと発表。またそれに同調するようにイギリスのユニリーバも同様の対応を行いました。

また、アメリカの医薬品大手ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)や日本の花王も、相次いで自社製品における「美白」表現の撤廃を表明しました。

いずれの企業も、白い肌が美しいという固定概念を差別ととらえ、誰もが生まれ持った容姿や肌の色に対してポジティブに考えられる社会の実現を目指すとしています。

近年、企業において重要視されるようになってきた考え方として「人権デューデリジェンス」というものがあります。人権デューデリジェンスは、強制労働やハラスメントなどの人権侵害が自社の企業活動においてリスクになっていないかを特定し、適切な対策を講じることを指します。新疆ウイグル自治区やミャンマーなどの労働者に対する人権侵害が問題視されたことで、大きくクローズアップされるようになり、国内外の企業で取り組みが進んできています。

【ヘイトクライムを生まないために】自治体の関連条例や取り組み

ヘイトクライムをなくすには社会全体が連携し、社会全体へ働きかけていくことが必要です。ヘイトクライムやヘイトスピーチをなくすための取り組みは、民間企業だけでなく各自治体でも積極的に推進されています。

大阪府の「ヘイトスピーチ解消推進条例」

大阪府は、政府による「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律(ヘイトスピーチ解消法)」を受けて、2018年に「大阪府人種又は民族を理由とする不当な差別的言動の解消の推進に関する条例(大阪府ヘイトスピーチ解消推進条例)」を施行しました。

人種又は民族を理由とする不当な差別的言動であるヘイトスピーチは、人としての尊厳を傷つけ、差別意識を生むことにつながる許されない行為とした上で、すべての人がお互いに人種や民族の違いを尊重しあって共生する社会を築くとしています。

また、インターネット上のヘイトスピーチ書き込みや投稿についても、国への要望や条例啓発推進月間を定め啓発事業を行なっていくとしています。

出典・参照:大阪府 ヘイトスピーチと人権に関する取組み

愛知県の「人権尊重の社会づくり条例」

愛知県でも、「ヘイトスピーチ解消法」を受け、2022年に「愛知県人権尊重の社会づくり条例」を施行しました。あらゆる人権に関する課題の解消を図るとともに、全ての人の人権が尊重される社会の実現に寄与することを目的とし、人権施策を総合的かつ計画的に推進、あらゆる人権に関する課題の解消を図るとしています。条例には以下のような内容が盛り込まれています。

  • インターネット上の誹謗中傷等を未然に防止するために必要な施策を行う
  • 本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けて必要な取組を推進する
  • 部落差別の解消に向けて必要な取組を推進する
  • 性的指向及び性自認の多様性について必要な取組を推進する
  • 人権施策推進に関する重要事項の調査審議のため、愛知県人権施策推進審議会を設置する

出典・参照:愛知県 愛知県人権尊重の社会づくり条例

川崎市の「差別のない人権尊重のまちづくり条例」

神奈川県の川崎市では、2005年に策定された「多文化共生社会推進指針」をもとに、「川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」を2019年に制定。全ての市民が不当な差別を受けることのない多文化共生社会の実現に向け、さまざまな施策を進めてきました。

インターネット上の差別的言動、発生事例への対処、拡散防止措置について注意喚起を呼びかけており、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動を許さない」という認識のもと、国と連携して啓発活動を行うなど、誰もが安心して共生できるまちづくりに取り組むとしています。

出典・参照:川崎市 「川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」

差別や不平等なくお互いが認め合える社会を

ヘイトクライムは一方的な差別や偏見に基づく犯罪です。SDGs10番目の項目である「人や国の不平等をなくそう」は、あらゆる差別をなくすという世界共通の目標であり、もちろんヘイトクライムをなくすこともターゲットの1つになっています。

人種や国籍が違っても、人間は一人ひとりが違う個性を持った存在です。自分たちとは異なるという理由で、暴力に訴えたり攻撃的な言葉で排除したりするのではなく、文化の違い、多様な価値観を受け入れるという意識を一人ひとりが持たなければいけません。

差別や不平等なくお互いが認め合える社会をつくっていくために、ヘイトクライムという問題が起こっていることを知っておく必要があるでしょう。

この記事の執筆者
EARTH NOTE編集部
SDGs情報メディア
「SDGsの取り組みを共有し、循環させる」がコンセプトのWEBメディア。SDGsの基礎知識や最新情報、達成に取り組む企業・自治体・学校へのインタビューをお伝えし、私たちにできることを紹介します。
身近なアイデアを循環させて、地球の未来をつなげていきましょう。皆さんと一緒に取り組んでいけたら幸いです。
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