株式会社山翠舎は古民家と古木の循環でSDGsが創る未来と人の想いを繋ぐ

株式会社山翠舎は古民家と古木の循環でSDGsが創る未来と人の想いを繋ぐ

2024.05.02(最終更新日:2024.05.24)
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株式会社山翠舎(以下、山翠舎)は、古くから木を扱った事業を展開し、現在では主に古民家や解体された古民家から入手した古木を活用した事業を行っている建築会社です。古木が古材として初めて国際的な認証制度である「FSC COC認証」を取得したり、最近では、NewsweekSDGsアワードで最優秀賞を受賞しています。

今回は代表の山上さんに、山翠舎の古民家と古木を活用した事業内容について、そして事業を通してのSDGsの取り組み、今後の展望や想いについて詳しくお聞きしました。

古民家と古木を活用した事業内容とその方向性

1930年創業時の山上木工所を描いた絵画
1930年創業時の山上木工所を描いた絵画
現在、空き家の古民家が社会問題になっています。問題解決に取り組む山翠舎ですが、具体的にはどのような形で古民家と古木を活用しているのでしょうか。ここでは、山翠舎の具体的な事業内容と事業の方向性について伺います。

古木を活用した事業が中心

古木を扱う職人
古木を扱う2人の職人
───本日はよろしくお願いします。まずは、山翠舎の行っている事業内容についてご紹介いただけますか?

山上さん 株式会社山翠舎の山上と申します。山翠舎は私の祖父である松治郎が1930年に創業し、職人として主に建具の製作をしていました。父が工務店に業態を変えて住宅建築をはじめました。その後、母方祖父の材木倉庫を活用する形で商業施設を中心に古木を活用した事業を2006年から行っています。

───古木を使った事業はそこから始まったのですね。

山上さん 実際には1980年代後半から1990年代にかけて、古材を活用した商業施設での施工自体は行っていました。この時代に古材を使用して商業施設で使用していたのは、先駆け的な存在でした。古木を材料として調達するところから行う新規事業として始めたのが2006年です。

現在では、古木を活用した単純な施工にとどまらず、デベロッパー(土地や街の開発事業者)としての観点を持って空き家となった古民家を活用する事業を行っています。さらには古木をただ再利用するだけでなく、アップサイクルするという観点の中で、海外の市場に対しての挑戦も行っています。

今後はデベロッパー的なアプローチへ

個人所有の蔵の倉庫を飲食店(パン屋)にリノベーションしたサブリース事例
蔵をリノベーションしたパン屋の外観
蔵をリノベーションした木のぬくもりを感じるパン屋の店内
───建築だけではなく、開業支援なども行っていると伺っています。

山上さん 山翠舎の主たる事業は建築で、主に古木を使った工事を行っています。山翠舎は100年の歴史の中で、最初は住宅の施工が中心でした。商業施設の施工は下請けから始まりました。私の代になって飲食店を中心に元請けの設計施工をしていくようになりました。よりお客様に寄り添う立場になったとき、ファイナンスを手伝う必要がでてきたのです。

───なるほど。基本的には古木を使った工事がメインなのですね。古民家を解体して出た古木も活用されているのですよね?

山上さん おかげさまで古民家の解体や古材の引取は多くのお問い合わせをいただいております。しかしながら、建築会社なので全てをお受けすることができません。そこで、これまでは古民家を解体してパーツとして活用していたものを、これからは解体せずにそのまま活用するデベロッパー的なアプローチを行うというのが現在の方向性です。例えば、借り上げた古民家にテナントを誘致して、テナントが行う事業に合わせて施工して貸し出すといった感じで、ファイナンスまで手伝うことが他社との違いかと思います。

山翠舎の古民家工事は特許出願中
古民家の解体作業をする脚立に乗った男性

SDGsにも寄与する山翠舎の古木の循環

「法隆寺を支えた木」の中でも築100年以上の建築材料の硬度について記述されている
法隆寺の外観と法隆寺を支えた木という本の表紙
山翠舎は従来の古民家を解体して古木を再利用する取り組みをさらに進化させ、古民家自体をそのまま再利用する方向へ舵を切っています。SDGsに関わる具体的な取り組みにはどのようなものがあるのでしょうか。

ここでは、木の循環に関する取り組みとSDGsへの貢献、社員の意識の変容や経営者に求められることについてお聞きします。

木の循環は環境に優しい循環

───ここからはSDGsに関したお話を伺っていきます。「モノ」の循環を大切にされているそうですが、こちらについて教えていただけますか?

山上さん モノの循環に関しては、古民家で使われなくなった木材の多くが廃棄されてしまっているのが現状です。しかし実際には、古木は新しい木よりも硬くなって質が良いです。ですが、そんな良いこと尽くしの古木も、燃やされてしまうとそこで終わってしまいます。

───古木は味わい深い見た目をしているという程度の認識でしたが、硬度などの質も良いというのは驚きです。廃棄してしまうのはもったいないですね。

山上さん 限りある資源を有効活用するという観点から考えたときに、木は面白い存在であると思います。そして山翠舎の循環のアプローチは、形をそのまま尊重するという循環です。例えば金属やプラスチックを循環させるためには一度溶かして形を変えますが、形を変えること自体にエネルギー負荷がかかります。エネルギーを使いCO2を発生させる科学変化を起こさないと、新たな循環は生まれないのです。

古木をそのまま使うことにはエネルギー負荷も環境負荷もそれほどかかりません。そして、そのまま使うだけではなく、さらに価値を高めるようなアプローチも弊社では可能になっています。今後はさらにそうしたアプローチを行い、時代や世の中のニーズに合わせていけたらと考えています。

───どのような形で価値を高めるアプローチをするのでしょうか?

山上さん 例えば、海外アーティストやデザイナーは一般的な日本人と比較して古木に価値を見出している方が多いと感じています。イタリア人プロダクトデザイナーのRoberto Sironi氏とは、2023年1月に山翠舎が出展したメゾン・エ・オブジェで声をかけていただき、現在はRoberto Sironi氏のデザインによる古木を使ったラグジュアリーな家具をいくつか試作中です。また、2024年4月24日から六本木の森美術館で始まる「シアスター・ゲイツ展」では、什器の制作協力を行っています。実際にシアスター氏が活動拠点のアメリカシカゴから、山翠舎の大町倉庫まで来てくださり、古木を選びから細部の加工まで打ち合わせを行いました。古木の在庫を持っているだけではなく、提案・加工・設置などを一貫して行うことで、デザイナーやアーティストの意向を関係者が共有し、一つのチームとなって完成させられることが山翠舎の強みであり、古木の価値向上につながっています。
材木がたくさんある倉庫で作業する3人の男性
廃棄することにはエネルギーを使い環境負荷もかかり、さらにはお金もかかります。しかし弊社の取り組みでは、エネルギー消費や環境負荷は少ないまま、利益まで出るのです。全てにおいてうまくいく解決法を用いて、価値を高めるアップサイクルになっています。

───全てがマイナスファクターであったものが、ゼロになるだけではなくプラスにまで転じるのはすごいですね。他にも価値を高めるためのアプローチはありますか?

経歴を記録し管理・追跡もできるNFCチップ
木のチップを持った指
山上さん 「どこの古民家から、どのような経由でたどり着いたか」がしっかり分かることが古木には必要であり、それが古木の由来にもなります。これから先さらにさまざまな人が使っていくことを新たな価値にしていきたいですし、システム化を提案していきたいと考えています。現在は、古木にNFCチップを埋め込み、一本ずつ経歴をデジタル化できるブロックチェーンの仕組みを構想中です。

付加価値を与えてプラスのイメージに

───素晴らしい取り組みですが、古いものを再利用することによる弊害のようなものはないのでしょうか?

山上さん 中古の物というのは、誰が使っていたか分からないという点でマイナスのイメージを持つ人も多いと思います。しかし、例えば尊敬する方などからいただいた物であれば、長く大切に使おうとするのではないでしょうか。私の使っている名刺入れも、亡くなった親友からもらった特別なもので、力をもらえたり元気がもらえたりしています。このように、同じ中古でもプラスに作用する中古もあるのです。

───確かに、そのような中古なら付加価値を感じられますね。古木でも同じようにそういった付加価値を感じられれば、さらに循環が広がりそうです。

山上さん 誰かが使っていた古木を次の方に使っていただいて、次の方もまたその次の方も大切にして、木の良い循環を作っていくことが私が考えている古木の世界観です。それをどうやって実現させていくか考えていたとき、ブロックチェーンやNFCチップという技術を持った会社との出会いがありました。そういったテクノロジーを取り入れていくことで今のアイデアが生まれましたが、まだ一般的にはなってないため、ぜひ普及させたいと思っています。

例えば「この木は150年使われています」と言っても、極端に言えば証明できる人が亡くなってしまえば証明できなくなってしまいます。しかし、テクノロジーを活用することによって、不可能だった証明が可能になるのです。いつ、どこの古民家のどの部分で使われていた木であるかが全て証明できます。

そして、きちんと保存することにより1000年先まで使えることは、建立から1300年の時を経ている法隆寺が証明しています。プラスチックは土の中に返る素材を開発するなど、世の中から早くなくそうという風潮がある中、木という素材は長い年月を使い続けるのに適しているという実証実験済みの歴史があるのです。

───1000年以上も使えて、さらにそこに付加価値が生まれる素材なんてなかなか無いですよね。もっと循環が広がれば良いですね。

山上さん そこで、木を売りたい人と買いたい人をマッチングするような再販市場を、ネット上で作れたらと思っています。ただしそれには条件があって、歴史の情報が埋め込まれていることだけは絶対守るということです。ルールが守られていなければ、それはただの廃材になってしまうため、しっかりとルールを守ることで1000年使えるような形にできます。

少なくとも自然環境には優しいですし、木を大切にする人たちの良い流れが作れるため、古木がどんどん活用される時代が来るのではないでしょうか。このように、アイデアとしてはさまざまなものがありますが、まだ道半ばであるため、今回のようにメディアなどを通じて私の考えをお伝えしながら、夢の実現に近づけばと考えています。

FSC認証の取得で事業がスムーズになった

FSC認証の証明書
───世界的な森林認証である「FSC認証」を取得されているとホームページで拝見しましたが、こちらはどういった経緯で取得されたのですか?

山上さん もともと弊社では、1980年代から海外の古材を輸入して工事に使っていました。そして、古木の販売事業を実際に始めるにあたって差別化としていたのが、どこから入手したのかが分かるトレーサビリティです。

しかし、用語を変えた方が事業を説明しやすいと考えていたとき、FSC認証という制度を知りました。適正に管理され、違法伐採が行われていない認証としてFSC認証があることがわかり、それならばより有名なFSC認証を全面に押し出そうという発想に至ったのが経緯です。そもそも行っていた事業がFSC認証の要件に合致していたため、無事に認証を取得できました。

───FSC認証を取得していることは、SDGsに寄与している証明にもなりますよね。

山上さん SDGsという観点でも、1980年代から古材を扱ってきているため、ある意味時代の先駆けであると言えるかもしれません。2006年に新規事業を始める以前から環境負荷を減らしていく発想はあり、その発想がSDGsの考えと重なったため、今の時代で事業を説明しやすくなる要因になっています。

第三者を通じての体感が意識を醸成する

───当初は建具の製造・販売や工務店からはじめられ、今は新しい事業を展開されています。その中で社員の方の意識に変化は見られましたか?

山上さん 私が入社した当時、山翠舎は下請けの施工会社でした。そこから元請けの施工業者となり、現在は設計施工の会社で、これからデベロッパーになろうとしています。どんどん事業の領域が広がっています。

やはり、下請けのマインドと元請けのマインドというのは施工だけでも全然違いますし、工事だけ行うことと設計まで行うことでは責任の範囲が全く違います。さらにはお題を与えられて考えること、そもそもどんな状態に持っていくかを考えることもまた別であり、そういった観点でも、この10年から20年で社員の意識はかなり変わってきました。

───なるほど。SDGsに取り組んでいることによる変化はありましたか?

グッドデザイン賞審査員特別賞「古民家・古木サーキュラーエコノミー」
古民家・古木サーキュラーエコノミーの記事
山上さん 山翠舎の理念に共感して入社した最近の社員は、SDGsやサステナブルの考え方に共感するマインドを持っていますが、SDGsやサステナブルという言葉がまだ今ほど一般的ではなかった頃に入社した社員の中には、理念への共感が薄い人もいました。実際の売り上げ比率でも、古木が1本売れたところで会社全体としてのインパクトは微々たるものであるため、当初の共感が薄い人からすると「何をやっているんだろう」となってしまっていました。

しかし現在では、古木がビジネスのコアになりました。最初は素材の買い取りと販売からスタートしましたが、実際に私たちの理念に共感する方から設計・施工の仕事をいただき、古木を使ったお店作りを目の当たりにした時に、やはり社員の意識は変わります。

「グッドデザイン賞」を始めとした賞の受賞や各種メディアでの露出など、取りまく世界が変わったことも大きかったです。やはり、第三者的なところから体感したほうが、意識の醸成に繋がりやすいのではないかと思います。

新規事業にはセオリーを学ぶことが肝要

───社員の方の意識について伺いましたが、経営者にはどのような意識が求められるとお考えですか?

山翠舎 東京支社(広尾オフィス)
木のぬくもりを感じられるオフィスで打合せをする6人の従業員
山上さん 企業をリードしていく立場にある方は、きちんと事業の設計をした方が良いでしょう。インパクトが小さければ、事業はやはりしぼんでしまうと思います。ですので、マーケットとは何なのか、新規事業をどのように行うべきかなどのセオリーは身につけた方が良いです。私自身も社会人になってから、事業構想大学院大学でマーケットやターゲットなど、さまざまなセオリーを学びました。

そして企業として大きくなるというスケーラビリティの観点から考えたとき、日本と同じような施工を海外で行ってもスケーラビリティがないと感じております。そのため、新規事業のアイデアの方向性としては、掛け算で考えることのできる分野にすべきであると考え、2023年1月から海外市場に向けたプロダクト事業に取り組んでいます。事業にはある程度セオリーのようなものはあるので、そこを勉強することで道は開けていくと思います。

───SDGsに取り組む際にも、やはり同様のことが言えるのでしょうか?

山上さん SDGsを普及させるという考えは、企業が新規事業を起こすことと実は類似しています。ただ単純に利益を増やすことを目的とした新規事業ではなく、持続可能な社会づくりを目標とした新規事業なのです。持続可能な社会づくりに貢献することが、将来的には自社の利益にもつながっていくという考え方です。そして、新規事業が上手くいくには、ある程度の武器が必要です。新規事業をどのように行ったら上手くいくかという道具がセオリーで、そういったハウツー的なところはやはり知らないよりは知っていた方が良いと思います。

ただ単に「こういう世界にしたい」という思いだけでは、なかなか上手くいきません。しかるべき武器を持って戦う、そうすることでそれなりの結果が出て、それがまた違う結果と繋がって、良い循環が起きてくると思います。

私は事業構想大学院大学で学びましたが、別に他のところでも構いません。そういうところで一通りしっかり学んだ方が、結果が出やすいと思います。私もしっかりと学んでから、アプローチの方法などが分かるようになりましたが、学ぶ以前は適切なアプローチができていなかったと反省しています。一通り学んでから行うだけで事業の成功確率が上がり、インパクトも広げられるようになるはずです。

山翠舎の展望と実現したい世界

古木の価値を高め、SDGsにも多大な貢献をしている山翠舎ですが、今後の展望はどのようなものになっているのでしょうか。ここでは、山翠舎の事業の展望とその想いについて伺います。

古木の価値を高めるため海外への挑戦も行っている

小諸市にあるレンタルスペース「合間/FEAT.space 小諸」
古木を再利用してリノベーションされたレンタルスペース
───ここからは、今後の展望について伺います。今後は、どのような事業に力を入れて行こうとお考えですか?

山上さん 私が温めてきた古木の再利用は、今ではさまざまな派生をしています。まず弊社が行ったのは、商業施設の内装に取り入れて空間を居心地良くすることです。

今までは情緒的な価値を理由に古木を導入いただいていましたが、今後はより大きな企業の方に、環境負荷低減、脱炭素などのサステナブルな面を世の中にアピールできるという左脳的なメリットを知っていただきたいです。飲食店だけではなく、オフィスや自宅など、今まであまり使われていなかったところに使われていくようになって欲しいと思っています。

もう一つはアップサイクルに関してで、海外で活躍するアーティストやデザイナーとコラボレーションすることで古木プロダクトの価値を高めようと考えています。新たに「SANSUI」というブランドを立ち上げ、海外のラグジュアリー市場への進出に挑戦しています。
SANSUIのWEBページ:https://www.sansui.jp/

───具体的には、どのような挑戦を考えていらっしゃいますか?

フランス・パリのセレクトショップ「LECLAIREUR Hérold」に展示されているSANSUIプロダクトの「KOBOKU bench」
古木を再利用したベンチを置くおしゃれなセレクトショップ
山上さん 日本のマーケットより世界のマーケットの方が、より日本の古木の価値を感じていただけるのではないかという仮説のもと、パリで開催されたインテリア&デザインの世界的見本市「メゾン・エ・オブジェ」に2年連続で出展しています。そしてこの1年で、パリのセレクトショップやニューヨークのギャラリーに置いていただき、2024年1月にはニューヨークのカフェでも古木のベンチを利用していただくなど、世界に出ていく大きな流れができつつあります。2024年3月13日には、アメリカニューヨークにオープンしたnana’s greentea BroadwayStoreの店内の什器の一部に古木が使用されました。
参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000068.000042376.html

これをさらに加速させ、世界中で古民家の古木は素晴らしいということをより知っていただきたいですし、日本の皆様にも見直していただきたいです。世界中で、見ていて楽しいオブジェとして利用していただき、古木の価値をさらに上げていくという動きを促進させていきます。

まずは見に来ていただけるようなおもてなしができる空間をつくりたいと考えていますので、是非来てください。海外の方も定期的にいらっしゃるようになりました。ゲストハウス的なものを長野県大町に作り、大町の活性化も含めて取り組んでいく予定になっています。

エージェント的な立場で古民家がもっと利用される世界を

古民家をリノベーションしたカウンターのある飲食店
───古木の価値をもっと知ってもらえたら良いですね。

山上さん 古木に関して、これまでの十数年は5000本しかないので弊社で保管して価値を高めようという、どちらかというと消極的なアプローチでした。しかし、古民家は素晴らしいものなので、そもそも壊さない方が良いのではないかという考えから、解体の元を断つアプローチに挑戦しています。

例えば、素晴らしい古民家を壊さないために弊社で借り上げ、その古民家にふさわしい業態を考えます。そして、パン屋さん、お蕎麦屋さん、フレンチなど、ふさわしいお店にこちらからアプローチするのです。こういった場所にこういった素晴らしい古民家がありますというような、古民家のエージェント的な立場で、街づくりのデベロッパー的な動きをします。そして業態に合わせて古民家をリノベーションし、テナントにリースする取り組みです。
今まで住宅であった古民家を商業施設としてリノベーションするにはお金がかかります。山翠舎では、壁を壊さずに工事することが可能な「古民家ジャッキアップ工法」の特許を出願中です。この工法により、工事費は安く済み、工期も大幅に短縮できるメリットがあります。

───こちらからアプローチするのは面白いですね。現在はどのくらいの入居がありますか?

山上さん 人数が少ない会社のため、まだそれほど多く実現できているわけではありませんが、種をまいたことがこの1年ほどで実を結び、そういった物件が長野で増えてきています。ここからの1年でさらに増やしていける見通しですので、ぜひ加速させていきたいです。良い古民家は空き家にすること自体がもったいないため、古民家がもっと使われる世界をつくっていける企業になっていきたいと考えています。

山あいの古民家も斬新な切り口で活用

古民家の解体現場
丘の上に立つ古民家の解体現場
───企業が入居するのに適さない立地にある古民家については、どのような活用をお考えですか?

山上さん 街中にある古民家は人通りが多い場所にあるため、基本的には商業施設にしようと考えている一方、山あいにある古民家は違ったアプローチを考えています。古民家が100年200年とあり続けているその土地は、土地自体が素晴らしいものです。決して必ずというわけではありませんが、これからも古民家が保存できる可能性が高いと考えると、その土地は安定している良い場所であるはずです。ですので、山あいの古民家は街中の古民家とは違ったアプローチをする予定になっています。

その中の一つが「思い出お預かりサービス」です。街中の古民家にどうしても忘れられない何かがあるため、人に貸せなかったという人に向けたサービスで、だったらその忘れられない何かを、山あいの古民家に持っていきましょうというものです。例えば山あいの古民家に部屋が4つあるとしたら、4つの区画をそれぞれ利用者に貸し出す形です。物の保管をベースに、古民家体験の楽しさも提供するなど、また別の切り口で活用していただくことも考えています。古民家を空き家にさせない、古民家をさらに活用していく、そういったところを手がける会社になっていきたいというのが今後の展望です。

行動を後押しし手を取り合っていきたい

───最後に、読者の皆さんへのメッセージをお願いします。

山上さん 2023年2月に出版させていただいた著書『”捨てるもの”からビジネスをつくる』には、山翠舎のデベロッパー的なアプローチも載っていますし、今後行っていきたい事業なども書いてありますので、興味ある方はご一読いただけたら嬉しいです。そして、2月に出版してからテレビ東京の経済ドキュメンタリー番組『ガイアの夜明け』に取り上げていただくなど、まだ1年経っていない中で状況が変わってきていることを実感しています。ニューズウィーク日本版 SDGs アワード2023にて、最優秀賞と経済部門賞をいただいたことも自信につながっています。
参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000026.000053701.html

本にも書いたのですが、私たちはまだ全然成功もしていないですし、結果も出せていません。現在出版から1年ほどが経ち、特にすごい結果を出せたわけではありませんが、ただ確実に良い方向に進んでいる実感はあり、いろいろなことがクリアになってきています。

何かしらのアクションを起こすことが良い結果を生むと思いますので、今回読んでいただいた方の行動の後押しになればと思っています。また、共感する方々が集まって、それぞれの得意分野を生かし、お互い手を取り合っていけたら嬉しいです。そういった方々が集まる場として、長野市善光寺前に空き家の倉庫をリノベーションした「FEAT.space」という施設を運営しています。まずは語り合うところから始まります。共感いただけましたら、まずはFEAT.spaceに是非来ていただきたいと思っております。

───本日は貴重なお話をありがとうございました。

山翠舎は古木の価値と想いを大切にしていく

古木や古民家を活用することで新たな循環を生み出し、SDGsにも貢献している山翠舎は、その斬新な発想から生まれた取り組みや、モノを大切にする想いはとても素晴らしいものでした。世界へ活躍の場を広げる山翠舎の取り組みから今後も目が離せません。きっと古木や古民家の価値を高めて、さらに活用される世界を創っていってくれると期待しています。

山翠舎の取り組みや事業をさらに詳しく知りたい方は、ぜひ山翠舎のウェブサイトを覗いて素晴らしい古木の世界に触れてみてください。

▼山翠舎のホームページはこちら
「SANSUI-SHA」株式会社山翠舎

▼山翠舎のSDGsについて、詳しくはこちら
SDGs – 株式会社山翠舎

この記事の執筆者
EARTH NOTE編集部
SDGs情報メディア
「SDGsの取り組みを共有し、循環させる」がコンセプトのWEBメディア。SDGsの基礎知識や最新情報、達成に取り組む企業・自治体・学校へのインタビューをお伝えし、私たちにできることを紹介します。
身近なアイデアを循環させて、地球の未来をつなげていきましょう。皆さんと一緒に取り組んでいけたら幸いです。
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