生物多様性の重要性と保全に向けた取り組みを紹介

生物多様性の重要性と保全に向けた取り組みを紹介

2023.06.23(最終更新日:2024.06.24)
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生物は互いに食べる、食べられるという食物連鎖や共存関係など、さまざまな種が影響し合う生態系のシステムを長い年月をかけ作り上げてきました。
人間も衣食住のすべてにおいて生物からの恩恵を受け、生活を支えられています。また、さまざまな生物も、一種だけでは生存できず、他の生物と共存することで命をつないでいるのです。

生物多様性を守ることは、持続可能な資源利用や食料供給などの実現に不可欠であり、持続可能な開発目標(SDGs)の達成にもつながります。本記事では、生物多様性の重要性と、保全に向けた取り組みについて紹介します。

地球規模で守るべき生物多様性

生物多様性とは、生物の種類の豊富さや、生物の遺伝的な多様性などを指します。地球上の生物は直接的、間接的に支え合い生態系を構成しており、生物多様性は私たち人間の生活にも不可欠です。例えば、植物は酸素を作り出し、食料の提供を行うことで多くの生物の命を支えています。そして、食べられることで種を遠くまで運び、生息域を広げることで生存率を向上させ、自然のバランスを保っているのです。

しかし、私たち人間の生活を支えるための、食料の確保やエネルギー需要の増加によって、生物多様性は大きくバランスを崩し、絶滅や激減する種が増えており、生物多様性の保全が急がれています。また、移動性のある生物にとって、人間が決めた国境は無関係なため生物多様性の保全には国際的な協力が重要です。現在、多くの国が共通の目標を持ち、知識や技術を共有し生物多様性を守るための取り組みを進めています。

生物多様性とは生物の種の多さ

生物とは、動物、植物、藻類、菌類などの総称であり、生物多様性とは、生態系の種類や相互作用の多様性、地球上の生物の種の数や、遺伝的バリエーションの豊かさ、生息地の多様性などを指します。

生態系は、生物とその生息地、生物同士の関係から成る複雑なシステムです。異なる生物の共存や食物連鎖の関係、植物の光合成による酸素の生成など、さまざまな要素が組み合わさって生態系を構成しています。
また、遺伝的多様性も重要です。例えば感染症や病気が生物の群れの中で発生しても、遺伝的な違いがあることで感染症や病気に強い個体は生き残ることができるのです。このように、多種多様な生物、多様な遺伝子によって、生物多様性は成り立っているのです。

生物多様性の必要性

生物は長い時間をかけて、互いに共存関係を築いてきました。植物は食べられることで種を遠くに運ぶことができ、肉食獣は草食獣を食べることで、草食獣による植物の食べすぎを防ぐ役割を果たしています。生物の種類が豊かであることは、生態系のバランスが取れ、共存ができている状態なのです。
また、生物多様性は人間の健康や福祉にも重要であり、食料、薬品、天然資源の提供などさまざまな恩恵をもたらしています。

しかし、人間の生活を豊かにするための開発や乱獲によって、生物多様性のバランスが崩れているのです。生態系の一部が急激に増減することで、その生物と共存関係にある別の生物もバランスを崩してしまうのです。
生態系のバランスが崩れると多くの問題が生じます。生物の減少や絶滅、また増加は生物多様性の崩壊を招き、食料の供給、水資源の浄化、温暖化などの気候調節、感染症の発生などにつながる可能性があるのです。
そのため、世界規模で生物多様性を守るための、さまざまな努力が行われています。本記事では、生物多様性の現状とそれを守るための取り組みをご紹介します。

生物多様性条約

生物多様性条約は1992年に採択された、国際的な法的枠組みです。生物多様性条約は、水鳥と湿地の保全を目指すラムサール条約と、絶滅の恐れのある野生動植物の国際取引の規制を行うワシントン条約を補完し、生物多様性の保全と生物資源の持続可能な利用を組み込んだ枠組みです。
生物多様性条約の目的は以下の3つです。

  • 生物の多様性の保全
  • 生物多様性の構成要素の持続可能な利用
  • 遺伝資源の利用から生ずる利益の公正で衡平な配分

生物多様性条約の締結国は、生物多様性の保全と生物資源の持続可能な利用を目的とした国家戦略、または国家計画の作成と実行が義務となっており、生物資源の持続可能な利用を政策に組み込むことや、先住民の伝統的な文化の保護なども規定されています。また、先進国が開発途上国の取り組みに対して資金援助や技術協力を行うことで、条約締結国で協力し生物多様性の保全を行うことを目指します。

生物資源から生じる利益を資源提供国と資源利用国が公正かつ均等に配分するために、日本でもABS指針(遺伝資源の取得の機会及びその利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分)が設けられています。これらの指針により、条約締結国において生物多様性の保全への取り組みが行われているのです。

日本は1993年にこの条約を締結しており、2023年4月までに194カ国とEU、パレスチナがこの生物多様性条約を締結しています。(注1)(注2)

(注1)参考:外務省 生物多様性条約
(注2)参考:環境省 生物多様性条約

生物多様性国家戦略

生物多様性国家戦略とは、生物多様性条約と生物多様性基本法に基づいた、生物多様性の保全と生物資源の持続可能な利用を目指す国の基本的な計画です。日本では平成7年に最初の生物多様性国家戦略を策定しました。その後、5回の見直しを行い、現在は第六次戦略となる「生物多様性国家戦略2023ー2030」が令和5年3月に閣議決定されています。
生物多様性国家戦略には以下の5つの基本戦略があります。

  • 生態系の健全性の回復
  • 自然を活用した社会課題の解決
  • ネイチャーポジティブ経済の実現
  • 生活・消費活動における生物多様性の価値の認識と行動
  • 生物多様性に係る取組を支える基盤整備と国際連携の推進

ネイチャーポジティブとは、生物多様性の損失を食い止め、回復させることであり、2030年までに、このネイチャーポジティブの実現を目指し、地球の持続可能性の土台であり、人間の安全保障の根幹である生物多様性と自然資源を守り活用するための戦略として、上記5つの基本戦略ごとに15個の状態目標と、25個の行動目標を設定しています。さらに、25個の行動目標ごとに、367個の具体的な施策が設けられています。(注1)
(注1)参考:環境省 生物多様性国家戦略

ミレニアム生態系評価

地球のアイコンを背景に、象やトラ、鹿などの動物たちが人の手の上に収まっているイラスト
ミレニアム生態系評価(Millennium Ecosystem Assessment)とは、UNEP(国連環境計画)が中心となり、95ヵ国から1,360人の専門家が参加し、2001年から2005年までの生物多様性の喪失が、人類の暮らしにどのような影響が及ぶかを評価したものです。
この評価によって、国際条約、各国政府、NGO、一般市民に対し、政策や意思決定のための情報提供を行い、持続可能な開発と政策決定により、損なわれた生態系の回復などを提言するものです。
ミレニアム生態系評価では、生態系サービス(生態系から得られる恩恵)を供給サービス、調整サービス、文化的サービス、基盤サービスの4つに分類しています。(※注1)

生息地、生育環境を提供する基盤サービス

基盤サービスとは、生態系の維持や生物多様性の基盤となる生息地や生育環境の提供によって、生物のライフサイクルを維持すること、および遺伝的多様性の維持をすることです。
基盤サービスである、土壌環境において商業的価値のある生物に繁殖環境を提供する生態系は、その環境自体に経済的な価値があると考えられています。

また、生物の遺伝的多様性の維持をすることで、さまざまな要因により生物が自然淘汰され特定の生息、生育環境に適応していくことができるのです。遺伝的多様性が失われると、野生種、野生化種、栽培種間での継続的な進化が妨げられてしまいます。(※注1)

さまざまな資源を提供する供給サービス

供給サービスとは、生態系や生物多様性からもたらされる食物、水、薬品、石油、木材、繊維など、私たちの生活において物質的な恩恵をもたらすものです。地球の表面積の約35%は農業や畜産業に利用され、私たちに食料を供給してくれています。
また、植生、微生物、土壌により、水流の調整や水質の調整と浄化を行うことや、漁業資源、薬や化粧品などの薬用資源の供給や、鑑賞用資源としての観葉植物やペットとしての動物も供給サービスです。(※注1)

大気や生態系の安定をコントロールする調整サービス

調整サービスには、大気の調整や、気候調整、災害の緩和、土壌浸食の抑制や土壌の栄養循環、花粉媒介、有害生物や病気の生態系内での抑制などがあります。
街中の街路樹などはヒートアイランド現象の緩和を行い、森林やサンゴ礁などは災害時に天然の緩衝帯として、自然災害の影響を軽減する効果があります。また、森林や海洋での温室効果ガスである二酸化炭素の吸収により、気候調整などを行います。

また、昆虫や鳥による植物の受粉媒介サービスや、有害生物や病気が、捕食者や寄生生物によって生態系の中でコントロールされることも調整サービスです。(※注1)

自然にふれることで得られる文化的サービス

文化的サービスとは、人間が自然環境によって得られる癒しや、自然環境でのレクリエーションなどのサービスです。森林セラピーや芸術、登山や海水浴、釣りなどのレクリエーション、自然環境での神秘体験など、自然とふれ合うことで心理的、精神的に良いサービスを受けることができます。

また、エコツーリズムなどの観光を通じ利益を得られることなど、文化的サービスとは、私たちの生活を心豊かにしてくれる、非物質的な恩恵を提供するサービスです。(※注1)
(※注1)参考:環境省 生物多様性と生態系サービス

生物多様性の現状

私たちの生活は、生物多様性からの恩恵によって成り立っていますが、私たちの生活のために、急速に生物多様性は失われています。その原因は、地球が資源を生産するスピードを上回って搾取、消費している資源問題や、外来種問題、環境汚染、気候変動、乱獲などの多くの問題によって生物多様性が失われているのです。

2019年には、評価された生物の27%に当たる28,338種が絶滅の危機に瀕していると発表されました。(表1)
そして、2020年に「生物多様性および生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム」が公開した「生物多様性と生態系サービスに関する地球規模評価報告書」によると、約100万種もの生物が数十年以内に絶滅の危機に瀕していると発表されました。

食料生産や、農業に用いられる家畜などの品種も、2016年までに9%が絶滅し、約1,000品種が絶滅の危機にあります。(注1)
また、生物多様性の豊かさを測る指標である「生きている地球指数」(LPI)によると、1970年から2016年の間に、脊椎動物の個体群は68%減少し、淡水域でのLPIは84%も減少しているのです。(注2)

(表1)参考:WWFジャパン 2019年「レッドリスト」更新 世界の絶滅危惧種は28,338種に
(注1)参考:国際農研 生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム(IPBES)「生物多様性と生態系サービスに関する地球規模アセスメント報告書」概要
(注2)参考:WWFジャパン 過去50年で生物多様性は68%減少 地球の生命の未来を決める2020年からの行動変革

外来生物による影響

絶滅が危惧されている生物の割合を表した半円グラフ(両生類40%、針葉樹34%、鳥類14%など)
外来生物とは、本来の生息地や分布地域外に侵入してきた生物のことを指します。社会の国際化に伴い、多くの生物が分布域外から持ち込まれました。外来生物の問題点は、新たな環境に侵入することで、その地域の生態系に大きな変化をもたらすことです。また、在来種との競争で、食物や生息場所を奪い、新たな病気を広げるなどの問題が起こっているのです。

また、在来種への影響として、外来種の植物が在来種の植物を駆逐してしまうこともあり、これにより農業や自然環境に大きな損失をもたらすことにつながるのです。特に、在来種への影響がある外来種は「特定外来生物」と呼ばれ、駆除などの対策が行われています。
在来種が外来種との生存競争に負けると、その地域での生態系のバランスが崩れてしまい、生物多様性も低下してしまうのです。

▼外来種について、詳しくはこちら
生態系を脅かす外来種問題

開発行為による生息地の消失・改変

農地や畜産のための利用面積は、陸地の3分の1以上であり、その多くは自然林や湿地などを開発して利用されています。2015年以降、毎年東京都と同じくらいの面積の自然環境が開発行為などによって破壊されているのです。

自然環境の破壊は、そこに生息するすべての生物に影響を与えます。現在、森林を住みかとする野生生物のうち14,000種以上が絶滅の危機にあり、これらの生物は食物連鎖や共生関係でつながっているため、一種が絶滅すると、さらに多くの種の危機につながってしまうのです。(注1)
(注1)参考:WWFジャパン 今日、森林破壊を止めるためにできること

環境汚染による影響

人間による環境汚染は、多くの生物の生息環境に影響を与えています。
ゴミの不適切な処理や、農薬、工場などの排水による水質汚染や土壌汚染、自動車の排気ガスに含まれる二酸化炭素や窒素酸化物などによる大気汚染などがあります。

水質汚染は、魚などの水生生物の生息環境と、人間の飲料水にも影響を及ぼします。また、土壌汚染での影響は、農薬や化学物質が長期間使用されることによって生物が生息できなくなったり、作物が育たなくなったりします。
そして汚染された土壌の有害物質は雨によって地下水に浸透し、水質汚染にもつながるのです。

大気汚染も植物にさまざまな影響をもたらします。特に、大気汚染物質である光化学オキシダントや硫黄酸化物は、アサガオやほうれん草などの植物の葉に変色や斑点の発生などの被害が出ています。(注1)
(注1)参考:千葉県 大気汚染による植物被害

気候変動による影響

近年、私たち人間の活動によって多くの二酸化炭素が排出された影響により、地球温暖化が起こり、異常気象や大規模な森林火災、水害が発生しています。実際に、海外での大規模な山火事や、異常気象に関する報道を見る機会が増えています。

温暖化の直接的な影響の一例として、ペンギンの凍死があります。南極の雪しか降らない土地に、温暖化の影響によって雨が降ることで、ペンギンのヒナが凍死しているのです。これは、ヒナの羽毛が雪をはじき体温の低下を防ぐように進化したため、雨をはじくことができず、体温を奪われ凍死してしまうのです。(注1)
(注1)参考:WWFジャパン 目撃者の証言:アデリーペンギンに迫る温暖化

乱獲による影響

野生生物の乱獲は、食糧や伝統的な薬を作ることを目的として大量の野生生物を捕えたり、採取したりすることで起こります。
例えば、象牙を獲るためにゾウを捕獲したり、食べるための魚を大量に捕獲したりすることがあります。実際に、海洋資源の30%以上が乱獲状態であり、海の生物多様性も危ぶまれているのです。このように、人間による過剰な捕獲や採取により、野生生物の個体数が急速に減少し、自然の回復速度を上回るペースで捕獲や採取をしているため、生物多様性や生態系のバランスが損なわれているのです。

また、ペットとして人気が出ると高く売買されるため、乱獲され急激に野生での個体数が減り、絶滅が危惧される生物が多くいます。例えば、日本でも人気があるコツメカワウソも、ワシントン条約で規制されている絶滅危惧種なのです。

生物多様性を守るための取り組み

生物多様性を守るためには、生物の環境を守り生息地を確保することや、絶滅が危惧されている種を保護し増やすこと、また、密猟や乱獲を防ぐことなど、さまざまなアプローチが必要です。その取り組みも、局地的なものから、国際的なものまであらゆる段階で取り組んでいくことが重要なのです。
実際に生物多様性を守るために行われている取り組みを紹介します。

動物園・水族館での取り組み

身近な動物園や水族館は、生物の展示だけではなく、生態の研究や絶滅が危惧されている生物の種の保存などを行っています。
種の保存のための繁殖計画とは、保護が必要な約150種を選び、動物の戸籍簿を作成し、血統登録を行うことで世界の動物園、水族館での飼育状況や遺伝的なつながりを記録し、繁殖計画を立てることです。血統登録の対象種は、種ごとに繁殖計画を作り、動物園、水族館での増殖に取り組んでいます。

また、希少な生物を繁殖させるために、動物園や水族館同士で動物の貸し借りを行う「ブリーディングローン制度」を作り、協力し合い種の保存に取り組んでいます。この制度により、希少動物のペアでの飼育や群飼育が出来るようになったことで、多くの動物の繁殖に成功しています。(注1)
(注1)参考:日本動物園水族館協会 種の保存・自然保護

森林破壊のないサプライチェーンに関わるEU規制(EUDR)

2022年12月、欧州議会と欧州連合理事会およびEU加盟国が、世界の森林保全を目指す「森林破壊のないサプライチェーンに関わるEU規制(EUDR)」の成立に合意しました。

この規制は、生産、加工、流通、消費のすべての段階で森林破壊、森林劣化に関連して生産された、木材、大豆、牛肉、パーム油、コーヒーなどのEU域内外での流通を禁止するものです。森林破壊に関与していないことを証明しなければ、EU加盟国での売上高の4%を上限とする罰金が課されることになります。森林減少、劣化の影響を軽減し、温室効果ガスの排出と生物多様性の損失を減少させることを目的としています。(注1)(注2)
(注1)参考:WWFジャパン G7サミット・農相会合に先立ち声明を発表「日本政府は持続可能な農林畜水産物調達および水利用管理を!」
(注2)参考:JETRO EU、森林破壊関連品の販売を規制する規則案に暫定合意

ココシリ自然保護区

中国青海省にある平均海抜4,888メートルの可可西里(ココシリ)は、世界遺産として登録されている中国最大の無人地帯の一つです。このココシリに生息している、チベットカモシカは、カシミヤよりも細い毛を持ち「ウールの王様」と呼ばれ、このチベットカモシカの毛で織られた「シャトゥーシュ」と呼ばれる超高級毛織物の材料となっています。長さ1〜2メートル、幅1〜1.5メートルのシャトゥーシュは、1本200万円近くの値段になることもあり、金よりも高い値段で取引されるため、その毛を目当てに乱獲されました。1980年代に密猟者が集まり、約100万頭いたチベットカモシカはわずか7万5000頭以下にまで数を減らしました。
そして、チベットカモシカを守るための保護活動が開始され、1979年にワシントン条約でシャトゥーシュの商業目的での国際取引が禁止となりました。

2006年以降は密猟は確認されておらず、2006年には約15万頭まで、生息数を回復させています。(注1)(注2)
生物多様性を守るためには、生態系のバランスを保つことが必要です。チベットカモシカの個体数の回復は、ココシリでの生物多様性の回復にもつながるのです。
(注1)参考:AFP パトロール隊員たちが守る野生動物の「楽園」青海省のココシリ山地
(注2)参考:環境省 チベットアンテロープとシャトゥーシュ

2008年の北京オリンピックのマスコットにもなったチベットカモシカを守る活動は、映画にもなっています。
チベットカモシカの保護活動を行うために、死者も出ており、実際に野生動物を守る活動がどのように難しいのかがわかります。
映画「ココシリ」

生物多様性を守るためにできること

ハイキングコースのような山道を登山する人々の後ろ姿
私たちが生活していく上で、欠かすことのできない生物多様性ですが、現在、私たちは地球が資源を生産するスピードよりも早く資源を消費し、生物の生息環境などを圧迫しています。
今のスピードで、資源を消費し続ける生活は不可能であり、日々の生活でも生物多様性を守る意識を持つことが重要です。そのために、できることを紹介します。

ネイチャーガイドが案内するイベントに参加する

自然の中を案内してくれるネイチャーガイドが案内するツアーに参加することで、その地域の自然環境の現状や問題点を知ることができ、その地域にあった環境を守るための活動なども知ることができます。
また、このようなツアーに参加することで、自然環境から文化的サービス(心理的、精神的な癒し)を受けることができるでしょう。

ネイチャーツアーを行っている団体を3つご紹介します。
他にも、多くの場所でネイチャーツアーが行われています。参加できるネイチャーツアーなどを調べてみましょう。

【ピッキオ(長野県軽井沢町)】
「森と森に生きる動植物を未来に残していきたい」と願い、森の生物多様性を多くの人に実感してもらうことをサポートし、自然のおもしろさや不思議さに触れるネイチャーツアーを開催しています。
野鳥の森ネイチャーウォッチングや、ムササビウォッチング、夜間に行うワイルドサファリツアーなど、子供から大人まで楽しめる内容のツアーがあります。
ピッキオのネイチャーツアーについて詳しく知りたい方は、こちらのpicchioのサイトにアクセスしてみましょう。

【ノンノの森(北海道津別町)】
ノンノの森を中心とする近隣の自然資源を活用した自然体験、自然学習を通じて地域の活性化を図り、健康的で心豊かな生活、自然のサイクルと調和し続ける社会の実現を目的としています。早朝に雲海を見る雲海ガイドツアー、夜間に星空を楽しむ宇宙ガイドツアー、積雪時期にはスノーシューを履いて行う雪の森さんぽツアーなどがあります。
ノンノの森のネイチャーツアーについて詳しく知りたい方は、こちらのノンノの森のサイトにアクセスしてみましょう。

【天然記念物 富岳風穴・鳴沢氷穴(山梨県)】
青木ヶ原樹海と、天然記念物として1200年以上前から存在している溶岩洞窟の2つを楽しめるツアーです。
このツアーでは、溶岩洞窟と樹海の美しさ、楽しさ、大切さを知るきっかけ作りを目指しています。風穴1時間コースや三湖台3時間コース、樹海散策コースなどがあります。
青木ヶ原樹海と溶岩洞窟のネイチャーツアーについて詳しく知りたい方は、天然記念物 富岳風穴・鳴沢氷穴のサイトにアクセスしてみましょう。

エコな生活を心がける

エコな生活を心がけることも、生物多様性を守ることにつながります。
移動手段として自家用車ではなく公共交通機関を使うことや、エコドライブをすることで温室効果ガスの排出量を減らすことができます。
また、現在の大量生産、大量消費も生物多様性を失うことにつながります。例えば、プラスチックは生産過程においても石油の掘削や汚水の排水が起こり、廃棄の際は二酸化炭素の排出、また適正に処理されず、自然界へ流出することも多く起こっており、海へと流出した海洋プラスチック問題は海洋生物に直接影響を与えているのです。
このようなことを防ぐために、ムダな消費を控えることや、ゴミの適正な処理を行うことも生物多様性を守ることにつながります。

専門団体への寄付

個人での取り組みが難しい場合は、生物多様性を守る専門団体への寄付をすることで生物多様性を守る活動に貢献できます。
また、寄付することで、専門団体の活動の幅が広がり、個人での活動よりも専門性の高い保全活動につなげることができます。
生物多様性を守る団体を3つ紹介します。活動内容を見て、応援したいと思う団体があれば、寄付を検討してみましょう。

【国際環境NGOグリーンピース・ジャパン】
世界55以上の国と地域で活動する国際環境NGO団体です。
政府や企業からの資金援助を受けない独立型のNGO団体として、科学的知見に基づいて、様々な立場の人と協力して活動することを大切にし、世界中の300万人以上のサポーターとともに地球環境を守るために活動しています。
活動内容や寄付の方法を知りたい方は、こちらの国際環境NGOグリーンピース・ジャパンのサイトにアクセスしてみましょう。

【一般社団法人コンサベーション・インターナショナル・ジャパン】
世界70以上の国や地域で活動する団体です。
「自然は人間を必要としない。人間には、自然が必要」と考え、地球の全ての人々が将来にわたってウェルビーイング(well-being:幸福)を得られる、持続可能な世界を実現することを目指して活動しています。
活動内容や寄付の方法を知りたい方は、こちらの一般社団法人コンサベーション・インターナショナル・ジャパンのサイトにアクセスしてみましょう。

【公益財団法人日本生態系協会】
日本生態系協会は、生物多様性を守り未来へとつないでいくために、市民、企業、行政とともに、持続可能な社会を築くための取り組みを行う環境保護団体です。
ビオトープの普及や、国会議員や中央省庁への政策の提言、そのための生物や自然環境、法律などの調査、研究を行い、子どもたちや教育者、保育者への環境教育などを行っています。
活動内容や寄付の方法を知りたい方は、こちらの公益財団法人日本生態系協会のサイトにアクセスしてみましょう。

生物多様性を守り、将来の生活を守りましょう

私たちの生活に不可欠な生物多様性が、私たちの生活によってバランスを崩している現在、まずは一人一人が生物多様性の必要性に気づき、日々の行動を変えていく必要があります。

さまざまな物が発明され、便利になった生活をやめることは簡単ではありません。しかし、地球環境への影響を考慮しなくては、将来の生活を守ることができないのです。
生物多様性を守るために、一人一人が少しずつ行動を変えることで、大きな変化につながります。
生活の中で、生物多様性を守るためにできることがないかを考え、将来の生活を守っていきましょう。

この記事の執筆者
EARTH NOTE編集部
SDGs情報メディア
「SDGsの取り組みを共有し、循環させる」がコンセプトのWEBメディア。SDGsの基礎知識や最新情報、達成に取り組む企業・自治体・学校へのインタビューをお伝えし、私たちにできることを紹介します。
身近なアイデアを循環させて、地球の未来をつなげていきましょう。皆さんと一緒に取り組んでいけたら幸いです。
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