海洋酸性化とは?現状や原因、生態系への影響まで徹底解説

海洋酸性化と聞いて、「私たちの日常生活とは関係ない」と思った方もいるのではないでしょうか。実は、海洋酸性化は日常生活にも密接に関わっており、私たち個人の意識を変えるだけでも進行を食い止められるのです。
そこで、今回の記事では以下の内容について解説します。
- 海洋酸性化の現状
- 海洋酸性化とSDGs
- 海洋酸性化の原因
- 海洋酸性化の影響
- 海洋酸性化の対策と企業や私たち個人にできること
本記事を読めば、海洋酸性化と私たちの生活の関わりについて理解し、すぐに海洋酸性化を防止するための行動に移せるでしょう。
地球環境の保全には個人の環境意識を高めることが大切です。簡単にできることからはじめてみませんか。
目次
海洋酸性化とは
海洋酸性化とは、簡単にいうと大気中の二酸化炭素が海に溶け込み、水質が酸性になることです。では、現在の海はどのような状況にあるのかみていきましょう。
海洋酸性化の現状とpH
海は大気中に排出された二酸化炭素の約3割も吸収してくれています。しかし、現在では、海に二酸化炭素がたまり続け、もともと弱アルカリ性だった海が酸性に変化しつつあるのです。
海は以前と比較してどのくらい酸性に変化しているのでしょうか。
気象庁によると、1990年から2014年の25年間に、pH※が約0.04低下しました。今後も海洋酸性化は進行し続け、今世紀末には0.16~0.44低下するのではないかと予想されているのです。
※pH:水溶液中の水素イオン濃度を表す指数。pHが低くなるほど酸性を表す。
このように、現状の海は1900年代よりpHが低くなり、海洋酸性化が確実に進行しています。
海洋酸性化とSDGs
海洋酸性化は、現在話題となっているSDGsとも関係します。SDGsとは、環境・社会問題を解決して、持続可能な社会を目指す目標のことです。SDGsには、17の目標と169のターゲットが設定されており、その目標の中でも海洋酸性化と関わるのが目標14「海の豊かさを守ろう」です。
目標14「海の豊かさを守ろう」には、「海の生態系に重大な悪い影響が出ないように管理や保護を行う」とあります。
海洋酸性化が進むとサンゴや海の生物などの生態系に悪影響を与えかねません。つまり、海洋酸性化を食い止めることは海の生態系保護につながり、SDGsの目標14の達成に関わってくるといえるでしょう。
海洋酸性化の原因や仕組み
では、海洋酸性化は何が原因でどのように引き起こされるのでしょうか。その仕組みをみていきましょう。
大気中の二酸化炭素の増加が海洋酸性化の原因に
海洋酸性化の原因は、人間の活動によって排出された二酸化炭素が海に溶け込むことが原因です。二酸化炭素は大気中と海を出入りしており、海に溶けた二酸化炭素は炭酸になります。ここまでは普通のことですが、大気中の二酸化炭素が増えすぎると海の中で反応が進み、水素イオンが発生するのです。この水素イオンの増加により、海が酸性を示します。
このように、海洋酸性化は、二酸化炭素が海に溶け込み、水素イオンが増加することで引き起こされるのです。
原因である二酸化炭素排出量の推移
では、海洋酸性化の原因でもある二酸化炭素は、どれくらい増加しているのでしょうか。
気象庁によると、2021年の大気中二酸化炭素の世界平均濃度は、前年と比べて2.5ppm増えて415.7ppmとなっています。これは、工業化(1750年)以前の平均的な値とされる約278ppmと比べて、なんと49%増加しているのです。
上記のデータから、世界的に二酸化炭素の排出量は増加しており、海洋酸性化に影響を与えていることがわかります。
海洋酸性化の影響
では、海洋酸性化が進む現代で、地球にどのような影響がでることが危惧されているのでしょうか。海洋酸性化による環境への影響をみていきましょう。
海への影響
海洋酸性化が進むと、海洋の二酸化炭素吸収能力が低下することが予想されています。海は大気中の二酸化炭素分圧※と海中の二酸化炭素分圧の差でどれくらい二酸化炭素を吸収するかが決まります。
※分圧:二酸化炭素濃度を圧力の単位で示したもの
そこで、海中の二酸化炭素分圧と大気中と二酸化炭素分圧を下記の2パターンにわけて考えてみましょう。
- 海中の二酸化炭素分圧>大気中の二酸化炭素分圧
- 海中の二酸化炭素分圧<大気中の二酸化炭素分圧
上記の1の状態だと海は大気へ二酸化炭素を放出します。一方で2のように大気中の二酸化炭素の分圧が海中よりも高いと、海は大気から二酸化炭素を吸収するのです。
では、重要な指標となる二酸化炭素分圧はどのようにして決まるのでしょうか。二酸化炭素分圧には下記のようなものが影響します。
- 水温
- 生物活動
例えば、海の水温が高くなると、二酸化炭素が水に溶けにくくなります。よって、二酸化炭素が水に溶けきれず、海中の二酸化炭素分圧が上がり、大気へ二酸化炭素が放出されてしまうのです。
一方で海中の生物の活動が活発になると、植物プランクトンが海中の二酸化炭素を消費し、海中の二酸化炭素分圧が低くなります。つまり、海は大気中の二酸化炭素を吸収するのです。
このように、大気と海中の二酸化炭素分圧の差で、海の二酸化炭素吸収能力が決まります。海洋酸性化が進むと、海中の二酸化炭素分圧が上がり、海の二酸化炭素吸収能力が低下してしまうのです。
生物・生態系への影響
海洋酸性化は、海に住む生物や生態系に悪影響を及ぼします。具体的にはサンゴや貝などの生物です。
サンゴや貝の骨格や殻を作っているのは海に溶け込んでいるカルシウムイオンと炭酸イオンです。これらのイオンが結合することで、炭酸カルシウムというものができ、サンゴや貝は自分の体を作れます。
海洋酸性化が進む前の地球、具体的には産業革命以前の地球では上記のカルシウムイオンと炭酸イオンが多量に存在していました。しかし、産業革命で人間の活動から放出される二酸化炭素が増加し、二酸化炭素が大量に海に溶け込んでいるのが現状です。
そのような状況ではどのようなことが発生するのでしょうか。海に二酸化炭素が溶け込むと、二酸化炭素がカルシウムイオンと炭酸イオンの結合を妨げてしまいます。よって、サンゴや貝の骨格や殻生成に必要な炭酸カルシウムが減少することにつながります。
つまり、海洋酸性化が進むと、貝やサンゴに必要な炭酸カルシウムが減少し、それらの生物の成長を妨げてしまうのです。
さらに、海洋酸性化により、海中の二酸化炭素が増加すると、海藻のように二酸化炭素を使って光合成をする生物は成長が促される傾向があります。
では、海藻類が増加すると、生態系にはどのような影響があるのでしょうか。
海藻類が海底を覆いつくし、他の生物の住みかを奪い、海中の生態系が大きく変わってしまう恐れがあるのです。
このように、海洋酸性化は海中の生物・生態系に多大な影響を与えます。
また、エゾアワビについても同様の実験があり、二酸化炭素濃度が上昇するとともに、貝に穴が増え、ボロボロになっていく現象がみられました。
このことから、海洋酸性化は生物に多大な影響を与えているといえます。
出典:地球環境研究センター:【解説】海から貝が消える? 海洋酸性化の危機
水産業への影響
海洋酸性化は水産業にも悪影響を与えます。
具体的な影響としては、貝類の収穫量の減少があげられます。「生物・生態系への影響」のところでも解説したように、海洋酸性化は貝類の成長を妨げる恐れがあります。よって、海洋酸性化が進行することで貝類の収穫量が減少するといえるでしょう。
さらに、貝類は養殖業にも多く使われており、養殖可能な貝類が減少することで、水産業全体へのダメージが考えられるのです。
観光業への影響
海洋酸性化により、ダイビングなどのレクリエーションや観光業が衰退する恐れがあります。
ダイビングでは美しいサンゴ礁を見に行くことを見どころにしていたり、サンゴ礁が観光スポットになっている場所があります。
しかし、それらのサンゴが海洋酸性化により失われてしまうと、それらを目的にしている観光客やダイバーの減少が考えられるのです。
21世紀末までにサンゴの大量死による観光業の収入減はなんと6兆7,000億円程度といわれています。これほどまでに、海洋酸性化による観光業への影響は大きいのです。
海洋酸性化の対策
では、ここまでみてきたような海洋酸性化が進行しないように何か対策はできないのでしょうか。ここでは、海洋酸性化の対策についてみていきます。
パリ協定
パリ協定により、世界的に二酸化炭素削減の意識が高まり、海洋酸性化の防止につながります。
パリ協定とは、簡単にいうと、温室効果ガス(二酸化炭素など)を減らそうという取り決めのことです。パリ協定は2016年に発行され、世界の159もの国・地域をカバーしており、世界の温室効果ガス排出量の86%にも相当します。
そのようなパリ協定では以下の長期目標が掲げられています。
【世界の平均気温上昇を産業革命以前から2度以内に抑える】
上記目標達成のために、パリ協定の締約国は温室効果ガスの削減目標を5年ごとに提出し、その取り組み状況を報告します。
日本国内では、「2030年度に2013年度比で二酸化炭素を26.0%削減する(約10億4,200万tもの二酸化炭素の削減)」が目標です。アメリカが2013年比で18~21%の削減、EUが24%の削減を掲げています。
このように、パリ協定をもとに世界で二酸化炭素削減の動きが高まることは、同時に海中の二酸化濃度の減少も意味します。よって、パリ協定は海洋酸性化の進行対策につながるのです。
- 開発途上国も含む点
- ボトムアップアプローチがされている点
パリ協定は1997年に定められた「京都議定書」の後継です。京都議定書では、二酸化炭素の排出量削減が先進国のみに課されていました。
一方でパリ協定では、先進国だけでなく、開発途上国も含みます。よって、パリ協定に関わるすべての国と地域に、2020年以降の「温室効果ガス削減・抑制目標」を定めることが求められました。また、長期的な「低排出発展戦略」を作成し、提出を促すことも規定されています。
さらに、京都議定書ではトップダウンアプローチ※が採用されており、その公平性に疑問が持たれていました。しかし、パリ協定ではボトムアップアプローチが採用され、各国が自主的取り組みを推進できるように配慮されたのです。
※上層部のみで意思決定を行うこと。
循環型社会の実現
循環型社会を目指すことも海洋酸性化の対策につながります。理由は、循環型社会形成により、二酸化炭素が減少した社会を実現できるためです。
循環型社会とは、簡単にいうと、資源を無駄なく使用した環境に優しい社会のことです。循環型社会を形成するには以下の点が重視されます。
- ごみをなるべく出さない(発生抑制、Reduce)
- 使用済みの製品をできるだけ繰り返し使えるようにする(再使用、Reuse)
- 発生したごみは適切に処分し、資源として有効活用する(再生利用、Recycle)
上記は3Rとも呼ばれ、循環型社会形成にはなくてはならない視点です。
では、循環型社会と海洋酸性化にはどのような関係があるのでしょうか。
例えば、循環型社会実現に向けて、世界中がごみの発生量を見直し、ごみの発生を削減できたとしましょう。そうすれば、ごみの焼却のために発生する二酸化炭素が減少します。
このように、ごみの発生自体を見直し、リデュースを進めていくことは、二酸化炭素発生量が減少するため、海洋酸性化防止につながるのです。
循環型社会実現のために、国だけではなく、私たち個人も再利用や省エネを意識した生活が求められます。国民一人一人の意識を変えることも海洋酸性化の防止につながっていくでしょう。
海洋酸性化対策の企業の取り組み事例
海洋酸性化を防止するために、日本の企業はどのような取り組みを行っているのでしょうか。
商船三井
日本の大手海運会社である株式会社商船三井では、二酸化炭素の排出量が少ない液化天然ガスに注目し、海洋酸性化対策に貢献しています。
液化天然ガスとは、天然ガスをマイナス162度まで冷却し、気体を液化したものです。
国際海事機関※は、2030年までに二酸化炭素の排出量を2008年に比べて40%以上削減すると掲げています。その目標達成には、液化天然ガスの使用が不可欠です。
これまで海上輸送で使用する外航船は重油をメインに使用していました。しかし、重油だと環境負荷が大きい問題があったのです。そこで、注目されたのが液化天然ガスの導入です。
液化天然ガスだと燃焼しても他の化石燃料よりも二酸化炭素排出量が少ないメリットがあります。さらに、空気よりも軽く、液化することで、気体の時よりも容積がなんと600分の1にまで減少します。よって、海上輸送によるガス取引の際に、1度に多くの液化天然ガスを運べるメリットがあるのです。また、他の化石燃料よりも埋蔵量が多く、50年以上にわたる長期供給が可能という点も注目された理由です。
液化天然ガスにもデメリットはあり、使用できるエンジンが少なかったり、価格が高いことがあげられます。しかし、環境への規制が厳しくなる中、環境に優しい液化天然ガスは需要があり、価格競争力があるとされ、今後もシェアは伸び続けるとされているのです。
そのような背景の中、商船三井では、日本初となる液化天然ガス燃料を使用したタグボード※を就航させています。世界的にみても、特に欧州中心に液化天然ガス燃料が拡大している状況です。
例えば、フランスの大手コンテナ船社CMA CGMは液化天然ガス燃料の超大型コンテナ船(23,000TEU型)9隻を中国CSSC(中国船舶工業集団)に発注しました。2019年に一番船が竣工し、順次アジア・欧州航路に就航する予定とされているのです。
液化天然ガスの貿易量は2025年には2019年比で21%も増加する予想があり、今後も液化天然ガスによる海上輸送は活発に行われるでしょう。
このように、世界的にみても環境への配慮から、液化天然ガスは注目されています。そのような世界情勢の中、商船三井では、液化天然ガスを船舶の燃料として利用することで、二酸化炭素削減に貢献しているのです。
※国際海事機関(International Maritime Organization: IMO)。海上の安全、船舶からの海洋汚染防止等、海事分野の諸問題についての政府間の協力を推進するために1958年に設立された国連の専門機関。
※タグボード:船舶や水上構造物を押したり引いたりするための船。 関連するサービス
株式会社セブン&アイ・ホールディングス
株式会社セブン&アイ・ホールディングスは、コンビニエンスストアをはじめ、数多の事業の企画・管理・運営を行っています。そのような同社では、海の自然環境を保護し、海洋酸性化の進行を食い止める活動も実施しているのです。具体的には下記のような活動を実施しています。
活動 | 内容 |
---|---|
海を再生し、未来へつなぐ。 | セブン-イレブン店頭で集まった募金と企業・個人・団体などから集まった寄付金をもとに事前環境保護・保全活動を実施。 |
セブンの海の森 | 水質浄化・酸素生成・二酸化炭素削減効果のある海藻「アマモ」を海に移植する活動。アマモは「海のゆりかご」とも呼ばれ、小魚や小生物の生育場となっており、生態系の維持にも効果がある。さらに「ブルーカーボン」ともいわれる効果もあり、陸上の木々同様、海中の二酸化炭素を吸収してくれる。 |
セブンの森 | 2023年時点で全国14か所で植樹から下刈り・間伐までの森の保育活動を行っている。一部の間伐材※は募金箱や商品の容器・包装に利用されている。 |
クールアース・デー | 7月7日はクールアース・デー※と呼ばれ、セブン&アイグループ各社店頭では19時~20時の間、店舗看板の一斉ライトダウンを実施。 |
※間伐材:森林の成長過程で密集化する立木を間引く間伐の過程で発生する木材のこと
※クールアース・デー:2008年のG8サミット(洞爺湖サミット)が日本で7月7日の七夕の日に開催されたことを契機 に、毎年7月7日がクールアース・デーと定められた。
上記の活動を通じて、同社では二酸化炭素を削減する取り組みを行っており、海洋酸性化防止に貢献しています。
海洋酸性化対策として私たち個人にできること
海洋酸性化の進行を止めるために、私たち個人にできることとはいったい何でしょうか。
いったん海に溶け込んだ二酸化炭素を取り除くことはなかなか難しいです。よって、私たちの日常生活で発生する二酸化炭素の排出量を減らすことが大切といえるでしょう。
ここでは私たち個人にできる、二酸化炭素排出を減少させる取り組みについてみていきます。
5Rを意識する
私たち個人が、5Rを意識することで二酸化炭素削減に貢献できます。5Rを意識すれば、家庭から発生するごみそのものが減少し、焼却の際の二酸化炭素を抑えられるからです。二酸化炭素を削減できれば、海洋酸性化防止にもつながります。
「循環型社会の実現」のところで紹介したのは3Rという考え方ですが、3Rにさらに2つの要素を加えたものが5R(ファイブアール)です。新たに加わる2つは「Refuse(リフューズ)」「Repair(リペア)」が該当します。近年はこの5Rが地球環境を保全するために重要な考え方であるとして注目されているのです。5Rは具体的には以下のようなことを指します。
項目 | 内容 | 具体的な取り組み |
---|---|---|
Reduce(リデュース) | ごみの発生量自体を減らす。 | 買い物の際にあらかじめ必要なものを決めておき、必要な分だけ購入する。食品を食べ残さず、食べ切る。洗剤などは詰め替え用を購入する。 |
Reuse(リユース) | 再使用すること。誰かが使っていたものを再度使用するなど。 | リサイクルショップ、フリーマーケット、バザーを有効活用する。フリマサイトで不要になったものを出品する。 |
Recycle(リサイクル) | 発生したごみを適切に処分し、資源として有効活用する。 | 発生したごみは適切に分別して処分する。地域の集団回収やスーパーの店頭回収などを使い、分別してごみを捨てる。 |
Refuse(リフューズ) | 不要なものを断る。 | 買い物の際にレジ袋を断る、過剰包装を断る、試供品などをもらわない。 |
Repair(リペア) | 修理して再び使えるようにする。 | 衣類や靴などは修理して長く使う。衣類のボタンが外れたら自分で縫ってボタンを取り付ける。 |
普段の日常生活から意識できる5Rの取り組みはたくさんあるので、実践できるものから実践してみてはいかがでしょうか。
省エネ家電を使用する
家庭にある古い家電を省エネ家電に切り替えるだけで、家庭から出る二酸化炭素発生量を抑えられます。そもそも、家庭からはどのくらい二酸化炭素が発生しているのでしょうか。2021年のデータによると、以下の割合で家庭から二酸化炭素が発生しています。
家庭からの二酸化炭素発生源 | 家庭からの二酸化炭素発生量 |
灯油 | 8.2% |
LPG(液化石油ガス) | 5.1% |
都市ガス | 9.9% |
電気 | 46.8% |
ガソリン | 23.0% |
軽油 | 1.3% |
ごみ | 4.0% |
水道 | 1.7% |
上記の表をみてみると、家庭内の電気の使用により、二酸化炭素が多く発生していることがわかるでしょう。
では、家庭内ではどのような電化製品を使うことが多いのでしょうか。使用量の多い電化製品以下のとおりです。
電化製品 | 使用量 |
エアコン | 14.7% |
冷蔵庫 | 14.3% |
照明 | 13.5% |
テレビ | 9.4% |
エアコン、冷蔵庫など家庭の必需品は多くの世帯で使用されていることがわかります。つまり、これらの家庭の電化製品を省エネ製品に変えるだけで多くの二酸化炭素が削減できるのです。
省エネ製品であるかどうかは、小売事業者表示制度(統一省エネラベル等)に基づいて決定しています。この制度をもとに、小売業者はラベルによって省エネの評価を星マークでわかりやすく表示してくれているのです。ラベルには以下のような内容が表示されているので、家電購入の際の参考にしてください。
項目 | 内容 |
多段階評価点 | 省エネ性能を高い順に5.0~1.0までの41段階で表示。5.0が最も省エネ効果が高い。 |
省エネルギーラベル | 省エネ基準をどの程度達成しているかを表示。 |
年間目安エネルギー料金 | 1年間使用した場合の経済性を、年間エネルギー料金で表示。年間エネルギー料金とは、年間の目安電気料金のこと。 |
統一省エネラベルのように、一般の消費者でも省エネ製品が一目でわかるように、わかりやすい工夫をしてくれています。家庭に古いエアコン、テレビ、冷蔵庫などがあれば省エネ効果の高い家電製品に買い換えてみてはいかがでしょうか。
日常生活で二酸化炭素を減らす取り組みを意識し、実践する
私たちの日常生活では、少し意識するだけで簡単に二酸化炭素発生量を抑えられる取り組みがあります。それらを実施するだけで、大気中の二酸化炭素が減り、海洋酸性化防止にもつながるのです。
以下の表に日常生活で簡単にできる二酸化炭素削減の行動をまとめましたので、参考にしてください。
行動 | 効果 |
冷房を28度、暖房を20度に設定する | 冷暖房の設定温度が2度変わるだけで、1日あたり90gの二酸化炭素削減につながる。使用時間を1時間減らすと、1日あたり30~40gの二酸化炭素が削減される。 |
照明を蛍光灯やLED電球にする | 1日あたり45gの二酸化炭素削減。 |
主電源を消し、使わない電化製品のコンセントを抜く | 待機電力を半分に減らすと、1日あたり100gもの二酸化炭素削減につながる。 |
シャワーを1日1分短縮する | 1日あたり7gもの二酸化炭素削減効果。 |
1日5分のアイドリングストップ | 1日あたり60gの二酸化炭素削減効果。 |
通勤や買い物で車の使用を控える | 1日あたり100g以上の二酸化炭素を削減できる。 |
エコバックを使用する | 1日あたり50gの二酸化炭素削減。 |
どれも普段から二酸化炭素を減らす意識を持つだけで簡単にできることばかりです。本記事を読んだその日から海洋酸性化防止の行動をはじめてみませんか。
二酸化炭素の排出を抑えることが海洋酸性化を防ぐ
今回は海洋酸性化についてわかりやすく解説してきました。重要な内容は以下のとおりです。
- 海洋酸性化は進行しており、25年間でpHが約0.04も低下している
- 海洋酸性化は大気中の二酸化炭素増加が原因
- 海洋酸性化によって生態系・水産業・観光業などに影響が出る
- 海洋酸性化と関わるSDGsの目標は14「海の豊かさを守ろう」
- 海洋酸性化の対策には二酸化炭素を減らす意識が大切
大量生産、大量消費が進む現代で、海洋酸性化は確実に進行しており、1990年から2014年の25年間に、pHが約0.04も低下しています。もともと弱アルカリ性だった海が酸性を示しているのです。原因としてあげられるのは、私たち個人や企業活動によって発生する二酸化炭素の増加です。
2021年の大気中二酸化炭素の世界平均濃度は、415.7ppmでした。これは、工業化(1750年)以前の平均的な値と比べて、なんと49%も増加しているのが現状です。
このまま海洋酸性化が進行すると、貝やサンゴなどの生物・生態系への影響や観光・水産業の衰退が懸念されています。
そして、海洋酸性化はSDGsとも関係しており、目標14「海の豊かさを守ろう」が海洋酸性化との関係が深い目標でした。目標14達成のために、海の生態系を守るための管理や保護を徹底していく必要があります。
そのために、世界ではパリ協定や循環型社会を推進し、二酸化炭素を減らす取り組みを実施しているのです。そして、私たち個人も5Rを意識するなどしてごみを減らすことで、海洋酸性化対策に貢献できます。エコバックを持ち歩く、不要なものは断るなど、簡単にはじめられることから海の酸性化を食い止めていきましょう。
<参考文献/参考資料>
内閣府ホームページ:5 太平洋の海洋酸性化
日本ユニセフ協会:14.海の豊かさを守ろう
気象庁:海洋酸性化
気象庁:大気中二酸化炭素濃度の経年変化
気象庁:海洋による二酸化炭素の吸収・放出の分布
TSUKUBA JOURNAL:海洋酸性化で生態系の多様性が失われ微細藻類が海底を覆いつくす
J-Stage:地球温暖化・海洋酸性化が日本沿岸の海洋生態系や社会に及ぼす影響
経済産業省資源エネルギー庁:今さら聞けない「パリ協定」 何が決まったのか?私たちは何をすべきか?
外務省:Vol.150 パリ協定 - 歴史的合意に至るまでの道のり
商船三井サービスサイト:船舶におけるLNG燃料としての現状と今後
環境省:COOL CHOICE 地球温暖化対策 – クールアース・デー – デコ活
株式会社セブン&アイ・ホールディングス:美しい自然を守るために。
江東区:今日からはじめる5R~5Rでごみを減量しましょう!~
取手市:賢い家電の選び方【省エネ家電】
全国地球温暖化防止活動推進センター:家庭からの二酸化炭素排出量(2021年度)
経済産業省資源エネルギー庁:統一省エネラベルが変わりました
幕別町:CO2削減のため、日常生活でできること

身近なアイデアを循環させて、地球の未来をつなげていきましょう。皆さんと一緒に取り組んでいけたら幸いです。